2017年2月3日金曜日

トランプ大統領登場(6):尖閣占領に動かなくてもいい、ホットする中国

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 プーチンが語ったとされる中国の尖閣諸島問題がある。
 日本は強く出る相手に敬意を抱く。
 つまり強く出る相手には、卑屈になるということであるらしい。
 北方領土と尖閣の比較である。
 もう一つプーチンの語ったことがある。
 中国は尖閣を占領できるだろう。
 でもそれを維持できない。
 というのは、この場合日本の法律で自衛行動ができる。
 ドンパチが許される状況になった、とみなされることになる。
 それによって日本は尖閣周辺の海と空を封鎖してしまう。
 海には潜水艦が潜み、空は空自がスクランブルをかける。
 結果として、中国は手出しができなくなり、尖閣に送り兵員を見殺しにすることになる。
 これは中国共産党政権の崩壊につながる。
 というのが、プーチンの語ったことだといわれている。
https://www.youtube.com/watch?v=Lf5f9BHEuNw&t=7s

 中国と日本はその軍事力で、海軍力と空軍力において大きな差がある。
 陸軍力が入れば中国は圧倒的だが、海を挟むとその軍事力はまだまだ大人と子供の差ほどある。
 日本のアメリカとの戦いは、太平洋戦争といわれるように、海軍力と空軍力の戦いであった。
 それだけの戦争経験を日本は踏んでいるということである。
 キャリアは数を圧倒する。
 兵員の訓練度合いが違う。
 先の戦争の経験をベースに行われている訓練はあらゆる事態を想定している。
 そういう’事態を想定できるキャリアが日本にはある、ということである。
 中国にはそれがないからモノを揃えて数を誇ることで、兵員の士気をたかめようとする。
 しかし、実際の海戦空戦経験のなさは致命的である。
https://www.youtube.com/watch?v=SsvrIWDrG2o
https://www.youtube.com/watch?v=kL1em_7k81E


Record china配信日時:2017年2月6日(月) 21時40分
http://www.recordchina.co.jp/a162854.html

日本の真の軍事力は中国軍に勝る?
=「日本は戦争経験豊富で実力を隠している」
「日本人という民族は本当にちょっと恐い」―中国ネット

 2017年2月6日、中国のポータルサイト・今日頭条が、日本の真の軍事力について分析する記事を掲載した。

 記事は、中国の軍事評論家・張召忠(ジャン・ジャオジョン)氏が、日本の真の軍事力は中国に決して劣ってはおらず、むしろ多くの面で中国より上だと発言したことが、中国のネットユーザーから多くの不満を引き起こしたと紹介。 
 しかし、張召忠氏の主張は正しいと擁護した。

 その理由について記事は、
★.日中共にイージス艦を有していること、
★.中国には空母があるものの、
★.日本にも準空母がありF―35Bを離発着できること
を挙げた。

 また、
★.海上自衛隊の護衛艦や潜水艦の性能はアジア一であり、
★.数量においても日本の艦艇は20年で退役するものの、廃棄しているわけではなく、
★.いつでも実戦配備できるように保管されており、半日で100隻以上の配備が可能
なのだと主張した。

 さらに、日本の造船企業の建造能力は極めて高いが、平時はその能力を発揮しておらず、「2%」の能力を軍用船に用いているだけだと主張、
 仮に第2次世界大戦時のように建造力の「21%」を軍艦の造船に使用したら瞬時に建造能力が大幅に増強するとした。

 これに対し、中国のネットユーザーから
 「よくできた分析だ。日本の工業レベルは非常に高い。
 日本で淘汰されたものでも中国では進んだものになる」、
 「世界的に見ても日本の工業技術はドイツにも劣らない。
 日本に対して油断をしては駄目だ」
など、日本の技術力ゆえに侮るべきではないとのコメントが多く寄せられた。

 さらに、
 「日本は第2次世界大戦で米国と空母大戦をして戦争経験が豊富だ。
 日本は実力を隠しているだけ」
 「ライバルには敬意を払わないと。
 日本人という民族は本当にちょっと恐い」
という意見もあり、記事の分析に同意するコメントが多かった。


  日本は中国とタイマンを張っても楽に勝てると思っている。
 しかし、それをやったらいろいろ面倒なことになる。
 それを回避するのがアメリカの助言である。
 アメリカが尖閣を「安保条約適用」地域として認めるなら、日本は大手を振ってタイマンが張れる。
 もし、アメリカが安保の適用外地域とすれば、それはアメリカが尖閣を日本の領土とは認めないということになり、日本が勝手に動くと独走というレッテルを貼られることになりかねない。
 本当のところはアメリカの軍事支援はいらない。
 十分に間に合っている。
 リップサービスが欲しいというのが日本の本音だろう。

 中国側からすると、反日姿勢で世論を操作し共産党の正当性をアピールしてきた。
 もし、アメリカが日中で勝手にどうぞということになると、中国は尖閣占領に動き出さざるを得なくなる。
 とすれば、日本は待ってましたとばかりに中国の鼻っぱしを叩くことになる。
 中国共産党は勝ち続ける宿命を背負っている。
 それがゆえに、中国の軍事力は日本のそれをはるかに凌駕したと宣伝している。
 もし、中国が負けたらそれが根本的にウソということになり、共産党の正当性に国民が疑問を抱くようになる。
 「なぜ、日本は巨大な軍事力を持つ中国をまるで怖れないのか!」
という言説がメデイアをにぎわしている。
 もし少しでも負けたりしたら、本当に共産党は潰れてしまう。
 共産党自身は日本に勝てないことを十分に知っている。
 しかし、これまでの反日姿勢で国民を煽ってきた経緯から引っ込みがつかなくなっている。
 何もしなければ、弱腰を非難される。
 チョッカイを出し続けないといけないというジレンマを背負ってしまっている。
 チョッカイは出すが、本気にはならない。
 本気になるときは共産党の命運をかけた時で、その時のターゲットは尖閣ではなく台湾であることは自明になっている。
 共産党としては、いかに尖閣に手出しをしないかという国民を納得させる名目が欲しい。
 今回のマティス米国防長官の発言など、中国には喉から手がでるほどうれしいものであろう。
 アメリカが後ろ盾にあるので、すぐにでも実行したいのだが、尖閣には手出しができないのだ!
と、国民にアピールできるからである。
  もし尖閣を占領して、その後占領し続けることができず、撤退でもすれば代わって日本が尖閣に常駐する結果を招くのこともありえる。
 もし、そうなったら中国の尖閣占領とは、尖閣諸島を日本領土として承認しただけのものなる。
 中国にとってマティス米国防長官の発言はホッツと胸をなぜ下した、といったところになるだろう。


時事通信 2/3(金)  2017/02/03-22:19
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017020300910&g=pol

米長官、尖閣に「安保条約適用」
=核抑止力提供も確約―安倍首相、日本の防衛力強化



 米長官、尖閣に「安保条約適用」=核抑止力提供も確約―安倍首相、日本の防衛力強化
会談前に握手するマティス米国防長官(左)と安倍晋三首相。
 マティス氏は中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島について、米国の対日防衛義務を定める日米安全保障条約第5条の適用対象だと明言した=3日

 安倍晋三首相は3日夕、トランプ米政権の閣僚として初来日したマティス国防長官と首相官邸で約1時間会談した。

 両氏は厳しさを増すアジア太平洋地域の安全保障情勢を踏まえ、「強固な日米同盟」を堅持していく方針で一致。
 マティス氏は中国が領有権を主張する沖縄県・尖閣諸島について、米国の対日防衛義務を定める日米安保条約第5条の適用対象だと明言した。
 北朝鮮の核・ミサイル開発を念頭に、「核の傘」提供を含む米国の「拡大抑止」も確約した。

 首相は
 「トランプ政権と、日米同盟が揺るぎないことを内外に示せることを期待しているし、確信している」
と強調。
 「日本は防衛力を強化し、自らの果たし得る役割の拡大を図っていく」
と伝えた。

 これに対し、マティス氏は
 「安保条約第5条が重要だと明確にしたい。
 それは5年先、10年先も変わらない」
と表明。
 訪日目的について
 「米国が首相や日本国民と肩を並べて歩みを共にすることに対し、政権移行期に一切誤解がないようにするためだ」
と説明し、アジア太平洋重視の姿勢を示した。

 先月20日のトランプ政権発足後、日米閣僚級以上の顔合わせは初めて。
 今月10日にワシントンで行う首相とトランプ大統領の初会談に向けた地ならしとなる。

 首相とマティス氏は中国が海洋進出を強める東・南シナ海情勢について懸念を共有。
 マティス氏は
 「尖閣諸島に対する日本の施政を損なおうとする、いかなる一方的な行動にも反対する」
と約束した。

 北朝鮮について、マティス氏は「脅威だ」と指摘。
 韓国を交えた3カ国の連携などにより抑止力と対処能力を高めていくことが重要との認識で首相と一致した。
 トランプ氏が選挙期間中に日本側の全額負担を求めていた在日米軍駐留経費には言及しなかった。

 沖縄県の米軍普天間飛行場移設問題に関しては、名護市辺野古に代替施設を建設する現行計画の履行を確認。
 マティス氏は
 「選択肢は二つだ。一つは辺野古、二つ目も辺野古だ」
と語った。
 沖縄の基地負担軽減を図ることも申し合わせた。

 首相とマティス氏の会談には稲田朋美防衛相が同席。
 マティス氏はこの後、菅義偉官房長官、岸田文雄外相と相次いで個別に会談し、岸田氏とは外務・防衛担当閣僚による日米安保協議委員会(2プラス2)の早期開催で一致した。
 4日には稲田氏とも会談する。

◇会談のポイント
 一、マティス米国防長官は沖縄県・尖閣諸島が対日防衛義務の対象と明言
 一、安倍晋三首相は日本の防衛力強化と役割拡大を図ると伝達
 一、米国は日本に「核の傘」を含む拡大抑止提供
 一、東・南シナ海情勢への懸念を共有
 一、北朝鮮に対する抑止力・対処力向上で一致
 一、米軍普天間飛行場の辺野古移設が唯一の解決策と確認
 一、在日米軍駐留経費の日本側負担増は議題にならず
(2017/02/03-22:19) 



AFP=時事 2/3(金) 21:37配信
http://www.afpbb.com/articles/-/3116595

マティス米国防長官、安倍首相と会談 日本を「100パーセント支持」



【AFP=時事】ジェームズ・マティス(James Mattis)米国防長官が3日、来日し、米国は「100パーセント」日本を支持すると表明した。

 ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏が米大統領に就任以降、初めての来日となるマティス氏は、安倍晋三(Shinzo Abe)首相に対し
 「われわれは100パーセント、しっかりと肩を並べて首相、そして日本国民を支持していく」
と語った。

