2017年6月6日火曜日

中国 株式・不動産バブル:日本との近似点「バブルというものは、長い繁栄期の甘美な終末」

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  Financial Times 2017.6.6(火)(英フィナンシャル・タイムズ紙 2017年5月29日付)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50198

日本の株式・不動産バブル崩壊と同じ運命をたどる恐れ

 中国共産党が関心を持ったテーマのうち、
 「ソビエト共産党がたどった運命を回避する方法」
ほど詳細に研究されたものはほとんどない。
 習近平国家主席は2012年に実権を握った後、党内部の会議において、ソビエト連邦にはミハイル・ゴルバチョフとグラスノスチ(情報公開)に立ち向かえるだけの「男らしさを備えた」人間が1人もいなかったと述べた。

 しかし、習氏にとっては、同じ時代に起こった別の歴史的出来事の方が当面は気になるかもしれない。
 それは、30年ほど前に日本で膨らみ始めた後、日本国民の自信を喪失させ、企業を萎縮させ、何十年も残る傷を経済にもたらした不動産・株式市場のバブルのことだ。
 中国では今、この展開を避けることが何よりも重視されている。

 中国政府にとって、バブルは新しい懸念材料ではない。
 事情をよく知る2人の中国人研究者によれば、中国の総債務残高が国内総生産(GDP)比で200%に達しつつあった2010年に、国家副主席だった習氏は中国共産党中央党校の学者たちにこの問題を研究するよう要請した。

 その後まとめられた報告書には、日本のバブルから得られる教訓の概要がいくつか列挙されていた。
 中国政府は金融リスクに対する意識を高め、「経済的主権」を維持し、為替政策の変更を求める圧力に屈しないようにする必要がある、などと説かれていたという。

 それから7年。
 中国の総債務残高はGDP比250%に達し、なお増え続けている。
 政府当局は、天井知らずの不動産価格を抑制しようとする一方で、2015年に破裂した株式バブルの余震にも対応している。
 習氏は4月、中国の指導者たちに、「金融の安全性を維持する」ことが必要だと警鐘を鳴らした。

 だが、中国が日本化するリスクは果たしてどれほどあるのだろうか。
 2017年の世界第2位の経済大国である中国は、1989年の世界第2位の経済大国と同じ道――日本式の「失われた二十数年」――をたどるリスクを冒しているのだろうか。

 もし万一、日本のたどった運命が中国でも繰り返されることになれば、世界経済には甚大な影響が及ぶだろう。
 中国は今日、世界全体の経済成長の40%をたたき出している。
 また、米国の輸出品の20%超を購入している(この数字は1980年代半ばの日本のそれと同じだ)。
 ゴールドマン・サックスの馬場直彦氏をはじめとするアナリストによれば、日本のバブルの経験から中国政府が学べる教訓はいくつかある。
 両国の間には、企業債務の水準からホワイトカラーの平均通勤時間まで、不気味なほど似ているデータがあるそうだ。

 一方、資産運用会社マシューズ・アジアのアンディ・ロスマン投資ストラテジストのように、類似点よりも相違点の方がはるかに多いと主張する向きもある。
 ロスマン氏に言わせれば、
 両国の比較がもたらす真の価値は「人々を落ち着かせる効果があること」だけだ

 手短に言うなら――そしてこれは、数十億ドルを投じている外国人投資家と中国国民14億人の双方に好まれることが多い話だが――今回は違うと決めてかかるよりも、
 バブルのリスクを真剣に取っていく方が得るものは大きい。
 中国はすでに、虚飾に満ちた1980年代後半の日本を思い起こさせる節目をいろいろ通過している。

 例えば、非金融企業の債務残高のGDP比が約155%というよく似た水準に達しているのはテクニカルな話だ。
 また、ややふまじめな話になるが、日本では1987年に安田火災海上保険*1がゴッホの名画「ひまわり」を4000万ドルで購入し、中国では2015年に億万長者の劉益謙(リュウ・イーチュエン)氏がモディリアーニの絵画を1億7000万ドルで購入している。

