2017年6月24日土曜日

日本「民泊」解禁:でホテル不足緩和へ

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ニューズウイーク 2017年6月23日(金)19時21分 長嶺超輝(ライター)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/06/post-7855.php

民泊新法の目的は、東京五輪対策ではなく地方活性化!?

<2020年の五輪開催を控え、宿泊施設不足が深刻な東京。
このたび民泊の規制緩和を可能にする新法が成立したが、その目的は五輪と関係ないところにありそうだ>

 6月9日、住宅宿泊事業法(民泊新法)が成立した。
 これは一体、何を目的とした法律なのか。
 そして日本の民泊はこの新法でどう変わるのだろうか。

くだんの新法は、冒頭でその「目的」を語っている。

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◆住宅宿泊事業法 第1条(目的)
この法律は、我が国における観光旅客の宿泊をめぐる状況に鑑み、住宅宿泊事業を営む者に係る届出制度並びに住宅宿泊管理業を営む者及び住宅宿泊仲介業を営む者に係る登録制度を設ける等の措置を講ずることにより、これらの事業を営む者の業務の適正な運営を確保しつつ、国内外からの観光旅客の宿泊に対する需要に的確に対応してこれらの者の来訪及び滞在を促進し、もって国民生活の安定向上及び国民経済の発展に寄与することを目的とする。
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 このタイミングでできた法律であるのだから、やはり東京五輪の開催に伴い、首都圏で高まる「宿泊に対する需要」に応えたいのだろうか。
「観光立国」を目指す日本は、東京五輪が行われる2020年までに年間4000万人の外国人観光客の誘致を目指している。
 実際、2012年まで年間数百万人単位で推移してきた訪日観光客数が、2016年には2400万人以上に跳ね上がっており、目標達成も現実味を帯びてきている。
 このような外国人観光客の急増を「第二の開国」と呼ぶのも、あながち大げさな表現ではなさそうだ。

【参考記事】東京は泊まりやすい? 一番の不満は「値段」じゃなかった
【参考記事】日本「民泊」新時代の幕開け、でも儲かるのは中国企業だけ?

 そこで懸念されるのが、宿泊先の不足である。
 3年後に五輪開催を控える都内では特に、高級ホテルからビジネスホテルまで建設が急ピッチで進められているが、より多様な客層を取り込むべく、リーズナブルな料金で泊まれる施設も確保しておかなければならない。
 
 そうした事情を背景に、自分の所有・管理している部屋を有償で貸し出す「民泊」への注目が高まっているわけだが、
★.今までは民泊を行う場合、東京都大田区などの民泊特区でない限り、旅館業法の「簡易宿所」として都道府県知事の許可を得る必要があった。

 簡易宿所はホテルに準ずる位置づけなので、フロントを設置する義務が課されている。
 普通のマンションの一室を貸し出すような民泊では、物理的にも人手の面でもフロントを置くのはハードルが高く、現実的ではないとされていた。
 そこで、国は昨年、簡易宿所のフロント設置義務を原則的に廃止
 実上の民泊規制の緩和であり、このたびの民泊新法の布石でもあった。

 新法成立により、今までは特区でしか認められなかった民泊事業が、来年から全国で解禁される。
 ワンルームマンションや少人数向けで人気のAirbnbや、一軒家や別荘、多人数向けに強みがあるHomeAwayなど、民泊仲介事業も本格的に加速していくことになる。

【参考記事】東京五輪まであと4年、「民泊」ルールはどうする?

■「年間180日」上限と自治体ごとのルールの違いがネックに

 ただ、これで東京五輪対策が盤石かというと、そうとも言い切れない。
 民泊新法によって、自分が所有する部屋を民泊として貸し出せるのは「年間180日」という上限が設けられた。
 既存のホテル業界との兼ね合いで、民泊事業が外国人観光客を奪いすぎないよう、全体のバランスを取る趣旨である。
 もし年間180日を超える民泊を行えば、旅館業法違反として処罰の対象となる。
 出張などで不在にすることが多い部屋を民泊用に他人に貸し出すぶんには、年間180日もあれば十分だが、民泊事業を割の良い不動産賃貸として投資目的で利用しているオーナーは、撤退を余儀なくされるかもしれない。

 たとえば、家賃10万円の部屋を1泊5000円で民泊に提供すれば、30日間フル回転できたとして月5万円の粗利が生まれる。
 ただ、年間の半分以下しか民泊に提供できないのなら、宿泊料を相当引き上げない限り、事業として成り立たなくなってしまうからだ。
 もちろん、宿泊料を上げれば集客に苦しむリスクも伴う。
 もともと、どのような人が地域に出入りするのかを読み切れない民泊への抵抗感が根強い自治体も各地にある。
 「おもてなし」という建前と、「漠然とした不安」という本音が交錯しているのであろう。

