2017年2月7日火曜日

トランプ大統領登場(8):米中間の「銭の戦争」

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中央日報日本語版 2/8(水) 18:04配信
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170208-00000040-cnippou-kr&pos=3

<チャイナインサイト>トランプが触発した米中「カネの戦争」

  10年前の2007年、米国の経常収支赤字はピークを迎えていた。
 一方、中国の経常収支黒字は最大を記録した。
 当時、米国と中国の間違った出会いはチャイメリカ(Chimerica)と呼ばれ、ギリシャ神話に出てくる遺伝子の違う二つの生命体の合成物であるキメラ(Chimera)になるかもしれないという不吉な言葉を生んだ。
 そのキメラがドナルド・トランプ米大統領の登場によって10年の眠りから覚めようとしているのだろうか。
 米中間の「銭の戦争」のにおいが日増しに強まっているからだ。

 トランプの前任バラク・オバマ前大統領の対中国封鎖政策は2段階に分けて説明することができる。
★.その第1は「アジア回帰(Pivot to Asia)」または「リバランス(rebalancing)」政策だ。
 これは21世紀の運命を分ける重大な決定がアジアで行われるとし、その決定の現場に必ず米国がいるべきだという判断に基づいたものだ。

 安保的次元から進められた政策で、米海軍力の60%をアジアに駐留させようとした。
 しかし、議会の軍備削減に直面すると、オバマ政府は新しいカードを取り出した。
 それが経済的に中国を包囲する環太平洋経済連携協定(TPP)だ。
 米国はもちろん、日本やオーストラリアなど12カ国が参加する多国間経済協力体だ。

 ところがトランプは就任3日後となる先月23日、このTPPからの離脱を宣言した。
 なぜそうしたのだろうか。
 中国封鎖に反対するためなのか。
 とんでもない。
 多国間協定は米国の立場では実益がないと見ているからだ。
 米国に雇用を創出するよりも協定に参加する他の国々だけしかうまみがないという考えが根底に流れているのだ。

 TPPは基本的に規則に基づく。
 だが、トランプはルール(rule)よりもディール(deal)を好む。
 多者主義に従えば、いくら米国の立場を反映していると言っても交渉の幅が制限される。
 だが二国間交渉をすれば、強大国である米国が当然有利になる。
 これがゲームの法則だ。
 交渉の達人であるトランプがこの点を知らないはずがない。

 不法移民というメキシコの弱点を知り尽くしているトランプが、北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉を主張したのも、今後の交渉が米国に有利に展開するという点をよく知っているためだ。
 トランプは自身を俳優出身のロナルド・レーガン元大統領と同一視する傾向がある。
 米映画『ホームアローン2』にカメオで出演したことのあるトランプは、レーガンに近づこうとレーガンが強調した「力による平和(Peace through strength)」を主張しながら偉大な米国建設を叫ぶ。

 ここで注目すべきことは、このような目標達成のための通商政策チームを反中派で固めたという点だ。
 米国内の代表的な反中学者ピーター・ナバロをホワイトハウス内に新設される貿易委員会委員長に据えたことはこれを象徴する事件だ。
 ナバロの著書『Death by China(中国による死)』を読むと、中国のせいで米国製造業が死亡宣告を受ける。
 ナバロは中国が為替操作を日常的に行っていると断定している。

 トランプは大統領選挙当時、その遊説の中で
 「大統領就任100日以内に中国を為替操作国に指定して、中国の違法行為に対する措置として中国製の輸入品に45%の関税をかける」
と脅した。
 トランプがこのような公約を本当に実行に移すのは可能だろうか。
 米議会では中国が為替を操作しているという雰囲気が大勢を占めている。
 透明性が低く、中国がまだ管理変動為替レート制度を運用しているためだ。
 結局、いつかは中国も自由変動為替レート制度に移行しなくてはならない。

 だが、中国には自信が足りない。
 危険に対処できる体力をまだ備えていない
 人民元は、昨年、国際通貨基金(IMF)の特別引出権(SDR)通貨バスケットに編入されたが、まだ国際金融市場でよちよち歩きを始めたばかりだ。
 無理やり資本自由化をすれば、それこそ一瞬で吹き飛んでしまう。
 図体は大きいが、依然として金融後進国に該当する
 国有商業銀行主導による官治金融の結果だ
 米国はこの敏感な中国のアキレス腱に触れようとしている。

