2017年6月5日月曜日

イーロン・マスクの世界:我々が築き、掘っている未来

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TED 5/25(木) 9:50配信
https://headlines.yahoo.co.jp/ted?a=20170525-00002774-ted

イーロン・マスク: 我々が築き、掘っている未来


●イーロン・マスクが、ロサンゼルスの地下にトンネルを掘るという新しいプロジェクトや、テスラとSpaceXの最新状況、火星で未来を築く動機などについて、TEDのキュレーターであるクリス・アンダーソンとの対談を通して語ります。 ( translated by Yasushi Aoki , reviewed by Eriko T. )

翻訳
(クリス・アンダーソン)
 イーロン またTEDに来ていただき ありがとうございます
(イーロン・マスク)
 こちらこそ光栄です

(クリス)
 これから30分ほどで 心躍る未来の姿が どんなものになるのか あなたのビジョンを お聞きしたいのですが
 それからすると最初の質問は 少し皮肉かもしれません どうして穴なんか掘ってるんですか?
 (あなたはどうして退屈なんですか?)

(イーロン)
 そうですね 私自身よく自問しています
  私たちはロサンゼルスの地下に 穴を掘ろうとしています
  ゆくゆくは 3次元トンネル網を作り上げ 渋滞を緩和するのが狙いです
 現在の我々にとって最もうんざり させられるものが 交通渋滞です
 世界の至る所で 問題になっています とても多くの時間を奪われ 酷いものです
 ロスはとりわけ酷い

(クリス)
 それについて 最初のコンセプト映像を お持ちいただいている ということなので 見てみましょう

(イーロン)
 そうですね 、何の話をしているのか それで分かるでしょう
 3次元トンネル網を作る上で 鍵となるものが 2つあります
 まずトンネルの出入り口を 都市の交通網と 継ぎ目なく接続する 必要があります
 車をスケートみたいな ものに載せ エレベーターで 運ぶことで トンネル網への出入りを 2台分の駐車スペースだけで 実現できます
 車はそのスケートに乗って 運ばれます 速度制限というのは特になく 時速200kmで運用できるように 設計しています

(クリス)
 いくらですって?
(イーロン)
 時速200km 言い換えると時速130マイルです だから たとえばウエストウッドから ロサンゼルス国際空港まで 5、6分で行けるようになります
(クリス)
 はじめは 有料道路みたいに なるんでしょうかね
(イーロン)
 ええ
(クリス)
 そして地上の渋滞も ある程度 緩和されると

(イーロン)
 映像で気付いたかどうか 分かりませんが トンネルを何階層作るかについては 実質制限はありません
 上よりも下の方が 先まで行けるんです
 最も高い建物の高さよりも 最も深い鉱山の方がずっと深い だから3次元トンネル網によって どれほどの渋滞だろうと さばくことができます
 これは重要な点です
 トンネルのアイデアに対する 主要な反論は トンネルを1階層追加して 渋滞が一時緩和されたところで それが一杯になったら また元の渋滞の状態に戻るということです
 でもトンネルの数や階層は いくらでも増やせるんです

(クリス)
 しかしトンネルの掘削には とても費用がかかり それがこのアイデアの障害だと 考えられていますよね
(イーロン)
 ええ その通りです 例を挙げると ロサンゼルス地下鉄を 4km延長するのには 20億ドルかかりました
 ロスの地下鉄延長には kmあたり およそ 5億ドルかかっているわけです
 世界で最も利用者数の多い地下鉄 というわけでもありません
 だから確かにトンネルを掘るというのは 一般に大変なことです
 長さあたりの トンネル掘削コストを 少なくとも10倍は改善しなければ ならないと考えています

(クリス)
 どうやって実現するんですか?
(イーロン)
 実は2つのことをするだけで ほぼ十倍か それ以上の改善が 可能だと思っています
 まずトンネルの直径を 半分か それ以下にします
 1車線のトンネルの直径は 8mとか8.5m 確保するようにと 規制されています 事故の際の緊急車両の通行や ガソリン車の排ガスの 換気などのためです
 私たちはそれを 電気スケートを走らせるのに十分な 4mに縮小しようとしていて そうすると 直径が半分になり 断面積は4分の1になりますが トンネル掘削のコストは 断面積に比例します
 これで10倍の改善の 半分は達成できます
 また現在のトンネル掘削機は 半分の時間は休んでいて その間 トンネル壁の 強化をしています
 だから掘削と壁の強化を 連続して行える機械を作れば 効率を2倍改善できます
 この2つを合わせると 8倍の改善です 掘削機は そのパワーや熱的な限界には まだまだ達していないので パワーを大きく 引き上げることもできます
 少なくとも2倍 もしかしたら4、5倍の改善を 上積みできるでしょう
 だから一連の ごく単純な手順で 長さ当たりの 掘削コストを 10倍以上改善できます
 我々の実際の目標というのは ― うちにゲイリーという ペットのカタツムリがいて 『サウスパーク』のキャラクターから 取った名前ですが ― もとい 『スポンジボブ』ですね
(笑)
カタツムリのゲイリーは 現在のところ トンネル掘削機よりも 14倍速いんです
(笑)

