2017年2月7日火曜日

韓国は(6):北朝鮮「中距離弾道ミサイルの発射実験に成功」

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● google画像から

 高い角度で打ち上げたため、飛行距離は550kmだが、平時の角度(45度)で打ち上げるとその飛行距離は2000kmになるという。
 ということは当然、北京と東京・沖縄は楽々射程範囲に入ってくる。

 この北朝鮮のミサイル発射成功はいくつかのテーマを浮き彫りにさせる。
★.もはや中国は北朝鮮をコントロールできなくなっている。
 もしできていたら、北京を狙えるようなミサイルの開発を許すはずがない。
★.アメリカが韓国に配備を進めるサードの大義名分が整ってきている。
 中国はこのことに強く反発できなくなる。
★.日本は遊撃ミサイルの開発に前向きにならざるを得なくなる。
 日本が防衛力強化に動き出すことへの援助圧力になる。
などか。


ロイター  2017年 02月 14日 12:06 JST
http://jp.reuters.com/article/northkorea-missiles-range-idJPKBN15T09I

北朝鮮の新型ミサイル、射程距離は2000キロ=聯合ニュース


●2月14日、韓国の情報機関によると、北朝鮮が12日に発射実験を行った新型弾道ミサイルは射程距離が2000キロを超えると聯合ニュースが報じた。写真はミサイルの発射実験。撮影日は明らかにされていない。提供写真(2017年 ロイター/KCNA)

[ソウル 14日 ロイター] -
韓国の情報機関によると、北朝鮮が12日に発射実験を行った
★.新型弾道ミサイルは射程距離が2000キロを超える
と聯合ニュースが14日報じた。

今回発射された「北極星2型」は、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の技術を利用した固形燃料による新型の中長距離ミサイルで、高度は550キロに達し、約500キロ飛行して日本海に落下した。



ロイター 2017年 02月 12日 14:23 JST
http://jp.reuters.com/article/northkorea-missiles-southkorea-idJPKBN15R03Y

北朝鮮が中距離の弾道ミサイル、
米トランプ政権をけん制

[東京/ソウル 12日 ロイター] -
 北朝鮮は12日午前、同国西岸から弾道ミサイルを発射した。
 ミサイルは日米韓が警戒していた大陸間弾道弾(ICBM)ではなく中距離弾とみられ、500キロ飛んで日本海に落下した。
 韓国軍は「北朝鮮に強硬路線を取る米新政権に対する武力誇示の一環」と分析している。

 日韓両政府によると、ミサイルは同日午前7時55ごろに北朝鮮西岸から発射。
 日本の防衛省によると、約500キロ飛び、北朝鮮の東岸から約350キロの日本海に落下した。
 船舶や航空機への被害、日本の排他的経済水域(EEZ)への落下は確認されていないという。

 今回のミサイル発射は、米トランプ大統領との初会談のために日本の安倍晋三首相が米国を訪問しているタイミングと重なった。
 滞在先のフロリダ州でトランプ氏と会見に臨んだ安倍首相は、「断じて容認できない」と非難。
 「私とトランプ大統領は日米同盟をさらに緊密化し、強化することで一致した」と語った。
 トランプ氏は「米国は100%日本とともにある」と述べた。

 米韓もフリン国家安全保障担当補佐官と金寛鎮国家安全保障室長が電話で協議し、北朝鮮に対してあらゆる選択肢を検討することで一致した。
 トランプ政権関係者によると、追加の経済制裁や、東アジアに展開する米軍に追加の装備を配備する可能性があるという。
 北朝鮮に影響力がある中国への働きかけも強める。

 ミサイルの軌道を追跡した米国防総省は、北朝鮮が発射したのは中距離ミサイルだったと結論づけた。
 日米韓は、米国まで届く可能性のある大陸間弾道ミサイルの発射を警戒していた。
 日本の防衛省は、北朝鮮が昨年6月に新型中距離弾道弾「ムスダン」を発射したときのような、「1000キロを超える特異な高度ではなかった」(稲田朋美防衛相)としている。