*1=損害保険ジャパンの前身

■よく似たパターン

 バブル的な経済行動の比較ならいつでも簡単にできるように思えた、という人は多い。
 日本も中国も、同じように膨れあがってから破裂する株価チャートを描き、急激にしぼみがちな資産インフレが生じていることを示してきた。

 外国の資産にも気前よく大金を支払ってきた。
 三菱地所は1989年に、ニューヨークの名所であるロックフェラー・センターの持ち分51%を9億ドルで購入し、中国の中渝置地(CCランド)は今年、ロンドンの「チーズグレーター(チーズのおろし金)」というあだ名を持つ高層ビルに11億5000万ポンドという大金を支払った。
 後者のロンドンの取引は、中国の企業グループが外国で行っている記録的な額の買い物の目立つ一例にすぎない。
 アナリストが特に興味を示しているのは、両国のいわゆる「財テク」が似通っていることだ。
 バブル期の日本では、非金融企業が営業外利益を押し上げるために金融工学のテクニックを用い、投機的な投資をあおる結果になったが、今日の中国にもそれに相当する「理財商品」や「信託商品」が存在する。

 一風変わった資産にもその影響が及ぶことこそ真のバブルのしるしだと言うのであれば、プーアール茶の最高級品とされる「老班章」の春摘みの茶葉に目を向ければ十分だろう。
 現在の価格は、前年比でほぼ90%高のキロあたり1万5000人民元(2174ドル)。銀地金の4倍の値が付いている計算になる。
 一方、日本では1987年、富のひけらかしと投機資金の流入が相まって、名門ゴルフ場の小金井カントリー倶楽部の会員権が350万ドルに跳ね上がった。

 中国でのバブル発生の兆候(あるいは、相互に関係のあるバブルの混ぜ合わせ)がここ4年間で強まるにつれて、上記のような比較は説得力を増しているように思われる。
 「中国では過去8年間で経済成長率が半分になり、債務残高が2倍になった」
 中国の金融システムの専門家、フレーザー・ハウイー氏はこう指摘する。
 「これは良い相関関係ではない」

■異なるアプローチ

 だが、両国が似ているとは言えない非常に具体的な点もある。
 経済史の研究者に言わせれば、
★.日本のバブル経済の始まりは1985年9月のあの協定、すなわち米ドルの下落にゴーサインを出し、市場が支配権を握る時代に道を開いたプラザ合意に求められる。
 ニューヨークで成立したこの合意を受けて、円相場は3年間で1ドル=240円から同120円に上昇した。

★.対照的に中国は為替レートを注意深く管理しており、投機的な行動もしばしば取り締まっている。
 2015年7月の株価急落を介入で食い止めようとして物議を醸したことからも分かるように、中国政府は相場に介入するための弾薬をかなり多く保有している。
 この状況はまだ変わりそうにない。

 不動産価格暴落からの回復力も大きく異なる。
 1990年代前半の日本で生じた不動産価格の急落は壊滅的だった。
 日本には、その苦境から抜け出す成長エンジンがなかったからだ。
 しかし、今の中国にはそれがあるかもしれない。
 また、投資銀行CLSAの株式ストラテジスト、クリストファー・ウッド氏によれば、トップダウンの計画経済体制を採用している中国は日本が意識的に手を出さなかったこと、すなわち輸出主導の経済モデルから消費主導の経済モデルへの移行を試みている最中だという。

 今日の中国とかつての日本との間には、
★.もう1つ、一党独裁国家ゆえの独特な性質を中国は備えているという大きな違いがある。
 中国企業の債務残高の3分の2は、国有企業が国有銀行に対して負っているものだ
 投資銀行マッコーリーのアナリスト、ラリー・フー、ジェリー・ペン両氏が昨年指摘したように、
 「中国の債務は、政府系の企業が別の政府系の企業に負っているものが圧倒的に多い。
 従って、政府はシステムの内部で債務を再編できるため、この文脈では普通の信用分析は役に立たない」。

