2017年6月2日金曜日

「日本版GPS みちびき」18年本格運用:スポーツでは

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● みちびき


Record china配信日時:2017年6月3日(土) 6時30分
http://www.recordchina.co.jp/b179985-s0-c20.html

日本版GPSの打ち上げ成功で世界は恐怖に陥る?―中国メディア

  2017年6月2日、中国メディアの中金網は日本が日本版GPS衛星「みちびき」2号機の打ち上げに成功したことを伝え、世界にとって恐怖になるとする記事を掲載した。

 記事は、6月1日午前9時17分に、三菱重工業と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が種子島宇宙センターから、日本版GPS(全地球測位システム)を目指す準天頂衛星「みちびき」2号機を搭載したH2Aロケット34号機を発射したと紹介。
 打ち上げから約28分後に衛星を分離し、所定の軌道へ投入して打ち上げは成功したと伝えた。

 記事によると、日本は2017年中にさらに2基の準天頂衛星を打ち上げ、2018年の春には誤差6センチメートルの位置情報体制にするという。
 自動運転等の民間サービスのほか、安全保障の分野で応用される。

 この「みちびき」は日本のほぼ真上にいる時間が長い軌道を飛ぶため、建築物や山間部などでも電波を遮られることがないという。
 これまでスマートフォンなどで使用されていたGPSでは、建築物や山のために電波が遮られ、都市部や山間部では誤差が10メートルもあったが、みちびきとGPS、地上設備を同時に使用することで、誤差を6センチまで縮めることができると紹介した。

 日本政府は、2023年までには「みちびき」を7基体制にする計画で、7基になると、米国のGPSに頼らず、日本の衛星だけで位置情報を取得できるようになる。 

 しかし記事は、米国のGPSはもともと軍事用途であったと指摘。
 安全保障の分野において位置情報はますます重要になっており、日常生活においても位置情報は欠かせないものになっている現状の中、『軍国主義』の安倍首相が、この技術を軍事分野で使用するなら、その結果は大変なことになるとアナリストが分析していることを伝えた。



サーチナニュース 2017-06-05 13:12
http://news.searchina.net/id/1637069?page=1

日本版GPSは「わが国の北斗をしのぐ精度」、
軍用レベルに相当する!=中国報道

 日本の準天頂衛星「みちびき2号機」が1日、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられた
  中国メディアの捜狐は3日、この日本版GPSとも呼ばれる測位システムについて伝え、「日本は中国の北斗の精度を超える気だ」とする記事を掲載した。

 現在、世界には4種類の衛星測位システムがある。
1].米国の全地球測位システム(GPS)、
2].ロシアのグロナス、
3].ヨーロッパのガリレオ、そして、
4].中国の北斗
だ。
 記事は、日本がみちびき2号機を打ち上げるに至ったいきさつを簡単に説明した。

 これまで、地上の位置情報にはみちびき1号機と米国のGPS衛星が利用されてきたが、山間部や高層ビルで電波がさえぎられると、数メートルもの誤差も生じたため、日本は何としても日本版GPSを作る決意を固めたとした。

 報道によると、三菱電機とNEC、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が精度の高い新たな位置測定技術を共同開発した。
 現在のGPSと比べ位置の測定誤差を1000分の1の1センチ程度にできるという。
 記事は、これが本当なら「中国の北斗をしのぐ精度だ」と驚きを示した。

 また、軍事専門家による話として、さらに複数のみちびきが打ち上げられれば、日本版GPSは24時間ずっと日本をカバーできると指摘したほか、
★.測位システムの精度が「センチ単位」ということになれば、それは軍用レベルに相当
すると主張、
★.ミサイル誘導のために正確な位置情報を送ることもできることを意味している
と危機感も示したという。

 日本政府は、2017年度中に3号機、4号機も打ち上げ、18年からサービスを開始させたいとしている。
 今後は位置情報の精度向上が期待できそうだ。


日本経済新聞 2017/6/2 6:30
http://www.nikkei.com/article/DGXMZO17056810Q7A530C1000000/

「日本版GPS」18年本格運用、
スポーツ活用に新機軸 

 2017年6月1日、宇宙航空研究開発機構(JAXA)と三菱重工業は、準天頂衛星システム(QZSS)「みちびき」2号機を載せたH2Aロケット34号機の打ち上げに成功した。
 みちびきは、人工衛星からの測位信号(電波)を使って位置情報を算出するGNSS(測位衛星システム)の1つ。
 GNSSでは米国のGPS(全地球測位システム)が最もよく利用されており、代名詞的な存在になっている。