 また、マティス氏は
 「安保条約第5条が1年前と変わらず、さらに5年前でも、10年先でも変わらず重要であると考えていることを明確にしたい」
と述べ、日本の領域内での武力攻撃について、日米双方が共同で対処すると規定した日米安全保障条約第5条の重要性を確認した。
【翻訳編集】 AFPBB News



ロイター  2017年 02月 3日 21:34 JST
http://jp.reuters.com/article/mattis-idJPKBN15I16N?sp=true

米国防長官、尖閣の防衛義務を表明 
安倍首相「日本は防衛力強化」

[東京 3日 ロイター] - 米トランプ新政権の閣僚として初来日したマティス国防長官は3日午後、安倍晋三首相と会談した。
 同長官は、尖閣諸島(中国名:釣魚島)を含めた日本の安全保障への関与を確認した上で、日米同盟の重要性を強調した。安倍首相は、日本自身も防衛力を強化する方針を伝えた。

 マティス長官は会談の冒頭、核・ミサイル開発を進める北朝鮮の脅威を例に挙げ、
 「1年前、5年前と同じく、日米安全保障条約第5条が本当に重要なものであることを明確にしたい。5年先、10年先も変わらないだろう」
と語った。

 会談に同席した日本政府関係者の説明によると、マティス長官は、中国も領有権を主張する尖閣諸島にも安保条約第5条が適用されると表明。
 「尖閣諸島に対する、日本の施政を損なおうとする一方的な行動にも反対する
と述べたという。

 第5条は、日本の施政下に対する米国の防衛義務を定めている。
 日本は尖閣諸島への有効性を懸念しており、今回のマティス長官の来日でトランプ新政権の認識を確認する方針だった。

 一方、安倍首相はマティス長官に対し、アジア・太平洋地域における米国の関与の重要性を指摘。
 その上で、日本も自国の防衛力を強化していくと伝え、「自らが果たしうる役割の拡大を図っていく」と語った。
 マティス長官も、日本の防衛能力向上に期待を示したという。

 会談では地域の安全保障環境についても意見を交換。
 中国が軍事活動を拡大する東シナ海、南シナ海の情勢について懸念を共有した。
 沖縄県にある米海兵隊の普天間基地の移設問題については、名護市辺野古沖が唯一の移転先という認識で一致。
 トランプ大統領が選挙期間中に増額を訴えていた在日米軍の駐留経費は、会談の議題にならなかった。

 マティス長官は4日午前に稲田朋美防衛相と会談する。

 同長官は日本に先がけて訪問した韓国で、北朝鮮が核兵器の使用を選択した場合は「効力のある圧倒的な」報復で応じると強くけん制。
 同盟国である韓国の防衛への関与を確認した。



テレビ朝日系(ANN) 2/4(土) 5:52配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20170204-00000002-ann-pol

来日中のマティス国防長官 尖閣に安保適用を明言

 安倍総理大臣は初来日したアメリカのマティス国防長官と会談し、沖縄県の尖閣諸島が日米安保条約の適用対象になることを確認しました。

 会談のなかでマティス長官は、
 尖閣諸島について「日本の施政権を損なおうとする、いかなる一方的な行動にも反対する」
と述べ、中国を牽制(けんせい)しました。
 そのうえで、アメリカの日本に対する防衛義務を定めた
 日米安保条約の第5条が「尖閣諸島に適用される」
と明言しました。
 沖縄の普天間問題については、マティス長官は辺野古への移設が唯一の解決策だという認識を示しました。
 これに対して安倍総理は、司法の判断を尊重しながら工事を進める考えを伝えました。
 一方、岸田外務大臣との会談でマティス長官は、日米安保条約について「地域の平和と安定の礎で100%日本と共に行動していく」と強調しました。
 そのうえで、日本とアメリカによる外務・防衛閣僚協議をできるだけ早く開催する方針で一致しました。



TBS系(JNN) 2/4(土) 5:28配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20170204-00000016-jnn-int

中国外務省、米国防長官の発言に「釣魚島は中国固有の領土」

 アメリカのマティス国防長官が、安倍総理との会談で、沖縄県の尖閣諸島が日米安保条約の適用対象になるとの立場を示したことに対し、中国外務省の陸慷報道官は3日夜、「釣魚島は中国固有の領土だ」と反論する談話を発表しました。

 陸報道官は談話の中で、
 「日米安保条約は冷戦時代の産物であり、中国の領土主権と正当な権益を損なってはならない」
と主張。
 アメリカ側に対し、誤った発言をやめ、問題をさらに複雑化させたり、地域の情勢に不安定要素をもたらさないよう求めました。

 

朝日新聞デジタル 2/6(月) 0:38配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170206-00000005-asahi-pol

台湾「尖閣諸島は固有の領土」 
日米安保適用に反論

 台湾の外交部(外務省)は5日、訪日したマティス米国防長官が、沖縄県の尖閣諸島が日米安全保障条約の適用範囲だと語ったことに対し、
 「(尖閣諸島は)台湾に付属する島であり、歴史、地理的にも固有の領土であることに疑いを抱く余地はない」
などと反論する見解を公表した。

 台湾は以前から中国と同様に尖閣諸島の領有権を主張している。
 見解は
 「我々は米国に対して、島に対する主権的立場を説明し続ける」
としている。


 『
時事通信 2/13(月) 16:48配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170213-00000074-jij-cn

日米の尖閣防衛「深刻な懸念」=「問題複雑化するな」―中国

 【北京時事】日米首脳会談で沖縄県・尖閣諸島(中国名・釣魚島)の防衛と南シナ海の軍事拠点化への反対を確認したことについて、中国外務省の耿爽・副報道局長は13日の定例会見で「深刻な懸念」と「断固たる反対」を表明した。

 耿副局長は「問題を複雑化し地域の平和・安定に否定的な影響を及ぼさないよう、日米は言行を慎み、誤った発言を停止すべきだ」と訴えた。

 耿副局長は、米国が尖閣諸島を日米安全保障条約第5条の適用対象だと確認したことに対し、
 「誰が何を言おうと、何をしようと、釣魚島が中国のものだという事実は変えられない。国家主権と領土を守るという中国の意志と決心を動揺させることもできない」
と強く反発。
 「日本が不法な領土主張のため、安保条約を名目に米国を抱き込むことに反対する」
と語った。 



【2017年 大きな予感:世界はどう変わるか】



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トランプ大統領登場(5):日本の立ち位置 バランス・オブ・パワーの変化

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JB Press 2017.2.1(水)  矢野 義昭

トランプ政権誕生でキャスティングボード握る日本
中露協調を促したバランス・オブ・パワーの変化

 現在の世界は中国の台頭に伴い、米中露の3極鼎立時代になりつつある。
 その中で、中露は近年協調姿勢を強めており、ドナルド・トランプ米新政権はその対抗戦略の構築を迫られている。
 その中で、日本はどのような地位にあり、何を求められるのであろうか?

■1: バランス・オブ・パワーの趨勢

 バラク・オバマ前大統領は、米国はもはや世界の警察官ではないと宣言し、トランプ大統領も選挙戦の最中、
 「米国は弱くなった。もう日本や韓国などの同盟国を守れなくなった」
と述べている。

 このような言葉に表される米国のパワーの相対的な低下の実態は何かを知るには、GDP(国内総生産)と軍事費の推移が良い指標となる。
 IMF(国際通貨基金)統計によれば、冷戦崩壊直後の1992年当時、米日中露の名目GDPが世界に占める比率は、
米:26.1%(6兆5383億ドル)、
日:14.4%(3兆8531億ドル)、
中:2.0%(4957億ドル)、
ロ:0.36%(919億ドル)
であった。

 また独仏伊英各国は2兆1000億ドルから1兆3000億ドルの間で、これら
欧州の主要4か国の名目GDPの合計比率は:24.4%(6兆1292億ドル)
であった。

 日米のGDPの合計は中露の合計の17倍、米国は中露合計の11倍となる。
 欧州主要国の合計はロシアの67倍あった。
 日米欧合計で世界の64.9%を占め、中露合計の2.4%を圧倒していた。
 日米欧の経済的優位性は、当時ゆるぎないものであった。

 それに対し、2015年の各国の名目GDP比率(名目総額)は
米:24.5%(18兆377億ドル)、
日:5.6%(4兆1242億ドル)、
中:15.2%(11兆1816億ドル)、
ロ:1.8%(1兆3260億ドル)
となっている。
 独仏英伊の合計額比率は、13.6%(10兆460億ドル)である。

 日米の合計は中露の1.8倍、米国単独では中露の1.4倍になり、欧州主要国のロシアに対する倍率は7.6倍に縮小している。
 それでも欧米を合計すれば、ロシアの21.2倍になる。

 日米欧のGDP合計比率は43.7%に低下し、他方の中露は17.0%に上がっている。
 日米欧のGDP合計は中露に対し27倍あったものが、23年間に2.6倍にまで縮まった。

 なお、日本の世界のGDPに対する比率は1995年に17.6%まで高まったのち、2010年には30年前と同じ8.5%に低下し、その後も低迷を続けている。
 日本の内閣府の予測では、このままでは2030年頃には4.4%まで低下すると予想されている。

 以上の推移から、以下の特徴が伺われる。

①:米国のGDPは依然として世界の約4分の1弱を占め、世界第1位の経済力を維持している。
 ただし、その比率は徐々に低下傾向にある。

②:中国の経済成長ぶりは目覚ましく、GDPは23年間で22.6倍になり、米国に対し0.63倍にまで迫っている。
 世界に対するGDP比率は7.6倍に急増した。

③:ロシアは経済的にソ連崩壊直後の破たん状態から立ち直ったものの、依然として経済は弱体であり、欧州と米国が結束すれば経済的には十分に封じ込めることができる。

④:欧州も日本も経済的な比率は低下傾向にあるが、欧州主要国合計比率は約1.8分の1に低下したのに対し、日本は2.6分の1と大きく低下している。
 日本のGDP比率は今後も低下し続ける可能性が高い。

⑤:日米の合計比率は中露に対し17倍の優位にあったものが、1.8倍に大幅に縮小している。

⑥:中露の経済力格差は、5.6倍から8.4倍に拡大した。
 ロシアは経済的に中国に対抗できず、対中配慮を優先せざるを得ないとみられる。

 このように、日米欧の世界経済における優位性は失われつつあり、半面中国が目覚ましい経済成長を遂げている。
 中国が今後「新常態」と呼ばれる安定成長に移行したとしても、その世界経済に占めるシェアは拡大を続けるであろう。