 北朝鮮は昨年、20発以上の弾道ミサイルを発射。
 このうち6月に打ったムスダンは、高度1000キロ以上に達し、日本海に落下した。
 推定射程2500─4000キロのムスダンは、本来なら日本列島を超えるが、このときはわざと高い角度をつけて飛ばす「ロフテッド」という手法を使ったと日本の防衛省は分析している。

 日本政府は国家安全保障会議を招集。
 稲田防衛相は記者団に対し、「情報の収集・分析、警戒監視に全力を挙げる」と語った。



AFP=時事 2/13(月) 7:07配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170213-00000000-jij_afp-int

 「中距離弾道ミサイルの発射実験に成功」 北朝鮮国営通信

【AFP=時事】(更新)北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)は13日、同国が12日に地対地中距離弾道ミサイルの発射実験に成功したと報じた。

 同通信によると、発射実験は北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン、Kim Jong-Un)朝鮮労働党委員長が指導した。
 金委員長は「国の圧倒的な力を一層増大させる強力な核攻撃手段を新たに所有したとして、多大な満足の意を表した」という。

 発射したのは「北極星2号(Pukguksong-2)」と伝え、「近隣諸国の安全に配慮して」実施したと主張している。

 韓国国防省によると、ミサイルは12日朝、北朝鮮西部の平安北道(North Pyongan Province)のバンヒョン(Banghyon)飛行場から日本海(Sea of Japan)に向けて発射された。



Yahooニュース 2/13(月) 8:03 辺真一  | ジャーナリスト・コリア・レポート編集長
http://bylines.news.yahoo.co.jp/pyonjiniru/20170213-00067629/

「北極星2型」の発射はICBM発射の前触れか!

 北朝鮮が日曜の早朝にミサイルを発射した。
 朝起きたら、北朝鮮からミサイルが発射されていたといういつものパターンだ。
 ミサイル発射の兆候はあった。
 金正恩委員長が新年辞で「大陸間弾道ロケット(ミサイル)の発射が最終段階に入った」と言明し、予告していたからだ。
(参考資料:北のICBMを迎撃する?しない?できない?)

 しかし、今回発射されたのは、大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではなかった。
 高度が550キロキロメートルで、飛距離が500キロメートルあったことから韓国は当初は「ノドン」の改良型と発表した。
 ところが、しばらくすると「ムスダン」の改良型と軌道修正した。
 ところが、北朝鮮は今朝になって金正恩委員長立会いの下、昨年開発に成功させた潜水艦弾道ミサイル(SLBM)を地上型に改良した中長距離弾道ミサイルの発射実験を行ったとして、このミサイルを「北極星2型」と公表した。

 改良型であれ、なんであれ、米本土に届くICBMでなければ、標的にされていた米国にとっては一安心かもしれないが、過去、3年間の北朝鮮のミサイル発射のデーターに基づけば、北朝鮮のミサイル発射実験は一発で終わったためしがない。
 北朝鮮は2014年には2月21日に射程190キロメートルの短距離ミサイル「KN-09」4発を発射したのをゴーサインに約一週間後の2月27日には射程距離200km以上の弾道ミサイル4発、3月3日にも弾道ミサイル2発を発射している。
 2発とも500キロ以上飛行したことから韓国軍情報当局は「スカッドC」と推定していた。
 翌3月26日にも北方の平安南道・粛川付近から日本海に向けて中距離弾道ミサイル「ノドン」2発を発射していた。

 また、6月に入ってもミサイルの発射実験は続き、26日に「KN-09」を3発発射した後、3日後の29日に射程500キロメートルの「スカッドC」を2発発射していた。
 さらに7月に入っても止めることなく、9日と13日に射程500キロメートルの「スカッドC」をそれぞれ2発発射し、朝鮮戦争休戦協定日の27日にも同じ射程のスカッドを1発発射していた。

 一昨年の2015年は2月6日からミサイルの発射が開始され、3月2日に弾道ミサイル「スカッドC」2発、そして5月9日には潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の水中発射実験を成功させている。
 SLBM発射成功を北朝鮮の国防委員会は「軍事力強化で最絶頂を迎えた一大壮挙」と自画自賛していた。

 昨年2016年は2月7日に人工衛星と称して長距離弾道ミサイル「テポドン」を3年2か月ぶりに発射したのをはじめ3月10日に「スカッドC」を2発、3月18日に「ノドン」を2発発射している。
 また4月から「ムスダン」の発射実験に取り組み6月22日、6度目の実験で成功させている。