 このような議会の雰囲気が反映され、2016年に発効された「貿易促進法」は為替操作国を指定できる法的根拠だ。
 この法によると、米財務省は毎年4月と10月に為替操作国を指定することになる。
 その基準は、
(1):対米貿易黒字が200億ドル(約2兆2500億円)を超過し、
(2):GDP(国内総生産)比経常収支黒字が3%を超過し、
(3):外貨準備高の増加分がGDPの2%を超過する
--ケースにあたる。
★.3種類の要件をすべて満たせば為替操作国に、
★.該当項目が2種類になれば観察対象国に
指定される。

 昨年4月と10月、中国は観察対象国に指定された。
 韓国もドイツ・日本・台湾・スイスなどとともに観察対象国となった。
 為替操作国という烙印が押されれば、米財務省は該当国に対して低評価された為替と行き過ぎた貿易黒字を是正するよう要求するようになる。
 要求から1年が過ぎても改善されない場合、米国政府調達市場への参加を排除し、また該当国に対する投資の制限、国際通貨基金を通じた圧迫などの制裁措置を取ることができる。
 トランプはまさにこの4月を待っている。
 米財務省による為替操作国の指定がどうなるかを見守っているのだ。
 問題は、米国が中国を為替操作国に指定した場合、韓国も一緒に指定される可能性が高いという点だ。

 ドイツはユーロ宗主国で、
 日本は基本的に外国為替市場に介入しない完全な自由変動為替レート制度を運用している国と認識されている。
 結局、米財務省のターゲットは中国と韓国だ。

 昨年10月、米財務相の為替報告書(FX Report)を見ると、
 中国の対米黒字は韓国よりも10倍以上多いが、
 経常収支黒字だけに注目すると、中国は2.4%に過ぎないのに
 韓国は7.9%に達している。
 もちろん世界金融危機以降、輸出よりも輸入が急激に減少して現れた典型的な不況型黒字だが、トランプ政にはこのような論理がうまく通らない可能性もある。

 また、トランプは公約で明らかにした通り、強い米国づくりのために軍事力とインフラ建設に力を入れ、拡大財政政策を実施する予定だ。
 米国景気が復活すれば、中国や韓国の対米輸出は増加する公算が大きい。

 これに伴い、韓国の対米黒字の増加を、トランプ政権は韓米自由貿易協定(FTA)の失敗として片付ける可能性がある。
 韓国としては韓米FTAの再交渉に対する備えも絶対的に必要だ。
 だが、まずは為替操作国の指定を避けるために、日本と同じ自由変動為替レート制度に移行する努力をしなければならない。
 その分、為替の市場変動性が高まることを甘受しなければならないだろう。

 一方、中国はことし秋の第19回党大会を控えて習近平国家主席のリーダーシップを損なう対外的な要因をできるだけ遮断しようとしている。
 したがって、ことし4月にある米財務省の為替操作国指定に中国が含まれれば、中国の猛烈な反発が予想される。

 まず5月に予定されている米中経済戦略対話を取り止めたり、米国製航空機の購入中止や穀物など米国産輸入品の縮小のほか、中国内における米国企業の自由な活動を制限したりするなどのような見えない非関税障壁を強化する可能性がある。
 1兆1600億ドルに達する米国国債を持ち出して売ることもできるが、これは中国にも損害が及ぶという点を覚悟しなければならない。

 トランプはまた、オバマのリバランス政策がむしろ東アジアの地政学的不安定性を高めてきたと非難しながら、軍事力優位だけが東アジア地域に平和をもたらすと信じている。

 このようなトランプの思惑と行動の中で、多くを悩むべきは中国ではなくむしろわれわれ韓国の方だ。
★.中国は世界金融危機以降、ほぼ70%に達していた貿易依存度を
 今では30%水準に下げて内需中心の経済への早期転換を摸索している。

