2017年2月7日火曜日

韓国は(5):金正男暗殺、真相は迷宮入りとの見方も

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  どうにもしっくりいかない。
 金正男を暗殺すれば、周囲は北朝鮮がやったものと思う。
 それがわかっていてあえてやるだろうか?
 ビルマの飛行機爆破のときとは北朝鮮ははるかに変わっている。
 もしやるなら、頭を使ってこっそり事故に見せかけてやるだろう。
 それを空港の人ごみの中、監視カメラが設置されているところでミエミエにやるか?
 犯人は北朝鮮です、と宣伝するような形でやるか?
 なにか、北朝鮮に非難がむくように、ということになる。
 アメリカのCIAか、それとも中国の秘密警察か
 CIAならありそうなことだ。
 また、中国は金正恩がいうことを聞かないなら、正男のようになるという脅しにもとれる。

 おそらく最終的に分からず仕舞で終わってしまうのだろう。
 金正男を暗殺しなければならないような理由が北朝鮮にあるのだろうか。
 流浪の金正男に価値があるとも思われない。
 彼の支持者が北朝鮮に内部にいるとも思えない。
 彼がどう喚こうとも、誰も注視はしない。
 なら、北朝鮮が彼を暗殺する必要があるか。
 これはどうにも理解できない。


ニューズウィーク日本版ウェブ編集部 2017年2月16日(木)18時58分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/02/post-6995.php

金正男の遺体は北朝鮮引き渡しへ 
真相は迷宮入りとの見方も

<マレーシアで起きた金正男暗殺事件は3人目の容疑者が逮捕されるなど、捜査が進みつつある。
 しかし北朝鮮以外の国籍の人物が容疑者としてあっさりと拘束されたことについて疑問の声も上がっている>

 マレーシアのクアラルンプール空港で12日に発生した金正男暗殺事件は、16日に現地の警察が容疑者6人のうち3人を逮捕、捜査が進んでいるかに見える。
 しかし、当初予想された犯人像──高度に訓練された北朝鮮の工作員というとは異なり、ベトナム、インドネシアなどの第三国の国籍の人物が、短時間で捕まった。

 韓国メディアのアジア経済によれば、実は捜査が真相究明できないまま迷宮入りするのではないかという懸念が出てきているという。

 マレーシア警察当局は16日午前2時、金正男暗殺事件の容疑者としてインドネシアのパスポートを所持した女性1人を逮捕。
  さらに午後にはこの女性の交際相手とされるマレーシア人男性1人を逮捕した。
 警察は前日午前にクアラルンプール空港でベトナム国籍のパスポートを所持する29歳の女性1人も逮捕しており、これで正男暗殺事件関連で3人を逮捕したことになる。

 マレーシア警察は、女性2人、男性4人の6人が今回の事件の容疑者とみて、残る3人の行方を追っている。
 またマレーシアの裁判所は2人の女性容疑者に対し7日間の拘留を命じた。

 16日に逮捕された2人目の女性はインドネシアのセラン出身の「シティ・アイシャ」という名前のパスポートを所持していることが判明した。
 また、この日逮捕された男性が、今回の事件に関わったとされる4人組のうちの1人かどうかは確認されていない。

 15日、最初に逮捕された女性はベトナム・ナムディン出身の29歳の「ドアン・ティ・フォン」と書かれたパスポートを所持していた。
 この女性は警察の取り調べに対し、
 「自分は女友達とマレーシア旅行に来て、同行の男性4人から『空港の乗客を相手にいたずらをしよう』と提案されてやった。相手が金正男だとは知らなかった」
と供述したという。

 だが、逮捕された容疑者たちのパスポートに書かれた国籍が正しいかどうかは疑わしい。
 北朝鮮の工作員は第三国のパスポートを所持しているのが一般的だからだ。
 韓国政府当局者は
 「(1987年の大韓航空機爆破事件の主犯である)金賢姫も日本国籍の偽造パスポートを持っていた。
 1983年ミャンマーのアウンサン爆破テロの際に拘束された北朝鮮のテロ要員も外国の偽造パスポートを所持していた」
と指摘したという。

 また今回、金正男を空港内で殺害したとされる容疑者の女性が、空港内の防犯カメラに正面から映っていたこと、さらに犯行の2日後に現場に戻って逮捕されたこと、さらに犯行について「いたずらをしただけ」と供述したことなど、北朝鮮による工作活動としてはあまりにずさんな点が多いからだ。

