2017年2月25日土曜日

トランプ大統領登場(16):北朝鮮をどうみるか

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ダイヤモンドオンライン 2017年2月28日  加藤嘉一
http://diamond.jp/articles/-/119495

中国共産党は北朝鮮問題を対米関係の「懸案事項」と見ている

■胸をなでおろした旧知の共産党幹部

 「とりあえず胸をなでおろした。
 仮にトランプ大統領が“一つの中国”という原則を放棄するような事態になれば、
 我々としては党の第19回大会を円満に迎え、成功させるなどという悠長なことを言っている場合ではなったからだ」

 元宵節が過ぎ、即ち中国人民にとって最も大切な春節(旧正月)が終わり、中国社会が平常を取り戻しつつあった2月の中旬、対外政策を担当する旧知の共産党幹部が私にこう語った。
 私にはこの言葉の持つ意味が大体理解できた。
 仮にそのような状況になった場合、中国政治・経済社会が陥る混乱ぶりは容易に想像できる。
 中国共産党としては自らが定義する“核心的利益”のど真ん中が脅かされるわけであるから、(台湾サイドの反応にもよるが)状況次第では台湾海峡における武力衝突や、米中断交の可能性すら否定できない。

 そうなれば、中国経済・社会の在り方、政治イデオロギーを巡る文脈とロジックの作り方、国際社会における立ち位置、“西側諸国”との付き合い方、広範な新興国・途上国との距離感など、ほとんど全ての分野においてその前提が変わってくる。
 となれば、言うまでもなく、秋に開催予定の党大会で審議する議論や採択する文書にも根幹的な影響を及ぼすであろう。

 ハリウッドをこよなく愛する映画ファン、米国の大学への進学を目標に掲げる親子、ウォールストリートやシリコンバレーを目指す若きエリート、マクドナルド、スターバックス、ウォールマート、アップルといったブランドが生活に染み込んで離れない市民たちに、“この状況”をどう説明するのだろうか。

 「米国の帝国主義と覇権主義が我々の核心的利益を踏みにじった。
 そのような敵とは断じて闘う。
 いまこそ全中国人民が立ち上がり、一致団結し、中華民族の偉大なる復興というチャイナドリームを実現するときだ」

 そんなスローガンだけで人民が納得し、世論を収拾できるほど昨今の中国社会は単純ではないだろう。
 いずれにせよ、米中武力衝突、国交断絶という事態が発生した後の党の第19回大会という局面を私は想像できなかった
 (もちろん、これから党大会までの間に米中間で何が起こるのかは分からない。
 前回コラムで提起したように、不確定要素は依然として存在する:中国共産党は日米首脳会談の成果をどう見ているのか)

 しかしながら、冒頭の党幹部が言うように、トランプ氏がアメリカ合衆国大統領として習近平国家主席に対して直接「貴方が求める、米国政府がこれまで執ってきた“一つの中国”という政策を尊重することに同意する」と約束したのだから、少なくともこの立場を安易に翻すことは考えにくい。
 その意味で、“一つの中国”という中国側が修飾する「中米関係の政治的基礎」(習総書記)を確認したトランプ・習電話会談を経て、中国共産党の第19回大会が“正常”に開催されるための外交的環境と対外的前提は、とりあえず確保されたと言えるであろう。

■中国共産党指導部は
対米関係をどのように認識しているのか

 これが、本稿が真っ先に、最も力を込めて主張したいポイントである。
 「だからどうした」と思われる読者もいるだろうし、ありきたりなことかもしれないが、私から見て、2017年という中国にとっての“政治の季節”がどのような前提と枠組みで展開されるかという点は、私たちが中国情勢を観察していく上でのファンダメンタルズであり、故に重要である。

 以下、上記で述べた内容を少しでも重厚で、裏付けのあるものにすべく、春節明けからこれまでの間、中国共産党指導部がトランプ大統領率いる米国との関係をどのように認識し、対応しようとしているのかを見ていきたい。