(クリス)
 ゲイリーに 勝ちたいわけだ
(イーロン)
 勝ちたいと思っています
 ゲイリーは我慢強い チビなんかではないので これは立派な勝利です
 カタツムリを超えるのが勝利です

(クリス)
 未来の都市というと 多くの人は空飛ぶ車とか ドローンとか 上へ向かうことを考えます その方が良いやり方なのでは?
 トンネルを掘る費用も かかりませんし
(イーロン)
 私も空飛ぶものは好きです ロケットも作ってますし 空飛ぶものはいい
  空飛ぶものに抵抗が あるわけではありません
  しかし空飛ぶ車には 難しい問題があって 非常にうるさく とても大きな風を起こします
 何かがすぐ頭の上を飛んでいる ― 沢山の空飛ぶ車が そこら中を飛び回っているというのは あまり心安らぐ状況ではありません
(笑)
 「今日はすがすがしいな」とは 思わないでしょう
  むしろ「ホイールキャップは ちゃんとはまってるのかな? 落ちてきて首をはねられや しないかしら?」などと 心配になるでしょう

(クリス)
 あなたは地下に 大規模な3次元トンネル網がある 未来の都市というビジョンを 持っているわけですね
 ハイパーループとのからみというのは あるんでしょうか?
  あなたが何年か前に発表した ハイパーループのアイデアに このトンネルを使うというのは?

(イーロン)
  私たちは このハイパーループというのを しばらくいじり回してきました SpaceXのすぐ横に ハイパーループの試験軌道も作りました
 画期的な交通手段のアイデアを募る 学生コンペのためでしたが 結果としてこれは 大型ハドロン衝突型加速器に次いで 世界で最も大きな 真空チャンバー になりました
 とても楽しい経験でしたが 一種の趣味のようなものです
 学生の作ったポッドを押す 小さな推進車両を作りましたが 何も押していないとき どこまで速くできるか 試したいと思っています
 たとえ 1.3kmの 距離だけではあっても 世界最速の超特急より 速くできるのではと 思っています

(クリス)
 そりゃすごいブレーキだ
(イーロン)
 確かに 衝突してバラバラになるか あるいは―

(クリス)
 ハイパーループが トンネルの中を長距離走る姿というのも 想像できますよね
(イーロン)
 ええ トンネル技術の話をすると 地下水面に対して 水漏れしないトンネルを 作ろうと思ったら 大気圧の5、6倍に耐えるよう トンネル壁を設計する 必要があります
 真空を保つには 1気圧に耐えるだけでいいので 地下水面に耐えられる トンネルを作れば 自動的に 真空を保つことも できるようになります

(クリス)
 なるほど
(イーロン)
 そういうことです

(クリス)
 イーロンの未来では ハイパーループが走るトンネルの長さは どれくらいになるのでしょう?
(イーロン)
 実際長さに制限は ないと思います 好きなだけ掘ることができます
 例えばワシントンDC - ニューヨーク間の ハイパーループであれば 全区間が地下になるでしょう
 建物が密集した区域ですから たくさんのビルや家の下を 行くことになりますが 十分に深ければ トンネルの存在に 気付くことはありません
 家の下にトンネルを掘られたら 煩わしいに違いないと 思うかもしれませんが トンネルの直径の 3つか4つ分 深いところに トンネルが掘られたら まず気付かないでしょう
 それどころか トンネル掘削を検知できたら その装置で 大もうけできるでしょう
 ハマースの掘るトンネルを 見つけようとしている イスラエル軍当局や 麻薬密輸トンネルを見つけようとしている 米国税関・国境警備局が欲しがりますから 実のところ 土というのは振動吸収性に優れ トンネルが 一定以上の深さであれば ほぼ検知不能になります ごく高感度の地震計があれば できるかもしれませんが

(クリス)
 それで そのための 新しい会社を作ったわけですね The Boring Company (ボーリング社/退屈な会社) 傑作ですね 笑えます
(笑)
(イーロン)
 何が可笑しいんだろう?
(笑)
(クリス)
 これに どれくらいの時間を 割いているんですか?
(イーロン)
 たぶん 2~3%という ところですかね
(クリス)
 趣味を手に入れたと イーロン・マスクの 趣味はこんなですよ 皆さん
(笑)
(イーロン)
 インターンや その他の人が 一部の時間を使って やっています 中古の機械を購入して いじくり回している感じですが 結構進展があります

