4月中半日から5月上旬までは朝鮮半島有事の危険性が高い期間である。
アメリカは北朝鮮が、核実験またはミサイル発射実験を行えば北爆すると言っており、実際シリア、アフガンではその実行がフェイクでないことを示した。
多くの識者はこの事態の深刻さをカリアゲ君は認識しており、この期間は何もせずに様子見するであろうと見て、今期の北朝鮮の実験はないものと見ているようである。
問題はその後で、以降に下げた頭をまた持ち上げて実験に踏み切ったときアメリカがどういう対応をとるのかということが論議の的となっている。
しかし、カリアゲ君は失敗したがミサイル実験を行った。
失敗というのはおそらく陽動で、
カリアゲ君としては意図的に発射直後に爆発あるいは墜落するように仕組んだとみるのが適切だろう。
ミサイルは発射した、しかし失敗にみせかけた、
ということである。
こういう時にアメリカがどういう態度に出るのか、見定めてみようとしている、とみていいだろう。
実際、アメリカはどうでるか。
★.原則論から言えば、実験は行われたのであるから北爆を実行することになる。
しかし、意図的に発射直後に自爆あるいは墜落させてたのだから、アメリカの要求を呑んでいるということになる。
解釈のどちらをとるか、アメリカとしては少々悩むことになる。
トランプだと悩まないかもしれないが。
『
聯合ニュース 2017/04/16 09:16
http://japanese.yonhapnews.co.kr/headline/2017/04/16/0200000000AJP20170416000400882.HTML
北朝鮮がミサイル発射するも失敗 東部新浦付近から1発=韓国軍
【ソウル聯合ニュース】
北朝鮮は16日午前、弾道ミサイル1発を発射したが失敗したようだ。
韓国軍合同参謀本部はこの日、
「北がきょう午前、(北東部)咸鏡南道・新浦付近から未詳のミサイルを発射したが、失敗したとみられる」
と明らかにした。
北朝鮮が発射したミサイルの種類はまだ確認されていない。
●北朝鮮の中距離弾道ミサイル(資料写真)=(聯合ニュース)
北朝鮮は今月5日に同じ場所から弾道ミサイル1発を発射したが、
約60キロ飛んだ時点で、欠陥により東海に墜落した。
当時、韓米当局はミサイルを中長距離弾道ミサイル「北極星2」(米国側の呼称は「KN15」)系列と推定したが、米軍事当局の一部は中長距離弾道ミサイル「スカッドER」とした。
情報当局の関係者は
「この日、発射に失敗したミサイルは5日に新浦付近から発射したものと同系列だとの見方に重点を置いている。
地上の発射施設から遠くまで飛ばせなかったとみられる」
と伝えた。
北朝鮮は前日、故金日成(キム・イルソン)主席の生誕105年(太陽節)に合わせて平壌で実施した軍事パレード(閲兵式)で、新型の大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられるミサイルなど3種類のICBMを公開。
これに次ぐこの日のミサイル発射は軍事的な圧力を強める米国に対する一種の武力誇示と受け止められる。
北朝鮮は25日に朝鮮人民軍創建85周年を迎えることから、再度弾道ミサイルを発射する可能性が高いとみられる。
』
『
時事通信 4/16(日) 8:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170416-00000012-jij-kr
北朝鮮、弾道ミサイル発射に失敗
=米副大統領の訪韓直前
―挑発続く恐れ
【ソウル、ワシントン時事】
米韓両軍によると、北朝鮮が16日午前6時21分(日本時間同)、東部・新浦付近から弾道ミサイル1発の発射を試みたが、失敗した。
米太平洋軍はこれに関し、ミサイルは発射直後に爆発したとの見方を示した。
また、米当局者はミサイルの種類について、大陸間弾道ミサイル(ICBM)ではなかったと強く確信しているとロイター通信に語った。
ミサイルは陸上から発射されたという。
北朝鮮は15日の故金日成主席の生誕105周年を祝賀する軍事パレードで、新型のICBMとみられる各種ミサイルを公開し、米国との対決姿勢を鮮明にしたばかり。
今後も挑発行動を続ける可能性がある。
韓国には16日午後、ペンス米副大統領が到着する。
ペンス氏は18日までの滞在中に予定する黄教安大統領代行(首相)との会談で、北朝鮮問題について話し合う方針だ。
米軍の原子力空母カール・ビンソンも朝鮮半島沖に接近している。
北朝鮮には、こうしたタイミングで軍事能力を誇示することで、圧力を強めるトランプ米政権をけん制する狙いがあったとみられる。
韓国政府は16日午前9時半から、国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開き、対応を協議。韓国外務省報道官は論評を出し、弾道ミサイル発射を禁じた国連安全保障理事会の決議違反だと指摘した上で、
「核実験やICBM発射などさらなる挑発に及べば、強力な懲罰的措置が必ずある」
と警告した。
新浦付近では5日、弾道ミサイル1発が発射され、約60キロ飛行した。
準中距離の「スカッドER」(射程1000キロ)と推定されているが、失敗だったとの見方が出ていた。
』
『
毎日新聞 4/16(日) 16:27配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170416-00000038-mai-int