 平均5%で成長が続けばGDPは10年で1.6倍に増加し、2030年頃までに米国を追い抜く可能性もある。

 軍事費の推移についても、同様の傾向がみられる。

 SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の見積りによれば、1992年の世界各国の軍事支出額は、
 米国:5,148億ドル、
 日本:445億ドル、
 中国:284億ドル、
 ロシア:576億ドル、
 フランス:678億ドル、
 英国:611億ドル、
 ドイツ:578億ドル、
 イタリア362億ドル、
欧州主要国計2229億ドルである。

2015年では
 米国:5,955億ドル、
 日本:463億ドル、
 中国:1,997億ドル、
 ロシア:911億ドル、
 フランス:607億ドル、
 英国:597億ドル、
 ドイツ:470億ドル、
欧州主要国計1959億ドルとなっている。

 1992年に対する2015年の伸び率は、
 米国:1.15倍、
 日本:1.04倍、
 中国:7.03倍、
 ロシア:1.58倍、
 フランス:0.90倍、
 英国:0.98倍、
 ドイツ:0.81倍、
 イタリア:0.79倍
欧州主要国計0.88倍である。

 軍事費の絶対額では、米国が依然として第1位だが、比率的には微増にとどまっている。
 他方で、中国が23年間で7倍を超える急増ぶりを示している。

 ロシアも経済規模はそれほど大きくないにもかかわらず、ウラジーミル・プーチン政権下で軍事費を急増させている。
 ただし、ロシアの軍事費は、それでも中国の半額、英仏の1.5倍に過ぎない。
 他方、米同盟諸国の日本は微増、欧州主要国は減少している。

 この結果、欧州主要国とロシアの軍事費比率は、1995年の3.9倍から、2015年には3.4倍に、米国対中国の比率は18.1倍から3.0倍に、日米欧対中露の比率は、9.1倍から2.9倍に縮まっている。

 このように、中国の急伸により米国との軍事費格差は急速に縮小している。
 またロシアも増加した結果、ほとんど軍事費を増やしてこなかった米欧日に対して、中露両国の合計軍事費は9倍から3倍への格差縮小を達成している。

 このようなバランス・オブ・パワーの変化が、米国が世界の警察官の座を降りざるを得ない、あるいは、同盟国を守り切れなくなっているという、前記のオバマ、トランプ発言の背景にある。

 また、欧州同盟国の防衛費は減少し、日本も微増にとどまっており、同盟国の防衛努力不足が米国側の不満を招いていると言える。

■2 :対中接近を強めるプーチン政権

 以上のデータから、中国は経済力、軍事力両面で強大化しているが、ロシアは軍事的には強大でも経済力は依然として弱体であることは明らかである。
 このような中露両国のパワーの比較を踏まえれば、現秩序を擁護する立場の日米欧諸国から見た場合の世界的な最大の挑戦国は、ロシアではなく中国であると言える。

 もちろんロシアが、強国であることは間違いない。
 米国を破壊できる核戦力を持った唯一の国であり、現にクリミアやウクライナで侵略行為を行い、力による現状変更を強行している。
 また、プーチン大統領の政治手法は強権的であり、政権は腐敗し、民主活動家やジャーナリストへの弾圧などを繰り返している。

 これらは現秩序の擁護と国際的な取り決め、法の尊重を求める日米欧の価値観、国益とは相いれない。
 ロシアの価値観や行動は、現秩序に対する挑戦国の立場であることを明確にしている。

 ロシアは地政的には、1710万平方キロの世界最大の版図を有する大国であり、欧州、中央アジア、極東、北極圏など、大西洋、黒海から北極海、太平洋にまたがるグローバルパワーである。
 また、ロシア帝国以来の強大な陸軍、巧みな外交手腕と高度の諜報活動の伝統を引き継ぎ、ソ連時代に培われた優れた世界最先端の軍事技術の蓄積もある。

 以上から、ロシアは米中に続く大国とは言えるが、多くの脆弱点を抱えている。

 経済力は現在、韓国以下の規模しかなく、その広大な国土を統治するには不足している。
 広大な国土には豊富な資源が埋蔵されているが、その多くは採掘条件の厳しい僻遠の酷寒の地にある。
 世界の陸地面積の11.5%を占めながら、人口は2015年で1億4346万人であり、世界人口の2.0%に過ぎない。
 少子高齢化も急速に進んでおり、人口動態上でも衰退の途上にある。

 とりわけ、約620万平方キロの極東ロシアの人口は2016年の調査で620万人余りとされ、世界でも最も人口の希薄な地域となっている。
 都市部を除いては、シベリア鉄道沿いに線上に人口が分布しているに過ぎない。

 さらに、極東ロシアには毎年百万人以上の中国人が出稼ぎ労働者などとして流入しているとされ、極東ロシアの経済は中国人労働者の労働力なしには成り立たない状況になっている。
 国境を接する中国東北区の人口は、1億人を超えており、極東ロシアは中国の巨大な人口圧力にさらされている。

 もともとロシア人と中国人は、民族的にも文化的にも異質で、領土をめぐる長い対立の歴史がある。
 冷戦時代の1969年にはアムール川国境地区で中ソ国境紛争も生じた。

2008年にロシアが実効支配していた領土を含めて折半する形で、ロシアが大幅に譲歩して国境画定を終わり、領土問題は一応沈静化している。
 しかし、清朝時代に締結されたアイグン条約、北京条約では、当時の帝政ロシアとの力関係により、外満州に当たる沿海州のロシア帰属を確定せざるを得なかったという歴史もある。
 領土をめぐる中露対立の芽は今ものこっている。

 そのような根底的な対立要因を抱える中、中露間はプーチン政権になり接近の様相を強めている。
 他方で、中露共同による日米を意識した対抗行動も目立つようになっている。

 昨年5月には、中露両軍が初めてコンピューターによる弾道ミサイル防衛演習をモスクワで実施しており、欧州や日韓にミサイル防衛システムを展開している米国に対する牽制を意識した共同演習を行っている。

 昨年6月9日に尖閣諸島接続海域に中国の艦艇1隻が侵入したが、ロシアの駆逐艦など3隻も同時刻に同じ海域を航行している。
 これらは、南シナ海の埋め立てを強行し、尖閣領有を主張する中国に対し、軍事面でも支援する能力と意思があることを、日米に誇示することを狙った示威行動と言える。

 2012年以来毎年行われてきた中露海軍による合同演習が、昨年2016年9月に広東省の沖合で行われた。
 南シナ海で実施されるのは初めてであり、両国から駆逐艦、揚陸艦、補給艦、艦載ヘリ、固定翼機などが参加し、対潜作戦、両国海兵隊による島嶼奪還作戦の上陸訓練も行われた。

 これまでロシアは中国に対しては、攻撃的武器や最新の武器、大型ジェットエンジンなどの輸出は控えてきた。
 しかし昨年、最新式の対空ミサイル「S-400」を初めて中国に輸出し、大型のジェットエンジンの輸出も行うなど、対中武器輸出の水準を挙げている。

 経済・金融面でも、中国が主導し昨年1月に発足したAIIB(アジアインフラ投資銀行)に、ロシアは参加した。
 ロシアの出資比率は、6.5%と中印に次ぎ第3位となっているが、必ずしも当初から積極的に参加の意向を表明していたわけではない。

 ロシアは2015年1月に、それまでのユーラシア経済連合を基礎に、自国を中心とし、ベラルーシ、カザフスタン、アルメニアの4か国からなるユーラシア経済同盟を創設している。
 アルメニアを除く3か国は、すでに関税を撤廃しており、EUに対抗した経済・関税同盟の結成が狙いとみられる。

 その背景には、2014年2月にウクライナで起こった政変がある。
 ウクライナではこの政変の結果、親露派のビクトル・ヤヌコーヴィッチ大統領が逃亡し、ウクライナの親EU路線が明確になった。
 ユーラシア経済同盟の結成は、ウクライナの親EU路線に対抗し、経済・金融面で域内の引き締めを図るという狙いがあったとみられる。

 ロシアのAIIB参加は、ユーラシア経済同盟とは競合する中国の「一帯一路」発展戦略への譲歩を意味し、ロシアの伝統的な影響圏である中央アジアへの中国の影響力拡大を許すことを意味する。

 このような重大な譲歩をしてでもAIIBにあえてロシアが参加した理由として、プーチン政権には以下の戦略的な判断があったとみられる。
 すなわち、10倍の人口、8倍の経済規模、2倍の軍事費を持つ中国とは、潜在的な対立の芽はあるものの、敢えて対決はしない。
 当面は、欧露正面でのNATO(北大西洋条約機構)、EUなど欧米影響圏の拡大阻止と旧ソ連圏版図の最大限の回復に、国力を結集するとの意思決定である。

■3: 米国のアジア・太平洋重視戦略立て直し

 3極鼎立というパワーゲームでは、第1位の覇権国に対し、第2位と第3位の覇権国が提携して対抗し、第1位の覇権国を引きずり降ろそうとする誘因が働きやすい。

 米中露3極鼎立の中、中露両国としては、提携して米国の世界的覇権に挑戦するという戦略が共通の利益となる。
 かつ、中露両国は、大陸国であり、ともに核大国で独裁的権威主義的体制の国であるという点で、価値観、行動様式も類似している。
 中露両国は、相互に融和関係を保てば、ともに背後を固め、ロシアは欧州正面に、中国は南・東シナ海正面にパワーを集中できるようになる。

 その結果両国は、大洋を超えた米国の同盟国のうち、欧州に対しては主にロシアが、日韓台に対しては主に中国が、直接的に軍事、外交、経済、情報戦など各側面から圧力を加え、同盟国と米国との関係を切り崩すことにより多くのパワーを集中でき、それぞれの地域覇権を拡大できるようになる。
 その際の覇権拡大の主体となるアクターは、どちらかと言えばロシアではなく中国であることは、中露間の経済、人口、軍事各正面でのパワーバランスからみても明らかである。

 その意味で、米国とその同盟国にとりより深刻な危機は、欧州正面ではなくアジア・太平洋正面にあると言える。
 特に、中国は経済面でも軍事面でもパワーを一貫して増大させており、日本などの周辺国にとり脅威となっているだけではなく、米国の軍事、経済・金融、外交、情報戦の面を含めた世界的な覇権を脅かす存在になりつつある。

