『
読売新聞 2017年02月11日 14時05分
http://www.yomiuri.co.jp/matome/20170208-OYT8T50071.html
日米首脳が会談~共同声明を発表
● 安倍首相は10日午後(日本時間11日未明)、米ホワイトハウスでトランプ米大統領と首脳会談を行いました。
世界中が注目する一連の動きを、リアルタイムでまとめてお伝えします。
■安倍首相、トランプ氏別荘で夕食会…夫人も交え
【パームビーチ(米南部)=後藤香代】安倍首相は10日夕(日本時間11日午前)、トランプ大統領の別荘があるフロリダ州パームビーチに到着した。
日米首脳会談が行われたワシントンからは、大統領専用機「エアフォース・ワン」にトランプ氏と同乗した。
●首相はその後、トランプ氏の別荘で昭恵夫人、メラニア夫人も交えた夕食会に臨んだ。(2月11日)
■安倍首相のフェイスブックから
<<略>>
■共同記者会見での安倍首相発言要旨
安倍首相は10日午後(日本時間11日未明)、トランプ米大統領との会談後、ホワイトハウスで共同記者会見に臨んだ。
◆・冒頭発言
「就任100日という忙しいタイミングで、ホワイトハウスにお招きいただいたことを心から感謝を申し上げる」
「大統領は素晴らしいビジネスマンだが公職の経験はない。
それでも厳しい選挙戦を勝ち抜き、大統領に選出された。
これこそ民主主義のダイナミズムであり、大統領就任を心から祝福したい」
「米国は世界で最もチャンスにあふれた国だ。
多くの日本企業が全米各地に工場を作った。
昨年も日本から米国へ新たに1500億ドルを超える投資が行われ、大きな雇用を生み出した」
「トランプ大統領のリーダーシップで、今後大規模なインフラ投資が進められるだろう。
日本は高い技術力で大統領の成長戦略に貢献できる。
そして、米国に新たな雇用を生み出すことができる」
「日米関係を一層深化させる方策について、今後、麻生副首相とペンス副大統領との間で分野横断的な対話を行うことで合意した」
「急速に成長をとげるアジア太平洋地域において、自由な貿易や投資を拡大することは日米双方にとって大きなチャンスだ。
自由かつルールに基づいた公正なマーケットを日米両国のリーダーシップのもとで作り上げていく」
「アジア太平洋地域の平和と繁栄の礎は強固な日米同盟である。
その絆は揺るぎないものであり、私と大統領の手でさらなる強化を進めていく」
「尖閣諸島が安保条約第5条の対象であることを確認した」
「在日米軍の再編をこれまで通り進める。
普天間飛行場の全面返還を実現すべく、唯一の解決策である辺野古移設へ向け、日米で協力して取り組んでいく」
「北朝鮮に対しては、核および弾道ミサイル計画を放棄し、さらなる挑発を行わないよう強く求める。
拉致問題解決の重要性についても、大統領と完全に一致した」
「東シナ海、南シナ海、インド洋、いずれの場所であろうとも、航行の自由と法の支配に基づく国際秩序が貫徹されなければならない。
日本と米国は力の行使や威嚇による原状変更の試みに反対する」
「あらゆる形態のテロリズムも強く非難し、テロとの戦いにおいて協力を強化していくことで合意した。日本は日本の役割をしっかり果たす」
◆・質疑
――米国がTPP(環太平洋経済連携協定)から離脱する意向を示したことは間違いだったと思うか?
「TPPについては、我々は大統領の判断をよく承知している。
今後の貿易や投資、経済関係をどう発展させていくかについては、麻生副首相とペンス副大統領の間で枠組みを作ってしっかり議論させ、よい結果が出てくると楽観している。
アジア太平洋地域に自由でフェアなルールを作り、日米がリードしていく、その重要性は変わっていない」
――自動車や為替政策をめぐってどのようなやりとりがあったか。
また、安倍首相にとって偉大な同盟国アメリカとはどういう国か?