(クリス)
 多くの時間は テスラを通じて自動車や交通手段を 電化することに費やされているわけですね
  トンネルプロジェクトの 動機の1つは 自動車が電気になり 自動運転になったとき 道路には今よりも多くの車が 溢れることになるかもしれない ということなのでは?
(イーロン)
 その通りです
 車が自律的になれば 速く移動できて渋滞が減ると 多くの人は思っています
 ある程度まではそうですが しかし共有自律が実現されると 車での移動は 好きなところに 行ける上 安価になり 車の方がバスなんかより 値ごろ感が出てきます
  バス料金よりも 安くなったりとか だから共有自律により 車での移動量は はるかに増え 交通事情は ずっと悪くなるでしょう

(クリス)
 電気が 自動車の未来だと示そうと あなたはテスラを 始めましたが 数年前は みんなあなたのことを 笑っていたものです 今はそうでもなくなりました
(イーロン)
 そうですかね
 分かりませんけどね

(クリス)
 自動車会社のほとんどは 短中期の将来計画として 本格的な電化計画を アナウンスしているのでは?
(イーロン)
 そうですね、 ほぼすべての自動車会社に 何らかの電気自動車の計画があるでしょう
 本格度には差異がありますが 完全な電気自動車への移行を 本気で考えているところも 、ちょっとかじる程度の ところもあります
 いまだ燃料電池を追い続けている ところもありますが 長くは続かないでしょう

(クリス)
 今は勝利宣言すべき時だとは 感じませんか?
 「我々はやった」と 電化はもう他の人たちに任せて 別のことにエネルギーを注ごうとは考えませんか?
(イーロン)
 まあ とりあえず想像できる範囲では テスラに居続けるつもりです
 ワクワクするようなことが たくさん待っています
 モデル3が すぐにも登場しますし テスラ・セミトレーラーも 披露する予定です

(クリス)
 ああ その話をしましょう モデル3は7月あたりに 出る予定でしたね
(イーロン)
 ええ 7月の生産開始に 向けて順調に進んでいます
(クリス)
 いいですね
 みんなが高い期待を 抱いているのは 自動運転が 付くということでしょう
 それがどんな技術なのか 少し前に このビデオで 披露しましたね
(イーロン)
 ええ

(クリス)
 現在のモデルSにも オートパイロットはありますが ここで見ているものは 何なんでしょう?
(イーロン)
 これはカメラと GPSだけを使っています LIDAR やレーダーは使っていません
 受動的な光だけを使っていて それは人が使うのと同じものです
 道路システムは 受動的な光やカメラを頼りに 舵取りするよう 意図されているので カメラないしは 視覚の問題を解決すれば 自動運転の問題は 解決するんです
 視覚が解決できなければ 自動運転もできません
 それが私たちが視覚ニューラルネットに 集中している理由で これは道路状況の把握に とても効果的なんです

(クリス)
 他の会社の多くは LIDAR を使っています
 カメラとレーダーの組み合わせ というのが多いでしょう
(イーロン)
 カメラだけでも 人間をはるかに凌駕できます
 カメラだけでも 人間より10倍 うまくやれるでしょう

(クリス)
 今売られている新車には 8台のカメラがついていますが この映像のようなことは まだできません
  いつできるように なるのでしょう?
(イーロン)
 今のところ計画通り 年末までに 完全自動運転で ロスからニューヨークまで 米国を横断して行けるようになる予定です

(クリス)
 今年の末には テスラに乗り ハンドルに触れることなく ただ「ニューヨーク」と入れてやると 行ってくれるようになると
(イーロン)
 ええ

(クリス)
 2017年の末には ハンドルに 触れる必要はなくなる
(イーロン)
 ええ 今年の11月か12月には カリフォルニアの駐車場から ニューヨークの駐車場へと 制御装置には一切触ることなく 移動できるようになります
(拍手)

(クリス)
 すごいですね
 それが可能なのは ある部分では たくさんのテスラ車がすでに あらゆる道路を走っていて 国道の膨大なデータが 蓄積されているというのがあるのでしょう
(イーロン)
 そうですが 興味深いのは ルートを動的に変えたとしても できることに 自信を持っている ということです
 決まったルートを自動運転で 行けるというのとは また違った問題になりますが これはどこへでも 上手く行けるはずです
  一度幹線道路に入ったら その国の幹線道路上の どこへだろうと行けます
 ロス - ニューヨーク間に 限定されず その場で変更して シアトルからフロリダに 行くこともできるし ロスからニューヨークへ 行くつもりだったのを ロスからトロントに 行き先を変えることもできます