 このような高まる中国の脅威に対し、日米がどのように対応するかが今後の世界的な安全保障上の重要課題であり、日本自らにとっても死活的な問題であると言えよう。

 オバマ政権は、アジア・太平洋重視のピボット戦略、リバランシングを打ち出し、トランプ政権は対露融和を模索する一方で、中国に対し強硬姿勢を採ろうとしている。
 いずれも、バランス・オブ・パワーの変化を踏まえた、妥当な安全保障上の重視正面の選択であると評価できる。
 ただし、オバマ政権は南シナ海での中国による人工島建設の動きを2年間も見過ごし、ほぼ既成事実になってから非難し、「航行の自由作戦」を実施するなど、中途半端な政策を採ってきた。
 他方では人権外交の建前からも、東部ウクライナのロシアによる事実上の併合に対し、強硬姿勢を貫いてきた。

 このようなオバマ政権の戦略の一貫性の欠如を立て直し、
 対中、アジア太平洋正面重視を再度明確にしようとするのが、トランプ政権の目指す方向であり、
 オバマ政権と本質的な変化はないと言えよう。
 ただし、トランプ政権はオバマ政権と異なり、人権や民主化を重視し、その擁護のためには、例えば東部ウクライナでもロシアと軍事的な対峙の危機を辞さないという姿勢はとらない。

 他方で、民主化は軍事力で押しつけることはできない、軍事力の行使は最後の手段であり、外交、経済による紛争解決をまず追求し、外交や経済面での制裁ですら、慎重に行使すべきだとするのが、トランプ大統領の対外政策の基本姿勢である。

 他方で、トランプ大統領は、選挙期間中から軍の再建、強大な軍の建設、退役軍人の処遇改善、軍事費の増額、核戦力と海軍艦艇の増強、宇宙、サイバー戦、特殊作戦の重視も訴えている。
 このような軍事力の再建重視姿勢の背景には、質量両面で激しい追い上げを図る中国への対抗意識が強く表れている。

 上記のバランス・オブ・パワーの現実に立てば、米国の主敵は中国であって、ロシアではない。
 重視すべき正面はアジア・太平洋であり、欧州正面ではない。
 脱石油とオイルシェールの採掘が進む米国にとり中東ももはや重視正面ではない。

 米国の安全保障上最も憂慮すべきは、米本土の安全保障、特に大量破壊兵器を用いたテロである。
 この認識は9.11以降一貫している。
 テロを防止するには、ISIS(イスラム国)のようなイスラム過激派を制圧するとともに、メキシコ国境の管理と移民政策の規制を強化し、イスラム過激派の米国内への流入を防止しなければならない。

 しかしオバマ政権は、本土の安全保障政策でも、不法移民の人権保護を優先し実効性ある政策をとってこなかった。
 トランプ大統領は、そのための実効性ある政策として、選挙期間中から、メキシコ国境での壁の建設、国境管理の強化、イスラム移民の流入規制などの施策を訴えてきた。
 トランプ大統領は、就任直後からそれらの大統領令に相次いで署名している。

 対外戦略上は、バランス・オブ・パワーの変化を踏まえれば、アジア・太平洋正面での中国の軍事的台頭の封止が最も重視されねばならない。
 オバマ政権もそれを目指したが、シリア、クリミア、東部ウクライナなどでのプーチン政権の軍事、外交政策に振り回され、本来の戦略を徹底できなかった。

 また、クリントン夫妻は、中国から選挙資金の支援を受けており、対中融和的な姿勢が疑われてきた。
 南シナ海での中国の人工島建設の動きに対しても約2年間放置してきたこともその1つの表れであると言えよう。

トランプ政権は、戦略の一貫性を取り戻すため、
 ロシアには融和姿勢を採り、
 中国に対しては強硬姿勢をとること
を明確にしている。

 トランプ氏は、選挙期間中から、中国を最大の対米貿易赤字を生んでいる為替操作国と非難していた。
 また、台湾総統との電話会談後の中国の非難に対し、「1つの中国政策の見直し」で応ずるなど、対中強硬姿勢をとっている。

 中国の艦艇建造の速度からすれば、2020年までに米中の艦艇数が逆転する可能性もある。
 このような事態に対し、トランプ大統領は、世界一の海軍国としての米国の威信をかけて、現在約270隻の海軍水上艦艇数を350隻に増強すると表明している。

 ただし、そのためには、米国防予算は今後とも毎年6000億ドル以上の水準を維持する必要があると見積もられており、財源をどのようにして確保するかが、既に問題視されている。

■まとめ: 厳しい要求にさらされる日本

 米軍はいま「第3のオフセット(相殺)戦略」と称する戦略を将来方向として追求しようとしている。

 中露は、衛星、空母、指揮統制中枢、ロジスティクスのセンターなど米軍の世界的な軍事インフラの脆弱な結節点を、大量のミサイル、サイバー攻撃、特殊作戦などを集中して破壊し、米軍戦力の発揮を妨げようとする態勢を固めつつある。

 この脅威に対抗して、第3のオフセット戦略では、攻撃目標となる結節点を形成することなく、離散した自律的な小型の知能型ロボットを大量に展開し、それをネットワークで連接して一体的に運用する「群集戦法」をとれる態勢づくりを目指している。

 群集戦法により敵戦力を圧倒できる態勢をつくり、中露の脅威を通常戦力により抑止するのが、第3のオフセット戦略の狙いである。
 その際のキーとなる先進技術は、
 人工知能、
 ビッグデータ、
 ロボット、
 無人機、
 小型化技術、
 3Dプリンター
などである。

 米国防総省は、これらの技術を駆使して、世界的な情報警戒監視偵察網を展開して脅威を早期に探知し、世界中から集まる情報を瞬時に処理して指揮官の意思決定を補佐し、最も効果的な作戦行動を実行し、それらを常に迅速効率的に支援できるロジスティック態勢を維持して、人間と機械がチームとなった、巨大な革新的兵力体系を構築することを目指している。

 このような方針は、民主党の前アシュトン・カーター国防長官時代から打ち出されているが、米国防総省の基本戦略として固められてきたものであり、トランプ政権の下でも継承されるとみられる。

問題は、「第3のオフセット戦略」を構築するためには、多額の資金と高度の技術の結集が欠かせないことにある。

 米国の累積連邦財政赤字は、トランプ氏も選挙期間中から指摘していたように約20兆ドルに達している。
 その中で、例え国防費の削減を中止したとしても、米国独力で必要な資金と技術を確保することは困難であろう。

 そのために期待されているのが、民間と同盟国の技術力と資金力の活用である。
 上記先進技術は大半が軍民両用技術であり、民間の方がむしろ先行している分野が多い。
 また技術革新の進度も極めて速く、これまでの軍の装備品の研究開発配備速度では対応できなくなっている。

 それを補完するためには、全省庁一体となった協力、米国内の軍需産業、関連民間企業、研究機関、大学などの支援確保が必要である。

 中国も軍民融合を強調しており、ロシアも東部ウクライナを含めた軍需産業の立て直しを図っている。
 米国もまた同様の態勢を構築しようとしている。
 このような米中露間の国家総力を挙げた軍拡競争の様相は、今後さらに強まるであろう。

 それに伴い、今後米国から同盟国の防衛努力と対米協力への期待度は高まるとみられる。
 米国は、世界最大規模の財政赤字の中でも対GDP比率で3.6%以上の国防費を支出している。
 半面、防衛費の対GDP比率が目標の2%に満たないNATO諸国や、片務的な安保条約の下1%の比率に甘んじている日本に対する不満が米国内で高まっている。

 トランプ大統領の、「日本、韓国、サウジアラビアのような豊かな同盟国は、米軍に守って欲しければ、駐留米軍の経費を全額負担すべきだ。負担しないなら米軍を撤退させる」との強硬発言も、このような不満を反映している。
 しかしこのような発言を、単なる同盟国の防衛努力不足に対する不満表明ととらえるべきではない。
 その背景には、上に述べた、同盟国の技術力と資金力を最大限に活用したいとの、米側の第3のオフセット戦略に基づく同盟国への期待と国益上の思惑がある。

 同盟国の中でも期待されているのは、日本の特に民間の技術力と資金力である。
 例えば、人工知能、無人機、ロボット、小型化などの先進技術面での日本の民間力に対する米側の評価は、極めて高い。
 これらの両用技術の供与、共用化、共同研究開発などが米側から日本側に持ち出されるであろう。

 また日本の民間の豊富な資金力に対する期待も高い。
 この面では、金融戦略が重要になる。
 例えば、ロナルド・レーガン政権時代にみられたような、日本の資金による米国債の大量購入、日本の貸出金利の据え置きなどの要求が、突きつけられるかもしれない。

 かつて、レーガン政権時代、日本は米国の国債を買い支え、レーガン軍拡を資金面から支えた。
 その結果、ソ連は競争戦略に敗れて自壊したが、日本もバブル崩壊に見舞われ、その後の長期の経済低迷を招いた。

 トランプ政権の第3のオフセット戦略も、レーガン政権と類似した戦略を追求する可能性がある。
 日米安全保障協力の強化が必要なことは、中国の脅威に直面している日本としては当然のことである。

 ただし、具体的な対米協力の在り方について、日本の国益に基づく一貫した総合戦略の下、防衛、外交、技術、経済・金融各方面の個別戦略を立てて対応しなければ、米国ペースの戦略への追随を余儀なくされるおそれがある。

 さらに、尖閣諸島などを巡る中国との軍事衝突が生ずるおそれもなしとしない。
 その際に、日本が直接矢面に立ち、米国は情報、装備の提供、外交的支援など、間接的な支援を行うような事態が生ずる可能性もある。
 日米安保条約第5条は日本の施政下にある領域に対し発動されるのであり、日本自らが尖閣諸島を実力で実効支配していることを示さなければ、米国は日本を防衛する義務はない。
 日本の自力防衛の態勢があって初めて、日米共同防衛態勢が機能するものであることを再度認識する必要がある。

 日本を取り巻くバランス・オブ・パワーは冷戦崩壊以降大きく変化している。
 中国の台頭により米国のパワーの圧倒的優位は揺らいでおり、逆転の兆候すらみえている。
 トランプ政権はこれに対し明確に、中国に対抗して「再び米国を偉大にする」ことをスローガンとして掲げており、アジア・太平洋では、今後米中間の鍔迫り合い、軍拡競争の様相が強まる可能性が高い。

 しかし、核大国同士の米中が直接対決に至る可能性は低く、米中の狭間に立つ日本が、総合安全保障面でのさまざまの危機に襲われる可能性が高まっている。
 そのことは半面、日本が米中露鼎立時代の覇権の行方を左右するキャスティングボードを握っていることを意味している。
 価値観や体制が異なり、領土問題を抱えている中露両国と日本が同盟関係になることは、考えられない。
 しかし米国の自国中心の国益追求に追随していては、日本の国益が損なわれる。