 しかし、中国の債務残高は日本をはるかに上回る速度で増加している。
 英キングストン大学のスティーブ・キーン教授の集計によれば、日本では民間部門の対GDP債務残高が1970年の125%から1995年の220%超に増えていた。
 ほぼ2倍になるのに四半世紀かかったことになる。
 ところが中国では、民間の対GDP債務残高が過去9年間で115%から210%超へと急上昇している。

 「中国といえども、経済学のあらゆる法則から逃れられるわけではない。
 ただ、この国には独特な点が多い」。
 米コーネル大学に籍を置く中国金融の専門家、エスワー・プラサド氏はこう語る。

■北京の眠れぬ夜

 だが、中国の政府関係者を不安にさせるのは、朝鮮ニンジンから銅に至るまで、あらゆる種類の資産がバブルめいて見え始めるときだ。
 中国の継続的な成長によって市場に引き寄せられた投資家についても同じことが言える。
 投資家は絶えず、日本と似たような危険信号に目を光らせている。
 特に、1980年代後半の日本の不動産・株式投機が
 あれだけはっきりと日本の高度成長期の終わりを告げた
からだ。

 富士通総研のマルティン・シュルツ上席主任研究員は、日本のバブルはひどい終わり方をしただけではなく、四半世紀経った今もなお目に見え、「経済の一体性を保つ」ために維持されている財政赤字という形で姿を現す傷跡を残したと言う。

 バブル後の日本の金融危機の後始末――企業の破綻と大量解雇を引き起こすことへの頑なな抵抗のために2000年代半ばまで先送りされた――は、自国の銀行システムで似たような危機が生じた場合、中国がやってはならないことを示す高度な教訓となる。

 クレディ・スイス証券のチーフエコノミスト、白川浩道氏は、中国のバブル後の余波に対する当局の対応は、究極的に、バブルが膨らんでいるか否かより重要だと話している。
 中国が日本から学ぶことが最も多いのは、ここだ。
 「バブル後の最大の課題は、銀行に対する信頼を取り戻すことだ。
 銀行を数行退場させないと、うまくいかない」
と白川氏は言う。
 心理的なレベルでは、1985年から1989年にかけて株式市場の価値が3倍になるのを見た日本の経験は、近年の中国のそれと一致する。
 資産価値の上昇は、次第に深まる国家的興隆の感覚の回りに形成されているのだ。

 「バブルというものは、長い繁栄期の甘美な終末だ」
 ファンドマネジャーで日本の経済史に関する著作があるピーター・タスカ氏はこう語る。
 「最初は分別のある楽観論から始まり、限界はないという感覚に姿を変えていく・・・あらゆる階級の投資家が参加したがる。
 人々は自分の国について高揚感を抱くようになる。
 そして日本の場合は完全なバブルで、株式と不動産が同時に高騰した。
 強い高揚感は、経済、金融だけでなく、社会、政治にもからむものだった」

 白川氏は、中国でも日本でも、人々の抱く自信は当初は破滅的に思えた脅威を克服したことから来ていたと言う。
★.日本の場合は1980年代前半の価格上昇の「オイルショック」、
 中国の場合は2008年の世界金融危機の悪影響
がそれだ。

 「だが、相違点もある。
 日本では、プラザ合意(および円高)のおかげで、日銀が長い間、緩和型の金融政策を維持できた。
 銀行は重圧にさらされ、大きなリスクを取った。
 中国では、『我々は国外から莫大な資金のフローを引き寄せており、これは永遠に続く』という考えから自信が生まれた」
と白川氏は言う。

 それにもかかわらず、ある政府顧問の言葉を借りるなら、
 中国政府は金融リスクが「唯一、船を沈めかねないもの」だということを重々認識している。

 中国政府は、日本のように中国の貯蓄と成長を減退させる恐れがある厄介な人口動態についても心配している。
★.両国とも15~54歳の生産年齢人口が減り始め、人口ボーナスの段階を通り越えて
 人口の足かせの段階に入っている。
 日本では、この転換が1990年に起きた。
★.中国では2012年にそれが起き、人口ボーナスの終わりを告げた。

