『
東洋経済オンライン 東洋経済オンライン編集部 2017年01月21日
http://toyokeizai.net/articles/-/154827
過激?慎重?
これがトランプ就任演説全文だ
新大統領が説く「アメリカの再建」とは?
ドナルド・トランプ氏が20日、第45代米国大統領に就任した。
「2017年1月20日は、国民が再びこの国家の統治者になった日として記憶に残るだろう」「自らの国境を守ることを拒否する一方で、他国家の国境を守ってきた」
「アメリカが団結すれば、アメリカはもう誰にも止められない」
など過激な言葉も目立つ演説内容となった。
新大統領による就任演説の全文日本語訳は以下の通り。
>>>>>
ロバーツ最高裁判所長官、カーター大統領、クリントン大統領、ブッシュ大統領、オバマ大統領、同胞のアメリカ国民諸君、そして世界の皆様、ありがとう。
我々アメリカの市民は今、すべての市民のために、我々の国を再建し、その有望さを回復する偉大な国家的努力に加わることとなった。
我々はともに、今後数年間アメリカと世界の進む道を決めるだろう。
私たちは課題に直面するだろう。私たちは困難に対峙するだろう。
それでも我々はやるべきことをやり遂げる。
■ワシントンは繫栄したが・・・
4年ごとに、我々は秩序ある平和的な権力の移譲を行うために集まる。
オバマ大統領とミシェル・オバマ大統領夫人のこの移行期間を通じての親切な助力に感謝する。彼らは偉大だ。
しかしながら、今日の式典には、非常に特別な意味がある。
なぜなら今日、我々は単に権力を政権から政権へ、党から党へ移譲するのではない。
我々は権力をワシントンD.C. からあなた方、アメリカ国民へと返すのだ。
あまりにも長い間、我々の国家の首都にいる少数集団が政府の恩恵を受ける一方で、国民はその費用を負担してきた。
ワシントンは繫栄した。
しかし国民はその富の分配にあずかることはなかった。
政治家は成功した。
しかし職はなくなり、工場は閉鎖した。
支配者層は国民ではなく、自分たちを守った。
彼らの勝利は諸君の勝利ではなかった。
彼らの成功は諸君の成功ではなかった。
彼らは我々の国家の首都で祝杯を挙げる一方、我々の土地の至る所で困難にあえぐ家族たちにとって、祝杯を挙げることなどほとんどなかった。
これらは全て変わる。
ここで、たった今から。
なぜなら今この瞬間は諸君の瞬間だからだ。
諸君のものなのだ。
今日ここに集まった全員、そしてアメリカの至る所で見てくれている全員のものだ。
今日という日は諸君の日だ。
これは諸君の祝典だ。
そして、このアメリカ合衆国は、諸君の国だ。
本当に大切なのは、どちらの党が我々の政府の舵を取るかではなく、我々の政府は国民によって舵を取られているかどうかだ。
■国家は国民に奉仕するために存在する
2017年1月20日は、国民が再びこの国家の統治者になった日として記憶に残るだろう。
我々の国の忘れられた男性・女性諸君は、もはや忘れられることはない。
今は皆が諸君の声を聞いている。
世界がこれまで見たことのないような歴史的運動に加わるために、何千万人もの国民がやってきた。
この運動の中心には、決定的な信念がある。
それは、国家は国民に奉仕するために存在するというものだ。
アメリカ国民は、子どもたちのために素晴らしい学校を、家族のために安全な地域を、彼ら自身のために良い仕事を求めている。
これらは公正な一般市民の、正当でありもっともな要求である。
しかしあまりに多くの国民にとって、異なる現実が存在する。
内地の都市では、母親と子供たちは貧困から抜け出せないでいる。
我々の国家の風景の至る所で、さびついた工場が墓石のように点在している。
教育システムにはたくさんの金が費やされているが、我々の若く素晴らしい学生たちは知識に恵まれていない。
犯罪やギャングやドラッグはあまりにも多すぎる命を奪い去り、実に多くのまだ見ぬ可能性を我々の国から奪い取っている。
このアメリカの惨状はまさに今、この場所で終わりを告げる。
我々は1つの国家である。
人々の痛みは我々の痛みである。
人々の夢は我々の夢である。
そして人々の成功は我々の成功となる。
我々は1つの心、1つの故郷、そして1つの輝かしい運命を共有するのだ。
■今我々は未来だけを見ている
今日私が行う就任の宣誓は、全アメリカ国民への忠誠の宣誓である。