 2月17日、ドイツ開催のG20外相会議に出席した王毅中国外相とレックス・ティラーソン米国務長官が会談を行った。
 その席で、王外相は次のように昨今の米中関係を振り返っている。
  「習近平主席が先日トランプ大統領と行った通話はとても重要である。
 米国側は一つの中国という政策を引き続き堅持すると明確に表明し、両国元首は中米が完全に良い協力パートナーになれること、新たな起点に立って両国関係をより大きな発展に導けるという認識で一致した。
 この重要なコンセンサスは両国関係の政治的基礎を守り、新たな時期における中米関係の発展に方向性をもたらした。と同時に、両国が二ヵ国間、地域、グローバルな範囲において全方位で戦略的な協力を展開していくための必要条件を創造したと言える」

■王毅・ティラーソン会談でも
北朝鮮問題が意見交換の議題に

 中国外交部によるプレスリリースによれば、ティラーソン長官は
 「米中関係は友好的であるべきだと言うほかない。
 米国は一つの中国という政策を執ることを改めて表明する。
 これは両国関係にとって非常に重要であるだけでなく、地域の発展と安定にも有利に働く」
と述べたとのことである。

 2月21日、中国の楊潔チ(チの字は竹かんむりに“褫”のつくり)国務委員(外交担当、元外相)とティラーソン国務長官が電話で会談をした。
 会談の内容は数日前に行われた王毅・ティラーソン会談と性質を異にするものではなく、両国があらゆるレベルにおける協力を展開し、関係を発展させていこうという意思を確認するものであった。

 一方で、王毅・ティラーソン会談でも北朝鮮問題が意見交換の議題になったように(中国外交部発表)、2月に入り、北朝鮮による再度のミサイル発射、そして“金正男暗殺事件”を受けて、米中指導部が現状に対する認識を確認し、どのような対応をしていくのかを協議するための電話会談であったとレビューできる。

 その楊国務委員は、2月27~28日の日程で米国を訪問し、
 「中米関係および共に関心を持つ問題に関して米国側の高級官僚と意見交換をする予定である」
とのことである。
 これが中国外交部の陸慷報道局長によって発表されたのは2月26日のことであり、前述の楊・ティラーソン電話会談から約1週間を挟んでの米国訪問である。

■中国側の懸案はやはり北朝鮮問題

 この一連の流れを中国国内で眺める限り、少なくとも中国側は、相当程度の外交資源を投じてでも、ハイレベル対話を通じて米国指導部の意思や立場を繰り返し確認し、米中間で誤解やミスコミュニケーションが生じないように努めようとしている空気をひしひしと感じるのである。
 それは、秋の党大会を無事に迎え、開くためにも、避けては通れない政治ミッションなのだろう。
 繰り返しになるが、
 対米関係を安定させることが昨今の中国共産党指導部にとって最大の内政マターの一つである
と改めて感じる今日この頃である。

 “一つの中国”が一応の“軟着陸”を見た昨今、中国側が米中間の懸案になり得ると認識しているのはやはり北朝鮮問題であろう。
 楊潔チ国務委員の米国訪問という外交アジェンダにもそれがにじみ出ているように思われる。
 2月22日の定例記者会見で楊・ティラーソン会談について聞かれた耿爽外交部報道官は
 「我々は米国を含めた関連諸国と意思疎通と政策協調を強化し、交渉を再開するための突破口を共同で模索し、探し出たいと考えている。
 共同で朝鮮半島の平和と安定を守り、朝鮮半島の核問題を適切に解決するために建設的な働きをしたいと思っている」
と述べている。

 北朝鮮がミサイルを発射した週の週末、中国政府は北朝鮮産の石炭輸入を暫定的に停止する旨を発表した。
 「これは国連安保理2321号決議が決めた規定を執行するための行動であり、中国が抱える国際義務であり、中国の関連法にも符合する。
 この行動は中国の北朝鮮核問題における責任ある態度と安保理決議を執行する上での誠意を体現している」(耿爽報道官、2月21日記者会見にて発言)。