 「中国人が人口動態に目を向けているのは、
 日本が当時知らなかったことを彼らは今知っているからだ
 ――当時は誰も認識していなかった。
 人口動態が変わったときに、どれほど急に成長が止まり得るか、我々は日本から学んだ」
とシュルツ氏は言う。
 日本と中国では、株価バリュエーションは国の人口ボーナスとほぼ同時にピークをつけた。
 ゴールドマンの馬場氏は、これは
 「株式市場はバブルのピークに向けて、後々のボーナス期の好況を過剰に推定する傾向がある」
ことを示唆しているかもしれないと言う。

 日本のバブルの拡大と中国の現状に説得力のある類似点を見いだす人がいることについて言えば、中国は果たして日本が1990年代初めに直面した転換点に近づいているのかどうかに焦点が移っている。
 格付け機関ムーディーズは5月下旬、大きく、なお拡大している債務負担を引き合いに出し、中国の国債格付けを日本と同じ「A1」に引き下げた。

 だが、ムーディーズは一方で、
 中国経済の見通しを引き上げ、中国の潜在成長率は2022年までに5%に鈍化すると予想した。
 これは日本が経験した唐突な暴落と長年の停滞よりはるかにましな結果だ。

 どちらの国でも、バブルのような行動が何百万人の国民の生活に著しい変化をもたらした。
 日本の不動産・株式バブルがピークに近づくにつれ、都市部に暮らす生活費は一般の「サラリーマン」の手に届かない水準に跳ね上がった。

 1989年になると、東京中心部まで通勤に90分かかる場所の75平米のマンションは、ホワイトカラー労働者の平均給与の8.5倍の値段がついていた。
 それから30年経った今、中国は首都でそれ以上に劇的な力学が働いているのを目の当たりにしている。
 北京市内の100平米のマンションの値段は平均で500万人民元。
 地元住民の平均年収の50倍以上に達しているのだ。

 この問題に対する両国政府のアプローチのために、この比較は特に重要だとアナリストらは言う。
 1989年、日経平均が3万8915円の史上最高値をつける2週間前に日銀総裁に就任した際、三重野康氏は不動産価格の上昇と長い通勤時間を強く非難した。
 そうすることで、その後の市場暴落の引き金を引いたと、多くの人は今考えている。

 あるレベルでは、中国は三重野氏の経験を肝に銘じたようで、数千万人の都市部住民を億万長者に変えたバブルをしぼませるのではなく、バブル拡大を「封じ込める」ことについて語っている。
 だが、これは微妙なバランスの上に成り立っているものだ。
 習氏が最近、「家は住むためのもので、投機するものではない」と警鐘を鳴らしたように、この脆弱性に対する中国政府の認識ははっきりしている。

By Leo Lewis in Tokyo, Tom Mitchell and Yuan Yang in Beijing
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Record china配信日時:2017年6月6日(火) 20時40分
http://www.recordchina.co.jp/b180012-s0-c20.html

<コラム>中国の不動産バブルを崩壊させない「暗黙の了解」

 「北京や上海のバブルがもうすぐはじける」
という話を聞き始めてからもう随分、時間が経ちました。
 そこには、
 「そんなに上がり続けるものではない。
 バブルというものは、いつかはじけるものだ」
という考えが前提にありました。 
 ところが中国のバブルは、日本ともアメリカとも違って、なかなか「バブルが弾けた」と言うことになりません。
 何しろ、言われ出してからもう10年近く経っているのにバブルが収まってきているとも言えないし、一部ではさらに高くなっていると言われる変な状況が続いています。 