<北朝鮮ミサイル>
米国「失敗に対処する必要はない」
【ソウル支局】米ホワイトハウス当局者は16日、北朝鮮が同日発射したミサイルについて
「ICBM(大陸間弾道弾)ではない。
おそらくは中距離ミサイルだ。
発射後4~5秒で失敗した」
と説明した。
今後の対応については
「大統領は軍事、外交など幅広い選択肢を持つが、今回の失敗したミサイルに特に対処する必要はない」
と述べ、当面は静観する姿勢を示した。
ペンス米副大統領のアジア歴訪に同行する記者団に語った。
』
「失敗の対処する必要はない」とは、これ判断が難しい。
1].失敗したのだから、これを原因とする北爆という対処の仕方はない、
ということか
2].失敗したからといって、北爆をやめるという対処の必要はない、
ということであろうか。
どちらでもとれる。
言葉とはそういうもので、それをうまく使うのが外交でもある。
このアメリカの判断を北朝鮮がどのように理解して、行動を決めていくかである。
『
Record china配信日時:2017年4月16日(日) 20時50分
http://www.recordchina.co.jp/b175395-s0-c10.html
北朝鮮の新型ミサイルの主な目標は日本?
米国までは届かず―中国メディア
2017年 4月16日、中国メディアの澎湃新聞が、北朝鮮の新型ミサイル「北極星2号」の主な目標は日本だとする記事を掲載した。
記事は、14日に行われた北朝鮮の軍事パレードで、中距離弾道ミサイル「北極星2号」が初めて披露されたことを紹介。
このミサイルについて中国の軍事専門家は、「北極星1号を改良したもので、液体燃料を使用した射程距離2400〜3000キロの旧ソ連のR―27弾道ミサイルがベースだ」と分析しており、例えば1トンの弾頭を搭載した状態で射程距離3000キロを超えることはまずありえないため、東アジア地区を攻撃目標とできるが、米国までは届かないという。
米国の情報機関は、この新型ミサイルの射程距離を「2000キロ」程度と見積もっている。
中国の別の軍事専門家は、北朝鮮が大量の短距離ミサイルで韓国の防空システムを抑え、その間に北極星で在日米軍基地を攻撃するという方法をとった場合、この戦略が成功するか否かはともかく、少なくとも米軍がミサイル迎撃システムを、より重要な在日米軍基地へと回さざるを得ない状況にすることができると指摘。
米軍にとって戦略的難しい選択を迫られ、北朝鮮から最も近い米軍(在韓米軍)にとって大きなダメージとなるかもしれないと分析した。
』
『
日本経済新聞 2017/4/16 22:56
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM16H18_W7A410C1MM8000/
北朝鮮、ミサイル発射「失敗」
米韓協議けん制か
【ソウル=山田健一、ワシントン=永沢毅】
米韓両軍によると、北朝鮮は16日午前、東部の新浦(シンポ)付近から弾道ミサイル1発を発射した。
直後に爆発したとみられ、発射は失敗したもようだ
朝鮮半島近海への原子力空母派遣など米国が警戒を強めるなか、ペンス米副大統領が韓国を訪問する直前のタイミングで挑発を強行した。
米朝間の緊張が一段と高まる恐れがある。
●画像
韓国軍合同参謀本部と米国防総省によると、北朝鮮は16日午前6時21分ごろ、東部の咸鏡南道・新浦付近からミサイルを発射し。
韓国軍がミサイルの種類など詳細な分析を進めている。
ロイター通信は、米ホワイトハウス高官が「北朝鮮が発射した弾道ミサイルは中距離」と語ったと伝えた。
日本政府は16日「国連安全保障理事会の決議等への明白な違反だ」と外交ルートを通じて北朝鮮側に抗議した。
ペンス米副大統領は韓国の黄教安(ファン・ギョアン)大統領代行兼首相と会談するため、16日午後に韓国入りした。
聯合ニュースによると「米韓同盟は歴史上かつてないほど強い」と訪問先の在韓米軍基地で語った。
北朝鮮による前回のミサイル発射は北朝鮮問題が主要議題となった米中首脳会談を控えた今月5日。
今回のミサイル発射も米韓協議をけん制する狙いがあるとみられる。
韓国政府は16日午前、担当閣僚らで構成する国家安全保障会議(NSC)を開催した。
同国外務省は同日、
「核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)を発射した場合は、
北朝鮮が耐えられないような強い報復措置を取る」
とする報道官の談話を発表した。
マティス米国防長官は15日(米国時間)、「トランプ大統領は北朝鮮のミサイル発射を把握している」との声明を発表した。
トランプ氏は米フロリダ州の別荘で報告を受けたようだ。
北朝鮮では国威発揚を目指す行事が続く。故金日成(キム・イルソン)主席の生誕105年にあたる15日には軍事パレードを実施し、ICBMの可能性がある新型ミサイルを公開した。
韓国の聯合ニュースは「朝鮮人民軍創建85年にあたる25日前後に追加の挑発にでる可能性がある」と報じた。
核実験の実施を予測する分析もある。
トランプ米大統領は空母「カール・ビンソン」を朝鮮半島近海に向かわせた。緊張が高まれば、軍事衝突など不測の事態を招く可能性もある。
』
アメリカは北爆の実施を
1].核実験
2].ICBM発射実験
の2つに限定しているようだ。
日本の米軍基地が標的に入るような射程が1200kmから1300kmほどの中距離ミサイルについては行動を起こさない、ということであろうか?