何十年もの間、我々はアメリカの産業を犠牲にして外国の産業を豊かにしてきた。
我々の軍に非常に悲しい消耗を許す一方で、他国の軍に支援金を払ってきた。
自らの国境を守ることを拒否する一方で、他国家の国境を守ってきた。
アメリカのインフラが荒廃し朽ちていく中、海外に何兆ドルも費やしてきた。
我々は自国の豊かさ、強さ、自信が地平線の彼方に消えていく中、他国を豊かにしてきた。
一つまた一つと、工場は閉鎖され我々の陸地を離れた。
置き去りにされた何百万ものアメリカ人労働者のことを少しも考えることなく。
中流階級の富は家庭からもぎ取られ、世界中へと再分配された。
しかしこれは過去のことだ。
そして今我々は未来だけを見ている。
今日ここに集まった我々は、すべての都市、すべての外国の首都、すべての権力の場において耳を傾けられるべき新しい命令を発する。
この日より、新しい構想がこの国を統治する。
この瞬間より、アメリカが第一となる。
貿易、税金、移民、外交問題におけるすべての決定は、アメリカ人労働者、アメリカ人家族に恩恵をもたらすために下される。
我々の製品を作り、我々の会社を盗み、我々の職を破壊する他国の脅威から我々の国境を守らなければならない。
守ることが大きな繁栄と力につながるのだ。
私は自分の持てる限りの力を使って諸君のために戦おう。
そしてわたしは決して、決して諸君を失望させない。
■アメリカ人の手でこの国を再建する
アメリカは再び勝利を手にし始める。
かつてないほどの勝利を。
我々は職を取り戻す。
我々は国境を取り戻す。
我々は豊かさを取り戻す。
そして我々は夢を取り戻す。
我々はこの素晴らしい国の至る所に新しい道を、高速道路を、橋を、空港を、トンネルを、鉄道を作るだろう。
我々は国民を生活保護から抜け出させ、仕事へと戻すだろう。
アメリカ人の手で、アメリカ人の労働で我々の国を再建するのだ。
我々は2つのシンプルなルールに従う。
アメリカ製のものを買い、アメリカ人を雇うことだ。
我々は世界の国々との友好と親善を求める。
しかしこれは、
すべての国家は自国の利益を優先させる権利を持つ
という理解があってのことである。
我々は我々の生き方を誰にも無理強いするつもりはない。
それよりもむしろ、皆の習うべき手本となるべく、我々の生き方の輝かしさを示そう。
我々は従来の同盟関係を強化し、新しいものを作る。
イスラム過激派のテロに対抗して文明世界を団結させ、それを地球上から完全に撲滅する。
我々の政治の根底には、アメリカ合衆国への完全なる忠誠があるだろう。
そして我々は、我々の国に対する忠誠を通して、我々自身に対する忠誠を再発見するだろう。
愛国主義に心を開くとき、偏見の入る余地はない。
聖書は「神の民が団結してともに生きることは、どれほどすばらしく喜ばしいことか」と我々に説いている。
我々は心を開いて話し合い、意見の相違について正直に議論し、しかし常に団結を追い求めなければならない。
アメリカが団結すれば、アメリカはもう誰にも止められない。
恐れるべきではない。
我々は守られている。
そして、常に守られ続けるだろう。
■無駄話をする時間は終わった
我々は我が軍および警察の偉大な男性・女性諸君に守られている。
そして何より大切なことだが、我々は神によって守られている。
最後に、我々は大きく考え、そしてより大きく夢を描かなければならない。
アメリカでは、国家が存在していけるのは努力している間だけだ
ということを我々は理解している。
我々はこれ以上、話すだけで行動を起こさない政治家を、常に不満を並べ立てるもののそれについて何もしようとしない政治家を受け入れることはない。
無駄話をする時間は終わった。
行動を起こす時間がやってきたのだ。
そんなことは不可能だなどと誰にも言わせてはならない。
アメリカの心、アメリカの努力、アメリカの精神に敵う困難などありはしない。
我々は失敗しない。
我々の国は再び繁栄し、成功するだろう。
我々は新世紀の誕生の時に立っており、宇宙の謎を解き明かし、病気という不幸から地球を開放し、未来のエネルギーや産業、テクノロジーを用いる準備はできている。
新しい国家への誇りは我々の魂を呼び覚まし、視野を高め、分断を治癒するだろう。
今こそ、我々の兵士が決して忘れることのない古くからの金言を思い出すときである。
肌が黒いか褐色か白いかにかかわらず、我々は皆同じ愛国者の赤い血を流し、皆同じ輝かしい自由を享受し、皆同じ偉大なアメリカ国旗に敬礼する。