 外交関係者の間ではマレーシア当局が、北朝鮮と韓国、中国などの利害関係が複雑で、国際社会が注目しているこの事件について、明解な捜査結果を出すのはむずかしいのでは内という予想が出てきている。
 韓国政府筋は、
 「マレーシア政府が金正男の遺体の解剖検視だけでなく、捜査をするのにも時間がかかり、結果を断定して講評するのは難しいだろう。
 複雑な外交関係を考慮せざるを得ない」
と迷宮入りもやむなしと考えていることを明らかにした。

 検視には北朝鮮大使が立ち会い
 韓国メディア、マネートゥデイはマレーシア警察当局による検視の様子についても伝えた。
 金正男の遺体は15日、クアラルンプール総合病院内の解剖検査室で12時45分から夕方8時まで7時間にわたって解剖され検死が行われた。
 これには在マレーシアの北朝鮮大使館員も立ち合った。
 また韓国の国家情報院(かつてのKCIA)から指紋と写真が提供され、金正男本人であることが確認されたという。

 マレーシアのハミディ副首相は、北朝鮮に金正男の遺体を引き渡す方針を明らかにしたが、死因を特定することは出来ないと語った。

 一方、北朝鮮では16日、異母兄・正男が暗殺されて初めて金正恩が公式の場に姿を見せた。
 韓国MBCは、平壌で開かれた金正日生誕75周年記念中央報告大会に出席した金正恩が終始、極度に緊張した表情を見せていたことを伝えている。

「北極星2型試験発射の完全成功の荘厳な火炎は、光明星節(金正日の誕生日)をさらに輝くように飾っている」

 金永南最高人民会議常任委員長の熱のこもった演説とは対照的に、金正恩は焦点の定まらないような目で虚空を凝視している。
 2013年、自身と正男の叔父、張成澤を処刑の5日後、金総書記死去2周忌行事に出席したときも暗く固い表情をしたが、今回もその時と同じ表情を見せている。

 金正恩のこわばった表情の裏に何が潜んでいるのか? 
 それは今回の金正男暗殺事件の真相と同様に誰も見ることがないまま隠されてしまうのだろうか?



ニューズウイーク 2017年2月16日(木)15時59分 高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト) ※デイリーNKジャパンより転載
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/02/post-6993.php

金正男氏を死に追いやった韓国誌「暴露スクープ」の中

<韓国の有力週刊誌・週刊京郷が11日、金正男氏に関する驚愕の記事を掲載していた。
この暴露記事が暗殺を招いたという見方がある>

 北朝鮮の故金正日総書記の長男・金正男(キム・ジョンナム)氏が13日、マレーシアで殺害された。
 突然の事件にもかかわらず、韓国メディアは異例の早さで対応。
 死因も犯人の正体も明らかになっていない状況のなか、さっそく北朝鮮の偵察総局による「暗殺」と半ば断定した上での強い論調が目立つ。
 偵察総局とは、北朝鮮によるテロやサイバー攻撃を総括する機関で、2009年に党と軍の特殊作戦組織を統合して設立された。

 大方の見方の通り、正男氏が北朝鮮当局により殺されたと仮定した場合、最大の疑問は「なぜこの時期に殺されたのか」となる。
 2月16日の故金正日総書記の誕生日「光明星節」を控え様々な憶測があるが、韓国でまことしやかに囁かれているのが「金正男亡命説」だ。

 韓国の有力週刊誌・週刊京郷は11日、スクープ記事を放った。
 2002年に北朝鮮を訪問した朴槿恵議員(当時)が、訪朝後数年間にわたり北朝鮮と連絡を取っていた際の「メッセンジャー」こそが正男氏だというのだ。

 朴槿恵氏は当時、2002年から2012年まで「ヨーロッパ・コリア財団」の理事を務め、北朝鮮の大学生を欧州へと留学させたり、普天堡(ポチョンボ)電子楽団の来韓講演などを企画したりしていた。
 こうした事業を進める上での北朝鮮とのやり取りに、北京にいた正男氏が関わっていたという。
 手紙は同財団の関係者が北京で正男氏に渡し、そこから張成沢(チャン・ソンテク、金正日氏の妹婿)氏、金正日総書記へと伝わった。