 北朝鮮は昨年1年間だけで弾道ミサイルを20数発発射しているが、このうち「ノドン」は4回にわたって計9発、同じく中距離弾道ミサイル「ムスダン」も合計で8発も発射していた。
(参考資料:ICBM発射はイラクへの武力行使に繋がった7度目の国連制裁決議を招く)

 ジョンズ・ホプキンス大学のジョセフ・バミューズ米韓研究所研究員は北朝鮮専門ウエブサイト「38North」に日本海に面した元山のカルマ空港に関する現場の衛星写真を分析した結果として「ICBM発射の兆候がある」との記事を載せていた。

 しかし、今回のミサイルの発射場は元山のカルマ飛行場付近ではなく、中国寄りの平安北道の亀城市のパンヒョン飛行場付近からであったと韓国は発表している。

 仮にデモンストレーションしていたICBMが元山のカルマ飛行場近くの格納庫に納られているならば、再び持ち出して発射する可能性が高い。
 今回の亀城市のパンヒョン飛行場付近でのSLBMの発射成功は、元山のカルマ飛行場からのICBM発射の前座と言えなくもない。
(参考資料:日米共同開発の新型迎撃ミサイルで北朝鮮のICBMを迎撃?)



朝鮮日報日本語版 2/14(火) 10:15配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170214-00000924-chosun-kr

北ミサイル発射がTHAAD韓国配備に追い風、
中国には損失

 中国外務省の耿爽副報道局長は13日の定例会見で、
  「中国は北朝鮮が国連安全保障理事会の決議に違反し、弾道ミサイルを発射したことに反対する」
とした上で、
 「(北朝鮮に対する追加的措置を話し合う)国連安保理の論議過程では責任感を持ち、建設的な形で討論に加わる」
と述べた。

 耿副報道局長は「今回の発射後、中国は北朝鮮にさらに圧力をかけるべきだとする米国の要求はないのか」との質問に対し、「北朝鮮の核・ミサイル問題は根本的に米国と北朝鮮、韓国と北朝鮮の間の問題だ」とし、中国の役割論を否定した。
 今回のミサイルによる挑発と終末高高度防衛ミサイル(THAAD)の韓国への配備の関連についても、
 「THAADを配備したからといって、この問題を解決できるとは思わない」
と述べた。

 一方、人民日報系の環球時報は、北朝鮮の挑発に困惑する中国の内心により率直に触れている。
 同紙は13日、「北朝鮮のミサイル発射はトランプ政権の対応を試したものだ」と題する社説で、
 「北朝鮮の執拗(しつよう)なミサイル発射が米韓にTHAAD配備をより急ぐ名分を与え、
 中国の戦略的利益に損失をもたらした」
とした上で、
 「北朝鮮の核・ミサイル開発は北東アジアにとって頭の痛い問題で、ニンジンでもむちでも北朝鮮を説得することはほぼ不可能だ」
とした。
 同紙はまた、「北朝鮮は核兵器開発が安全を保障すると信じているが、今の北朝鮮はむしろ危険になり、同時に冷戦終了後で最も厳しい制裁を受けている」とも指摘した。

 しかし、中国責任論については、
 「韓米日は中国に対し、『北朝鮮が核開発を放棄するように圧力を強めるべきだ』と要求するが、問題の根本原因を見誤っている」
と主張した。
やはり北朝鮮を中国がコントロールすることはもはやできないと、降参してしまった。
 とすると、もはや中国は朝鮮半島問題の外に身をおくことになってしまうということである。


中央日報日本語版 2/15(水) 7:20配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170215-00000003-cnippou-kr

韓国国家情報院「北朝鮮ミサイル、45度の角度で発射していたら射程距離2000キロ以上に」

 韓国国家情報院は14日、北朝鮮の弾道ミサイル「北極星2号」の発射に関連し、今回の発射角度は89度だったが、もし平時の角度通りに撃っていたら射程距離が2000キロ以上に達していたと明らかにした。