 今度の北京に隣接する広大な開発事案の雄安特区でも発表後、投資家やお金持ちが殺到し、不動産業者が閉鎖させられるという状況まで過熱しています。
 もし、中国が今後、経済的な危機に陥るとしてもその原因はバブル崩壊ではないのではないか、と感じるぐらいです。 
 以前、ハルビン(黒竜江省)に行った時、長年中国で活躍されている日本人に聞いた話ですが、その方が勤めている中国系の集団幹部がこんな話をしたというのです。 
 「中国では、バブルははじけない。
 何故なら、いい物件のマンションなどの購入の60%近くが政府関係職員(日本で言うところの市町村を含む自治体員関係者)である」。 

 月4000〜6000元の給料の若い市政府職員でもマンションを2〜3つ保有しているケースがある。
 1軒当たり100万元(約1600万円)を超すマンション2〜3軒のローン返済を公務員の給料だけで払えるわけがない。
 ではなぜ購入するのか、支払いできるのか!? 
 ほとんどの場合、開発計画時点でマンション開発業者や不動産関係者からの何らかの方法での優遇措置があり、場合によっては直接的な賄賂で許可されたりしてきたのである。 

 購入資金がなくても一番景観がいい部屋やマンション群の中で一番価値や人気がありそうな部屋を確保しておき、いろんな理由をつけて政府関係者向けに安く譲渡する。
 さらに銀行の方にも渡りをつけて融資を斡旋する。
 その見返りとして開発の認可に関する便宜を図ってもらう。
 便宜を図ってもらわなければマンション開発をすることが不可能に近い。
 銀行の融資で購入したマンションが銀行の担保以上に値上がりすると、値上がりした価値を担保に別のマンションを購入。
 それを繰り返して人が住まず家賃収入がなくても何軒もマンションを買えるのだ。 

 中国においては、まだまだ、法律制度が不備なうえに日本で言うところの条例レベル以下の慣習しか存在していない場合も多い。
 そこにおいて立ち退き交渉から電気、水道に関する細かい部分までそれぞれの担当が便宜を図ることによって不動産開発が可能になるという現実がある以上、俗に言う法治国家ではなく、人治国家であるというのは、言われても仕方のないことだ。
 それらの法制度やルール、慣習が改まる時期が来るのがいつになるかも分からない。
 改まったとしてもそれまでの既得権は消えない。 

 「みんなで渡れば怖くない」式で発展してきた中国において手に入れた既得権を手放すはずがない。
 うまく手に入れたマンションの価値を下げるような行為を推進する中国人は、1人としていない。
 権利の主張はするけど、自分のことは棚に上げるのも当たり前。
 よってもし、バブルがはじけるような状況になりそうなら、彼ら個人個人が暗黙の了解のもとで抵抗どころか、あらゆる手を使って価値が下がらない努力を官という力と権力を行使する。
 自分の保有する不動産の価値が下がらないように(いや上がるように)道路を作り、インフラを整備し、地下鉄を誘致する。
 個人個人として直接指示しなくてもそこには、同じ利益を共有する「暗黙の了解」が存在するので方向は変わらない。 

 2軒目を所有するとローンが組めなくなったりするなどの規制も強まってきてはいるが、1軒目で優遇された物件を手にしたらそれを親戚に転売したりすればその差益が手に入り、それを元手に買えばよい。
 また、70年権利償還のマンションだけでなく、50年償還の単身者向けで投資目的のマンションには規制が緩い。
 など抜け道はいくらでもある。 

 発展途上で発展し続けないといけない中国の現状では、これらのこともある意味、必要悪として人民の不満はあってもそれらの構造は黙認されている。
 だから若い人々も皆公務員になりたがる。
 皆、しょうがないと思っているし、しょうがないなら自分もそっちになりたいと思っているのだ。
 そして我田引水をしながら楽して自分に利益をもたらすことにせっせと励む。
 これら本音と建前が存在する以上バブルははじけない。
 というのが理由の1つだというのです。 