もしそうなら、北朝鮮は射程1000km以内のミサイル実験をやりたい放題にやる、ということになる。
北朝鮮はアメリカのレッドラインを見極めたいと思っているはずである。
トランプはどう考えているのか?
『
ホウドウキョク 4/17(月) 11:31配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170417-00010003-houdouk-kr
ミサイル発射“失敗”は金正恩の智謀か?
軍事パレード翌朝の北朝鮮のミサイル発射、そして失敗は、このままでは米・朝・中がのっぴきならない事態へと進まざるを得なかった事態を、一気に沈静化する可能性がある。
失敗したら成功するまでやり続ける!という、このところの金正恩のミサイル発射パターンなどを考えると、引き続き警戒は必要だ。
が、この発射と特に“失敗”によって、金正恩は米中の強烈な圧力からするりと身をかわし、事態が軍事的暴発へとエスカレートする前にゲーム・オーバーに持ち込んだと考えることもできる。
北朝鮮をめぐる今回のゲームがこれほどまでに緊張したのは、ドナルド・トランプというプレーヤーが初参加したからだ。
「ディール男」を自任し、「マッドマン・セオリー男」かもしれず、とにかく真意が測りがたい。
金正恩との初対戦に向けて、安倍総理との会談、習近平会談、斬首作戦、トマホーク発射、カール・ビンソン空母打撃群、MOABなどなど、次から次へと繰り出してくれた。
第一印象が大事だ!金正恩に冷や汗かかせてやる!習近平にも手強い相手と思わせる‥といった「ディール男」ならではの狙いもあっただろう。
それで軍事的暴発も考えざるを得ない事態へと発展してしまっていた。
■金正恩はミサイル発射で軍事圧力に抗するガッツを見せた
金正恩としては、国の内外でトランプの脅しにビビったと受け取られる訳にはいかない。
しかし、下手な挑発行為に出ればアメリカ軍の反攻も恐ろしい。
どうするか。
まず、軍事パレードで各種ミサイルを中心に軍事力を内外に見せつけた。
その上で翌朝のミサイル発射、そして“失敗“だ。
発射を決断したことによって、トランプの圧力カードを振り払うというガッツを見せた。
これによって金正恩がゲームの敗者とはいえなくなった。
一方で、発射が成功し、とりわけ挑発度の高い新型で射程の長いミサイルだったとしたら、アメリカ軍も見て見ぬふりはできなかったと思われる。
それは軍事的衝突のリスクがさらに高いネクスト・ステージに進むことに他ならない。“失敗“によって、事態のエスカレーションにストッパーがかかる可能性が考えられる。
■“失敗”ではアメリカは軍事力行使のステージには進めない
トランプは空母打撃群まで投入して核実験やミサイル(特にICBM)発射の抑え込みに出た。
北の体制転覆が目標でないことは当人発言の通り。
筆者個人は、これまで本気さを欠いていた中国を働かせて金正恩を抑え込むテストケースとするのがトランプの優先目標とみていた。
今回、中国チャンネルで北の動きを抑え込めれば、次は同じチャンネルでさらに厳しい要求へと進めるからだ。
だが、金正恩が重大な挑発行為に打って出たら、アメリカ軍は懲罰行為というか反攻せざるを得ない。
そうでないとアメリカ軍と空母打撃群の威信失墜になりかねないからだ。
その先、北の再反撃はあるのか、あるとしたらどのような規模、内容になるのか、誰にも予見できないエスカレーションへとはまっていくことになる。
発射が“失敗“したことによって、アメリカ軍は追い込まれずに済んだとも言える。
トランプが深追いしなければ、空母戦闘群もいずれ面目を保ったまま帰投することになるだろう。
■金正恩は敗者も勝者もいないゲームオーバーに持ち込んだか?