 国会情報委員長の李チョル雨(イ・チョルウ)セヌリ党議員は、この日開かれた非公開情報委懇談会で、国家情報院が
 「北朝鮮が通常の中長距離ミサイル発射角度である45度よりもはるかに高い89度で発射して550キロまで飛行した。
 もし平時の角度で撃てば射程距離は2000キロを越えるものとみられる」
と報告したと明らかにした。

 国家情報院はまた、
 北極星2号がマッハ8.5の速度で飛行し、総飛行時間は13分だった
と伝えた。続いて北朝鮮は相当な技術を持っており、搭載容量もさらに大きくなったと付け加えた。



産経新聞 2/26(日) 9:35配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170226-00000500-san-kr

北の脅威への覚醒もつかの間 
竹島、慰安婦に燃えている韓国は妙な方向に向かっている

 新型弾道ミサイルの発射や、金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長(33)の異母兄、金正男(ジョンナム)氏の暗殺など、北朝鮮がらみの問題が続発している。
 韓国社会は北朝鮮という差し迫った現実問題に目を覚ましたかに見えたが、朴槿恵(パク・クネ)大統領(65)の職務が停止し、弾劾審判が迫るなか、奇妙なことに北朝鮮どころではないようだ。
 国内のゴタゴタの一方で、竹島の領有権問題などをめぐってまた日本を非難。
 “北の脅威”はつかの間の騒動であるかのように、忘れ去られようとしている。(ソウル 名村隆寛)

 昨年10月の中距離弾道ミサイル「ムスダン」とみられるミサイルの発射(この時は失敗)以来、約4カ月ぶりの弾道ミサイル発射に韓国の政府やメディアは衝撃を受けた。
 北朝鮮が12日に打ち上げたのは、潜水艦発射弾道ミサイル(SLMB)を陸上発射型に応用したものだった。

 ミサイルはいったん空中に浮上した後に発射し、今回は成功したとみられている。
 韓国が驚きを隠せないのは、発射成功に加え、燃料の固体化と無限軌道型の移動式の発射台から打ち上げられたことだ。
 発射の機動性が増し奇襲発射が可能になることで、衛星での早期探知も容易ではなくなる。

 「ミサイルは発射角度が垂直に近い89度で、通常角度での発射であれば射程は2000キロ以上になる」(韓国の情報機関、国家情報院)
と分析されている。
 当然、韓国全土はもちろん、日本も射程に収める。
 韓国と在韓米軍が現在保有する兵器での迎撃は不可能だ。
 韓国政府は今夏に予定する米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備を待つしかない。
 朴大統領の職務停止で、3カ月間半余り国政が停滞を続けた韓国をあざ笑うかのように、北朝鮮は4カ月の沈黙を破り「新型弾道ミサイル」の発射を成功させた。

 韓国が久々に「北」で驚いたのは前述の通りだが、特に韓国メディアは、北朝鮮のミサイル発射を受けた日米首脳の素早い対応にむしろ驚いていた。

 ■トランプ氏が「韓国」に触れず落胆

 安倍晋三首相(62)とドナルド・トランプ米大統領(70)は滞在先の米フロリダ州で、北朝鮮のミサイル発射について共同記者会見した。
 トランプ大統領は「米国は偉大な同盟国である日本を100%支持する」と述べた。
 安倍首相も帰国後の13日、「(トランプ政権の対北朝鮮)姿勢はより厳しくなる」と語り、日米で緊密に連携する方針を表明した。
 以上、北朝鮮の軍事挑発に対する日米首脳の“緊密な連携”という望ましい話であるが、韓国は両首脳、特にトランプ大統領が「韓国」に触れていないことに落胆しているようだった。

 トランプ政権発足直後に訪米した安倍首相を、韓国メディアは「屈従外交」やら「ゴマすり」などと揶揄(やゆ)していた。
 その背景には、大統領が職務停止状態の韓国が対米外交で後れをとっているといった焦りや羨望(せんぼう)が露骨に出ていた。
 安倍首相嫌いの韓国メディアらしい表現を使えば「日本の安倍に先を越された」という言い方がピッタリだ。
 その安倍首相がトランプ大統領の別荘に招待された上に、一緒にゴルフまで楽しんだ。
 しかも、1ラウンド18ホールだけでなく、さらにハーフの9ホールのおまけ付きだ。
 これに北朝鮮のミサイル発射に共同対処するとの趣旨の生中継での共同記者会見がついたわけだ。
 北の脅威に加え、トランプ政権下での良好な日米関係という現実を目にし、何も言えない韓国の姿が印象的だった。

 ■金正男暗殺は対岸の火事?