(クリス)
 規制については ひとまず置いておいて 技術という点に限れば あなたの車を買って 文字通り手放しで一眠りし 目覚めたら目的地に着いているというのを 安全にできるようになるのは どれくらい先のことでしょう?
(イーロン)
 2年くらいだと思います
 重要なのは 99.9%うまくいくというのでは 駄目だということです
 1000回に1度 車が事故を起こすなら 安心して眠れません
 実際 眠るべきではないでしょう
 完璧になることは 決してありません
 どんなシステムも 完璧ではありません
 しかし人生を100回とか 1000回分生きたとしても 車が事故を起こす見込みが まずないとなれば みんなこう思うようになります
 へえ 1000回生きても 事故に遭いそうにないなら まあ大丈夫だろうと

(クリス)
 眠ってもね あなたの大きな懸念は 人々があまりに早く安全だと 思い込んでしまうことだろうと思います
 そして酷い事故が起きて 進歩を押しとどめてしまうという
(イーロン)
 自律システムは ごくまれな状況を別にすれば 少なくとも事故を 緩和してくれると思います
  車の安全性について 理解すべきなのは それが確率的だということです 
 どんな人間のドライバーであれ 車を運転していれば 自分の人為的ミスで事故を起こす 可能性があります 
 それは決してゼロではありません
 だから自動運転のための 本当の閾値は みんなが自動運転に 頼れるようになるためには それが人間よりどれほど 優れている必要があるかということです

(クリス)
 手放し運転が まったく安全となったとき 業界が大きく変わることに なりそうですね
 というのも あなたのお話では 車を買って 仕事に行ったら 車にUberのような サービスをさせて 金を稼げるようになり それで車のリース料が まかなえて 車が無料で 手に入るようになるんだと 本当にそんなことに なるのでしょうか?
(イーロン)
 間違いなくそうなります
 共有された自動運転車が 大量に現れます 
 車を買ったら 自分だけで使う こともできるし 友達や家族だけが 使えるようにすることも 評価の高いドライバーだけに 使わせることも 時間帯を限って 共有することもできます
 そういうことが 100%起きるでしょう
  問題は それがいつか ということだけです

(クリス)
 すごいな
 先ほどセミトレーラーの話があって 9月に発表の予定と聞きましたが 今日 見せてもらえるものは 何かありますか?
(イーロン)
 トラックの予告画像を お見せしましょう
 本物ですよ

(クリス)
 いいでしょう
(イーロン)
 これは間違いなく 自動運転機能に 用心深くありたいところです

(クリス)
 よく見えませんが 近所の可愛いトラックとは 違うようですね
 格好良いですが どんなセミトレーラーなんですか?
(イーロン)
 これは大型長距離 セミトレーラーです
  可搬重量が大きく 長距離走れます 大型トラック輸送の改善を 狙っています
  これは現在人々が可能だと 思っていないことです
 電気自動車では十分な馬力や走行距離が 得られないと思われていますが このテスラ・セミトレーラーによって 電気トラックはディーゼルトラックを トルクで凌駕できることを 示したいと思っています
 綱引き大会があったら テスラ・セミトレーラーは上り坂を上りながらでも ディーゼル・セミトレーラーに勝つでしょう

(クリス)
 そりゃすごい
 短期的にはこれは自動運転ではありませんね
 トラックドライバーが運転したくなる ようなトラックになると

(イーロン)
 ええ、 これの 本当にいいところは 電気モーターだと回転数に対するトルクのグラフが 平坦になるということです
 一方でディーゼルや 何であれ内燃機関の場合 回転数に対するトルクのグラフは 山形になります
 だからこれは すばしっこいトラックになります
 スポーツカーみたいに 乗り回せます ギアはなく 単一速です

(クリス)
 なんだかすごい映画が 作れそうですね
 どんな話になるか ハッピーエンドか分かりませんが すごい映画になりそうです
(イーロン)
 試乗すると奇妙ですよ
 最初のトラックの試作品を 運転した時のことですが すごく奇妙な感じで 巨大なトラックを運転しているというのに すごく機敏なんです

(クリス)
 試作品をもう ご自身で運転しているんですか?
(イーロン)
 ええ 駐車場で 乗り回しましたが こいつはすごいと思いました

(クリス)
 絵に描いた餅じゃないんだ
(イーロン)
 巨大トラックで すごい芸当ができますよ

(クリス)
 そりゃいい
 すごくカッコイイ写真から ちょっとカッコイイ写真に 話を変えますが これは『デスパレートな妻たち』に出てくる おしゃれな家かなんかですか?
 これは何なんでしょう?

