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JB Press 2017.6.16(金) 部谷 直亮
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50274
米軍準機関紙が断言「米軍は北朝鮮を攻撃しない」
ソウルにおけるメガシティ戦闘で泥沼化の恐れ
今年の春、米軍の北朝鮮への先制攻撃の可能性を報じたメディアやジャーナリストは今やすっかり口を閉ざしてしまった。
中にはいまだにそうした見解を述べる論者も散見されるが、現実的にはその可能性はきわめて薄い。
5月21日、米軍の準機関紙「military times」は、北朝鮮への先制攻撃はリスクが高く、トランプ政権は攻撃を考えていないとする記事を掲載した。記事の概要は以下のとおりである。
* * *
トランプ政権は、北朝鮮への軍事的選択肢はないと考えている。
確かに北朝鮮の現政権によるミサイル実験は頻繁さを増し、金正恩は米西海岸への核攻撃能力獲得に近づいている。
だが、米国の軍高官は、先制攻撃が大惨事を招き、最悪の場合、10万人の民間人を含む大量の死者を生み出すと懸念している。
まず、国境地帯の花崗岩の山岳地帯に秘匿された北朝鮮の砲兵部隊は、砲撃から数分で山中に秘匿できる。
また、韓国のソウルは非武装地帯から約56キロメートルにある人口2500万人の大都市である。
シンクタンクの分析では、170ミリ自走砲、240ミリおよび300ミリの多連装ロケットシステムがソウルを攻撃できる。
特に300ミリロケットがソウルに向けられた場合、都市火災が発生する。
数百万人の民間人がソウルから南下して鉄道・航空・道路における大混乱をもたらし、大規模な人道危機を引き起こす。
元航空戦闘軍団司令官のハーバート・カーライル元空軍大将は、
「米韓連合軍が北朝鮮を倒すのは間違いないが、
韓国の民間人犠牲者を減らすのに十分な迅速さで北朝鮮軍を機能停止に追い込めるかが最大の問題だ」
と警鐘を鳴らす。
専門家たちも、ひとたび通常戦争が始まれば戦いは数カ月以上続くとみている
米軍が特に懸念しているのが、ソウルの一角に北朝鮮軍が侵入する事態である。
北朝鮮軍は非武装地帯に多数掘削した秘密トンネルから1時間に2万人を侵入させることができる。
これは「恐るべきメガシティ戦闘」を引き起こす可能性がある。
カーライル元空軍大将は
「ソウルのどこかに北朝鮮軍が侵入すれば、航空戦力の優位性は相対化される。
メガシティ戦闘では航空戦力は極めて限定的な役割しか発揮できない」
と指摘する。
米海兵隊の活動も困難である。
第1の理由は、海兵隊は朝鮮戦争以来、大規模な強襲揚陸作戦を行っていないこと。
第2は、現在西太平洋に展開中の5~6隻の水陸両用艦艇では、上陸作戦に必要な1~1.7万人の戦力を運べないこと。
第3は、北朝鮮の沿岸防衛能力は1950年とは比較にならないほど向上し、何百マイル先の艦艇や舟艇を破壊できることだ。
しかも、開戦となれば、米軍の地上基地が打撃を受ける可能性があるため、利用可能なすべての米空母がこの地域に吸引されることになる。
陸空軍なども同様で、全世界における米軍の即応能力を低下させるリスクがある。
また、ヘリテージ財団研究員のトム・スポウラー元陸軍中将は
「戦争が始まると米陸軍は旅団戦闘団を新たに編成しなければならない。
だが、イラクにおける経験で言えば2年間は必要だ」
と指摘する。
* * *
■考えれば考えるほどリスクが高い先制攻撃
以上の記事から分かるのは、元軍人たちは我々が考える以上にリスクを重く見ているということだ。
元米軍人たちの指摘は、
(1):海兵隊の脆弱性に伴う上陸作戦の困難性、
(2):頑丈な花崗岩と複雑な地形を利用した砲兵陣地の強靭さと威力、
(3):メガシティ戦闘、
(4):戦力の枯渇、
に集約できる。
海兵隊の脆弱性は言うまでもないが、(2)(3)(4)については改めて説明が必要だろう。