 だが、韓国は依然として80%を越える貿易依存度を示している
 それだけ対外変数に脆弱な構造だといえる。
 一方、中国は何はともあれ米国と対抗するG2に浮上している。
 軍事力ではまだ米国との間に開きはあるものの、経済力ではいち早く米国に追いつこうとしている。

 トランプの中国たたきから、問題は中国でなく韓国になるということだ。
 刻々と変化する国際情勢、特に世界経済の構造変化に神経を尖らせ、緊張していなくてはならない。
 反グローバル化に便乗して国内問題だけに没頭するのではなく、もう少し広い視野を持って解決策を模索しなくてはならない。それが韓国の生きる道であろう。

ワン・ユンジョン/カトリック大学校兼任教授



ロイター 2017年 02月 6日 18:37 JST Quentin Webb
http://jp.reuters.com/article/column-jp-not-economic-enemy-idJPKBN15L0NN?sp=true

コラム:日本はトランプ大統領の経済敵国にあらず

[香港 6日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
  日本はアメリカの経済敵国ではない。
 とはいえ、トランプ大統領が日本は円安誘導していると不満を口にしたわずか数日後、訪米を控えた安倍晋三首相は同大統領をなだめるため、大規模な米国への投資と雇用創出パッケージを用意している、と関係筋はロイターに語っている。
 金融・政治の両面において、すでに米国の重要な同盟国である日本だが、対応するほかに選択肢はない。

 確かに第2次安倍政権の誕生後、円は2012年の1ドル86円から今日の112円まで下げている。
 だがこれは、日本経済を復活させる措置のうれしい副作用である。
 成長とインフレ促進のために日本銀行が行っている大規模な国債買い入れ、つまり「量的緩和」の結果である。

 米国の金融政策がドルを引き下げるなか、どちらかと言えば、円は強くなり過ぎていた。
 だが、米国が独自に行う通貨政策の分析が認めているように、日銀の国債買い入れは外国為替市場に直接介入することとは異なる。
 日本は2011年以降、為替介入をしていない。

 円安は日本企業の業績を押し上げる。
 理論的には競争力が押し上げられているはずだが、実際には、海外での売上増には結び付いていない。
 日本の輸出量は依然として、金融危機以前のピークを5分の1下回っている。
 実際、モノの対米貿易収支は過去4年で80億ドル減少し、昨年9月までの12カ月で700億ドルとなっている。

 一方、米国も円安を享受している。
 消費者は格安価格で質のよい車やゲーム機を手に入れている。
 同国が保有する大量の米国債によって、米国の借り入れコストは低く抑えられ、日本政府のデータによれば米国への対外直接投資は累計で4350億ドルに達している。

 また、裕福で安定した民主主義国家である、米国の最も重要なアジア同盟国が、経済不安から脱却するのを目にすることには大きな価値がある。
 日米首脳会談で、安倍首相は70万人の新規雇用と米国内におけるインフラ投資で4500億ドルの市場創出効果のある「日米成長雇用イニシアチブ」を米国側に示すとみられる。
 まずは米国企業が、次にソフトバンクグループ(9984.T)の孫正義社長のような外国企業の経営者が、そして今度は政治家がトランプ大統領に敬意を表すべく列をなしている。

 日本は少なくとも自国の経済や金融政策に介入しようとする動きには抵抗するだろう。
 それは十分な妥協以上のものだと言える。
 米国には間違いなく敵がいるが、日本はそこには含まれない。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解
です。



日本テレビ系(NNN) 2/8(水) 3:01配信
http://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20170208-00000000-nnn-int

米貿易赤字、3年連続で拡大 対日本が2位

 トランプ大統領が是正すべき課題としてあげるアメリカの貿易赤字が、3年連続で拡大したことがわかった。
 国別では中国に次ぎ、日本が2位となった。

 アメリカ商務省が発表した2016年の貿易統計によると、モノとサービスを合わせた輸出額から輸入額を差し引いた貿易赤字は5023億ドルで、前の年と比べ0.4%増え、3年連続で赤字の幅が拡大した。

 モノの取引に限った国別の貿易赤字では、
★.トップが中国の3470億ドルで全体の64%を占め、
★.次いで日本が689億ドル、全体の9.4%で、
ドイツを抜いて2位に浮上した。