■諸君は二度と無視されることはない
そして、デトロイトの不規則に広がる都市に生まれた子どもであれ、ネブラスカの吹きさらしの平原に生まれた子どもであれ、彼らは同じ夜空の星を見上げ、同じ夢に胸をふくらませ、同じ全能なる創造主によって生命の息吹を吹き込まれたのだ。
そこで、遠くの、近くの、大きい、小さい、山という山の、海という海の、ありとあらゆる都市にいる全アメリカ国民に、この言葉を聞いてほしい。
諸君は二度と無視されることはないだろう。
諸君の声、希望、夢はアメリカの運命を決定づけるだろう。
そしてその道中、諸君の勇気と善良さと愛は永遠に我々の道しるべであり続けるだろう。
我々はともに、アメリカを再び強くする。
我々は、アメリカを再び豊かにする。
我々は、アメリカを再び誇り高くする。
我々は、アメリカを再び安全にする。
そして、そう、我々はともに、アメリカを再び偉大にする。
ありがとう。
諸君にそしてアメリカに神の祝福あれ。
』
『
ロイター 2017年 01月 25日 08:28 JST
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-inauguration-style-idJPKBN15801V?sp=true
焦点:トランプ氏、大統領就任後も「非主流派」スタイル堅持か
[ワシントン 20日 ロイター] -
ドナルド・トランプ氏は、騒がしいセールスマンの作法と既存の政治秩序に対するあからさまな軽蔑が入り混じった、選挙戦開始当初と同じスタイルのまま、米国の第45代大統領に20日就任した。
これにより、トランプ氏は、国内外に明確なシグナルを送った。
新大統領は選挙期間中と同じように統治に当たる。
自身が所属する共和党にさえ歩み寄ることを拒み、米国民に直接メッセージを届けようとしているのだ。
トランプ氏は就任に際して、個人崇拝をホワイトハウスに持ち込むのではないかという選挙期間中に築き上げた懸念を払拭するような素振りをまったく見せなかった。
現代米国史上最も対決色の強かった選挙において、彼に投票しなかった千万人単位の米国民に対する和解の呼び掛けも、ほとんどなかった。
リアリティー番組のスターだったトランプ氏は、米国の現実について、破滅的なビジョンを描き出した。
犯罪と移民、テロ、不公正な貿易協定の包囲攻撃に見舞われている米国、というイメージだ。
「米国における殺りく、まさにここで、たった今終わりを告げる」
と彼は宣言し、自らを
「普通の米国民」の旗手であるように装った。
問題の深刻さを人々に警告した後、トランプ氏は選挙期間中と同様に、彼と彼の率いる「運動」が唯一の解決策であると提示した。
統治に当たってパートナーとなる共和党議員たちには一言も言及しなかったし、もちろん、激しく対立してきた民主党関係者にはまったく触れなかった。
トランプ氏は政界のアウトサイダーとして選挙を戦い、
民主党だけでなく、自分の所属する共和党の罪も批判してきた。
連邦議会議事堂の階段で行われた就任演説でも、
トランプ氏が、戦場に片足を置いたまま権力を握った反乱軍の指導者として、アウトサイダーとしての立ち位置を維持するつもりである
ことが明らかになった。
選挙期間中からのポピュリスト的なテーマを引き継ぎ、トランプ氏は政治家たちが多年にわたり国民を犠牲にして繁栄してきたと告発した。
トランプ氏は、就任演説のような機会によく見られる高遠な表現を避け、もっと無遠慮なポピュリスト的な宣言を選んだ。
「政治家は豊かになった。
しかし、雇用は流出し、工場は閉鎖された」
と彼は語りかけた。
「主流派(エスタブリッシュメント)は自分たちを守ったが、この国の市民を守らなかった」
「私たちは権力をワシントンから、あなた方、米国民にお返しする」
群衆のなかでトランプ氏の就任演説を聴いていた、アイダホ州ナンパのアンドレア・フリードリーさん(52)は、演説を「強力なパンチ」にたとえ、トランプ氏が権力を国民に返すことを称賛した。
トランプ氏は選挙人団の過半数を制したが、総投票数では対立候補であるヒラリー・クリントン氏に300万票近い差をつけられた。
それだけに、国内を団結させようという試みは非常に難しくなっている。
■<アメリカ・ファースト(米国第一)>
「今日ここに集まった私たちは、すべての都市、すべての外国の首都、すべての権力中枢に聞かせるべく、新たな布告を発する」