 みちびきは「日本版GPS」とも呼ばれる。
 初号機は約7年前の2010年9月11日に打ち上げられた。
 JAXAは今回の2号機を含め、2017年内に合計3機を打ち上げ、2018年度から4機体制で本格運用を開始する。
 これには、位置情報を利用する各産業から大きな期待が寄せられている。
 スポーツ界も例外ではない。

 既にスポーツ分野では、ランニング愛好家がスマートフォン(スマホ)やGPSを内蔵した時計を使って走行データを記録していたり、サッカーやラグビーなどでGPSデバイスを用いた選手のコンディション管理を行ったりしている。
 みちびきの本格運用は、スポーツ界でGNSSを使った新たなソリューションを生み、活用を幅を広げると期待されている。

■24時間、天頂付近に見える

 みちびきが2018年度から4機体制で本格運用されるインパクトを端的に言えば、これまでのGPSのみを使う測位に比べ、「国内ではどこでも、いつでもより精度が高い測位が可能になる」ことだ。
★.GPSの測位誤差は理論上1m以下とされているが、
 実際には「一般に10m程度、悪い場合は数十m」と言われる。


●陸上トラックでの選手の走行軌跡を、GPSとマルチGNSS(GPS、みちびき、Beidou)での計測で比較した図。軌跡に大きな差が見られる。GPSの場合は、グラウンドの周囲に信号を反射する建物などがあるため、ノイズが入って誤差が出ていると推測される。対して、みちびきがあるとノイズが入りにくくなること、さらにGPS以外の測位衛星の信号も取得しており反射波ではない信号を受信しやすくなるので精度が良くなっている(図:慶應義塾大学 神武直彦研究室)

 GNSSでは、人工衛星が発する電波を受信してそこまでの距離を計算
 測位には原理上、最低で4機、安定した計測には8機以上の人工衛星を捉える必要があるとされている。
 ところが、現状、31機体制のGPSは地球全体に配置されているため、
 利用できる(受信機から見通せる)人工衛星はどの地点でもおおむね6機程度という。

●マルチパスによって生じる誤差のイメージ。天頂付近のみちびきからは、かなり正確な距離情報が得られる(図:アシックス)

 ビルが多い都市部や山の陰ができる山間部ではさらに条件が厳しくなる。
 そもそも電波が届かず測定できなかったり、ビルや山などの“障害物”に電波が反射して誤差が生じる「マルチパス」という問題が起こる。
 反射した電波は受信機に到達するまでの時間に遅れを生じるため、その分距離が「遠い」と計測されて誤差の要因となるのだ。

 「準天頂軌道」という、日本、そしてインドネシアやオーストラリアの上空を八の字を描いて飛行する「みちびき」は、こうしたGPSの課題を改善する。

 みちびきはGPSとほぼ同様の信号(補完信号)を送信するため、GPSと一体で利用できる。
 現在の1機体制では日本の天頂付近に8時間しかいないが、2018年度には24時間見えるようになる。
 つまり、都市部や山間部であってもたいていの場所で、天頂付近から正確な電波を受信できる。
 マルチパスの誤差を回避できるのだ。

 さらに、日本付近からは仰角20度以上に16時間とどまるため、4機体制であればおおむね3機を測位に利用できる。
 GPSを6機使える場合、合計して9機体制となり、測位の安定性が増す。

■「マルチGNSS」がトレンドに

 国内ではみちびきの本格運用が大きなトピックだが、近年、世界各国もGNSSの運用を強化している。
 ロシアの「GLONASS」、
 欧州の「Galileo」、
 中国の「BeiDou」
などが運用されており、今後もその数は増える見通しだ。



●2013年11月1日に東京から見えたGNSSの分布(左)と、2020年時点での分布予測(右)。天頂付近に「みちびき」が見える(図:JAXA)

 みちびきを含め、こうした複数のGNSSを同時に活用する「マルチGNSS」は、従来のGPS単独よりも高精度で安定した測位を実現するため、多くの産業界で実用化が進むのは間違いない。

■「コース取り」の違いをコーチング

 では、みちびきを含むマルチGNSSの活用は、スポーツ界にどのようなインパクトをもたらすのか。
 実証実験などから見えてきた“可能性”を紹介しよう。

 期待できる応用には、
(1)マラソンやランニングでの新しいコーチングやトレーニング、
(2)トレイルランなど山岳スポーツの安全性の向上、
(3)試合や練習での選手のトラッキングを通じた戦略構築への活用、
(4)テニスなどで選手ごとのプレースタイルの分析を通じた最適なシューズ選定、
などがある。