 この“態度”と“誠意”をトランプ大統領率いる米国指導部はどのように認識・評価するだろうか。
 トランプ氏は大統領に就任する前、自身のツイッターを通じて中国の北朝鮮政策を批判している。
 その認識に変化は生じるのだろうか。
 楊潔チ国務委員は訪米期間中その辺の温度を探ろうとするにちがいない。

■示唆に富んでいた王毅外相のコメント

 最後に、王毅外相がG20会議で基調講演を行った(2月17日)後に会場からの質問に答える形で表明した北朝鮮問題に関するコメントを引用して、本稿の結びとしたい。私から見て非常に興味深く、示唆に富んでいた。

 「朝鮮半島の核問題を巡る解決には、長らく2つのチャネルが存在してきた。
 ひとつは対話、
 もう一つは対抗である。
 2003年から2009年の間、核問題に関する対話と交渉は持続的に行われ、途中曲折もあったが交渉は持続され、北朝鮮の核・ミサイル開発は有効的に管理・抑制され、朝鮮半島情勢は全体的に安定を保持した。
 しかしながら、2009年を過ぎ、6ヵ国協議は完全に中断し、核問題は対抗のチャネルへと入っていった。
 核実験、制裁、更なる核実験、更なる制裁という悪循環に陥った。
 このような状況が続いていくことがあってはならない!
 なぜならば、このような状況が続く限り、最終的な局面はおそらく、各方面が受け入れられない、抱えきれないものになり、みんながルーザーとなる局面であろうからである」

 さて、そのような局面を避けるために、中国としてはどう動くのだろうか。

(国際コラムニスト 加藤嘉一)



もし北朝鮮が手を下したとしたら、アメリカはこのままではすませないだろう。
 というのは、
★.マレーシアの国際空港で、それも
★.VXという猛毒を使った
暗殺となれば、もうそれは正常人のやることではないと判断されることになる。
 もし、金正恩が正常でないと判断されれば、
 「ヤツは何をやるかわからない」
となる。
 ミサイルに核を積んでアメリカ、中国、韓国、日本とどこでも打ち込まれる危険性がマジで出てくるということになる。
 そんな状態をアメリカが黙っているはずがない。
 もはや中国は北朝鮮をコントロールできる国家ではないということになるのだから、アメリカがやるしかないということになる。
 でも本当に北朝鮮がやったのか?
という疑問がどうにも貼れない。
 こんなミエミエで一国の秘密警察がやるか!
 交通事故にみせかけてこっそり、というのが常道だろう。 


Record china配信日時:2017年3月4日(土) 20時0分
http://www.recordchina.co.jp/a171072.html

金正男氏殺害、北朝鮮包囲網徐々に
=猛毒「VX」使用で国際社会に衝撃、
中国の出方が焦点

 2017年3月4日、金正恩朝鮮労働党委員長の異母兄・金正男氏が殺害された事件で、北朝鮮包囲網が形成されつつある。
 特に猛毒の「VX」が使われたことで国際社会には衝撃が走り、韓国の尹炳世外相は北朝鮮の国連加盟国の資格停止に言及。
 国連安全保障理事会で取り上げる動きもある。
 北朝鮮の後ろ盾とされる中国の出方が当面の焦点だ。

 尹外相はスイス・ジュネーブで開かれた国連人権理事会のハイレベル会合や軍縮会議で、「(正男氏の殺害は)衝動的で予測不可能であることに加え、残忍な北の政権がいつどこででも、誰に対しても化学兵器による攻撃ができるということを示した」などと批判。
 「国際社会はどのような措置を取るべきか深刻に考える時だ」
と強調し、北朝鮮の国連加盟国の資格停止など断固たる対応を取るよう促した。