とトランプ氏は宣言した。
「今日以降は、新たなビジョンがこの国を統治する。今日から先は、『アメリカ・ファースト』だ」
だが、インフラ関連投資の増額、国境管理の強化といったトランプ氏の提案、そして彼の演説に見られる孤立主義的な論調は、伝統的な共和党の優先順位と整合しない可能性がある。
その一方でトランプ氏は、保守の基本原則をおおむね支持するような閣僚を選ぶことにより、神経質になっている共和党関係者を安心させている。
また彼は、オバマ前大統領による進歩的な政策の一部を撤回することを意図した大統領令への署名をさっそく開始する予定だ。
トランプ氏の就任演説では、
★.貿易やグローバリゼーションといった要因によって取り残された米国民に言及する「忘れられた」という言葉にルーズベルト大統領、また
★.「サイレント・マジョリティ」という表現を使ったニクソン大統領、さらには
★.米国の偉大さの復活を約束する点でレーガン大統領
の影響が見られる、と歴史研究者は指摘する。
ただし、プリンストン大学の歴史研究者ジュリアン・ゼリザー氏によれば、トランプ氏の演説の区切り方、わざとらしいジェスチャーには、「身体的・言語的に強い怒りが」過去の大統領よりも強く現れているという。
トランプ氏は、世論調査で自身に対して批判的な見方を示している過半数の米国民に対して、自らの主張を訴えようとする努力をほとんど見せなかった。
その代わりに彼は、最も熱狂的な自分の支持者に直接語りかけようとしているように見えた。
トランプ氏の演説によって、最も思い起こされるのは、1981年にレーガン大統領が行った「経済的苦悩」と「稼働していない産業」に言及した演説である。
だが、レーガン氏が大統領の座を引き継いだときの経済は、スタグフレーションに苦しみ、失業率は7.5%に達していた。
対照的に、退任したオバマ氏の下で、米国における民間部門の雇用は80カ月連続で増加し、失業率は4.7%に留まっている。
バンダービルト大学で米国大統領制の歴史を研究するトーマス・アラン・シュバルツ氏は、トランプ氏が描き出した状況は「恐らく、すべての米国民が共有するものではない」と言う。
それでも「国家的危機と衰退という感覚」に巧みに訴えている、と同氏は指摘する。
トランプ大統領の就任式を見るためにノースカロライナ州ムーアズビルから来たベリンダ・ビーさん(56)は、トランプ大統領がイスラム原理主義者によるテロとの戦いに成功し、政界のアウトサイダーであり続けると信じている、と言う。
「この国は今や、政治家のものではなく国民のものだ」と語った。
(翻訳:エァクレーレン)
』
http://jp.reuters.com/article/usa-trump-inauguration-style-idJPKBN15801V?sp=true
焦点:トランプ氏、大統領就任後も「非主流派」スタイル堅持か
[ワシントン 20日 ロイター] -
ドナルド・トランプ氏は、騒がしいセールスマンの作法と既存の政治秩序に対するあからさまな軽蔑が入り混じった、選挙戦開始当初と同じスタイルのまま、米国の第45代大統領に20日就任した。
これにより、トランプ氏は、国内外に明確なシグナルを送った。
新大統領は選挙期間中と同じように統治に当たる。
自身が所属する共和党にさえ歩み寄ることを拒み、米国民に直接メッセージを届けようとしているのだ。
トランプ氏は就任に際して、個人崇拝をホワイトハウスに持ち込むのではないかという選挙期間中に築き上げた懸念を払拭するような素振りをまったく見せなかった。
現代米国史上最も対決色の強かった選挙において、彼に投票しなかった千万人単位の米国民に対する和解の呼び掛けも、ほとんどなかった。
リアリティー番組のスターだったトランプ氏は、米国の現実について、破滅的なビジョンを描き出した。
犯罪と移民、テロ、不公正な貿易協定の包囲攻撃に見舞われている米国、というイメージだ。
「米国における殺りく、まさにここで、たった今終わりを告げる」
と彼は宣言し、自らを
「普通の米国民」の旗手であるように装った。
問題の深刻さを人々に警告した後、トランプ氏は選挙期間中と同様に、彼と彼の率いる「運動」が唯一の解決策であると提示した。
統治に当たってパートナーとなる共和党議員たちには一言も言及しなかったし、もちろん、激しく対立してきた民主党関係者にはまったく触れなかった。