 この分野で多くの知見を蓄積しているのが、内閣府の委託事業「スポーツ分野における宇宙関連新産業・新サービス創出に係わる調査」(2017年3月31日終了)を受託していたアシックスだ。
 同社は調査の一貫として、みちびき1号機を使ったスポーツトラッキングの実験を複数行った。

 例えば、2016年11月20日に開催された神戸マラソンでは、スマートウオッチを用いた「リアルタイムコーチング」の実験をした。


●アシックスが2016年11月20日開催の神戸マラソンで行った、スマートウオッチを用いた「リアルタイムコーチング」実験の概要。みちびき対応受信機を背負ったトップレベルのランナーのコース取り情報を、後続の一般ランナーのスマートウオッチに送信(図:アシックス)

 トップレベルのランナーが、みちびきに対応した受信機を背負って走り、後続のランナーに走行軌跡の情報をリアルタイムに送信。
 スマートウオッチを着けた後続の一般ランナーは、「コース取り」を参考にできるというものだ。

 通常のGPSデバイスでは、10m程度の誤差が出るためコース取りのデータを正確に取得できなかった。
 神戸マラソンの時期はみちびきが天頂付近におり、1m程度の誤差でデータを取得できたという。

 レース後に約7.5km地点にある通称「鷹取シケイン」というS字コーナーのコース取りを分析した。
 2時間50分で走ったトップランナーは直線的にコース取りをして速度が一定だった。
 一方、5時間30分台のランナーは、カーブの内側に入る意識が強すぎて減速していた。
 シケインでの走行距離もトップランナーが1.2m短いことも分かった。

 「トレイルランでの安全性向上に威力を発揮するかもしれない」。
 アシックスで測位技術のスポーツ活用などについて研究している、同社スポーツ工学研究所IoT担当マネジャーの坂本賢志氏は、トレイルランでの活用に期待を寄せる。
 山の中のコースを駆け抜けるトレイルランは危険なスポーツで、ケガをする選手も多い。
 例えば、レース本番の前日に試走しても、その後、雨が降ると水たまりができ、それをレース中によけられなくてケガをすることもある。
 神戸マラソンの実験と同様、みちびき対応の受信機を着けたトップランナーが、コース取りを後続の一般ランナーに知らせるという使い方は“十分あり”と踏んでいる。

■「ケガの予防」だけでなく「戦略分析」も

 ここ数年、サッカーやラグビーなどの競技でGPSデバイスの活用が広がっている。
 GPSを使って選手の動きをトラッキングし、そのデータを蓄積してコンディションを管理したり、ケガのリスクを低減したりするのが目的である。

 この市場をリードしているのがオーストラリアのCatapult(カタパルト)で、同社の一部機種は既にマルチGNSSに対応している(GPSとGLONASSに対応、みちびきは非対応)。

 ただし、現状では大半のデバイスがGPSのみを使っているため、トラッキングデータをもとにした戦略分析などには使えない。
 戦略分析には選手の位置関係の把握が重要になるが、GPSレベルの誤差では不十分なのだ。
 それが、みちびきを含むマルチGNSS対応になれば可能になる、との期待は大きい。

 「スポーツ界では今、データを『取る』ことが主眼になっているが、
 本来はデータを処理し、可視化してコーチが意思決定や戦略分析に使えるようにすることが重要だ。
 マルチGNSSデバイスの普及は、そうした流れを促す」
と、宇宙関連とスポーツ界の事情に詳しい、慶應義塾大学SDM研究科准教授の神武直彦氏は期待する。

 慶應義塾体育会蹴球部(ラグビー部)では同氏の研究室のサポートの下、1万円程度で販売されている市販のマルチGNSSデバイス(スポーツ用ではない)で試合中の選手の走行距離や速度、加速度などのデータを取得。
 プレー速度を上げるために加速度データを活用したり、ディフェンスの状況確認にドローン空撮映像と選手のマルチGNSSのデータを合わせて分析したりしているという。


●慶應義塾体育会蹴球部(ラグビー部)の選手に、試合(右の写真)でマルチGNSSデバイスを装着してもらい、動きをトラッキングした結果(左)。1台数十万円もする高価なスポーツ専用デバイスではなく、1万円程度の市販品を使った。同等の精度を確保したという(図:慶應義塾大学 神武直彦研究室)

 もちろん、スポーツの戦略分析ではカメラの映像から選手の動きをトラッキングするツールなどが使われているが、みちびきを含むマルチGNSS対応デバイスを使えば、映像からのデータ取得よりも精度が高くなる上、価格も安くなると見ている。