「トランプ政権の登場で日米の経済関係に新たな創造が始まる。
そのような強いメッセージを打ち出すべく、私から新たな経済対話の枠組みを立ち上げることを提案し、先ほど合意した。
大統領と私との間では、日米間の経済関係については、麻生副首相とペンス副大統領、二人の責任者のもとで、しっかりとした成果が出てくることを期待している。
為替については、専門家である日米の財務大臣間で緊密な議論を継続させていくことになった。
世界が不確実性を増す中で、米国が偉大な国となり、強い米国になることは日本にとっても大きな利益だ。
米国が偉大な国となることを我々は歓迎したいと思う」
(2月11日)
■トランプ大統領のツイッターから
<<略>>
■「自由で公正な貿易で経済関係強化」共同声明
日米両政府は10日(日本時間11日)、ワシントンでの安倍首相とトランプ大統領との首脳会談後に共同声明を発表した。声明では、首相の招待により、トランプ氏が年内に日本を公式訪問することが盛り込まれた。
経済分野では、「両首脳は自由で公正な貿易のルールに基づいて、両国と地域における経済関係を強化する」と明記された。(2月11日)
■日米首脳、尖閣への安保条約5条適用を確認
安倍首相は10日午後(日本時間11日未明)、トランプ米大統領とホワイトハウスで会談後、共同記者会見に臨み、沖縄県・尖閣諸島について「(米国の対日防衛義務を定めた)日米安全保障条約5条の対象であることを確認した」と明らかにした。
トランプ氏も「日本の安全保障に関与していく」と強調した。
首相は、日米間の貿易や投資を促進するため、麻生副総理兼財務相とペンス副大統領をトップとする協議を新たに始めることで合意したことも明らかにし、トランプ氏も「貿易を自由で公平なものにしたい」と期待感を示した。(2月11日)
■【トランプ大統領関連の深読みチャンネル】
・トランプ氏の力でアメ車は日本で売れ始めるか(佃モビリティ総研代表・佃義夫)
・映画から読み解く「メキシコ国境の壁」(国立民族学博物館・鈴木紀)
・キーワードで読み解く トランプ就任演説(読売新聞調査研究本部・岡本道郎)
・トランプ大統領がセレブから徹底的に嫌われる理由(ライター・水次祥子)
・米国は「シリア和平」のバスに乗り遅れるのか?(中東調査会・高岡豊)
・すぐに謝る日本人、なかなか謝らないトランプ大統領(コミュニケーション・ストラテジスト・岡本純子)
◆・写真特集はこちら
wCO026531ww.yomiuri.co.jp/feature/photo/etc/glist.html?gr=
2017年02月11日 14時05分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
』
『
AFP=時事 2/11(土) 6:34配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170211-00000003-jij_afp-int
日米両首脳、尖閣への安保条約適用を確認
【AFP=時事】ドナルド・トランプ(Donald Trump)米大統領は10日、ホワイトハウス(White House)で会談した安倍晋三(Shinzo Abe)首相に対し、中国が領有権を主張している尖閣諸島(Senkaku Islands、中国名:釣魚島、Diaoyu Islands)が日米安全保障条約の適用範囲に含まれると言明した。
過去に日米安保条約への疑念を繰り返し表明していたトランプ大統領だが、安倍首相と共に署名した共同声明では、米国が日本の安全保障に関与していく方針を再確認した。
両首脳は「同諸島に対する日本の施政権を弱体化させるいかなる一方的な行動にも反対する」と宣言。
この声明が中国の反発を招くことは必至だ。
先日来日したジェームズ・マティス(James Mattis)米国防長官は、同諸島をめぐり日中間で軍事衝突が起きた場合は日本を支援すると約束しており、中国は米国がアジア地域の安定を脅かしていると警告していた。
』
『
Record china配信日時:2017年2月12日(日) 18時10分
http://www.recordchina.co.jp/a163650.html
改憲と軍事力増強に道を開いた安倍首相の訪米―米華字メディア
2017年2月10日、米華字メディア・多維網は記事
「安倍訪米を中国は警戒すべきだ
=トランプ大統領の誕生は日本のコントロールを弱める可能性も」
を掲載した。
安倍晋三首相は9日から13日にかけて米国を訪問する。