トランプ氏は政界のアウトサイダーとして選挙を戦い、
民主党だけでなく、自分の所属する共和党の罪も批判してきた。
連邦議会議事堂の階段で行われた就任演説でも、
トランプ氏が、戦場に片足を置いたまま権力を握った反乱軍の指導者として、アウトサイダーとしての立ち位置を維持するつもりである
ことが明らかになった。
選挙期間中からのポピュリスト的なテーマを引き継ぎ、トランプ氏は政治家たちが多年にわたり国民を犠牲にして繁栄してきたと告発した。
トランプ氏は、就任演説のような機会によく見られる高遠な表現を避け、もっと無遠慮なポピュリスト的な宣言を選んだ。
「政治家は豊かになった。
しかし、雇用は流出し、工場は閉鎖された」
と彼は語りかけた。
「主流派(エスタブリッシュメント)は自分たちを守ったが、この国の市民を守らなかった」
「私たちは権力をワシントンから、あなた方、米国民にお返しする」
群衆のなかでトランプ氏の就任演説を聴いていた、アイダホ州ナンパのアンドレア・フリードリーさん(52)は、演説を「強力なパンチ」にたとえ、トランプ氏が権力を国民に返すことを称賛した。
トランプ氏は選挙人団の過半数を制したが、総投票数では対立候補であるヒラリー・クリントン氏に300万票近い差をつけられた。
それだけに、国内を団結させようという試みは非常に難しくなっている。
■<アメリカ・ファースト(米国第一)>
「今日ここに集まった私たちは、すべての都市、すべての外国の首都、すべての権力中枢に聞かせるべく、新たな布告を発する」
とトランプ氏は宣言した。
「今日以降は、新たなビジョンがこの国を統治する。今日から先は、『アメリカ・ファースト』だ」
だが、インフラ関連投資の増額、国境管理の強化といったトランプ氏の提案、そして彼の演説に見られる孤立主義的な論調は、伝統的な共和党の優先順位と整合しない可能性がある。
その一方でトランプ氏は、保守の基本原則をおおむね支持するような閣僚を選ぶことにより、神経質になっている共和党関係者を安心させている。
また彼は、オバマ前大統領による進歩的な政策の一部を撤回することを意図した大統領令への署名をさっそく開始する予定だ。
トランプ氏の就任演説では、
★.貿易やグローバリゼーションといった要因によって取り残された米国民に言及する「忘れられた」という言葉にルーズベルト大統領、また
★.「サイレント・マジョリティ」という表現を使ったニクソン大統領、さらには
★.米国の偉大さの復活を約束する点でレーガン大統領
の影響が見られる、と歴史研究者は指摘する。
ただし、プリンストン大学の歴史研究者ジュリアン・ゼリザー氏によれば、トランプ氏の演説の区切り方、わざとらしいジェスチャーには、「身体的・言語的に強い怒りが」過去の大統領よりも強く現れているという。
トランプ氏は、世論調査で自身に対して批判的な見方を示している過半数の米国民に対して、自らの主張を訴えようとする努力をほとんど見せなかった。
その代わりに彼は、最も熱狂的な自分の支持者に直接語りかけようとしているように見えた。
トランプ氏の演説によって、最も思い起こされるのは、1981年にレーガン大統領が行った「経済的苦悩」と「稼働していない産業」に言及した演説である。
だが、レーガン氏が大統領の座を引き継いだときの経済は、スタグフレーションに苦しみ、失業率は7.5%に達していた。
対照的に、退任したオバマ氏の下で、米国における民間部門の雇用は80カ月連続で増加し、失業率は4.7%に留まっている。
バンダービルト大学で米国大統領制の歴史を研究するトーマス・アラン・シュバルツ氏は、トランプ氏が描き出した状況は「恐らく、すべての米国民が共有するものではない」と言う。
それでも「国家的危機と衰退という感覚」に巧みに訴えている、と同氏は指摘する。
トランプ大統領の就任式を見るためにノースカロライナ州ムーアズビルから来たベリンダ・ビーさん(56)は、トランプ大統領がイスラム原理主義者によるテロとの戦いに成功し、政界のアウトサイダーであり続けると信じている、と言う。
「この国は今や、政治家のものではなく国民のものだ」と語った。
(翻訳:エァクレーレン)
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【2017年 大きな予感:世界はどう変わるか】