■プレースタイルに合ったシューズ選び

 こんな応用提案もある。アシックスの坂本氏によると、テニスなどでプレースタイルに合ったシューズ選びの支援に使える可能性があるという。


●テニスで自分のプレースタイルに合ったシューズを、プレーのトラッキング結果から薦めるという提案。GPSの誤差レベルではプレースタイルの分析はできなかったが、みちびきを使うことで可能になるという(図:アシックス)

 一般にテニスでは、ベースライン付近でプレーする「ベースライナー」と、サーブを打ったら前に出てネットプレーをする「サーブ&ボレーヤー」というプレースタイルがある。
 両者で動きの質がかなり異なるため、アシックスではそれぞれに適したシューズを用意している。

 同社が提案するのは、シューズの購入を検討している選手にマルチGNSSデバイスを装着してプレースタイルを見極め、最適なシューズを薦めるという使い方だ。
 実際にみちびき対応のデバイスで実験したところ、分析が可能なレベルだったという。
 都会にあるテニスコートはビルに囲まれていることも多く、みちびきの本格運用でこうした使い方も可能になると見ている。

 テニスに限らず、ポジションごとに動きの特性が異なる競技では、トラッキングデータの蓄積によって、ポジションごとに最適な用具開発という新たな取り組みも生まれるかもしれない。

■高性能スマホがみちびき対応

 もっとも、マルチGNSSデバイスがスポーツ分野で広く活用されていくためには、現状ではクリアすべき課題もいくつかある。

 まず、小型で低消費電力、そして安価なチップを容易に入手できるようになることだ。
 基本的に測位精度を向上するためには、人工衛星の捕捉数を増やす必要がある。
 ただし、そのために
 「チップのチャンネル数を増やすほど、データの処理時間がかかり、電力消費も高まる。
 つまり、精度と処理時間・消費電力はトレードオフの関係がある」
と神武氏は指摘する。

 加えて、デバイスの設計にも工夫が求められる。
 多くの人工衛星の電波を受信するため、アンテナ設計の難易度が高まる。
 さらに、ラグビーやサッカーなど選手同士がぶつかり合うコンタクトスポーツに応用するには、耐衝撃性や防水性の確保も必要になる。

 しかし、明るい兆しは見えている。
 既に米Appleの「iPhone 7」やAndroid版のハイエンドのスマホには、みちびきに対応したマルチGNSSチップが搭載されている。

 テクノロジーの進化の歴史を振り返ると、量産規模が大きいパソコンやスマホに採用された技術は、短期間に課題が解決され、価格が急速に安くなっていく。
 マルチGNSS対応チップが、量産規模が大きいスマホで搭載が始まっているという事実は、上記のような高精度な測位技術を活用した新たなスポーツ向けソリューションが誕生する予兆とも言えそうだ。

(日経BP社デジタル編集部 内田泰)
[スポーツイノベイターズOnline 2017年5月31日付の記事を再構成]



● 「みちびき」運用



IOT today 2017.06.26  Fumiaki Ogawa (IoT Today)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50336

人工衛星「みちびき」で米国頼みのGPS脱却なるか
衛星測位が「位置情報」を持つものにもたらす福音とは

■GPSはアメリカ頼みのIoTインフラである
 
 昨今、IoTの発展において、位置情報を取得するGPS(全地球測位システム)は重要な役割を果たしている。
 すぐに思い浮かぶのは、自動運転技術だろう。
 自動運転カーはカメラで周辺環境を把握するほか、GPSによって位置情報を取得し運転に活用している。
 GPSは新たなビジネスモデルも生み出している。
 ライドシェアサービスの「Uber」は、GPSによって得られる位置情報を基に乗客と空車をマッチングすることで双方の利便性を高め、急激に普及が進んでいった。

 また、同じくIoTの応用領域として注目されている農業においても、GPSに期待する役割は大きい。
 価格競争を背景とした大量生産需要、さらに農家の後継者不足・高齢化に伴う人手不足など、従来の農業が抱える問題は大きい。
 そうしたなかで、IoTを活用したスマート農業では、GPS搭載のトラクターやドローンを使うことで肥料を効率的に撒いたり、自動運転によって広い農地を耕したりなどが可能となる。
 農業が抱える問題の解決策として、期待されているのだ。