 内訳では、
★.自動車関連が526億ドルで、対日赤字額全体の8割弱を占める。

 10日に行われる日米首脳会談でも、トランプ大統領が貿易赤字の削減を求めてくるのは確実な情勢。



JB Press 2017.2.14(火)  川島 博之
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49118

トランプで当面はうまくいく、最悪なのはそのあとだ
独裁と自国最優先は短期間ならば経済に好影響

 トランプ新大統領は就任早々大統領令を乱発して、米国と世界を混乱の渦に巻き込んでいる。
 大統領になれば穏健な発言や行動をとるかもしれない。
 そんな期待はかき消されてしまった。

 彼の発言は唯我独尊的なところがあり(独裁と言ってもよい)、経済原理を無視している。
 メチャクチャ。そんな声も聞こえてくる。

 このままの姿勢を続けると、米国経済だけでなく世界経済全体が低迷する。
 結局、にっちもさっちも行かなくなって、病気を理由に退陣する。
 自分から辞めなければ弾劾される・・・。
 そんな観測も出始めた。

■中国は独裁で奇跡の成長を遂げた

 私はこれまで農業からアジアの経済を見てきた人間なので、アメリカ経済についてどうこう言う資格はないが、独裁と極端な自国優先政策は、ある程度の期間であれば、経済に好影響を与えると考える。

 開発経済学では、途上国が経済発展するためには、独裁ではなく民主主義、公平で透明性のある政権、積極的な外資の導入、自由貿易、良質な教育の普及などが重要とされる。
 だが、中国を見てきた者として、この原則は当てはまらないと思う。
 1989年におきた天安門事件の後、中国に対する海外の目は冷たかった。
 外資が好んで投資する先ではなかった。

 そんな状況の中で、中国共産党独裁政権は輸出産業を育成しようと考え、自国産業を保護する関税制度や非関税障壁を多数作り上げた。
 後にWTOに加盟したが、それでも多くの分野に恣意的な非関税障壁が残り、そして今も非関税障壁を作り続けている。
 自国の産業育成に害になるものは輸入しない。
 極めて自己中心的。

 教育には熱心だが、質のよい教育をしているとは言い難い。
 共産党独裁を維持するために記憶中心の偏狭な教育を行っている。
 自由で伸びやかな思考をする人間を育ててはいない。
 その結果、改革開放路線に舵を切って40年ほどが経過したのに、14億人もの人間を抱えながら、ノーベル賞受賞者が極めて少ない。
 中国発の新技術も生まれていない。

 そんな中国が奇跡の成長を遂げた。
 むしろ開発経済学者の学説に振り回されたアフリカ諸国の方が発展しなかったように思う。
 もちろん、このような見方には多くの反論があると思うが、中国の経済発展を農業から見て来たものとして、独裁的で身勝手な手法は経済発展によい影響を与えると考える。

■ 独裁は短期的には効率が良い

 トランプ大統領をヒトラーに例える向きもある。
 ヒトラー政権下の経済成長を見てみよう。
 下の図は、1930年代におけるドイツ、イギリス、フランス、それにソ連におけるGDPの推移である。
 ヒトラーが政権をとったのは1933年。 
 それから第2次世界大戦が始まる1939年まで、ドイツの経済成長率はイギリスやフランスを大きく上回っていた。
 年平均成長率はドイツが7.1%、イギリスが2.9%、フランスが1.8%、ソ連が7.2%である。


●図 1930年代の各国のGDP推移
単位:10億ドル(1990年基準)、出典:アンガス・マディソン
(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49118)

 この奇跡の成長がヒトラーを支えた。
 経済が好転したために国民はヒトラーを支持したのだ。
 同時期にソ連も奇跡の成長を遂げているが、それはスターリンの独裁が行われていた時期にあたる。
 スターリンは自らの政権基盤を固めるために多くの人々を処刑したのだが、そんな時代に経済は奇跡の成長を遂げている。

 ここに示したのは少数の例に過ぎないと言ってしまえばそれまでだが、独裁は短期的には効率が良いようだ。
 トランプ大統領を非難する人々は、いまにも経済が崩壊するようなことを言っているが、移民の禁止や、気ままに関税を引き上げることは、中長期的には悪影響があっても、短期的には国内を活性化させる可能性が高い。