10日にはトランプ大統領と初の日米首脳会談が行われたほか、翌11日にはともにゴルフをプレーするなど個人的関係を深める予定だ。
安倍首相は日本の投資によって米国に70万人もの雇用を生み出すと約束するなど、トランプ大統領に大きなプレゼントを提供し関係強化に躍起になっている。
その見返りは日本の改憲という形でもたらされる可能性もある。
安倍首相が目標とする改憲がこれまで実現しなかったのは、オバマ政権が明確な支持を与えなかったことが大きい。
13年に安倍首相が訪米した際には改憲プランについて詳細に説明したにもかかわらず、その後の共同記者会見でオバマ大統領(当時)が言及することはなかった。
一方で「アメリカ・ファースト」を掲げるトランプ大統領にとっては、日本が軍事力を強化し米国の責務が軽減されるのは歓迎すべき事態とも言える。
もし米国のコントロールが弱まったならば、日本の防衛力が「変質」するのは時間の問題と言えるだろう。
』
『
朝鮮日報日本語版 2/12(日) 22:10配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170212-00001730-chosun-kr
(朝鮮日報日本語版) 「尖閣保護」トランプに「米に雇用70万人」で応じた安倍
10日(現地時間)にワシントンで開かれたドナルド・トランプ米大統領と安倍晋三首相の初の首脳会談は、両国が安全保障と経済協力を交換した格好となった。
安倍首相は米日安全保障同盟の強化を再確認することで、中国と領有権を争う尖閣諸島(中国名:釣魚島)周辺での武力衝突発生時に米軍が介入するという約束を取り付けた。
その代わりに安倍首相は米国に70万人の雇用を創出することをトランプ大統領に約束した。
トランプ大統領は首脳会談後の記者会見で「両国間の絆と友情は非常に深い」として「今回の政権でも両国間の絆をさらに強固にしていく」と述べた。
また、安倍首相との友好もアピールし
「われわれはケミストリー(相性)も本当によい。
この状況が変わることはおそらくないだろう」
とも述べた。
両国はこの日採択した共同声明で
「揺らぐことのない米日同盟は、アジア太平洋地域の平和・繁栄・自由のための礎」
だとして
「核と通常戦力の双方の軍事力を動員して日本を防衛するという米国の防衛公約は揺るぎない」
とした。
「米国はアジア太平洋地域で存在を強化し、日本は米日同盟におけるより大きな役割と責任を果たす」
とも述べた。
安全保障分野での米国側からの約束に対し、日本は経済協力という大きな手土産で応じた。
安倍首相は70憶ドルを投じて米国に70万人の雇用を創出すると約束。
また、米国の求める「公正な貿易」のために、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)の代わりに2国間の自由貿易協定(FTA)を検討することでも同意。
トランプ大統領は
「TPPのような多国間貿易体制では米国と日本が双方の利益を最大限保障することはできない」
として、2国間協定の締結の必要性を提起したという。
両首脳は「中国けん制」についても認識を共にした。
共同声明では
「両首脳は、尖閣諸島が米日安全保障条約第5条(武力衝突時の自動介入)の対象に該当することを確認した」
と明言。
今月3日にマティス米国防長官が東京で安倍首相と会談した際の約束を再確認した格好だ。
トランプ大統領は中国の為替操作問題にも言及し
「(中国の)通貨切り下げについては私がこれまでも不満を申し上げてきたが、
米国はすぐに『公平なグラウンド(競争の場)』に立つことになるだろう」
と述べた。
これは、
★.米国が近く中国を為替操作国に指定するか、
★.対中貿易に関して強硬な報復措置を取る
ことを示唆したものと分析されている。
中国メディアは米日首脳会談の結果について、強く批判した。
中国紙・環球時報は11日の論評で
「安倍首相は今回の会談のために70万人の雇用などを準備したが、トランプ大統領を満足させるのは難しい」
として
「米国はこのような『安い価格の』提案を受け入れはしないだろう」
と書いた。
官営の英字紙「チャイナ・デーリー」は
「アジアの国家首脳のうち安倍が最初に米国と首脳会談を実施したのは、米国が安倍の体面を保ってやったに過ぎない」
として「日本国内でも今回の会談を『朝貢外交』と批判する世論がある」と指摘した。
』
『
ダイヤモンドオンライン 2017年2月13日 北野幸伯 [国際関係アナリスト]
http://diamond.jp/articles/-/117755