 日本は自らの持てる力の意義と役割について再認識し、それをどう培養し行使することが、自国の国益となり、世界の安定と繁栄に寄与できるか、かつ米国の要求にも対応できるかを常に考えながら、慎重に安全保障政策を展開しなければならない立場にある。


ニューズウイーク 2017年2月9日(木)10時20分 ロバート・E・ケリー(本誌コラムニスト)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/02/post-6930.php

日米同盟をトランプから守るため、マティス国防長官はやって来た


●マティス(右)は東京で日本との固い絆を確認したが…… Toru Hanai-REUTERS
<マティス米国防長官のアジア歴訪はトランプ外交に対してクギを刺したい米外交界主流派の意向の表れだ>

 今月、マティス米国防長官が日本と韓国を訪問した。
 前大統領と異なる政党の新大統領が就任すれば、早々に高官が同盟国を訪ねるのは珍しいことではない。
 新政権としても、同盟国の高官と早く会っておきたい。
 これが普通の政権交代なら、マティスの日韓歴訪は地味なニュースとして扱われたかもしれない。
 普天間問題などはあるにせよ、オバマ前政権下でアジアの同盟国との関係はおおむね良好な状態にあったからだ。

 しかし、今回の新政権発足は普通の政権交代ではない。
 トランプ大統領は就任わずか半月ほどの間に、イギリス、メキシコ、オーストラリアといった緊密なパートナーとの関係をとげとげしいものにしてしまった。こうした文化的に近い国々に怒りをぶつけているトランプが、日本と韓国のように文化の違いが大きい同盟国との摩擦や意見対立にどう対応するかは大きな不安材料だ。

 日本と韓国がマティスに最も尋ねたかった問いは、中国や北朝鮮についてではなく、新大統領自身についてだったに違いない。
 トランプは本気であんな発言を繰り返しているのか?
 同盟関係に基づく防衛をこれまでどおり当てにしていいのか?

 マティスはこの点をよく理解していたようだ。
 訪問時に、日本と韓国を安心させる力強い言葉を述べている。

【参考記事】マティス米国防相がまともでもトランプにはまだ要注意

■米中戦争に備えた動き

 これまでの同盟関係から言えば当たり前の内容だが、マティスの一連の発言にはもう1つの目的もあったのかもしれない。
 それは、トランプの手足を縛ることだ。
 マティスのように尊敬されている高官が公の場で発言した後、トランプがツイッターや電話で日韓にかみつくようなことがあれば、アメリカの信頼が大きく傷つきかねない。

 マティスの発言は日韓との固い絆を維持し、トランプが口を挟んできても譲らないという意思表示にも思える。
 東京では、日本と「100%肩を並べて、歩みを共にする」と表明。
 韓国でも、もし北朝鮮が核兵器を用いれば「効力のある圧倒的な」報復で応じると明言している。

 トランプが就任後ほかの同盟国を厳しく批判しているなかで、新国防長官が日韓との連携を大切にする姿勢を示している背景には、ほかの要因もあるのかもしれない。
 それは対中関係だ。

 トランプの側近たちは、歴代政権ではなかったくらい中国に関して攻撃的な発言をしている。
 バノン首席戦略官・ 上級顧問も昨年3月、「5~10年以内に南シナ海で」米中戦争が起きることは「間違いない」と述べていた。そればかりか、トランプは昨年12月に台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統と電話会談するなど、中国政府の神経を逆なでする行動を取っている。
 もし、トランプとバノンが中国との対決を本気で想定、あるいは意図しているなら、日韓の力が不可欠だ。
 だから、ほかの同盟国のようには両国にかみつくことはしないかもしれない。

 トランプ新政権の外交戦略は、過去何十年ものアメリカの基本戦略に反する。
 アメリカ外交界の主流派の多くは、同盟国を罵り、ロシアと接近し、わざわざ中国を挑発することには反対している。

 それに、トランプはアメリカ独特の選挙制度のおかげで当選できたにすぎず、大統領選の得票数自体は対立候補のヒラリー・クリントンのほうが多かった。
 有権者の過半数がトランプの外交革命を支持しているとは言い切れない。

【参考記事】トランプに電話を切られた豪首相の求心力弱まる

 こうした点を考えると、トランプの外交路線は官僚機構の激しい抵抗に遭うだろう。
 中国にけんかを売ったり、NATO無用論を唱えたりすることには、軍が反対する可能性が高い。

 マティスの日韓での言動には、アジア情勢の安定を望む米外交界主流派の考え方がはっきり見て取れる。同盟国にとっては、安心感を持てる人物だろう。

 問題は、マティスがどのくらいトランプの考えを代弁していて、どのくらい影響を及ぼせるのかということだ。

[2017年2月14日号掲載]






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●【小野寺五典】トランプ陣営は、実は戦略的!踊らされる日本のメディア!?<2017年2月2日>





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中国(9):米国を警戒させる中国『宇宙強国』への道(1)

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wedge 2017年2月3日 福島康仁 (防衛省防衛研究所 政策研究部 グローバル安全保障研究室研究員)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/8712

米国を警戒させる中国『宇宙強国』計画の軍事的側面

  2016年は、中国が宇宙事業開始60周年と位置付けた年であった。
 この1年間の中国による宇宙活動の進展は目覚ましい。

 10、11月に行われた有人宇宙船「神舟11号」と宇宙実験室「天宮2号」のドッキングおよび宇宙飛行士2人の実験室滞在は、中国版宇宙ステーションの運用開始に向けて計画が着実に進んでいる印象を世界に与えた。


●2016年11月に打上げられた中国の新型ロケット「長征5号」
(写真・REUTERES/AFLO)

 同じ11月の新型ロケット「長征5号」の打上げ成功は、現状における米国最大のロケット「デルタⅣヘビー」に近い打上げ能力の獲得を意味する(低軌道への打上げ可能重量は前者が約25トン、後者が約28・4トン)。

 1956年の国防部第5研究院(当時)の設立から始まったとされる中国の宇宙事業は、部分的には既に米ロに匹敵する水準に達している。
 人工衛星の軌道投入を目的とするロケット打上げ回数は15年にロシア(26回)と米国(20回)につぐ19回を記録し、16年には20回超を計画した。

 衛星の運用数もロシア(140基)をぬき、米国(576基)につぐ規模(181基)となっている(16年6月末時点、UCS Satellite Database)。

 20年頃には中国版の全地球測位システム(GPS)である「北斗」が全世界で利用可能となる。
 22年頃には中国版宇宙ステーションが完成し、10年を超える運用が始まる。
 さらに30年頃には、米国のアポロ計画で使用された史上最大のロケット「サターンV」に近い打上げ能力を有する「長征9号」を実用化し(低軌道への打上げ可能重量は前者が約118トン、後者が約100トン)、有人月探査などを行う計画である。
 こうした事業が順調に進めば、30年に米国と並ぶ「宇宙強国」になるという目標も現実味を帯びる。

■加速する軍事利用、妨害や攻撃能力も向上

 宇宙活動能力の全般的向上は、中国の軍事力強化につながる。
 15年公表の国防白書「中国の軍事戦略」は軍民融合の推進を掲げており、その具体的領域の1つとして宇宙を挙げている。

 同時に中国軍は宇宙を作戦に活用する取り組みを進めている。
 15年12月新設の戦略支援部隊は、陸軍、海軍、空軍、ロケット軍(同月、第二砲兵から軍種に昇格)という4軍種につぐ地位を与えられており、初代司令官には第二砲兵出身の高津中将が任命された。
 同部隊の任務は、サイバー・電子戦に加えて宇宙から各軍種の作戦や統合作戦を支援することにあるといわれる。
 同部隊設立の背景には、中国軍が現代戦を「情報化局地戦争」ととらえており、情報を制する者が戦争を制するとの考えを有していることがある。
 中でも宇宙空間は情報の収集・経由・配布の起点として現代戦に勝利するうえで鍵を握る領域と位置付けられている。

 中国は宇宙の軍事利用の実態をほとんど公表していないが、軍用あるいは軍民両用の通信衛星(中星)、測位衛星(北斗)、地球観測衛星(遥感ほか)をそれぞれ4基、22基、30基ほど運用しているとの指摘がある(16年6月末時点、UCS Satellite Database)。


●「宇宙強国」に向けた中国の計画 (出所:各種資料をもとに筆者作成)

 このうち「北斗」については、民生用シグナルに加えて軍用シグナルの存在が公表されている。
 有事の際、米軍は敵対者によるGPS利用を防ぐために、当該地域でGPSの民生用シグナルに自ら電波妨害を行う方針を明らかにしている。
 このため中国にとっては独自の衛星測位システムを保有しておくことが軍事上不可欠である。

 宇宙からの作戦支援は、中国軍が作戦領域を拡大するにつれて重要性を増している。
 中国海軍は近海(東シナ海や南シナ海)のみならず、遠海(太平洋やインド洋)での活動を活発化させ始めている。
 09年からはソマリア沖・アデン湾における海賊対処活動も開始した。
 中国空軍もまた、海軍と軌を一にする形で西太平洋まで作戦領域を拡大中である。

 こうした中、大容量かつ確達性のある遠距離通信を可能とする衛星通信は、洋上の艦艇と陸上司令部間の通信や、滞空型無人航空機(翼竜ほか)の運用上、極めて重要である。

 また、慣性航法装置よりも高い精度での測位航法を可能とする測位衛星も、作戦中の艦艇や軍用機が自己の位置を把握したり、弾薬の精密誘導を行ったりするうえで極めて重要である。

 さらに海洋偵察衛星は、遠方の海域を航行する敵艦艇の位置把握に有用である。
 実際、冷戦期のソ連は信号情報収集衛星とレーダー偵察衛星の組み合わせで米機動部隊の位置特定を行う体制をとっていた。

 中国は「空母キラー」とも呼ばれる対艦弾道ミサイル(DF-21D)の運用にあたり、超水平線レーダーに加えて海洋偵察衛星による敵艦艇の位置把握を行うとみられている。

 中国は自らの部隊運用に宇宙を活用するのと同時に、「制天権」の獲得も目指しているといわれる。
 これは制海権や制空権に類するものであり、味方の宇宙利用を維持する一方で、必要に応じて敵対者による宇宙利用を妨げることを指す。
 前者については、宇宙システムに対するサイバー攻撃への備えや、「北斗」システムに対する電波干渉を防ぐ電磁シールドの開発に取り組んでいる。