 身動きがとれないにも等しい韓国外交の現状を嫌でも認めざるを得ず、安倍首相に対する“やっかみ的”な感情がうかがえる報道の一方で、韓国紙の中には安倍首相の訪米を「実利外交」として評価する論調もあった。
 自国の対北対応への焦燥感も出ている。
 朝鮮日報は社説で、日米首脳が夕食会などの最中にミサイル発射の報告を受け、緊急の共同記者会見を開いたことに触れ、「両首脳の機敏な対応を見て、自分のことが人ごとのようになっている状況を心配せざるを得ない」と韓国の現状を憂えた。

 そんな中、韓国だけでなく世界を驚かせる事件が起きた。
 しかも、また北朝鮮がらみ。金正男氏(当時45)のマレーシアでの暗殺事件だ。
 現地警察により、在マレーシア北朝鮮大使館職員の関与が判明しており、国家ぐるみのテロである疑いが極めて強い。

 正男氏暗殺の一報を受け、即座に思い出したのが、ちょうど20年前の1997年2月に韓国で起きた李韓永氏(イ・ハニョン=82年、韓国に亡命)の射殺事件だ。
 李氏は金正日総書記の先妻の成恵琳(ソン・ヘリム)氏の実姉、成恵琅(ヘラン)氏の息子で、金正男氏のいとこに当たる。
 李氏は日韓などで、幼少時の正男氏の話を含む“金正日(ジョンイル)ロイヤルファミリー”の実態を暴露した本を出版するなどし、金正日氏の指示を受けた北朝鮮工作員により射殺された。
 事件は夜中に起きた。
 当時ソウルに勤務していたため、新聞の最終版に急いで原稿を送った記憶がある。
 同時に韓国国内で北朝鮮工作員が暗躍している現実に薄ら寒いものを感じた。
 今回の金正男暗殺を受け、韓国では李韓永射殺事件を回想する報道もあり、韓国当局は元北朝鮮外交官などの脱北者の身辺警護に当たっている。

 ■デモと抗議集会は相変わらず

 しかし、一般国民レベルでの反応はまるで“対岸の火事”のようで鈍い。
 金正男暗殺に関する報道も、韓国より日本のメディアの方が力を入れているようだ。
 事実、韓国紙の東京特派員がそのように伝えていた。

 こうしたなか韓国では、逆に北朝鮮との対話や経済協力をこの期に及んで主張する意見さえ“健在”している。
 韓国政府は昨年2月、北朝鮮の長距離弾道ミサイル発射に抗議する形で南北経済協力事業の北朝鮮の開城工業団地の稼働を中断、開城工団で事業を展開する韓国企業を撤収させた。
 それからまる1年。今月、一部のメディアで開城工団再開論が出た。

 また、第1野党「共に民主党」と、年内に行われる大統領選挙の有力候補で現在支持率トップの同党の文在寅(ムン・ジェイン)前代表は、開城工団と北朝鮮での金剛山観光の再開を訴えている。
 文氏は当選のあかつきには米韓首脳会談よりも先に訪朝し、南北首脳会談を行うべきとの考えも示す親北派であり、かつ反日的な姿勢で知られる。

 北朝鮮の弾道ミサイル発射と金正男暗殺の後も、文氏が対北姿勢を変えたという話はない。
 にもかかわらず、支持率は相変わらず30%以上でトップだ。
 朴槿恵政権への不満もあろうが、文氏に続く支持率2位も同じ「共に民主党」に所属する安煕正(アン・ヒジョン)忠清南道知事。
 現状では、韓国の次期大統領は北朝鮮に甘い「共に民主党」の候補が当選する可能性が高い。