安倍・トランプ会談大成功の理由を安保・経済・戦略から読み解く
安倍総理は2月10日、米国のトランプ新大統領と会談した。さまざまな面で、今回の会談は大成功だったと言える。
世界中が注目したこの会談で話し合われた内容を分析し、今後の日本と世界にどのような変化をもたらすのか、考えてみよう。
(国際関係アナリスト 北野幸伯)
■「別荘」「ゴルフ」はトランプの日本重視の表れ
まずは、会談の中身ではなく「環境」について書こう。
10日のワシントンでの首脳会談後、安倍夫妻とトランプ夫妻は、大統領専用機で、フロリダ州パームビーチにあるトランプの別荘に移動した。
安倍夫妻は同別荘に2泊し、トランプとゴルフを楽しんだ。
「別荘」「ゴルフ」は、トランプが安倍総理を重視している証拠である。
そのことは、前任オバマ大統領の態度と比べればわかる。
安倍氏が総理に就任したのは、2012年12月26日。
「リベラル」のオバマ大統領(当時)は、「保守愛国」の安倍総理を嫌っていて、なかなか会おうとしなかった。
ようやく初会談が実現したのは、13年2月22日。
しかし、会談は、わずか1時間という「冷遇ぶり」だった。
それとは対照的だったのが、オバマの習近平への「厚遇ぶり」だ。
13年6月7日、オバマは習近平と初会談した。
注目されたのは、会談場所がホワイトハウスではなく、カリフォルニア州サニーランズにある農園だったこと。
そして、会談時間が1泊2日で計8時間だったこと。
オバマが当時、安倍総理より、習近平を重視していることは明白だった。
気分をよくした習は当時、こんな発言をしている。
「世界は、中国と米国が牽引していくG2時代を迎えた。
これからは太平洋の東側、すなわち米大陸と欧州は、米国が責任を持って管理する。
一方の太平洋の西側、すなわち東アジアは、中国が責任を持って管理する。
つまり東アジアのことは、基本的に中国に任せてほしい。
そのような『新型の大国関係』を築こうではないか!」
つまり、東アジアに位置する日本は、「中国の管理下に入る」と言っていたのだ。
このように、米国大統領がどこの国の首脳を重視しているかは、「どこで会うか?」「どのくらいの長さの時間を一緒に過ごすか?」でわかる。
だから、安倍総理夫妻を別荘に招き、共にゴルフをするのは、トランプが安倍総理を「重視している」という意味である。
そのことを嘆く人もいるだろうが、普通の国民は素直に喜んでいい。
■「何兆円もの価値」がある!
<<共同声明の中身>>
次に会談の内容を見てみよう。
トランプ氏は大統領選挙戦中、日本について仰天発言をし、世界を驚かせた。
★.1つは、「日本が在留米軍駐留費を増やさないのであれば、米軍を撤退させる」。
★.もう1つは、「日本が核兵器を持つのは悪いことではない」。
この発言で、日本人はトランプを恐れた。
首脳会談の結果はどうだったのか?
「在留米軍駐留費を増やせ」という話は、まったく出なかった。
そして、首脳会談最大の成果は、「共同声明」に記された以下の部分である。(太線筆者)
<両首脳は、日米安全保障条約第5条が(沖縄県の)尖閣諸島に適用されることを確認した。
両首脳は、同諸島に対する日本の施政を損なおうとするいかなる一方的な行動にも反対する。
日米両国は、東シナ海の平和と安定を確保するための協力を深める。>
実をいうと、この一文には、「何兆円もの価値」がある。
説明しよう。
「尖閣有事の際、米国は絶対日本を守りません!」
と断言する「専門家」はたくさんいる。
「米国が、日本の離島のために、中国と核戦争になるリスクを犯すはずがない」
というのだ。
実際、心配な事例もある。
ジョージア(旧グルジア)では03年、革命が起こり、米国の傀儡サアカシビリ政権が誕生した。
そして、ジョージアは08年8月、ロシアと無謀な戦争を行い、大敗北している。
この時、米国は、もちろんロシアを非難したが、軍事力を使ってジョージアを助けることはなかった。
結果、ジョージアは、南オセチア、アプハジアを事実上失った。
ロシアが、両自治体を「国家承認」したからだ。
さらに、ウクライナの例もある。
14年2月、ウクライナで革命が起こり、親ロシア・ヤヌコビッチ政権が倒れ、親欧米傀儡政権が誕生した。
同年3月、ロシアは、クリミアを併合。
同4月、ロシア系住民の多いドネツク州、ルガンスク州が独立を宣言し、内戦が勃発した。
ここでも米国は、ウクライナの「親米傀儡政権」を救うために軍隊を動かすことはなく、ウクライナは事実上、クリミア、ドネツク、ルガンスクを失った。