 実際、国が昨年、簡易宿所のフロント設置義務を撤廃した後も、東京都台東区など、依然として条例でフロント設置義務を課している自治体は少なくないし、長野県軽井沢町に至っては、町内全域で民泊施設の設置を認めないと明言している。

 国の方針とは別に、地域の情勢を加味して、それぞれの自治体が独自にルールを作れることは、地方自治の核心であり、それ自体に問題はない。
 ただ、東京都心における民泊への賛否の濃淡が自治体によってまちまちであれば、民泊事業者はルールを把握して遵守することを敬遠するだろうし、国の設定した「180日ルール」を守っていれば、民泊専用の投資物件は経営的に厳しくなる。
 結果として、今後も「違法民泊」を黙認しない限り、外国人観光客の宿泊需要に対応しきれない事態にもなりかねない。

■地方には民泊に活用できる空き家・空き別荘がたくさんある

 だとすれば、民泊新法は東京五輪対策というより、むしろ、空き家や空き別荘が休眠している地方を活性化させる目的で作られたものと考えるべきではないか。
 ニッセイ基礎研究所のレポートによれば、空き家は数としては大都市圏が多いものの、2008~2013年の増加率をみると地方でも高い県がみられる。
 地方では特に一戸建ての空き家の増加傾向が顕著で、中部や中国、九州などでその傾向が強いようだ。

 2013年現在、日本の空き家数は約820万戸で、家屋全体の13.5%を占め、過去最大の割合となった。
 各地では「空き家対策条例」が制定されている。持ち主各自で空き家を責任をもって維持管理するよう義務づけ、もし倒壊などの危害が生じるおそれがあれば、自治体が勧告や措置命令を出せる。
 おおむねそういった内容だ。

 ただ、持ち主が不明、あるいは曖昧なまま放置されていて、倒壊の危険だけでなく、不気味な外観となったり異臭を放ったりする空き家も少なくない。
 かといって憲法で私有財産制が保障されている国である以上、役所が空き家を撤去する場合には、行政代執行で極めて慎重に実行しなければならない。

 大半の地方コミュニティが頭を抱えている、厄介な課題。
 それが空き家である。
 もしも、固定資産税を支払うだけのお荷物になっている空き家を、民泊に活用できるのであれば、地方へ足を延ばす観光客の増加に寄与し、彼らの目を通して魅力的に映る観光資源が各地で次々と掘り起こされるという期待も生じる。

 羽田や成田に降り立って来日した外国人たちに、「東京だけ見て帰ってはもったいない」と思わせるに足りる観光地が日本各地にある。
 つまり、地方の観光を盛り上げるのに、民泊事業はひとつの鍵を握っているのではないか。
 LCC(格安航空会社)や高速バスなどとも連携できる。

 欧米を中心に「自然を克服する文明」を背景に持つ人々にとって、
 日本のような「自然と共存する文明」は、きっと新鮮に映るだろう。
 富士山が世界自然遺産でなく世界文化遺産として登録されていることも象徴的だ。
 むしろ、日本という唯一無二の文化圏の個性は、日本人よりも外国人のほうが気づきやすいに違いない。
 素朴な民泊ホストが、日本家屋で温かく出迎えて、日本人と外国人がお互いに敬意を持って交流し合い、民泊と旅館業が共存共栄していく未来は、きっと21世紀にふさわしい美しさを放つはずだ。

[筆者]
長嶺超輝(ながみね・まさき)
ライター。法律や裁判などについてわかりやすく書くことを得意とする。1975年、長崎生まれ。3歳から熊本で育つ。九州大学法学部卒業後、弁護士を目指すも、司法試験に7年連続で不合格を喫した。2007年に刊行し、30万部超のベストセラーとなった『裁判官の爆笑お言葉集』(幻冬舎新書)の他、著書11冊。最新刊に『東京ガールズ選挙(エレクション)――こじらせ系女子高生が生徒会長を目指したら』(ユーキャン・自由国民社)。ブログ「Theみねラル!」



人民網日本語版配信日時:2017年6月23日(金) 23時0分
http://www.recordchina.co.jp/b182162-s10-c20.html