 週刊京郷が入手した当時のEメールには興味深い内容が多い。
 例えば2005年12月1日に正男氏が財団宛てに送ったメールには「来年2月23日が叔父(張成沢)の還暦なので、韓服(チョゴリ)を仕立てたい」とある。
 これに財団側は「詳しい体のサイズが必要」と返すと正男氏はその内容を送ってきている。
 さらには韓国国内の有名占い師に叔父の運勢占いを頼んだ内容もある。厄払いのお札まで北京経由で送ったという。

■2012年に亡命を打診

 この記事の極めつけは、2012年の大統領選挙(与党の朴槿恵候補、野党の文在寅候補が出馬し朴候補が当選)の直前に、金正男氏が亡命しようとしていた具体的な状況が暴露されたことだ。

 記事では匿名の国家情報院の関係者を引用し、「国家情報院が金正男を(韓国に)連れてこようとしたが、金正男は韓国よりもヨーロッパや米国に行きたがった。
 ヨーロッパは北朝鮮情報を渇望していなかったし、米国の立場では金正男が金正日の息子であることは確かだが、他の高位級人士よりは情報価値が落ちると判断した」。

 「特別な待遇を要求した金正男と米国側の交渉は決裂し、韓国側も金正男氏の要求と現実的に提供できる限界のギャップが大き過ぎたため、値段が合わないと判断し最終的にあきらめた」
と明かした。

 この暴露記事が金正男氏の死を呼んだと見られているのである。
 この記事を見た金正恩氏が激昂し、積年の邪魔者であった正男氏を、テ・ヨンホ元駐英公使など近ごろ相次ぐ亡命者への「見せしめ」として白昼堂々殺害した――。
 つまり、正男氏の死は北朝鮮を含め世界中にいる「脱北予備軍」に対する警告だというのだ。
 確かに、「喜び組」パーティーなど体制の恥部を暴露して暗殺された金正日氏の妻の甥も、ほかの脱北高官に対する「見せしめ」として殺されたフシがある。

(参考記事:将軍様の特別な遊戯「喜び組」の実態を徹底解剖)

 正恩氏もまた、父と同様に暴かれたくない秘密が山ほどあるだろう。
 この事件の真相はすぐに明らかになるとは思えないが、「見せしめ」説を検証する余地は十分にあと筆者は見ている。

(参考記事:北朝鮮「秘密パーティーのコンパニオン」に動員される女学生たちの涙)

[筆者]
高英起(デイリーNKジャパン編集長/ジャーナリスト)
北朝鮮情報専門サイト「デイリーNKジャパン」編集長。関西大学経済学部卒業。98年から99年まで中国吉林省延辺大学に留学し、北朝鮮難民「脱北者」の現状や、北朝鮮内部情報を発信するが、北朝鮮当局の逆鱗に触れ、二度の指名手配を受ける。雑誌、週刊誌への執筆、テレビやラジオのコメンテーターも務める。主な著作に『コチェビよ、脱北の河を渡れ―中朝国境滞在記―』(新潮社)、『金正恩 核を持つお坊ちゃまくん、その素顔』(宝島社)、『北朝鮮ポップスの世界』(共著、花伝社)など。近著に『脱北者が明かす北朝鮮』(宝島社)。

※当記事は「デイリーNKジャパン」からの転載記事です。



Yahooニュース 2/16(木) 19:51 児玉克哉  | 社会貢献推進国際機構・理事長
http://bylines.news.yahoo.co.jp/kodamakatsuya/20170216-00067779/


 金正男氏の暗殺事件は衝撃的だった。
 金正男氏はこれまでにもメディアに何度も登場し、観光などを目的に日本に何度か不法入国していたといわれている。
 「東京ディズニーランド」にも出入りしていたと伝えられ、北朝鮮のイメージとのギャップもあり、特に日本人からすると不思議な親密感がある人物だった。
 これから真相や背景が徐々に明らかになるのだろう。
 多くの人がいて、監視カメラが多数据えられている国際空港での暗殺事件だ。
 秘密裏に暗殺することが困難だったのか、暗殺を急いでいたのか、むしろ暗殺のメッセージを世界に送りたかったのか。
 これらは解明の展開を待ちたい。

 問題はこの暗殺事件が東アジア情勢に与える影響だ。現在、日本、中国、韓国、北朝鮮が構成する東アジア情勢は荒れている。
 これにトランプのアメリカとプーチンのロシアが絡んでくるのだから、極めて複雑な状況である。
 中国、北朝鮮、アメリカ、ロシアは核兵器を保有している。
 中国、日本、韓国、アメリカ、ロシアは世界経済に大きな影響を与える経済大国でもある。
 東アジアの展開は世界を揺るがすのだ。