(イーロン)
 これは将来 どんな風になるかを イメージしたものです
  車庫に電気自動車があります 電気自動車と家の間を見てもらうと 3つのパワーウォールが立っていて 屋根はソーラーパネルになっています ソーラーガラス製の屋根です

(クリス)
 なるほど
(イーロン)
 あの家は本物です 本物のフェイクハウスです
 本当に存在しています

(クリス)
 あの屋根瓦には ソーラーパネルが 入っているわけですね
(クリス)
 ソーラーガラスタイルは 質感や色を とても細かく調整できます
 ガラスの中に 微細な鎧戸があって 通りから屋根を見ると ソーラーセルが あってもなくても タイルは同じに見えます
  地上からだと 同じ色に見えるんです
 ヘリコプターから見れば 見通すことができて ソーラーセルが背後にあるタイルと そうでないものを見分けられます
 でも地上からだと 分かりません

(クリス)
 日照の良いところであれば あの屋根はすごく手頃に なるんですよね
 普通に屋根を葺くのと比べて そんなに高価ではないと
(イーロン)
 ええ その点は 自信を持っていますが ソーラーガラスの 屋根のコストは 普通の屋根 プラス 電気代よりも 安くなります
 経済的には 悩むまでもありません
 見かけも良く 長持ちします
  永久保証を付けることも 考えましたが それだとむしろ 嘘っぽく聞こえないかと でも強化ガラスでできていて 家が崩れ去ったずっと後 何も残っていなくとも このガラスタイルだけは そのままでしょう

(クリス)
 それはすごい 2週間内に 4つのタイプを売り出すとか
(イーロン)
  最初2種類から始めて 来年初めに あとの2種類を追加します

(クリス)
 どれくらいの規模で 考えているんでしょう?
 どれくらいの数の家が このような屋根を持つようになると?
(イーロン)
  いつかは ほとんどすべての家が ソーラー屋根を持つように なると思います
 考える必要があるのは ここで話している 時間のスケールが 40年とか50年だということです
 平均すれば屋根の葺き替えは 20年から25年に1度です
 屋根のすべてをすぐ置き換え始める わけではありません
 しかし15年くらい 先のことを考えるなら ソーラーパネルのない屋根は むしろ珍しくなっているでしょう

(クリス)
 メンタルモデルとして みんな理解しかねているのは コストの変化 ソーラーパワーの経済の変化で 起きることです
  多くの家には 十分な日照があり それを捕らえさえすれば 必要な電力は賄えるようになり そうすると電力網に 依存しなくて良くなります
(イーロン)
 家がどこにあるかや 屋根の面積に対する 家の大きさにもよりますが アメリカの家の多くには 家で使う電気を賄うのに十分な 屋根面積があるでしょう

(クリス)
 電気自動車や 電気セミトレーラーや こういった家の経済で 鍵になるのは リチウムイオンバッテリー価格の下落で あなたはテスラで そこに大きな賭をしました いろいろな意味で コアコンピテンシーと 言えるかもしれません
 その競争優位性を 確かにするため 世界最大の製造工場を作り
 世界のリチウムイオンバッテリー供給量を 2倍にしようとしていますね 
 そのことを聞かせてください
(イーロン)
 これは「ギガファクトリー」の 進展を示したものです
 完成した暁には 全体が巨大な ダイヤ型になる予定で それが真北を指している ― という趣向です 細かい話ですが

(クリス)
 年間100ギガワット時の バッテリーを 生産できるようになると
(イーロン)
 100ギガワット時か たぶんそれ以上になるでしょう
(クリス)
 すでに生産を 始めているんですよね
(イーロン)
 すでに生産しています
(クリス)
 映像を公開していますが これはスピードアップしてあるんですか?
(イーロン)
  これはスローダウンしてありますね
(笑)

(クリス)
 実際は どれくらい速いんですか?
(イーロン)
 フルスピードで稼働していると ストロボを使わないと セルが見えないでしょう ぼやっとしか
(笑)

(クリス)
 素晴らしい未来を築く 核となるあなたのアイデアの1つは エネルギーについて罪悪感を 抱かなくてよい未来です
 そこに至るためには いくつのギガファクトリーが 必要になるのでしょう?
(イーロン)
 おおよそ100です
  10でも1000でもありません
  100というのが ありそうなところです

(クリス)
 そこがすごいと思います
 あなたは化石燃料から 世界を切り離すために必要なものが イメージできている 
 あなたが1つ作り それには50億ドルとか 100億ドルがかかる
 そういうプロジェクトを思い浮かべられる というのはすごいことです
 そしてあなたは年内に さらに2つの建設の発表を予定しているとか
(イーロン)
 2カ所から4カ所の建設地を 今年発表する予定です 多分4カ所になるでしょう
(拍手)

(クリス)
 それはまた
  何か教えてもらえることは ありませんか?
 どことか どの大陸とか? ノーコメントでもいいですよ
(イーロン)
 世界市場に答える 必要があると思っています

(クリス)
 いいでしょう
 素晴らしい どうしても外せない ― 話題があるんですが
  政治について 1つだけ質問します
  政治の話には うんざりしていますが 1つだけお聞きしたい
 あなたはある人にアドバイスする メンバーに名を連ねていますね
(イーロン)
  誰だろう?