 中国の奇跡の成長は共産党独裁下で20年以上も続いた。
 ドイツは6年の高度成長の後に戦争に突入してなにもかも失ったが、ソ連はドイツとの戦争に勝利したために第2次世界大戦後の冷戦において一方の雄になることができた。
 その遺産はプーチンが相続している。

歴史が教えるところによると、独裁によって経済がすぐに悪化し国力が疲弊することはない。
 もちろん1930年代のドイツやソ連、そして開発途上国である中国と、米国は大きく異なる。
 だから、過去の例をそのまま米国に当てはめることは危険だが、欧米の高級紙でも方向感をなくした論評しかしなくなった現在、歴史を振り返って考えておくことも重要だろう。

■心配すべきなのは中長期への影響

 筆者はトランプ大統領の政策が極めて短い期間に行き詰まることはないと考える。
 そして、多くの人がそう考えるから、ニューヨークダウ平均もそれなりの高値を維持しているのだろう。

 心配すべきことは中長期への影響である。
 ヒトラーは独裁を始めてから6年後に戦争を始めた。
 スターリンは独裁を維持することに成功し、日本流にいえば畳の上で生涯を閉じたが、その残した体制は1970年頃になると成長できなくなってしまい、自滅した。
 そして、奇跡の成長が続いた中国も共産党独裁が生んだ不動産バブルと国有企業の改革が難しいことに苦しみ始めている。
 その繁栄が長続きするとは思えない。

 以上のように考えてくると、トランプの大統領がそれなりに成功し、それによって米国民に支持されるケースが最も危険である。
 そんな時代がしばらく続くと、現代は時間の流れが速いから数年後、あるいはそれよりも早く、リーマンショックのような形の崩壊に遭遇するかもしれない。
 取沙汰される米中戦争が起こる可能性だってある。

 極端な政策によって米国経済が少々好転するとしても、米国民がそれに惑うことなく、早めにトランプ路線を修正することを祈るばかりである。



人民網日本語版配信日時:2017年3月1日(水) 20時0分
http://www.recordchina.co.jp/a170822.html

トランプ時代の中国経済貿易関係はどこへ行く?―中国紙

 中国は世界2位のエコノミーとして、その発展ぶりが世界に高く注目されている。
 2015年の年末に供給側構造改革を初めて打ち出してから現在に至るまで、中国が需給関係の新たな動態バランスの実現に向けた努力の中でどのような進展を遂げたか。
 未来に突破すべきどのようなボトルネックが横たわるか。
 「国内情勢」に懸命に努力すると同時に、中国と重要な貿易パートナーである米国との二国間関係がどうなるかが、国際社会の関心の的だ。
 トランプ時代の中米関係にはより多くの食い違いが生じることになるのか、それともより多くのビジネスチャンスを迎えることになるのか。
 このほど開催された「国研シンクタンクフォーラム・新年フォーラム2017年」では、参加した専門家から以上のような問題について、それぞれの見方が示された。国際商報が伝えた。

 トランプ大統領は、大統領選への立候補を宣言した時から最終的に当選するまで、選挙前の公約から正式に政権に着くまで、一貫してその独特で他に類をみない言動によって米国国内はもとより国際社会の高い関心を呼んでいる。
 一連の「トランプ新政策」はグローバル政治・経済の中で極めて大きな論争と動揺を巻き起こしている。

 トランプ大統領は就任前に打ち出していた
 環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱、
 メキシコとの国境における壁建設、
 イスラム教徒の入国禁止
など、一連の公約をすでに実現させている。
 その勢いがさらに拡大して、中国から米国に輸出される製品に対する45%の関税徴収という発言が最終的に現実にものになるか、中米経済貿易関係がどのような方向へ行くかが注目を集めている。

 フォーラムに参加した専門家は、
 「トランプ新政権は中米経済貿易関係の位置づけに対して大きな影響力をもち、中国は米国の政策の方向性に緊密に注意しこれを研究し判断しなくてはならない。
 中米両国はタイミングや流れをみて、大局を把握し、一定の安定した力を保ち、利益を求め損害を回避し、二国間関係が引き続き安定・ウィンウィンの方向へと発展するよう努力して後押しする必要がある」
との見方を示した。