 冷戦時代には、資本主義陣営のアメリカ・日本・韓国のブロックと社会主義陣営のソ連・中国・北朝鮮のブロックに分かれ、ある意味、わかりやすい構造であった。
 しかし今は極めて流動的な状況になっている。
 日本、中国、韓国、北朝鮮の4カ国の関係は現在、どこも敵対、あるいは冷えている状態であり、極めて不安定だ。
 そこにこの金正男氏の暗殺事件が起き、さらに流動的になっている。

 まず、重要なのは中国と北朝鮮の関係だ。中国は北朝鮮の後ろ盾となってきたが、最近の金正恩最高指導者は中国の支配下に入りきらない行動をとるようで、関係はかなり冷えてきたといわれる。
 最近の北朝鮮の核実験やミサイル発射は、アメリカや韓国、日本を刺激して、米日韓の同盟を強めるというだけでなく、中国へ矛先が向けられるリスクも感じている。
 もちろん中国と北朝鮮は比較にならないほどの力の差がある。
 しかし、何をしでかすかわからない指導者が、北京や上海に届く核弾頭ミサイルを持つのは当然、避けたい事態だ。
 北朝鮮が中国戦略の支配下に入らないとなると、金正恩体制を変える必要が生じる。
 そのカードの一つが金正男氏であった。
 いざとなれば、金正恩氏を失脚させるか暗殺し、金正男氏を北朝鮮に送りこむことができる。
 中国にとってはより忠実な傀儡政権が必要なのである。

 今回の金正男氏の暗殺は、このオプションを消すものだ。
 中国と金正男氏との関係の冷え込みを指摘し、中国は金正男氏を見切ったという人もいる。
 しかし、金正恩氏の後に中国がコントロールできるカードはあまりあるわけではない。
 金正男氏の存在は中国にとって重要であったはずだ。
 実際に今回も、金正男氏はクアラルンプールからマカオ行きの航空機に搭乗しようとしていた。
 中国への「帰国」前の暗殺だ。
 中国は現在、北朝鮮への批判のトーンは抑えているようにみられるが、これはむしろ「怖い」。
  本気で金正恩体制を崩壊させる動きにはいる可能性がある。
 トランプ大統領と安倍首相の会談などもあり、日米関係が強化される方向だ。
 これに韓国が加わり、米韓日の軍事同盟ができる前に、動きを加速し、北朝鮮を完全支配下に置く戦略は十分考えられる。

 最も重要なポイントは韓国の動向だ。
 現在、この混乱の中にありながら、朴大統領は弾劾訴追案が採決され、朴政権は機能不全に陥っている。
 中国と朴・韓国は、昨年までは極めて密接な関係を築いていた。
 それが韓国の経済発展の一要因でもあった。
 しかし昨年、THAAD配備が議論されるようになってから、関係が急速に冷えた。
 現在は、蜜月どころか対立に近いような雰囲気が漂う。
 ここで私が注目するのは、反朴大統領の凄まじい運動である。
 大統領の弾劾にこれだけ多くの人が動員されていることは異常な状態だ。
 どうであろうともう1年で朴大統領の任期は終わるし、その間も暫定的な実質的指導者をたてればいいだけだ。
 これだけ大規模なデモを毎週のように行うのには、資金もかなりかかる。
 北朝鮮からの工作員が扇動しているという説も聞かれる。
 しかし、北朝鮮だけではできないような規模だ。
 中国が背後にいてもおかしくない。
 実際に反朴運動はかなり左寄りであり、朴政権の後には、親北・親中路線になると予想されている。
 つまり韓国は、激しく揺れる東アジア情勢の中で、アメリカを中心とした米韓日同盟に傾く路線と中国を中心とした中韓北連携に傾く路線とが同時に動いている。
 アメリカは、北朝鮮の挑発を契機に、THAAD配備を強要し、米日韓の連携を進めようとしている。
 今回の金正男暗殺事件のように、安定しない金正恩政権に見切りをつけるとともに、一気に韓国も親中政権にしてしまうことを模索するのは当然だ。
 北朝鮮がより「中国化」したら、中国は直接的にアメリカが背後にいる韓国と接したくない。