(クリス)
 その人は 気候変動を信じないと言い 多くの人は あなたがそんな人に 与すべきでないと思っています
 歩み去って欲しいと それについて どう言われますか?
(イーロン)
 そもそも私は 2つの顧問機関に 入っているだけです
 その形式は 部屋の中を歩き回って 相手の意見を聞くというもので 1~2ヶ月に1度会議があります
 それだけのことです
 その部屋には 気候変動や社会問題に 取り組むべきという 立場の人たちもいて 私自身そうした会議を通じて 移民や気候変動の問題に取り組むべき という主張をしてきました
 私がそうしなければ それは議題にすら なっていなかったんです
 何も変わらないかもしれませんが 少なくとも言うべきことは言いました

(クリス)
 分かりました
 ではSpaceXと 火星の話をしましょう
 前回お越しいただいた時 あなたは再利用できる ロケットという 野心的な夢について 語っていましたが あなたはそれを やってのけましたね
(イーロン)
 だいぶかかりましたが

(クリス)
 映像を見ながら話しましょう これは何ですか?
(イーロン)
 これは高速で高高度の宇宙にいる 打ち上げロケットが 地上に戻ってくるところです
 上段を高速で 届けたところで マッハ7くらいだと思いますが 上段を届けて ―

(クリス)
 これはスピードアップしている ―
(イーロン)
 これはスローダウンしてあります
(笑)

(クリス)
 スピードアップとばかり 思っていました
 すごいことですが 最終的に成功する前に 何度か失敗していますね 
 何度くらいやったんでしょう
 5回か6回?
(イーロン)
 8回か9回ですね

(クリス)
 そして初めて 着地したロケットを 再びまた飛ばしました
(イーロン)
 打ち上げロケットを 着地させ 飛行準備をして 再び打ち上げました
  再打ち上げが本当に意味を持つ 軌道ブースターとして 初の再打ち上げです
  再利用は短時間で完全であって はじめて意味があるというのを 理解しておくことが重要です
 飛行機や車のように 短時間で完全な 再利用ができます
 次の飛行前に工場に持って行って 整備する必要はありません

(クリス)
 これによって 多くの人を火星に送るという 本当に野心的なアイデアが 可能になるんですね
  10年とか20年先のことだと 思いますが
(イーロン)
 ええ

(クリス)
 そしてあなたはそのための とんでもないロケットを設計した
 それがどれほど大きいか みんなに教えて欲しいんですが
(イーロン)
 あれが人間で ― これがロケットです

(クリス)
 建物に見立てると 40階建て相当だと 何かで読みましたが
(イーロン)
 多分もう少し高いですね
 これの推進力は サターンV型月ロケットの 約4倍になります

(クリス)
 人類がかつて作った 最大のロケットの推進力の4倍だと
(イーロン)
 ええ
(クリス)
 飛んだらの話ですが
 (イーロン)
ええ
 ボーイング747の推進力は 100万ポンドの1/4なので 1000万ポンドの推進力には 40機の747がいります
 このロケットには 120機の747がエンジンを 全開したのに相当する推進力があります

(クリス)
 地球の引力圏を 離脱できるロケットですが あなたのお話では これで人や貨物を満載した 747をまるごと 軌道に乗せられるのだとか
(イーロン)
 その通りです
 このロケットは 満タンの燃料と満席の乗客と 貨物室一杯の荷物を積んだ747を 貨物として運べます

(クリス)
 これに基づいた 惑星間輸送システムの イメージ映像を 最近 公開されましたね あなたが描いたのは30年後 あるいは20年後の姿でしょうか?
 人々がこのロケットへと 乗り込んでいくというのは
(イーロン)
 願わくは 8年から10年後ですね
  夢として それが目指していることです
  社内的な目標は もう少し強気なものですが ―
(クリス)
 いやはや
(イーロン)
 このロケットは 他のロケットと比べると とても大きく見えますが 将来の宇宙船からすれば 手こぎ船のように 見えることでしょう
 将来の宇宙船は 本当に巨大なものになります

(クリス)
 なぜなんですか イーロン?
 なぜ我々が生きているうちに 火星に百万都市を築く 必要があるのか? 
 それがやりたいことだと 言っておられたと思いますが