 後者については、他者の宇宙利用を妨害する能力の整備を進めている。
 07年、中国は高度約860キロメートルの低軌道上で衛星破壊実験に成功した。衛星破壊能力を獲得したのは米ソについで3カ国目であり、冷戦後に同種の実験を実施したのは中国が初めてであった。

 衛星破壊に使用したのはDF-21準中距離弾道ミサイルを改造した対衛星(ASAT)兵器(米情報コミュニティはSC-19と呼称)であったといわれる。
 同実験は宇宙開発史上最多の宇宙ゴミを発生させたため、世界の宇宙関係者に衝撃を与えた。
 その後、中国は衛星破壊を伴わないSC-19ミサイルの発射試験を繰り返している。

 また13年には、新型ASAT兵器の発射試験を行ったとみられている。
 報道ではDN-2と呼ばれる同兵器は静止軌道(高度約3万5800キロメートル)まで射程におさめており、事実であれば各国が運用する衛星の大半が標的となり得る。

 さらに15年にはDN-3と呼ばれる新型ASAT兵器の発射試験を実施したとの報道もあるが、詳細は不明である。
 こうした衛星を物理的に破壊する手段に加えて、衛星に対するレーザー照射能力やGPSシグナルに対する電波妨害能力、宇宙システムに対するサイバー攻撃能力も有しているとみられている。

 中国はこれらの手段を状況によって使い分けていくものと考えられるが、中国自身が宇宙依存を深めていることを考えれば、宇宙ゴミの発生を伴わない妨害手段の重要性が中国にとって増していることは明らかである。




●中国による対衛星兵器の発射試験(出所・各種資料をもとに筆者作成) 写真を拡大

■無視できなくなった米国、進める「宇宙戦争」への備え

 既存の「宇宙強国」である米国は、宇宙利用をめぐる戦略環境の変化に強い危機意識を抱いている。

 16年11月、宇宙作戦を担う戦略軍司令官の交代式典において、新任のジョン・ハイテン空軍大将は宇宙での戦争を決して望んでいないが、平和を維持するためには備えておかなければならないと述べた。
 陸海空が戦闘領域となって久しい中、宇宙は戦争のない聖域であり続けてきた。
 冷戦期の米ソ間には戦略的安定を支える宇宙システムを互いに妨害しないという「暗黙の了解」があったが、そうした状況は過去のものになったと米国は考えるようになっている。

 むしろ湾岸戦争以降の米国の戦い方を観察してきた潜在的敵対者は米軍が作戦上依存する宇宙システムを攻撃するのではないかとの懸念が米国にある。
 こうした米国防当局者の認識変化を促してきた主な要因こそ中国による衛星破壊能力の獲得とその後の能力向上である。


●(写真左)2016年10月、中国の宇宙船「神舟11号」が宇宙実験室「天宮2号」とドッキングした(写真・IMAGINECHINA/AFLO)
(写真右)「神舟11号」に乗り込む人民解放軍所属の宇宙飛行士(写真・IMAGINECHINA/JIJI)

 このような戦略環境の変化を受けて、バラク・オバマ政権下の国防総省高官は、従前の慎重姿勢を転換し、「宇宙コントロール」(中国の制天権に相当)を重視する方針を公言するようになった。

 現在、米国防総省が自身の宇宙利用を維持するうえで鍵と位置付けているのが、レジリエンス(抗たん性)の向上である。

 これは、各種のアセットを組み合わせることで、ある特定の衛星の利用が妨げられた場合でも、作戦に必要な機能(例:通信、測位、画像情報収集)を維持するための取り組みである。
 そのために同盟国や企業が保有する宇宙関連能力を活用する方針を示している。

 同時に、米国防総省は他者の宇宙利用を妨害する能力の必要性も明らかにしている。
 これは宇宙の軍事利用が世界的に拡大する中、敵対者が宇宙を活用することで陸海空での作戦を有利に進めようとする可能性が高まっているためである。
 ただし、米国は宇宙への依存度が高いため、宇宙ゴミの発生をまねかない攻撃手段を模索している。

■注目されるトランプ政権の宇宙戦略

 次期ドナルド・トランプ政権の方針は未だ明らかになっていないが、政策顧問のロバート・ウォーカー元下院議員とカリフォルニア大学アーバイン校のピーター・ナヴァロ教授は、大統領選挙前の10月24日に業界紙「SpaceNews」に寄稿している。

 この中でウォーカー氏らは、
★.中ロが米国の宇宙依存に伴う脆弱性を認識し、米国の衛星網を狙っていることと、
★.こうした脆弱性を克服するために小型で頑強な衛星群を必要とすること
を指摘している。

 宇宙は戦争のない聖域でなくなったという認識は米国の関係者の間で広く共有されており、宇宙コントロールを重視する姿勢はトランプ政権にも継承される可能性が高い。

 中国は「宇宙強国」への道を着実に進んでおり、その軍事的側面は米国に強い警戒心を抱かせる水準に達し始めている。



Record china配信日時:2017年2月20日(月) 7時50分
http://www.recordchina.co.jp/a164306.html

トランプ政権の宇宙開発計画明らかに、
「主導権は米国」中国に対抗―米紙

 2017年2月18日、参考消息網によると、米紙ワシントン・ポストは16日、米航空宇宙局(NASA)がトランプ米大統領の指導の下で中国の宇宙開発計画に対抗するつもりだと伝えている。

 ジョン・F・ケネディ大統領は1961年、「10年以内に人間を月に到達させる」との声明を発表し、アポロ計画を進めた。
 一方、現在のトランプ大統領はNASAに対し、1期目の任期中に月軌道への有人飛行を達成するように求めているという。
 大統領顧問の1人は
 「この意向は『米国が宇宙開発の分野で主導権を維持する』という中国に対する明確なメッセージだ」
としている。

 NASAは18年下半期にもスペースシャトルに代わる「オリオン宇宙船」を打ち上げる「EM-1」計画を進めている。
 18年に無人試験機を打ち上げ、続く「EM-2」で有人飛行が計画されているが、現在の開発スケジュールでは、トランプ大統領在任中の有人飛行は間に合わない。

 宇宙開発は長い時間をかけて計画されるが、今回明らかになったトランプ大統領の意向は、NASAにとって寝耳に水だ。
 NASAの関係者や宇宙開発専門家は
 「大統領は人々が驚くような計画を発表し、宇宙開発の分野で注目を集めようとしているのではないか」
と見ている。



人民網日本語版配信日時:2017年3月9日(木) 15時10分
http://www.recordchina.co.jp/b171397-s10-c10.html

中国の有人月上陸には3つの難題解決が必要―中国メディア

 全国政治協商会議委員、中国航天科技集団公司第五研究院月探査衛星総指揮兼チーフデザイナー顧問の葉培建氏は
 「人類は地球から出なければならないが、月は人類から最も近い星だ。
 中国の宇宙事業従事者が有人月上陸を諦めることはない
と述べた。
 新華社が伝えた。

「2016中国の宇宙事業」白書によると、中国は今後5年間で、地球・月空間の有人探査・開発に向け、基礎を固めることになる。
 計画によると、月探査機「嫦娥5号」は年内に月のサンプルを収集し、帰還する予定だ。
 これにより中国月探査プロジェクトの「周回・着陸・帰還」という3ステップがすべて完了することになる。

 葉氏は
 「無人月探査と有人月上陸には高い関連性がある。
 無人月探査を通じて、有人月上陸に向け多くの資料を提供できる。
 しかし無人月探査では、有人月上陸の技術的需要を満たすには不十分だ。
 後者は規模、安全性、信頼性などの面で、前者を大きく上回る。
 これは将来的に、技術の難題解決を続ける必要を意味している」
と話した。

 葉氏は
 「正式にプロジェクトが立案されれば、中国は月上陸に備え3つの主な進展を実現するべきことになる。
★. まずは人と探査機を月に送り届ける大型ロケットの研究開発。
★. 次に地球と月を往復するための生命維持・安全・活動条件の整備。
★. それから地上施設を増設し、各種試験の十分な検証を保証する点だ」
と述べた。

(提供/人民網日本語版・編集YF)




【2017年 大きな予感:世界はどう変わるか】




●世界 ドキュメンタリー: 中国・宇宙開発への挑戦
Published on Dec 3, 2016



【予備】
https://www.youtube.com/watch?v=UvloRs3kqtg
https://www.youtube.com/watch?v=ZfgujVemwK4




https://www.youtube.com/watch?v=KQZ2ha9BlSg&t=114s
●世界 ドキュメンタリー: 中国・宇宙開発への挑戦
Published on Dec 3, 2016



●櫻井よしこ、中国軍が宇宙開発を進める衝撃の理由!米軍にも脅威を与える衛星能力の向上がヤバ過ぎる




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2017年2月1日水曜日

中国(8):トランプにどう立ち向かうのか、トランプを読み切れない中国

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新潮社フォーサイト2017年02月02日 16:38 宮本雄二
http://blogos.com/article/208505/

中国はトランプにどう立ち向かうのか -

 若いころ、米国の外交官に「この問題を解決しようとしても障害が多すぎる」と指摘すると、「障害は取り除けば良い」と軽く一蹴されたことがある。
★.日本は、与えられた条件の下で対応策を考える。
★.これに対し、米国は必要ならば前提条件そのものを変えて目的を達成しようとする。

 これが日本と米国の違いであり、「大国の発想」はそういうものなのだ。
 歴代の米国の指導者も同じ発想だった。
 結果は成功したり、失敗したりだが、世界に対し大きな影響を及ぼしてきた。

■トランプを読み切れない中国

 トランプ大統領は、かなり激しく「前提条件」の変更を試みようとしているように見える。
 それが米国の社会をさらに分裂させるのか、世界の秩序を壊してしまうのか、まだ分からない。
 だが、相対的な国力が低下しているとは言え、
 トランプの発言に一喜一憂する世界を見ると、やはり米国は「超大国」だなと痛感する。

 トランプを読み切れていないという点では中国も同じだ。

★.中国外交は、事前に十分準備したものはなかなか上手く対処してきた。
 シンクタンクをはじめ、多くの人材を活用できるシステムを持っているからだ。
 だが、フィリピンが南シナ海問題に関し常設仲裁裁判所に提訴したケースに対する対応は、例外的に下手だった。
 中国外交が自己主張を強めてきたことのツケでもあるが、同時に現在の国際法秩序に対する理解不足のせいでもあった。