 そもそも、中国からすれば、朝鮮半島は中国の支配下にあったものという感覚がある。
 歴史的に見ても、朝鮮は中国の圧倒的に大きな影響を受け続けてきた。
 朝貢冊封関係を続け、元号も中国の元号を使っていたわけで、中国の属国に戻るのが自然だと思ってもおかしくない。
 中国の1950年代後半の歴史教科書をみたことがあるが、そこには中国の領土線とさらに広大な「中国の領土であるが、現在は暫定的に帝国主義支配下にある地域」の境界線があった。
 東南アジアのかなりと朝鮮半島は全部入っていた。
 ちなみに沖縄もその中にあった。

 トランプ旋風が吹き荒れ不安定な国際関係。
 金正男暗殺事件は、揺れ動く東アジア情勢をさらに混乱に陥れそうだ。
 韓国は、アメリカと中国に挟まれて、非常に難しい選択を迫られそうだ。
 東アジア情勢はかなりリスクがある危険な状態になりつつある。
 アメリカも、中国も、ロシアも、日本も、大きな動きが起きて欲しくないのが本音だ。
 金正恩氏がさらに過激な行動をしないことを祈るが、そんな祈りは通用しないようだ。


アゴラ 2/22(水) 17:03配信  長谷川 良
http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20170222-00010008-agora-int

「正男暗殺」の次は「正恩暗殺」?

 金正男氏の暗殺事件を捜査中のマレーシア警察当局は19日、事件発生後、初めて記者会見を開き、これまでの捜査結果などについて発表した。
 その情報をもとに、「正男氏暗殺事件」の時間的推移を再現してみた。

 マレーシア警察の発表から「正男氏暗殺事件」が
 北朝鮮の対外工作機関「偵察総局」が主導した犯罪
だったことがほぼ確認できた。
 そこで発表されたデーターから事件がどのように実行に移されていったかを考える。

 先ず、偵察総局から最初にマレーシア入りした人物は32歳のホン・ソンハク容疑者で、先月31日に入国した。
 この事実は、北側が正男氏のマカオ帰国の飛行機便の日時(今月13日)を先月下旬ごろ、入手していたことを示唆している。
 金正恩朝鮮労働党委員長の父・故金正日党総書記の誕生日(2月16日)が近かったことから、正男氏の暗殺計画がその日に合わせて実行された可能性も排除できなくなる。

 ホン容疑者の後、3人の容疑者が次々とマレーシア入りした。
 先ず、リ・ジェナム容疑者(57)が今月1日に、同月4日にリ・ジヒョン容疑者、そして最後にオ・ジョンギル容疑者(54)が入国した。
 このマレーシア入りの順序から判断すると、ホン容疑者が正男氏マカオ帰国情報の信頼性をチェックした後、その直接責任者のリ・ジェナム容疑者がマレーシア入り。
 そして正男氏のマカオ帰国日程が信頼できるとして「正男氏暗殺計画」の許可を金正恩氏に求めた。
 そしてOKが出たことを伝えるためにマレーシア入りした3人の容疑者に伝えたのがオ容疑者だったはずだ。
 すなわち、先月下旬に正男氏マカオ帰国日程を入手し、今月7日、金正恩委員長から暗殺許可が出るまで1週間余りの時間しか経過していないわけだ。

 不明な点は、正男氏を実際暗殺したベトナム人とインドネシア人の国籍を有する2人の女性の動向だ。
 2人はそれぞれ今月2日と4日に旅行目的でマレーシア入りした。
 その2人が4人の北工作員と接触したのは遅くとも今月10日前後と予想できる。
 2人の女性の証言によれば、13日の実行日の前日、クアラルンプール国際空港内でリハーサルを実施したという。
 一部の情報では、女性はマレーシア入り前に北側から既に何らかのオファー(香水の広告ビデオ撮り)を受けていたという。
 これが事実とすれば、北の正男氏暗殺計画が1月末から2月初めには既に準備されていた、ということになる。

 暗殺は毒物によるものだった。
 その毒物の準備や4人の北容疑者の宿泊地などを手配していたのが、17日夜逮捕された最初の北国籍容疑者、リ・ジョンチョル容疑者(46)だろう。
 犯行後、4人は即出国したが、リ容疑者はマレーシアに家庭を持っていることもあって留まった(北は不法工作活動に現地駐在の同国人を動員したわけだ)。