まず(2)についてだが、地形・地質の有効な活用は沖縄戦における日本軍の粘り強さを振り返れば、その効果がよく分かる。
沖縄戦闘時の日本軍は、沖縄の硬い珊瑚岩と起伏の激しい地形を利用して砲兵陣地(いわゆる反斜面陣地)を形成して、航空・火砲の圧倒的な劣勢下でも米軍を苦しめた。
(3)の「メガシティ戦闘」は、2014年頃から米陸軍が強調している概念である。
米陸軍は、2030年には全世界人口の6割がメガシティ(人口1000万以上の大都市圏で、世界に27か所存在)に居住する時代になるとして、メガシティ戦闘に必要な将来の米陸軍の戦力構成やドクトリンの検討を続けている。
米陸軍は、メガシティでは民間人への配慮や戦力の分散が余儀なくされるため、作戦が極めて複雑になる他、敵戦力が建物や住民に紛れ込むことで航空戦力が活用できず、相手の情報も手に入らないため、大苦戦が予想されるとしている。
イラク戦争時のファルージャ攻防戦や近年のイスラム国との各都市における死闘を思えば、元軍人たちがソウルに北朝鮮軍の部隊が侵入すればやっかいなことになると考えるのも当然だろう。
(4)については、要するに北朝鮮問題以外にも米国の抱える脅威はたくさんあるということだ。
米国は既にイスラム国との戦い、アフガンでの戦い、テロとの戦い、サウジアラビアとイランの覇権争いに巻き込まれている。
米国としては、すでに炎上しているそちらの「戦線」にこそ、まず戦力を割く必要がある。
特にイスラム国打倒はトランプ政権の主要公約であり、これを成し遂げねば北朝鮮どころではない。
実際、トランプ政権のシリアへの肩入れはさらに深まっている。
6月13日、米軍はついに「南シリア」に初めて長距離砲兵部隊を展開させた。
しかも、国防総省のスポークスマンたるライアン・ディロン大佐は、記者たちに対して「これは親アサド勢力の脅威に備えるためである。今後もそのために米軍の現地におけるプレゼンスを拡大していく」と述べた。
親アサド勢力とは、イランが支援する武装勢力のことであり、これは単にシリアへの深入りだけではなく、イランの代理勢力と米軍の戦闘すら秒読みに入ったことを意味する。
要するに、米イラン関係の悪化の第一歩になりかねないということだ。
このように、考えれば考えるほど、北朝鮮への先制攻撃は軍事的リスクが高く、それは外交的・政治的リスクに直結しているのである。
もちろん、政治的に「詰み」に近づきつつあるトランプ大統領が北朝鮮攻撃を決断するといった可能性もあるが、その場合でも、現時点では中東でさらなる軍事行動の方がはるかに安易かつ安全なのは言うまでもない。
やはり、北朝鮮への先制攻撃の可能性は「現時点」では低いだろう。
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フジテレビ系(FNN) 6/23(金) 19:35配信
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日米開発の迎撃ミサイル 試験失敗
日米の弾道ミサイル迎撃試験が失敗した。
アメリカのミサイル防衛局によると、日本とアメリカは21日、共同開発している海上配備型迎撃ミサイル「SM-3ブロック2A」による迎撃試験をハワイ沖で行ったが、失敗した。
試験は、イージス艦からミサイルを発射し、上空を飛ぶ標的を撃ち落とすというもので、2017年2月に行った試験では成功していた。
一方、北朝鮮は21日、弾道ミサイルのエンジン燃焼実験を行った。
アメリカのメディアが22日に伝えたもので、このエンジンの技術は、将来、ICBM(大陸間弾道ミサイル)に使われる可能性があるという。
北朝鮮は、2017年3月にも高出力ロケットエンジンの燃焼実験を行っていて、アメリカなどが警戒を強めている。
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