▽米国の対中政策の方向性が未確定

 トランプ大統領は就任から約20日間で、大統領令12件、大統領覚書12件、大統領声明2件を発表し、
 「米国第一主義」の戦略に乗っ取り、すべて米国の利益を重視すると強調し、
具体的には
 減税、
 金融の監督管理の緩和、
 インフラ建設の強化、
 保護貿易・投資の保護の実施、
 エネルギーの独立
などの施策を方向性としている。

 トランプ大統領の打ち出す政令は世界規模で世論の熱い議論を呼び起こしており、メディアの中には大統領を「米国史上前例のない新しいタイプの大統領」と呼ぶところもある。
 というのも、選挙中の公約と政権の座に着いてからの政策との間に高い一致性があり、これまでの歴代大統領にみられた選挙の前と後で「言行不一致」になるという「慣例」をうち破ったのだ。
 そこで就任以降、まだ明確な対中政策の方向性は打ち出していないものの、選挙戦の中で表明した対中強硬論が引き続き中米両国や国際社会の注目の的になっており、各方面は米国の対中政策がどの方向に向かうかに高い関心を寄せている。

 米商務省のまとめた統計によると、
 16年の米国の商品貿易における米国の対中赤字は3470億ドル(約38兆9700億円)に上り、
 商品貿易の赤字全体に占める割合は約46.3%に達する。
 国務院発展研究センターの李偉センター長(研究員)は、
 「米国が貿易障壁を引き上げれば、中米貿易だけでなく、グローバル分業配置も必ず打撃を受ける。
 米国は世界1位のエコノミーであり、保護貿易政策を実施すれば、必ず連鎖反応を引き起こし、関係国は関税調整措置や輸出入制限措置などを採ってこれに対抗する可能性があり、この影響によってグローバル貿易がさらにペースダウンすることが考えられる。
 また国際外交分野における米国の新政策もその小さな動きが世界全体の局面に影響を与えることになり、世界の政治や経済への影響に密接に注意する必要がある」
と話す。

▽中米は新型大国関係を推進すべき

 また李センター長は、
 「トランプ新政権には積極的な面が豊富にある。
 たとえば減税、インフラ建設支出の拡大、規制緩和政策などが実施されれば、米国の総需要の拡大を直接間接に促すことになり、中国にとってもチャンスだといえる」
と話す。

 中国国際経済交流センターの魏建国副理事長もフォーラムの中で、
 「中国米国商会は
 今後10年間の米国インフラ建設の評価に際して、道路、鉄道、港湾、橋梁の建設や改修などで8兆ドル(約898兆3200億円)が必要になると試算する。
 世界でこれほどの(規模のインフラ建設の)能力をもつ国は中国しかない
と述べている。

 魏副理事長は続けて、
 「トランプ大統領の政治理念は米国の対外的・対内的に発表したすべての重点を経済建設を中心とした軌道に乗せることにある。
 中米の新型大国関係はトランプ時代に加速的に推進され、対抗せず、衝突せず、それぞれの核心的利益と重大な関心事を双方が尊重し、協力・ウィンウィンを相互に尊重する局面を形成することになるだろう」
と予測した。

 李センター長は、
 「トランプ大統領はさきの習近平国家主席との電話会談の中で、積極的で建設的な態度を示し、『一つの中国の原則』を承認し尊重すると強調しており、これはよい兆しだといえる」としつつ、
 「だが中米貿易の方向性にはなお大きな変数があり、軽率な態度で臨んではならない。
 中国は世界2位のエコノミーとして、グローバル経済成長への貢献でここ数年はずっと3分の1前後の貢献度を保ち、発展の主体性が強く、これまでのどの時期にも増して外部リスクに抵抗するための有利な条件を備えている。
 中国が米国の政策の変化に対応するためのカギは各種の改革任務を早急に実行し、自国のことをしっかり行う、というところにある」
と指摘した。

(提供/人民網日本語版・編集/KS)


【2017年 大きな予感:世界はどう変わるか】




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