もちろん、ジョージアやウクライナは、米国の軍事同盟国ではなく、米国が法的に両国を守る義務はない。
しかし、米国の「冷淡さ」は、日本国民に不安を与える。
■「尖閣有事」を幾度も米国に救ってもらった日本
とはいえ、この件に関する最重要ポイントは「尖閣有事の際、米国は本当に日本を守るか?」ではない。
実をいうと、そんなことは誰にもわからない。
最大のポイントは、
「尖閣有事の際、『米国が動くかもしれない』と中国が信じていること」
なのだ。
米軍が出てくれば中国に勝ち目はない。
だから習近平は、尖閣侵攻を躊躇するだろう。
これは「理論上」の話だけではなく、実際に証明された事実である。
★.10年9月、「尖閣中国漁船衝突事件」が起こった。
どう見ても中国が悪いのだが、同国は「レアアース禁輸」などの制裁を次々と発動し、日本と世界を驚かせた。
日中関係は極度に悪化したが、日本を救ったのが米国である。
クリントン国務長官、ゲーツ国防長官、マレン統合参謀本部議長、オバマ大統領などが、次々と日本を支持する声明を出し、「尖閣は日米安保の適用範囲」と断言した。
これで、中国はおとなしくなったのだ。
★.その後の12年9月、日本政府は尖閣を「国有化」し、日中関係は「戦後最悪」になった。
中国国防相は、日本に「報復する」と宣言し、戦争になる可能性すらあった。
実をいうと、この時も日本は米国に救われている。
習近平(当時、国家副主席)は12年9月19日、米国のパネッタ国防長官と会談した。
習は、さんざん日本を非難した後、「米国が釣魚島(=尖閣)の主権問題に介入せず、事態を複雑化させないことを望む」といった。
要するに、「この問題に首を突っ込むな!」と脅迫したのだ。
するとパネッタは、何と答えたか。
「尖閣諸島は日米安保条約の適用範囲内であり、軍事的な衝突に発展すれば、米国も関与せざるをえない」
この時、パネッタが「OK!米国は不干渉で行くよ!」と答えたらどうなっただろう?
中国は、武力を使って尖閣を奪った可能性も十分にあったと言える。
これら、比較的最近の例でわかるのは、
★.米政府高官の「尖閣は日米安保の適用範囲」という言葉が、
中国に対する「最大の抑止力」になっているということだ。
米新政権では、すでにマティス国防長官、ティラーソン国務長官、そして、今回の会談でトランプ大統領が「尖閣は日米安保の適用範囲」と断言している。
このことは、日本にとって本当にありがたいことであり、「安倍内閣の大きな成功」ともいえる。
■トランプの日本批判は聞かれず
経済問題「棚上げ」に成功
外交における主な国益とは、「安全保障」と「経済」である。
安保面では大成功だったが、「経済」はどうだろうか?
結論から言うと、こちらも「大成功」といえるようだ。
日米経済関係について、トランプは、大統領選挙戦中から日本を非難してきた。
日本は「円安誘導」を行い、貿易を「不均衡」にしているというのだ。
日銀の「量的緩和」が円安の原因になっていることは事実だが、米国も08年から量的緩和を繰り返すことで、経済危機克服に成果を上げてきた。
日本は米国のやり方を真似ただけであり、本来あれこれ言われる筋合いはない。とはいえ、「自分がやるのはいいが、他国がやるのは許せない」というのが米国である。
では、米国の貿易収支はどうなっているのだろうか?
米商務省によると、
★.16年米国の対日貿易赤字は、689億ドル(約7兆7000億円)だった。
自動車関連の赤字は、526億ドルに達する(赤字額の約3/4にあたる)。
この赤字額は、中国に次いで世界2位である。
これまでさんざん、経済政策で日本を非難してきたトランプだが、今回の会談では、特に安倍総理に噛み付くようなことはなかった。
日米は、貿易や投資・雇用拡大策を協議するための「経済対話」を創設することで合意。
麻生副総理兼財務相とペンス副大統領が、率いることになる。
新たな経済対話のテーマは、以下の3点だ。
1.:財政、金融などマクロ経済政策の連携
2.:インフラ、エネルギー、サイバー、宇宙での協力
3.:二国間防衛枠組みの協議
トランプは大統領就任直後に「TPP離脱」を決めた。
日米貿易を今後どうしていくのか、「自由貿易協定」の交渉に入るのかが、注目される。
いずれにしても安倍総理は、「安保問題と経済問題を切り離すこと」「経済問題を事実上棚上げすること」に成功した。
■「共通の敵」中国の存在が日米関係を緊密にする
次に「戦略」の視点から、今回の訪米を考えてみよう。
外交における国益は、主に「安全」と「経済」(金儲け)だと書いた。
では、この2つ、どちらがより大事なのだろうか?