 事件の推移で不明な点は、4人の北容疑者と2人の女性との最初の接触だ。
 さまざまな証言が出ているが、誰が異国の2人の女性を正男氏暗殺の実行犯にする計画を立案したのか。
 正男氏マカオ帰国情報から暗殺方法、2人の女性の関与など誰が計画したのか。逮捕された唯一の北のリ・ジョンチョル容疑者から聞き出す以外に、もはやその答えを得る道がない。

 次に、北に帰国したという4人の工作員の運命だ。
 北側は「正男氏暗殺事件」の実行犯だという国際社会の批判に対し当然否定するだろう。
 そうなれば、北に帰国した4人の容疑者は遅かれ早かれ処刑される運命にある。
 金正恩氏の親族暗殺者が国内にいるという状況は正恩氏にとって快いものではない。
 国際社会の追及が激しくなる前に4人を何らかの理由で処刑するとみて間違いない。

 ところで、4人の容疑者は13日、マレーシアを出国し、3カ国経由で17日ごろ平壌に帰国済みというが、誰が確認したのか。
 ドバイから突然北京に入っているかもしれないし、ウラジオストックから平壌ではなく、第3国に渡っているかもしれないのだ。

 マレーシアの「正男氏暗殺」計画は北側の工作活動としては余りにも杜撰だった。
(1):5人の北容疑者の名前と顔が明らかになってしまった、
(2):1人の北の容疑者が逮捕された、
(3):2人の異国女性の動向が予想できない。
 捜査次第では大きな爆弾が破裂するような内容が飛び出すかもしれない。
 正男氏を暗殺したが、国際社会に「北の犯罪」を改めて鮮明に明らかにしてしまった。
 その上、これまで良好な関係だったマレーシアとの外交関係が今回の事件で険悪化するかもしれない(マレーシア外務省は20日、駐北朝鮮大使を召還すると表明)。

 金正恩氏は叔父・張成沢氏を処刑し、今度は異母兄・金正男氏を暗殺した。
 正恩氏の権力基盤が一層安定するだろうという予想は残念ながら当たっていない。
 「金正男氏暗殺」の次は「金正恩氏暗殺」という声が出てくるからだ。

 当方は「米中特殊部隊の『金正恩暗殺』争い」(http://agora-web.jp/archives/2018520.html)(2016年4月6日参考)を書いたが、金正恩氏も自身の名が暗殺リストのトップにあることをくれぐれも忘れてはならない。
 実際、韓国の聯合ニュースは昨年6月17日、金正恩氏の死亡ニュースを流したことがある(「金正恩氏が何度も死亡する理由」(http://agora-web.jp/archives/2019876.html)2016年6月21日参考)。


編集部より:この記事は長谷川良氏のブログ「ウィーン発『コンフィデンシャル』」2017年2月21日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はウィーン発『コンフィデンシャル』(http://blog.livedoor.jp/wien2006/)をご覧ください。

 どうも内容がいい加減である。


ロイター 2017年 02月 28日 08:29 JST  James Pearson and Jack Kim
http://jp.reuters.com/article/northkorea-malaysia-kim-bureau-idJPKBN16313U?sp=true

アングル:金正男氏暗殺の謎、北朝鮮「従来作戦」と異なる手口

[ソウル 24日 ロイター] -
 北朝鮮の指導者である金正恩氏と疎遠な関係にあった異母兄、金正男氏の奇妙な暗殺事件には、同国がこれまで海外で実行してきた作戦とは大きく異なる点がある、と専門家は指摘する。

 金正男氏は先週、マレーシア首都クアラルンプールの空港で殺害された。
 警察では即効性の毒物による攻撃を受けたと見ている。
 当局が実行犯として逮捕した2人の女性のうち、1人はインドネシア国籍、もう1人はベトナムのパスポートを持ち、ともに拘留されている。

 韓国は、金正男氏の暗殺を計画したのは、「偵察総局(RGB)」と呼ばれる北朝鮮の謎の機関であると指摘している。

 国際連合はRGBを北朝鮮の「中心的な情報機関」と位置付けており、北朝鮮の武器取引に関与しているとして、昨年3月に制裁対象に指定した。

 だが、北朝鮮指導部に詳しい専門家のマイケル・マッデン氏によれば、自らの一族による王朝的な支配について公然と批判していた正男氏の姿勢が目立っていただけに、今回の暗殺はさまざまな機関による共同作戦だった可能性があるという。