 これに対し危機管理や臨機応変の対応はもともと不得手だ。
 トランプ大統領の登場を、恐らく予測できていなかったと思うし、トランプ対策も不十分だったはずだ。
 それに加え、トランプの手の内がまだ読めない。
 そうなると、現時点において中国がやれることは、トランプの動向を慎重に見極めることしかない。
 だが、中国が具体的な手を打ってくるときは、トランプを見定め方針を確定したときであり、その後は方針がすぐに変わることはない。
 決めるのに時間がかかるが、変えるのにも時間がかかるのだ。

■米中経済戦争も

 トランプは、台湾総統の蔡英文から当選祝いの電話を受け、その後のインタビューで「1つの中国」は原則でも何でもないとうそぶき、中国に衝撃を与えた。
 それでも中国外交部の反応は抑えたものだった。
 典型的な「相手を観測中の対応」と言える。
 知米派であり、国際協調派でもある北京大学の王緝思は、トランプが自著に
 「中国人に自分の考えていることをわからせない。
 これが私の強みである」
と書いている点を指摘して、トランプの一々の発言を気にするなと説いている。

 習近平も、わざわざダボス会議に出席し、国際経済秩序の擁護者として振る舞い、トランプの保護主義に反対する姿勢を明確にした。
 通商関係の責任者に中国に厳しいピーター・ナバロが就任し、安全保障関係のポストには軍のタカ派が就任し、国務長官も決して中国に寛容ではない。
 中国は、それでもまだトランプ政権を必死に観察中であり、見極めようとしている。

 ただ台湾問題は、中国の「核心的利益」の最たるものである。
 この問題で譲歩したと見られた途端に、中国の指導者の命運は定まる。
 トランプが、中国から経済的な譲歩を勝ち取る手段として「1つの中国」カードをこれからも安易に使えば、米中関係は緊張する。
 逆説的だが、後述するように、
 中国側は余裕がないから強く出るのであり、
 同じように余裕がないから本気で経済戦争を戦う可能性がある。
 穏健派の王緝思でさえも
 「(貿易経済問題について)中国側はかなりの準備ができている。
 後手に回ることはない」
と明言している。
 米中関係は実に不確実であり、経済面でも衝突は起こりうるのだ。

■最大の挑戦は軍事安全保障から来る?

 中国は、孫文のころから豊かで強い「富強」の中国の再興を夢見てきた。
 毛沢東や鄧小平もそうだったし、習近平もそうだ。
 鄧小平の時代は、それを表に出さず意識的に抑えてきたが、最近は「超大国」への願望を隠すことはない。
 2008年のリーマン・ショックによる米国の自信喪失が、米国に追いつけるし、追い越せると中国に思わせた結果でもある。
 世の中は中国の思い通りにはならないと思うが、それでも予見しうる将来、中国経済が伸びれば軍事力増強も続くだろう。
 米国と同じように中国は「超大国」として、それに見合った軍事力を持つべきだと考えているからだ。

 つまり確実に、米国の、とりわけ西太平洋における軍事的優位に挑戦するということであり、米軍のオペレーションに対する大きな制約になるということだ。
 トランプ・チームの軍事安全保障グループは軍のタカ派に率いられている。
 オバマ政権より力に対しては力で応じるという姿勢は明確だ。
 中国が、しかるべき調整をしないと、米中はさらに緊張するということだ。

 その主戦場は台湾海峡と南シナ海となろう。
 中国は台湾に対する不満を募らせており、軍事的危機はむしろ台湾海峡の方だという者もいる。
 このシナリオはマイナスが多すぎ、理性的に判断すれば、排除されるべきものだが、中国側が読み違える可能性はある。
 それを避けるためにも米中の軍同士の意思疎通は極めて重要である。

■南シナ海政策を調整

 現時点をとれば、米国の軍事力は圧倒的だ(2015年の米国の軍事支出は中国の4倍)
 人民解放軍強硬派の政策は、その米国と正面からぶつかりかねない。
 そこで習近平指導部は、南シナ海政策の調整を始めた気配がある。
 もちろんすでに確保した岩礁や構築物は、そのままにした上での話だが、フィリピンとの外交関係を調整したし、ASEAN(東南アジア諸国連合)とも話し合い路線に転換した。

 中国における南シナ海問題の権威の1人である呉士存中国南海研究院院長は、米国の「“過度に”頻繁な自由航行の示威」を抑制するように求めるとともに、中国は「“過度な”軍事的な建設を避ける」ことを提案している。
 軍もこれ以上動くなと言っているのだ。

 鄧小平は、経済を発展させ、国民の生活を改善することで国民の共産党に対する支持をつなぎとめようとした。
 習近平は、ナショナリズムを活用し、
 「富強の中国の復興」を内容とする「中国の夢」(その後、「人民の幸せの実現」が付け加えられた)を実現することで、共産党の統治の下支えを図ろうとしている。
 ナショナリズムは自己主張の強い対外強硬姿勢となりがちだ。
 しかし中国共産党の統治は、「経済の持続的成長」が止まれば、それで終わる。
 グローバル経済の中で経済発展を続けようとすれば、平和な国際環境は不可欠であり、対外強硬姿勢は調整せざるを得ないのである。
 だから調整の兆しを見せている。
 だが、それが本当かどうかは、中国の国内情勢が決める。

■中国外交にも余裕はない

 中国共産党の統治システムは、
 トップに権力が集中しないとうまく回らない仕組みになっている。
 習近平に権力を集中させないと中国の統治がうまくいかないので、昨年秋の党中央委員会において「習近平を“核心”とする党中央」と決めた。
 しかし、肩書があれば何でもうまくいくというほど世の中は甘くはな
 この「力」の内容は様々だが、一言でいえば物事を実現できる「力」のことだ。

 私の判断では、習近平はこの「力」がまだ足りないように見受けられる。
 中国は実に多くの問題を抱えており、それは改革を通じてのみ解決できる。
 改革は必ず既得権益層の抵抗にあう。
 それを突破する「力」が必要なのだ。
 それは習近平に忠誠と協力を誓う人たちの数の多寡で決まる面がある。
 だから今秋の第19回党大会において自派の数を増やしたいのだ。
 もちろん「力」を削られる側は抵抗する。
 中国共産党は、相当、緊張した状態に今ある。

 そういうときには理性的な対外政策はやりにくくなる。
 やはり強硬論が通りやすいのだ。
 そうした国内の制約の中で、習近平は対外政策のかじ取りをしている。
 その中でトランプが習近平に追い打ちをかければ、習近平は反撃するしかない。
 米中関係は実に不確実なのだ。



Yahooニュース 2/5(日) 11:54 遠藤誉  | 東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士
http://bylines.news.yahoo.co.jp/endohomare/20170205-00067372/

マティス国防長官日韓訪問に中国衝撃!――「狂犬」の威力

  マティス国防長官の日韓訪問に衝撃が走った。
 中国では連日のように特集番組を組み、アメリカこそが地域の平和を乱していると攻撃。
 しまいにはCCTVにキッシンジャーを登場させて、アメリカを批判させる始末だ。

◆東北アジア安全保障を重視したトランプ政権

 マティス国防長官が最初の訪問国として韓国と日本を選んだ。
 トランプ政権の閣僚という観点から見ても、初めての外国訪問である。
 おまけに国務長官ではなく国防長官が、最初に外国を訪問し、かつヨーロッパではなく韓国と日本を選んだという意義は非常に大きい。
 トランプ政権のアジア太平洋地域に対する安全保障問題への関心の高さをうかがわせるからだ。

 大統領選期間中、「世界の警察にならない」と何度も宣言することによって中国を喜ばせていたトランプ氏が、当選するや、矢継ぎ早にレックス・ティラーソン国務長官、ジェームズ・マティス国防長官、あるいは新設した国家通商会議のピーター・ナバロ委員長など、錚々たる対中強硬派で布陣を揃えたことだけでも、中国にとっては十分に衝撃的だった。
 加えて、政権誕生から2週間も経たないで国防長官が韓国日本を訪問するとは何ごとか。
 その戸惑いようも、想像がつくだろう。

 マティス国防長官は、2月2日に訪韓するなり、龍山(ヨンサン)駐韓米軍司令部を視察し、午後には政府ソウル庁舎と大統領府を訪問して、黄教安(ファン・ギョアン)大統領権限代行首相や金寛鎮(キム・グァンジン)国家安保室長と会談した。
 3日には尹炳世(ユン・ビョンセ)外相や韓民求(ハン・ミング)国防相とも会談。
 会談ではいずれも、アメリカが米韓同盟を重視していることを強調し、北朝鮮の脅威に対抗する固い意志に変わりはないことを確認。
 また終末高高度防衛ミサイル(最新鋭迎撃ミサイル)THAADの年内配備も確認しあっている。

 3日の午後には訪日し、安倍首相と対談した。
 国防長官なので「表敬訪問」と位置付けながらも、事実上の日米(首脳級)対談で、10日からの日米首脳会談の準備段階の感がある。
 安倍首相との会談では、韓国同様、日米同盟強化の重要性を強調し、尖閣諸島が日米安保第5条の防衛対象であることを明言した。
 また、北朝鮮への対応とともに、中国の東シナ海や南シナ海における「力による」膨張に対する警戒感とさらなる協力を確認し合った。

◆中国の猛烈な抗議報道――キッシンジャーまで駆り出して

 これに対して中国は尋常ではない抗議を表明し、中央テレビ局CCTVは連日マティス国防長官の訪韓訪日に関する特集番組を組み、1時間ごとに報道して、くりかえしアメリカとともに日本と韓国を批判した。
 韓国に関しては韓国へのTHAAD配備を批判し、日本に関しては釣魚島(尖閣諸島)は「中国古来の領土」と、荒々しい語気で繰り返し主張した。
 またマティス国防長官が在日米軍基地の経費負担増に関して持ち出さなかったことは、結局のところ
 「安倍に日本自身が別の形で軍備を増強することを促し、自衛隊の軍事化を正当化する理由を与えた」
と、ほぼ八つ当たりだ。
 北朝鮮の報道を引用しながら、
 「朝鮮半島の不安定化をもたらしているのはアメリカであり、アメリカが半島から手を引きさえすれば、北朝鮮が核やミサイルの開発をする必要もない。
 原因は全てアメリカにある」
 「アメリカの武器商人のはけ口として、結局のところアメリカは世界のどこかに緊張を生んでいなければ、武器を使用する理由がなくなるので、韓国にTHAADを配備したり、大量の武器を売りつける」
などともしている。