(イーロン)
  魅力的で鼓舞されるような 未来があるというのは 重要なことだと思います
  朝起き出し 生きたいと思う理由が なければならないと思います
 なぜ生きたいと思うのか?
 何の意味があるのか?
 何に鼓舞されるのか?
 未来の何に憧れるのか?
 もし 我々が宇宙へ 出て行かないなら ― 星々の中へと出て行って 複数の惑星に住む種族と ならないのだとしたら それはすごく残念なものに思え そんなの我々の未来では ないと思うんです
(拍手)

(クリス)
 人々はこっちを取るか あっちを取るかという見方をします
 今地球上では 沢山の差し迫った問題が起きています
  気候から貧困から 選り取り見取りです
 そして宇宙進出は 問題から目をそらすもののように感じるのです
 そんなこと考えていないで 今ここにある問題を 解決すべきだと 公平を期して言うなら あなたは持続可能エネルギーに関して 相当なことをされています
 でも なぜそういうことだけ しないのでしょう?

(イーロン)
 私はその ― 未来を可能性という視点で 見ています
 枝分かれしていく 可能性の流れのようなものとして 我々の取る行動が その可能性に影響し 何かを加速したり 別のものを減速したりします
 その可能性の流れに 自分が何か新しいものを導入するかもしれない 持続可能エネルギーは いずれにせよ起きることでしょう
 テスラがなかったとしても 必要にかられて 起きたはずです
 同語反復的ですが 持続可能エネルギーがなければ 「持続不能」エネルギーを使うということで やがてそれは 尽きることになり
 経済の法則によって 文明が持続可能エネルギーへと 向かうのは 必然でしょう
  テスラのような会社の 根本的な価値は それが持続可能エネルギーの到来を 加速する度合いにあります どれだけ実現を 早められるかという

 テスラのような会社の 根本的に良いところは 何かと考えたとき 持続可能エネルギーの到来を 10年とか あるいはそれ以上 加速したのだとしたら それはとても素晴らしいことです
  それがテスラの根本的で 志的な面で 良いところだと 考えています

 一方で複数の惑星に住む種族 宇宙に生きる文明となるというのは 必然的なことではありません
 これが不可避でないと認めるのは 重要なことです
 持続可能エネルギーという未来は およそ確実なものですが 
 宇宙に生きる文明になるというのは 確実なことではまったくありません 
 宇宙進出の進展に目を向けると 1969年には月へ人間を 送ることができました
 1969年ですよ
  それからスペースシャトルができましたが 人間を低周回軌道に 運べただけです スペースシャトルが引退すると アメリカは軌道に人を運ぶことさえ できなくなりました
 それがトレンドです
 無へと下降していく トレンドです
 テクノロジーは黙っていても 進歩していくものだと みんな勘違いしていますが 自動的に進歩するものでは ないんです
 改善しようと多くの人がとても熱心に働いて はじめて進歩するんです
 放っておけば 劣化していくと思います
 古代エジプトのような 優れた文明を見てください
 彼らはピラミッドを 作れましたが その方法は 忘れ去られてしまいました
 ローマ人はすごい水道を 作り上げましたが それだって 忘れ去られてしまいました

(クリス)
 あなたの話を聞き あなたがした様々なことを 見ていると 何に対しても
 あなたには 独特の二重の動機があって ともて興味深く感じます
★.1つは人類の長期的な利益のために 寄与したいという欲求 
 もう1つは何か胸躍ることを したいという欲求です 
 そして時に一方を推し進めるために 他方が必要になるように見えます
 テスラの場合 持続可能エネルギーを望み そのために あのセクシーな 胸躍る車を作りました
 太陽エネルギーの場合 そこに到るために あの見事な屋根を 作る必要がありました
 あなたの最新の試みについては まだ話しておらず 話す時間もありませんが あなたは悪いAIから 人類を救いたいと思い 洒落ている脳と機械の インターフェースを作って 無限の記憶やテレパシー能力を もたらそうとしています
  火星については こう考えているように見えます
 我々は人類を救うための バックアップ計画が必要だ
 しかし同時に人類を 鼓舞する必要もある そしてこれが鼓舞する方法なのだと

(イーロン)
 美や インスピレーションの価値は 明らかに 過小評価されていると思います
  はっきりさせておきたいのは 私は誰かの救い主になろうと しているのではないということです
 私はただ 未来のことを考え 悲観的になるまいと しているだけです
(拍手)

(クリス)
 素晴らしい言葉です ここにいる人は皆 頷くことでしょう
 この何一つとして 不可避的に起きる ものではないと あなたは頭の中で そういう夢を描き 他の誰も敢えて 夢見なかったことを 他の誰も夢見ることのできなかった レベルの複雑さで 夢見ています
 あなたがそうしているという事実は 本当にすごいことだと思います
 みんながもっと大きな夢を見るよう 助けてくれて感謝します

(イーロン)
 でも私の夢がまったく狂気の沙汰に なり始めたら どうか教えてくださいよ
(笑)