 ■北どころではない

 軍事境界線を隔てて北朝鮮と対峙(たいじ)している韓国は、北の脅威に最も敏感であるべきなのだが、国内は北どころではない状況が続いている。
 朴大統領の親友で女性実業家の崔順実(チェ・スンシル)被告による国政介入事件で、朴政権は相変わらず風前のともしび。
 事件にからみ、韓国最大の財閥、サムスングループの経営トップ、李在鎔サムスン電子副会長(イ・ジェヨン、48)までが逮捕された。
 サムスングループは韓国の国内総生産(GDP)と輸出の約20%を占める。
 「サムスンが牽引(けんいん)している」と言ってもいい韓国経済にも悪影響を及ぼすことが不可避な情勢で、ただでさえ低迷を続ける経済の一層の悪化を懸念する声が財界を中心に強まっている。
 昨年のスマートフォンの発火事故で、ブランドに傷がついたサムスンは経営トップの逮捕により、韓国同様、国際的なイメージの一層の低下が始まっている。
 まさに「起業79年で最大の危機」(韓国メディア)に直面しており、韓国経済はさらに危機に追い込まれているのだ。

 韓国では1997年末の通貨危機(IMF危機)のような経済危機の再来が懸念されており、李在鎔氏の逮捕によって危機感が現実味を帯び始めている。

 ■北より竹島、慰安婦に燃える

 北朝鮮の脅威と不透明な金正恩政権、経済危機の可能性といった不安要素の一方で、市民団体のデモや抗議集会は相変わらずだ。
 土曜日恒例の朴大統領の退陣を要求する大規模集会は毎週続いており、これに対抗する保守派や高齢者の集会も盛んである。
 さらには、今月22日に島根県松江市で開かれた「竹島の日」の記念式典を抗議する集会や、同じ日にソウルの日本大使館前で行われた慰安婦問題での抗議集会は、氷雨が降るにもかかわらず強行された。
 当地ではすっかり“年中行事”のようなものになってしまったのだが、挑発を続ける北朝鮮や先行き不透明な経済よりも、韓国は竹島や慰安婦の問題に熱心であるかのようだ。
 日本との「歴史」をからめた問題に、相変わらず韓国は条件反射的に燃える。

 その半面、釜山(プサン)の日本総領事館前に違法に設置された慰安婦像の問題で駐韓日本大使が帰国して1カ月半が過ぎたなかで、日韓関係悪化への懸念と関係改善への期待もある。
 韓国外務省は今月中旬、釜山市や設置場所の道路を管理する同市東区などに、像の移転を求める意向の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相名義の文書を送った。
 その直後の17日にドイツのボンで行われた日韓外相会談で、慰安婦像の撤去を求めた岸田文雄外相に対し、尹外相は「可能な限り、最大限の努力を引き続き行っていく」と約束した。
 外交の現場は、日本の大使館や総領事館の前に抗議の意味で慰安婦像を設置したことが、外国公館の威厳の侵害を禁じたウィーン条約に抵触していることを十分に理解しているのだ。

 しかし、韓国の世論はそれを許さない。
 世論調査会社の韓国ギャラップの調査によれば、韓国の成人の70%が慰安婦問題をめぐる2015年末の日韓合意の「再交渉が必要」と回答している。
 再交渉を主張する意見は、合意直後の昨年1月には58%、同年9月は63%で、増え続けている。

 ■効率悪く、時間だけがダラダラと

 北朝鮮問題、国政の停滞、経済と国民生活の不安、日本や中国との関係悪化など、現在の韓国には明るい話や展望はうかがえない。
 不安要素が重なり続ける中で、毎日どこかで、何やらの不満をぶつける集会が開かれている。
 毎週、デモ、デモで、打開策もなく、ただ効率の悪いことが繰り返されているようだ。
 その一方で時間だけがダラダラと過ぎている。
 慰安婦像の撤去反対などで意地を張っている場合じゃないのに、韓国政府の日本との関係改善に向けた動きも、自治体への要請文送付でようやく緒についたばかり。
 先行きは不透明だ。
 やはりこのまま、時間だけが過ぎていき、大統領選挙を経て、何の成果もなく次期政権の発足を迎えるのか。
 その時の韓国で何が変わっており、何が改善されていることだろうか。

 嫌な予想はまた当たってしまうかもしれない。
 ただ、韓国で暮らす日本人としては、危機感が変な方向に向かっている隣国から、日本がとんだとばっちりを受けないことを願うばかりだ。




【2017年 大きな予感:世界はどう変わるか】



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