 一方では、日本(の安倍首相)がトランプ政権においては「日米同盟は軽視されているのではないか」と心配しているために、それを安心させるためにマティス国防長官がこんなに慌てて訪韓訪日をしたのだという分析も数多く見られる。
 だからこの訪問は「安倍にとっての“定心丸”だ」というのもある(「定心丸」とは「心臓(精神)を安定させる丸薬」の意味)。
 日本では韓国を最初に訪問したのは日本の国会日程の都合上という情報もあるが、中国では
 「いまアメリカの同盟国にとって最も心配なのが韓国。
 政権も不安定な上に、前政権を打倒するため日韓合意を覆し中国寄りになる可能性がる」
などと分析している。

 ともかく、春節も明けやらぬうちに隣国に現れた「狂犬マティス」の威風堂々とした雄姿に中国は圧倒され、狼狽していることがうかがわれる。
 動画で見られる報道のうち、安定的にネットで見られるものは多くないが、一例を挙げると以下のようになる(それでも画面が出て来なかったときはお許し願いたい。
 しばらく待っていると出てくるものもあり、また▲印をクリックしないと始めないのもある。
 タイトルが異なり内容が同じというものもあるかもしれないが、ネットでも見られそうな番組をいくつか拾ってみた)。
●「米新任国防長官本日訪韓:THAAD、軍事費、北朝鮮核問題などに関心」
●「米新任国防長官本日訪韓 マティスは朝鮮半島情勢の実態を理解するため」
●「米新任国防長官訪日:マティス日本を落ち着かせるため アメリカのアジア太平洋戦略の利益を強固にすることが意図」
などがある。

動画ではない情報は多すぎるが、いくつかの例を挙げると:
●「駐在米軍費用の分担がマティス訪日の焦点:韓日を引き寄せて中国に対抗」(新華網)
●「マティス訪日は釣魚島“共同防衛”のため」(全文)(中国政府の参考消息)
●「米国防長官マティスは、なぜ韓国を先に日本を後に訪問したのか」(日本の報道を紹介しつつ)
●「米国防長官訪日 安倍が“定心丸”を呑みたいため」
●「米国防長官マティス訪日は“定心丸”のため:100%日本と肩を並べて」
などなどがある。

 アメリカこそが地域の平和を乱していると批判を強める中、CCTVは最終手段として、キッシンジャー元国務長官を取材して「“一つの中国”原則は米中関係の基礎であり、不変のものだ」という主旨のことを言わせている。
 特に今年はキッシンジャー氏自身が手掛けた上海コミュニケ(1972年)発表から45周年記念の年。
 中国としてはワラをもつかむ気持ちだろう。
 キッシンジャーが長生きで良かったと中国は思っているにちがいない。
 特集番組では、たとえば韓国にいる「米軍駐留反対派」や「THAAD配備反対派」などの抗議デモをクローズアップするなど、選定的に報道している。
 これらはいずれも、如何に中国が大きな衝撃を受けて動転しているかを示すもので、その意味ではトランプ政権の東アジア戦略は、今のところ功を奏していると言えよう。
 「狂犬」の威力は大きい。

遠藤誉:東京福祉大学国際交流センター長、筑波大学名誉教授、理学博士



東洋経済オンライン 2017年02月20日 尾河 眞樹 :ソニーフィナンシャルホールディングス 執行役員
http://toyokeizai.net/articles/-/158613

トランプ政権により不利益を被るのは中国だ
米国の予算教書発表後は一段のドル高円安へ

 「他国は資金供給と通貨切り下げで有利な立場にある。
 日本は通貨安誘導を繰り広げ、米国はばかを見ている」

 トランプ米大統領がこのように述べ、直接的に日本の為替政策を批判したのは1月31日のこと。
 それからたった10日後の2月10日に行われた日米首脳会談では、意外にも米国から日本に対して通商・為替政策に関する注文はいっさいなかった。
 そればかりか、同首脳会談は日米両国の友好関係を世界に向けて明確にアピールする場となった。

 共同声明には、
(1)日米同盟:尖閣問題や北朝鮮問題など安全保障上の問題に関する米国のコミットメント、
(2)日米経済関係:金融・経済分野における利益共有や「3本の矢」の推進、日米2国間でのTPP(環太平洋経済連携協定)に代わる貿易・投資の枠組みの検討、
(3)本年中のトランプ大統領の訪日、
などが盛り込まれた。

 また、麻生太郎副総理とペンス副大統領をトップとする「日米経済対話」の新設で合意し、
(1)財政政策、金融政策などマクロ経済政策の連携、
(2)インフラ、エネルギー、サイバー、宇宙などの分野での協力、
(3)2国間の貿易に関する枠組み、
の3項目について協議することが決まった。

■「インフラ投資銀行」の構想具体化に注目

 トランプ大統領によるツイートや気まぐれな発言は今後も続きそうだが、それとは別に、麻生副総理とペンス副大統領といういわば政策のプロ同士で協議できる場が確保できたことは、為替市場にとっても不要なボラティリティーが避けられるという意味でプラスである。
 今回の会談は日本政府にとって満額回答を得た格好であり、120点の結果だったといってよいだろう。
 警戒感から、同首脳会談前にはドル円は一時1ドル=111円台まで円高が進んだが、週明けには安心感が広がり、114円台まで回復する場面も見られた。

 同首脳会談ではまだ不在だったスティーブン・ムニューチン財務長官も、13日にようやく米議会で就任が承認された。
 ムニューチン財務長官の就任によって、財政政策の策定が今後急速に進展する可能性もある。
 2~3月中にトランプ政権から議会に提出される予算教書の内容に、今後市場関係者の注目が集まるだろう。

 また、インフラ投資を促進するための「インフラ投資銀行」について、トランプ政権のスタッフで最初に設立の方向性を示したのがムニューチン氏だったことを考慮すれば、ムニューチン財務長官の就任によって、今後、インフラ投資銀行の構想は具体化すると考えられる。

■米国の景気拡大とインフレでドル円は120円へ

 トランプ大統領は2月9日、法人税制の見直しについて「驚異的な」計画を2~3週間以内に発表すると述べた。
 スパイサー報道官も、「1986年以降で最も包括的な法人税制・個人所得税制を作成中」であることを明らかにしている。
 同報道官は、
 「われわれが海外との競争に直面しているのは米国の税制が理由だ。
 米国の税制は、国内にとどまりたくない企業に有利なもので、大統領もその点を認めている」
との見解を示した。

 これを見るかぎり、現在策定中の税制案は、ライアン米下院議長が支持している「国境税調整」をベースにした内容になるのではないかと思われる。
 共和党案の国境税調整は、
(1)米国への輸入品に対して一律20%の税金を課す、
(2)米国から輸出して得た利益については課税が免除される、
(3)国内から上がった利益にのみ20%の法人税がかかる、
という内容で、
★.事実上の関税引き上げと、
★.輸出の免税、
★.法人税率の引き下げ(35%→20%)
となる。

 これに加え、所得税減税なども検討されており、実現すれば米国に景気拡大とインフレをもたらす公算は大きい。
 米金利上昇に伴い、今後緩やかにドル高・円安が進行すると見ており、ドル円の2017年末予想値は120円に置いている。

 日米首脳会談の結果をみれば、米国が日本の為替政策を再び直接的に批判し、ドル安誘導する可能性は当面低いと想定される。
 しかし、それでもトランプ政権の政策によって、間接的に円高が進行するリスクもあるため、警戒は必要である。
 そうした点で、筆者が最も警戒しているのは、中国のリスクだ。

■トランプ政権の政策で、最も不利益を被るのは中国だ

 第一に、中国にとって最大の輸出先である米国で国境税調整が実施されれば、中国経済にとっては明らかにマイナスとなる。
 中国の輸出先として、米国のシェアは現在「17%」と、国としてはトップである。
 地域としては欧州連合(EU)の16%がこれに続くが、
 その米国で中国のすべての製品に対して事実上一律20%の関税が課されるとなれば、中国の輸出には多大なインパクトを与えよう。
 中国経済にはようやく回復の兆しが見えつつあるが、再び腰折れするようなら投資家心理を冷やす要因となるだろう。

 第二に、トランプ政権になって初めての「為替報告書」が4月に公表されるが、ここで米財務省がはたして中国を「為替操作国」に認定するかどうかにも警戒したい。
 トランプ大統領は選挙中、繰り返し「中国を為替操作国に認定する」としてきた。
 中国は現在、資本流出に歯止めをかけようと人民元「買い」介入を実施しており、このため中国の外貨準備高は減少し続けている。
 自国通貨買いを行っている国を「通貨安誘導で為替操作国に認定する」のは現実的ではないが、今回の報告書で中国と韓国を為替操作国に認定するのではないかとの報道も一部にある。
 万一そのような事態になれば、一時的とはいえ、人民元の急騰とともに円高が進行する公算が大きい。

 第三に、米国の利上げによって一段とドル高が進行した場合、
 対ドルで人民元安が加速すれば、中国からの大規模な資本流出を促す可能性がある点だ。
 1月末時点の中国の外貨準備高が3兆ドルを割り込んだが、このまま減少し続ける中で人民元安・ドル高が進行した場合には、
 「中国当局は人民元相場をコントロールできていないのではないか」
 「中国からの資本流出に歯止めがかからなくなるのではないか」
といった懸念がクローズアップされ、2015年8月に見られたような中国株の急落につながる可能性も捨てきれない。
 この場合、2015年もそうだったように、リスクオフによって一時的とはいえドル円でも円高が進行する可能性はあるだろう。

■円高進行時には対策が限られることに注意

 日本のリスクは、上述したような円高に歯止めをかける策が明確には見当たらないことだ。
 円高が進行したからといって円売り介入に踏み切れば、それこそ日本が「為替操作国」となる。
 では、日本銀行が追加緩和をできるかというと、マイナス金利の深掘りや、10年債利回りのターゲット引き下げなどは、日本の金融株にマイナスの影響を与える可能性が高く、実施しにくいのが実情だ。
 では量的緩和の拡大に踏み切るかといえば、国債の買い入れに限界があるからこそイールドカーブ・コントロールを導入したにもかかわらず、再び「金利」から「量」に政策の軸足をシフトさせることは、政策の持続性を考えれば困難だろう。

 足元、米国のインフレと日本のイールドカーブ・コントロールが奏功し、ドル円は堅調地合いを保っている。
 この流れは基本的に変わらないと見ており、ドル円は2月中は110~115円のレンジ相場を続けたあと、予算教書などトランプ政権の財政政策が公表されれば、期待インフレ率の上昇とともに緩やかに115円を超えるだろう。
 ただ、万一海外の政治要因や何らかのショックで急速に円高が進行し、100円を割り込むなどした際に、日本政府や日銀が講じられる対策が限られる点には、注意しておくべきかもしれない。




【2017年 大きな予感:世界はどう変わるか】






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