 こういう話は、中国どこでもよく聞きます。
 日本でこういう話が噂に流れるとすぐに何かしら対応する動きがありますが、ここ中国では、ありすぎて驚くこともなく当たり前の話。
 完全に常識になっています。 
 一介の自治体職員が2軒も3軒もマンションを買っても、「いいところに就職している」と羨ましがられるだけ。
 それが自慢になっちゃうんだから仕方がありませんね。 
 もちろん前述したように賄賂に対する認識や規制は厳しくなっていますが、ま、先にやったもん勝ちのこの国では、ズルい事を考え、実行できるのも優れている証拠なので手を替え、品を替え「上に政策があれば下に対策がある」と言われる中国でその慣習を変えることは、不可能に近いのです。 

 北京や上海など熟し始めている都市では一部反動的な小さなバブル崩壊はあるでしょうが、内陸部などは完全に発展が熟す20〜30年は、これが続くと予想もつきます。 
 中国経済がどうなろうと開発発展は、地方に波及していきます。
 日本のように狭くはないからです。
 行きつくところまで行きつくのに時間と場所はいくらでもあります。
 その発展のためには、必要悪として存在する「暗黙の了解」がバブルを崩壊させないのです。
 それがなければ個人の富も作り出せないし消費者層も厚くならない事は分かっているのです。 

 富が生まれるから消費が生まれ雇用や産業も発展します。
 投資用のマンションであっても完全に失敗した鬼城(ゴーストタウン)でない限り、最後は人が住む。それがホームレスの不法占拠であったとしてもですね。
 まだまだ、中国全体でみれば、住宅需要は大きいのです。 
 特級や1級の大都市でバブルになり、その周りの2級3級都市がそれに倣い、個人個人の権益がそれを促進して発展する。
 そういう背景は日本では知る由もないと思います。 

 中国の長い歴史で培われてきた科挙、宦官の制度はまだまだ近代中国の中に亡霊のように残っています。 
 いくら、若き紅衛兵たちが「破四旧」(旧思想、旧文化、旧風俗、旧習慣の打破)を叫んでも、それがいつの間にか自分たちが守旧派になって排除されてしまったようには今の人民たちはなりたくないのです。
 これは、中国14億人すべての感覚だと思うほどです。 

 14億全員が個人個人そう思っているのならこの体制が政治的に世界経済的におかしくならない限り、中国国内におけるバブルは崩壊しないと思います。 
 ちなみに私の住んでいる内陸部の4〜5級都市などへの不動産投資は、今後の人民元高と今後2〜3年後の日本円の円安と中国地方バブルの相乗効果でかなり有望です。
 大都市はもううまみがありませんし、リスクも生じます。
 伸びきったところではなく、2〜5年後の発展発達を見据えたリスクの低い不動産投資なら損はしないかなと思っています。 

 トウ小平は「先富、后共富」すなわち、先に富んだ者が、まだ富んでいない者を富ませていくことで、みんなが共に豊かになろうと指示していたのです。 
 それを都合よく解釈して、トウ小平の意図を無視し自分たちに都合のよい「先富」だけ使った指導者が中国を拝金主義に走らせ、バブルを引き起こしたのですが「后共富」の言葉もまだ生き残っています。 
 14億人全員が富める日が来るとは到底思えませんが、逆に、そうならないからこそ、格差をなくすためにもバブル崩壊は、まだまだ先の話だと思えるのです。 

■筆者プロフィール:山口康一郎 
1958年鹿児島で衣料問屋の長男に生まれる。現在、中国辺境雲南省の大理古城に居住。17歳の時に喫茶店を開業。23歳の時に法人設立。その後、年商10億まで拡大するまでに至ったが、視察旅行で感じた中国の面白さにハマり、中国移住を計画。国内事業を全て精算し、離婚までして中国に移り住む。「中国人の性格、考え方、制度」や「中国での日本人の生活や起業方法」など、日本からは見えない中国からの日本人としての視点と、日本の商売人の視点から情報を発信します。信条は「三方よし」。



Bloomberg 6/8(木) 11:05配信  Andrea Wong
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170608-87506154-bloom_st-bus_all