 英国のライクロフト国連大使は
 「マレーシア政府はVXが使われたという証拠を得たのであれば、事件を化学兵器禁止機関(OPCW)と国連安保理に申告すべきだ。
 そうすれば、われわれはこの問題に対処できる」
と指摘。
 マレーシア国営ベルナマ通信によると、同国警察のハリド長官は「外務省との調整が済めば国連とも情報を共有する準備がある」と述べ、今後、事件の証拠を国連に伝える用意がある考えを示した。

 さらに、米国では北朝鮮をテロ支援国家に再指定するよう求める声が相次いで浮上している。
 下院で一部の議員が再指定を求める法案を提出したほか、米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」は、殺害事件を受けて再指定すべきだとの社説を掲載した。
 米国は1998年に北朝鮮をテロ支援国家に指定したが、2008年に当時のブッシュ政権が北朝鮮の核開発計画の検証方法をめぐって北朝鮮と合意したのを受けて、指定を解除した。

 事件の舞台となったマレーシアは伝統的に北朝鮮の友好国。実行犯として殺人罪で起訴された女2人の出身国ベトナム、インドネシアも友好国だが、暗殺工作に自国民が巻き込まれたとして、北朝鮮を非難する声が高まっている。
 マレーシアは北朝鮮との外交関係の再検討に着手。
 北朝鮮国民に認めていたビザなし渡航を取りやめる方針を明らかにした。

 これに対し、北朝鮮国営の朝鮮中央通信は1日、事件への関与を改めて全面否定し、
 「米国と南朝鮮(韓国)当局は『猛毒の神経剤VX』による毒殺だと主張し、
 われわれに対し、根拠なく言い掛かりをつけている。荒唐無稽な詭弁(きべん)だ」
と非難。
 米韓が「政治的陰謀策動」を続けるなら、「より強力な自衛的措置を取る」と警告した。

 対応が注目される中国はVXが使用されたことについて、
 「マレーシア側の発表は初期段階にすぎず、結論は下されていない」(外交部の耿爽報道官)
として、北朝鮮批判を避けた。
 その一方で北朝鮮とマレーシアが事件をめぐり対立していることを念頭に「対話と交渉で問題を適切に解決してほしい」とも述べ、中国の微妙な立場をうかがわせた。



毎日新聞2017年3月5日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20170305/ddm/001/030/161000c

マレーシア
北朝鮮大使、国外追放 正男氏殺害巡り

 【クアラルンプール林哲平】
 マレーシア外務省は4日夜、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長の異母兄、金正男(キムジョンナム)氏(45)がクアラルンプールの空港で殺害された事件を受け、北朝鮮の姜哲(カンチョル)・駐マレーシア大使を「ペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)」として国外追放すると発表した。
 6日午後6時(日本時間同日午後7時)までの退去を求めている。

 事件をめぐっては、姜大使が「マレーシアの捜査は信用できない」などと批判。
 マレーシア政府が駐北朝鮮大使を召還したほか、北朝鮮国民のビザ(査証)なし渡航を中止していた。
 今回の国外追放はそれに続くもので、両国関係の悪化は決定的なものになった。

 マレーシア外務省によると、2月28日に北朝鮮代表団と公式協議し、事件に関する姜大使の発言について文書での謝罪を要求。
 期限の同日夜を過ぎても回答はなかった。
 マレーシア外務省は4日夕に姜大使を呼び出したものの姿を見せなかったため、文書で国外追放を通告したという。

 マレーシアのアニファ外相は4日の声明で「いかなる侮辱や名誉を汚す行為にも厳しく対応する」と強調。
 国外退去などの一連の措置は「北朝鮮との関係見直しの一環だ」と述べ、さらなる対応の可能性も示唆した。

■書記官に警告

 マレーシア政府関係者によると、事件の重要参考人として行方を追っている北朝鮮大使館のヒョン・グァンソン2等書記官に対しても6日に外務省に出向くよう求めた。
 応じなければ姜大使同様に国外退去処分にするとしている。





【2017年 大きな予感:世界はどう変わるか】





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