 物流業界や旅行業界などでも活用されるGPSだが、現在のシステムはアメリカによって運用されていることはご存知の方も多いだろう。
 このアメリカの「GPS」のような衛星測位システムは、近年、世界各国で開発・導入が進められている。
 ロシアでは「グロナス」という独自の測位衛星システムの運用を既に開始しており、欧州の「ガリレオ」、中国の「北斗」、インドの「IRNSS」など、各国で整備が進んでいる。
 位置情報関連のビジネス展開が本格化してきているなかで、各国とも独自のシステム整備を急いでいる格好だ。

■日本独自のGPSを求める動きへ

 元々はアメリカが軍事用に打ち上げた人工衛星を民間でも使えるようにしたのが、現在のGPSシステムである。
 そのため、民間で利用が許されているデータにおいては、「10メートル程度以内の精度」となっている。
 また、現在アメリカが運用するGPSは31機あるが、世界中で共有しているため、各地点で一度に利用できるのは6機程度にとどまり、
 安定した測位に必要とされる8機以上という条件を満たすことができない状況にある。
 このため、日本の都市部や山間部では高い建物や山などが障害となり、GPS信号が届かず誤差が生じたり、使えなかったりして、安定したサービスを受けられない状況が生じることがある。
 今後、位置情報の応用領域が広がっていくにあたって、より安定したサービス提供が望まれる。
 そのとき、アメリカに頼った現状のシステムでは限界を超えることができない。
 日本の都合で衛星数を増やすなど柔軟な運用はできないからである。

 そこで登場したのが、日本独自の衛星「みちびき」による「衛星測位サービス」の開発計画だ。
「みちびき」はGPSと互換性を持っており、GPSを補完・補強するように働くという。
 GPSのように世界中を回るわけではなく、日本のほぼ真上となる準天頂に位置する時間を長く取れる軌道を飛行させる。
 これによって、GPSの信号が届きにくい場所にもデータを届けやすくなる。
 この「みちびき」による測位サービスの誤差は、少なくとも1メートル程度に、さらには国土地理院が設置している電子基準点などと併せることで、数〜数十センチにまで縮めるという。
 なお、1基あたりが日本上空をカバーできるのは8時間となるため、24時間サービスを提供し続けるためには最低でも3基は必要になる計算だ。
 2011年9月の閣議において「4機体制を整備し、7機体制を目指す」ことが決定。
 また、2013年1月の「宇宙基本計画」においても重要な政策と位置付けられた。
 アメリカのGPS衛星と併せて、常に安定測位が可能な機数を確保することを目指す。

 「みちびき」は2010年の初号機に続き、2017年6月に2号機が打ち上げられ、衛星軌道へ投入。
 今後、2018年3月までに3、4号機を打ち上げ4基体制とし、2018年4月から測位データの提供を開始する予定だという。
 内閣府によれば、この日本独自の衛星測位システムの導入により、2020年時点で年間2兆円以上の市場を創出できると見ているという。
 また、国内需要だけでなく、経度が近く日本と同じくGPSを利用している東アジアやオセアニアなど諸外国へのサービス提供も視野に入れているようだ。

■「みちびき」の導入で我々の生活はどう変わるのか

 では、「みちびき」による高精度な位置情報システムは、我々の生活にどのような変化を与えてくれるのか。
 まず、自動運転の精度向上が見込める。
 これまで誤差の影響で捉えられなかった車線レベルの位置把握も実現するため、詳細な制御が可能となり、より高レベルな自動運転を実現できるだろう。
 もちろん、タクシーやバスなど公共輸送車両の配車や運行管理にも効果が発揮される。

 物流におけるセキュリティの向上にも寄与する。
 現在でも重要性の高い荷物にはGPSタグを使うことがあるが、高精度な位置情報システムを利用することでより詳細な位置を把握でき、万が一のトラブルの際にも追跡が容易になる。

 また、歩行者ナビゲーションへの応用も考えられる。
 例えば、音声ガイダンス付きの歩行ナビアプリをスマートフォンに搭載しておくことで、視覚が不自由な人にも目的地が見つけやすくなるし、より安全なルートを案内することも可能となる。

 あるいは、災害時の安否確認サービスや無人ドローンによる災害救助支援など、より高い精度を求められる現場への導入も進むのではないだろうか。

 すでに民生品でも対応は進んできており、内閣府の「みちびき(準天頂衛星システム:QZSS)公式サイト」では、対応製品のリストを掲載している。
 スマートフォンであるiPhone 7のほか、カー用品やデジカメや時計など様々なジャンルの製品が対応していることがわかる。
 ようやく手に入る、日本独自の高精度位置データの活用から新たなサービスや製品が誕生するのを期待したい。




●2017.6.15 準天頂衛星みちびき3号機 報道公開
Published on Jun 17, 2017






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