(クリス)
 ありがとうございました
 イーロン・マスク 本当に素晴らしかったです



ニューズウイーク 2017年6月16日(金)18時15分 ハナ・オズボーン
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/06/post-7815.php

イーロン・マスク
「火星移住は生きている間に可能だと知ってほしい」

<昨年10月に火星移住計画の詳細を明らかにしたイーロン・マスクが、可能性を信じて欲しいと訴え>

   イーロン・マスクが建設を目指す火星都市構想について、自分たちの世代で移住が可能になることを信じてほしい、と力説した。
  2002年に米民間宇宙企業スペースXを設立したマスクは、人類が火星に都市を建設する可能性を何年も訴えてきた。
 スペースXは現在、2024年までに火星に有人宇宙船を送る方針で、2030年前半の有人飛行を目指すNASA(米航空宇宙局)を大幅に上回る目標を掲げている。

 マスクは米科学誌ニュー・スペースに掲載された論評で、火星都市の建設計画や、その後の宇宙探査をどう進めるかの概要を明かした。
 「スペースXの火星都市建設を公にすることで、火星への移住)は遠くないと思ってもらいたい。
 生きている間に実現可能だと思ってほしい」
とマスクは言う。
 「火星に行きたいと思いさえすれば、その方法はある」



■火星と地球で人口バランスを

 マスクによれば、人類には基本的に2つの選択肢がある。
★.永遠に地球にとどまり最後は絶滅するか、
★.「宇宙に生きる文明、(多くの惑星間で繁栄する)多惑星種」になるか
だ。

 マスクは後者の選択肢が「正しい道だ」とし、太陽系の惑星の中で唯一の候補が火星だと説明した。
 「たぶん月への移住も可能だしそれには全然反対しない。
 ただ月は惑星よりかなり小さいから、人類が繁栄するのは大変だ。
 月には大気がないし、火星ほど資源にも恵まれない。
 月の1日は28日なのに対し、火星の1日は24.5時間だ。
 人類が自立型で持続可能な文明を築いていくうえで、はるかに有利な条件がそろっている」
 火星での生存環境についても語った。
 「火星から太陽までの距離は地球と太陽の距離の倍程度なので、太陽光はそれなりに届く。
 気温は少し低いが、自分たちで温めればいい。
 そしてありがたい大気がある。
 二酸化炭素を主体に、窒素やアルゴンほか数種類の微量元素で構成される大気が火星に存在するということは、大気を圧縮するだけで、火星で植物を育てられる」
 「火星の暮らしは楽しいと思う。
 火星の重力は地球の37%だから、重いものを持ち上げたり飛び跳ねたりすることもできる。
 しかも火星の自転周期は地球と似ている。
 現在地球には70億人が住んでいるが、火星には誰もいない。
 だから単純に(地球と火星の)配分を変えればいい」

 スペースXの火星都市建設について、多くの障害が立ちはだかっているとマスクは言う。
 まずコストの問題だ。
 マスクは火星旅行の価格は、(貯金をすれば)希望者の誰もが払えるレベルに抑えなければならない。
 「旅費が1人につき100億ドルもするなら、自立型で持続可能な文明を築くことは不可能だ」

 火星に打ち上げるすべての物資は、繰り返して使えるものでなければならない。
 火星の軌道に燃料補給所も必要だ。
 火星にきた宇宙船が地球に帰れるよう、火星で燃料を作らなければならない。
 「もし火星に来た宇宙船が地球に戻れなければ、火星都市建設までいくつ宇宙船があっても足りない。
 火星は宇宙船の巨大な墓場になってしまう」

 地球から火星への移住は、最初は必要な貨物と第一陣の移住者たちを「まとめて輸送する」。
 「(宇宙船内の)与圧したセクションに約100人を乗せ、乗客の荷物とすべての非加圧貨物も同時に運ぶ。
 宇宙船の燃料のプラントをはじめ、製鉄所からピザ屋に至るまで何を建設するにも大量の物資を輸送しなければならない」

■目標は40~100年で100万人

 マスクは火星都市の実現には、移住者が100万人に到達する必要があると考えている。
 現時点では「完全に自立型の持続可能な文明を構築する」のに40~100年かかる試算だ。
 火星都市が完成すれば、人類が太陽系のほとんどの惑星に行けるようになるという。

 技術が進めば、火星の基地から宇宙空間をさらに深く探索するチャンスが広がると信じている。
 「エンケラドス(土星の衛星)やエウロパ(木星の衛星)などに燃料の貯蔵所を建設し、もう1カ所を土星最大の衛星タイタンに、さらにもう1カ所を冥王星に作れば、太陽系のより広い範囲へ自由に行けるようになる」

(翻訳:河原里香)







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