日本が「民泊」解禁
ホテル不足緩和へ、カギは信頼感―中国紙

 ラグビーワールドカップ2019年と2020年夏季オリンピックという2大イベントの開催を控え、日本政府はこのほど住宅の空き部屋に旅行者を有料で宿泊させる民泊を規範化する「住宅宿泊事業法案」(民泊新法案)を正式に可決した。
 これは数多くの民泊プラットフォームを事実上「解禁」するもので、民泊が合法化されたことになる。
 日本政策投資銀行の試算では、2020年までに日本を訪れる外国人観光客は4000万人に達する。
 ホテルなどの宿泊施設が深刻な供給不足にある中、民泊が危機状態を緩和する重要なパワーになる可能性がある。人民日報が伝えた。

 2年前、調査会社ニールセンが60カ国のネットユーザー30万人以上を対象に調査を行ったところ、アジア・太平洋諸国の回答者の78%がシェアリングエコノミーに強い意欲を示した。
 実際、過去12カ月間に、観光客で管理のグレーゾーンにある民泊サイト・エアビーアンドビーを通じて日本での宿泊先を予約した人はのべ500万人に上った。
 日本メディアの予想では、今回の法案可決は性急な感があるのは否めないが、法律の保護と指導があれば、民泊への信頼感が向上し、民泊事業はこれからより大きな発展を迎えるという。

 米経済誌「フォーブス」の指摘によると、「シェアリングエコノミー(共有経済)の未来は信頼感がカギになり、信頼感はこの急成長する経済モデルの潤滑油だ。
 今の人気ぶりに比べ、シェアリングエコノミーが登場したばかりの頃は評価する人は少なかった」という。
 米誌「ニューヨークマガジン」は、
 「シェアリングエコノミーの成功は別の選択肢がないから、実体経済がずっと低迷しているからといった理由が大きく、人々はお金を節約し稼ぐためにシェアリングエコノミーの行列に加わる。
 これは信頼感とは関係ない」
との見方を示す。
 米国の作家の故E.L.ドクトロウ氏はかつてシェアリングエコノミーの隆盛を、
 「インターネットの信頼システムの偉大さによるものではなく、多くの人が詐欺師でないことによるもの」
と皮肉った。

 だが人類の自覚と物品のコストパフォーマンスだけでシェアリングエコノミーの成功拡大を説明することはできない。
 実際、配車サービスのウーバーを通じて見知らぬ人の車に乗るようになり、エアビーアンドビーで初対面の人の家に泊まるようになると、かつてのような情報不足による他人への恐れといった感覚が目立って薄れていった。
 「人々がリスクを引き受けるつもりで新しい事を試そうとしたり古いやり方を変えようとしたりする」時、「信頼感の飛躍」が起こり、ネット通販からシェアリングエコノミーまで、人々は信頼感の「ホップ・ステップ・ジャンプ」を達成することになる。

 英国生まれの作家レイチェル・ボッツマン氏は著作「シェア−<共有>からビジネスを生み出す新戦略」の中で、
 「人類社会の信頼感の発展は3つの段階を経ている。
 小さい範囲での信頼感、
 機関に対する信頼感、
 今起きている分布式の信頼感だ」
と記した。
 わかりやすくいうと、原始社会の集落やその後に生まれた村落では、人々が相互に抱く信頼感は小さい範囲のもので、よく知った人同士がこれまでの交流経験から相手を信頼できるかどうかを判断していた。
 都市化が一層発展すると、人々はお金を大手銀行に預け入れ、大規模チェーン店で買い物し、権威あるメディアが発行する新聞を買うようになり、いずれも評判が高くこれまでに問題がなかった機関を信頼する行為といえる。
 インターネット時代の訪れにより、信頼感は上から下に向かうものではなくなり、不透明で一時的なものではなくなった。
 「脱中間」と「双方向性」が、信用を基礎として発展を続ける信頼感モデルの目立った特徴となっている。

 実際、多くの通販プラットフォームとシェアリングエコノミープラットフォームがこうした役割を果たしており、売買双方のために信用システムを構築し、見知らぬ人同士で取引や共有ができるようにする必要に迫られている。
 ウーバーのGPSを利用した追跡やクレジットカードの関連づけから、エアビーアンドビーの身元確認やソーシャルメディアアカウントとの関連づけなど一連の利用者データの追跡まで、信用システムは強化を続け、人々の信頼感のレベルもこれにともなって実際に上昇している。
 また仮想通貨ビットコインのブロックチェーンモデルの模索や導入、第三者信用プラットフォームの誕生発展、インターネットのセキュリティのさらなる向上に対し、各国は関連の法律による保障措置を相次いで打ち出し、社会信用システムと全体的な信頼度の向上を大きく促進する役割を果たしている。

 シェアリングエコノミーはまだ生まれたばかりで、優れたところが目立つと同時に欠点もはっきりしており、よいところを伸ばし、悪いところを補えば、社会全体に真の利益をもたらすことになる。

(提供/人民網日本語版・編集KS)
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