実は答えは明白で、「安全」の方が、「経済」より上なのだ。
なぜかと言えば、これは結局「お金(経済)と命(安全)どっちが大事?」という質問だからだ。
答えは明らかで、「命」の方が大事だ。
そして、過去の例を見ても、「共通の敵」がいるとき、2つの国は一体化する。
「最重要課題=敵に勝つこと」になり、その他大部分の問題は、先鋭化しない。
たとえば、「冷戦時代」を見てみよう。
日本と米国には、ソ連という巨大な敵がいた。
米国の大戦略は、「日本と西欧を味方につけてソ連を封じ込めること」だった。
つまり、日本と米国は「大戦略」が一致していたのだ。
両国には、対立点もあった。
日本の対米貿易黒字が膨らみ、問題になっていったのだ。
それでも、最重要課題は「ソ連」であり、日米関係は概して良好だった。
しかし、1991年末にソ連が崩壊すると、状況は一変する。
ソ連という「共通の敵」が消滅し、日本と米国には、共通の大戦略が不必要になったのだ。
安全面での懸念が遠のいた結果、金儲けが安全より優先されることになった。
米クリントン政権(当時)は90年代、「日本異質論者」を重用し、遠慮なく日本を叩いた。
それだけが原因ではないが、日本経済は「暗黒の10年」とも「20年」ともいわれる低迷時代に突入していった。
しかし、時代は変化している。
2015年3月、米国と「特別な関係」にあるはずの英国は、米国の制止を無視し、中国主導「AIIB」への参加を決めた。
そして、ドイツ、フランス、イタリア、イスラエル、オーストラリア、韓国などが、続々と「AIIB」に入っていった。
「親米諸国は、もはや米国ではなく中国の言うことを聞く!」
この事件の衝撃は、米国を目覚めさせた。
こうして、世界は再び「冷戦時代」に向かいはじめた。
今度の主役は、米国と中国である。
米国は再び「大戦略」を必要としている。
その基軸は、先月書いたように「ロシアと和解し、中国と対峙する」である(詳細はこちらの記事を参照)。
そして、
★.欧州一のパートナーは「EU離脱」を決めた英国であり、
★.アジアでは日本との協力
が最重要になる。
こういう新冷戦構造の中で、「安保」は「経済」より上になる。
それで、「米ソ冷戦時代」にそうであったように、日米関係は好転していくのだ。
このような背景、時流もあり、今回の安倍訪米は「戦略的大勝利」となった。
経済問題では対立を避け、「尖閣は日米安保の適用範囲」と保証させた。
日本は、今回の首脳会談で、より安全になったのである。
■安倍総理の「成功」は油断すればすぐに水の泡に
とはいえ、油断は禁物だ。
既述のようにオバマは13年、安倍総理を冷遇し、習近平を厚遇した。
しかしその後、この3人の関係は急転していく。
14年3月、ロシアがクリミアを併合すると、オバマは安倍総理に接近しはじめた。
「対ロ制裁」に日本を加える必要があったからだ。
15年3月、「AIIB事件」で米中関係は最悪になる。
一方、AIIB参加を見送った大国・日本の地位は、米国内で高まった。
そして、翌4月、安倍総理の「希望の同盟演説」で日米関係はさらに好転。
オバマをして、「日米関係がこれほど強固だったことはかつてなかった」と言わしめた。
その一方で、オバマと習近平の関係は、最悪になった。
このように、わずか2年で、日米中、安倍・オバマ、習の関係は変転した。
だから安倍総理も日本国民も、喜んでばかりいられない。
ちなみに、トランプは安倍総理との会談の前日、習近平との電話会談で「『一つの中国』の原則を尊重する」と明言、中国政府を歓喜させた。
トランプがどんな意図で言ったかはまだ分からないが、個人間の信頼関係と違って、
国家間ではこれまで見てきたように、「国益」がすべてに優先する。
日本も今回の会談の成功が永続するという保証はどこにもない。
安倍総理には、「勝って兜の緒を締めよ」という言葉を贈りたい。
』
【2017年 大きな予感:世界はどう変わるか】
0 件のコメント:
コメントを投稿