中国の米国債買い、悪い予兆か
-利回り上昇局面で保有増やす傾向

 中国が米国債を再び買っている。
 ということは米国債は売り時なのかもしれない。

 人民元の安定と資本流出抑制を目指して昨年は記録的な規模で米国債の保有を減らした中国人民銀行(中央銀行)は買いに転じており、買い増す用意もあるようだ。
 こうした流れに乗る米国債買いは魅力的な戦略に映るかもしれないが、
 中国、そして外貨準備の運用当局は歴史的に利回り上昇局面で米国債の保有を増やしてきた。
 中国はなぜ米国債の値下がり局面で買うのか。
 そして中国が買っているというだけで債券を購入するのがなぜ悪いアイデアなのか。

 米国債を保有している外貨準備は世界経済が健全な伸びを示し、市場がリスクオン環境にある時に拡大する傾向にあるためだ。
 人民銀がドルの保有を増やすのは中国の輸出が輸入を上回り、経常黒字を計上している時だ。
 また、通貨の急上昇を防ぐため、当局が対ドルで人民元を売っている時にも保有するドルは積み上がる。

 中国の米国債買いは騒ぐほどの売りシグナルになるわけではないが、世界経済へのインプリケーションは見誤ることはできないと、バンク・オブ・アメリカの金利ストラテジスト、シャイアム・ラジャン氏は指摘する。
 ラジャン氏は、
 「外貨準備の運用当局は利回り上昇で買いを入れる公算が大きい唯一の主体だ」
と分析。
 「通常、世界経済の成長加速は外準の流入を示し、米国債の買いを示唆する」
と話した。

 確かに、中国経済は安定しつつある。
 製造業は再び拡大し、生産者物価は上昇、消費者の支出も続いている。
 資本流出に緩和の兆しも見られる。
 こうした状況が人民元の安定化に寄与し、中国の外貨準備は増えている。
 外貨準備高は1月に底を打ち、5月末時点で約3兆500億ドル(約335兆3000億円)まで回復
 今年に入り中国の米国債保有が292億ドル増えた原動力となっている。

 パイオニア・インベストメンツの通貨戦略ディレクター、パレシュ・ウパダヤ氏(ボストン在勤)は、
 「中国は恐らく米国債へのエクスポージャーが低水準にとどまっていると感じており、安心して買っている」と指摘。
 「中国は資本流出を防ぐ取り組みが成功し、人民元が安定してきたと自信を持っているとの見方をこれは示している
と述べた。

 中国の記録的な米国債売りでも、安全資産への需要や米金融当局が世界経済の腰折れ懸念で利上げの先送りを迫られるとの観測から、米国債は値上がりしていた。
 要するに、米国債を買う前によく考えた方が良いということだ。

原題:Here’s Why China Buying Treasuries May Be a Bad Sign for Bonds(抜粋)


Yahooニュース 6/16(金) 7:04配信 ロイター
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170616-00000016-reut-bus_all

中国の米国債保有、3カ月連続増加=4月対米証券投資
[15日 ロイター] - 米財務省が発表した4月の対米証券投資統計によると、中国の米財務省証券保有が3カ月連続で増加し、6カ月ぶりの高水準となった。
 日本の保有額は減少したものの、首位の座は維持した。 

 中国の米財務省証券保有は1兆0920億ドルと、前月の1兆0880億ドルから増加。
 昨年10月の1兆1160億ドル以来の高水準となった。

 一方、日本の保有額は1兆1070億ドルと、前月の1兆1190億ドルから減少した。

 海外投資家による米長期有価証券投資(株式スワップ等除く)は18億ドルの買い越し。
 買い越し幅は前月の597億ドルから大きく縮小した。

 短期も含めた証券全体では658億ドルの買い越しとなり、買い越し幅は前月の93億ドルから拡大した。 

 海外投資家による米財務省証券投資は225億3000万ドルの売り越し。
 売り越し幅は昨年10月以来最大となった。
 前月は243億9000万ドルの買い越しだった。