「RGBは、たくさんある可能性の1つにすぎない。
 関与した機関を特定するには、少なくとも、もう1週間必要だろう」
とマッデン氏は語る。

 マレーシア警察は23日、北朝鮮国籍のリ・ジョンチョル容疑者(47)を逮捕した。
 同容疑者は、漢方薬を扱う小さな会社に勤務しているとしてマレーシアの就労ビザを持ち、妻と2人の子どもと共にクアラルンプールで暮らしていた。

 脱北者であるジャン・ジンスン氏によれば、リ容疑者のような海外在住の北朝鮮人を利用するやり方は、一流スパイの養成所である「35号室」による作戦の特徴だという。
 ジャン氏は、かつて朝鮮労働党内で「35号室」と並ぶ情報機関である「統一戦線部」に勤務していた。

 「現実的な職業とスキルを備えた要員を育て、家族とともに海外に送り出して生活させる」とジャン氏は言う。
 「今回の金正男氏の事件のように緊急の機会が生じた場合に、そういう海外在住の要員を作戦で利用することになるので、かなり前から配置されている」

 マッデン氏は、北朝鮮工作員の一部は所属機関を定めないフリーエージェントで、必要に応じて利用されるという。

 また、北朝鮮の元駐英公使テ・ヨンホ氏が今月ロイターに語ったところによれば、大規模な海外作戦に際しては、北朝鮮国家保衛省、いわゆる「保衛部」の職員が少なくとも1人は配置されるという。
 この保衛部職員は北朝鮮当局と直接連絡を取っているのが普通で、保衛部だけでなく、朝鮮労働党中央委員会からの指令も受けているという。

 マレーシア警察は22日、北朝鮮大使館の高官を殺人事件の容疑者として特定した。

■<シアン化合物入りタバコ>

 北朝鮮による暗殺事件を計画するのが朝鮮労働党だとすれば、実行に当たるのは、公式には軍に属する偵察総局である。
 これまでにも北朝鮮の情報機関は、ときおり暴力的な海外作戦を実行してきた歴史を持っている。
 通常は韓国側の標的に対する攻撃だ。

 1968年、当時の「偵察局」第124部隊に所属する特殊部隊員が、韓国の大統領府である青瓦台から数百メートル以内に侵入した。
 彼らには当時の朴正熙大統領を殺害するという指令が下されていた。

 マッデン氏は、北朝鮮の情報機関には「50年の歴史があり、機関・作戦に関する膨大な蓄積がある」と語る。
 「こうした人々は、厳しく無情なスパイ組織のリーダーや作戦指揮官のもとで学んでいる」
 現在の北朝鮮スパイたちは、「北朝鮮情報機関の創設者たちから見て第2世代、第3世代に当たる」と同氏は言う。
 しかし、金正男氏暗殺の実行犯とされているベトナム国籍やインドネシア国籍の女性たちのような外国人の手先を利用することは、北朝鮮による作戦の常道からは外れている。

 1987年、北朝鮮の工作員だった金賢姫(キム・ヒョンヒ)が大韓航空858便に爆弾を仕掛け、ベンガル湾上空での爆発により乗客乗員115人全員が死亡した。
 逮捕された金賢姫は韓国に引き渡され、その後謝罪して、軍事スパイとしての訓練の詳細を、1993年の回想録「Tears of my Soul」で暴露した。
 金賢姫・元死刑囚はその回想録で、任務に向けて出発する際に、見たところ通常の「マルボロ」に見えるタバコを1箱渡されたと書いている。
 1本の煙草に少量の黒インクで印が付けてあり、ここを噛めば即死するようになっていたという。

 逮捕されたときにこの煙草を噛んだが、仕込まれたシアン化合物による自害には失敗した。
 彼女は回想録で、北朝鮮建国時の指導者の名を挙げ、「金日成の忠実な娘として、従順な犬のように訓練された私は、この瞬間に死んだ」と書いている。
 大韓航空機爆破については、故金日成国家主席から直筆の命令書を渡されたという。

 金日成主席は、殺害された金正男氏、現指導者の金正恩氏の祖父に当たる。

(翻訳:エァクレーレン)




【2017年 大きな予感:世界はどう変わるか】



●辺真一★金正男事件により3月に訪れる危険な状態!金正恩の怒りは頂点!
Published on Feb 26, 2017




https://www.youtube.com/watch?v=BBZu7QnBlyE
●金正男暗殺 北朝鮮でいま何が?
Published on Feb 18, 2017





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