“失敗“によって、このゲームの極めて重要だが曖昧なファクターは、相変わらず分からずじまいとなりそうだ。
それはすなわち、
1.:金正恩は合理的判断力があるのか?
2.:中国は北への影響力を本当に持っているのか?
3.:トランプは北に対しても軍事行動に出るのか?
といったポイントだ。
それが分からない以上、米・朝・中のゲームは振り出しに戻ることになる。
★.金正恩が性懲りもなく新たな挑発行為に及べば、
その時点で即、今のゲームが再スタートになる
が、そうでなければ、新たなきっかけを待ってニュー・ゲームとなるだろう。
それは、
★.中国共産党大会の終了なのか、
★.トランプの支持率急落なのか、
★.あるいは北の核兵器開発が最終段階に入る時なのか
もしれない。
次は話し合いゲームになるかもしれない。
こう考えてくると、16日早朝のミサイルの発射と、とりわけ“失敗“の意味するところはとても大きく深い。
そして最大の疑問は、もしかしたら金正恩は全てを読んで“失敗“してみせたのではないか?
ということだ。
“失敗“によって、明確な敗者も勝者もないゲーム・オーバーとなりえるからだ。
そうだとしたら、金正恩の智謀おそるべしと言わなければならない。
筆者の買いかぶり過ぎかもしれないが、この先、4月中の北の追加の挑発行為がなく、アメリカ軍も攻撃をしかけることなく事態が鎮静化に向かっていくなら、この“失敗“の意味するものは明らかだと思う。
』
『
日本経済新聞 2017/4/15 21:08 (2017/4/16 0:12更新)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASDC15H1W_V10C17A4MM8000/
米空母、朝鮮半島近海に
北朝鮮が新型ミサイル公開
【ソウル=鈴木壮太郎】北朝鮮は故金日成主席の生誕105年記念日の15日、平壌で大規模な軍事パレードを実施した。新型とみられる大陸間弾道ミサイル(ICBM)を初公開するなど攻撃能力を誇示した。一方、北朝鮮の核・ミサイル開発を阻止したいトランプ米政権は同日までに原子力空母カール・ビンソンを中心とする艦隊を朝鮮半島の近海に進めたようだ。
● 北朝鮮の軍事パレードに登場した、新型中距離弾道ミサイル「北極星2」の発射管付き車両=15日、平壌(共同)
金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は黒いスーツ姿で、ひな壇から式典を観覧した。崔竜海(チェ・リョンヘ)副委員長は「米国が無謀な挑発をすれば即時打撃する。全面戦には全面戦で、核戦争には核打撃戦で対応する」と対決姿勢を示した。金正恩氏は演説をしなかった。
大規模な軍事パレードは2015年10月に開いた党創建70周年の記念式典以来だ。韓国の北朝鮮専門家はこれまでのパレードと比べると戦車などの通常兵器が少なく、ミサイル技術の誇示に重点が置かれたと分析する。
射程が9000キロメートルを超えるICBM「KN08」よりも大型とみられる未確認のミサイルが登場した。模型の可能性もある一方、韓国軍消息筋は「新型ICBMと推定される」と分析する。
潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)「KN11(北朝鮮名・北極星)」や、その陸上配備型の「KN15(同・北極星2)」も見せた。いずれも新型ミサイルで、KN15は今年2月、日本海に向けて発射している。梁茂進(ヤン・ムジン)慶南大教授は「SLBMが6基も公開されており、実戦配備が迫っている可能性がある」と指摘する。
白い防護服を着た一団も目を引き、韓国メディアは生物・化学兵器を扱う部隊が初めて登場したと報じた。記念日に合わせて6回目の核実験を強行するとの観測もあったが実施した形跡はない。
米空母部隊の位置を追跡する軍事専門サイトなどによるとカール・ビンソンは朝鮮半島近海に進出している。シリア攻撃に使った巡航ミサイル「トマホーク」を発射可能な軍艦も展開している。
』
『
東洋経済オンライン 2017年04月19日 文谷 数重 :軍事ライター
http://toyokeizai.net/articles/-/168148
米国vs北朝鮮、本当に軍事衝突ならこうなる
トマホーク300発で北の防空網が破れる現実
米朝関係が緊迫している。
これまでトランプ米政権は内向きと考えられていたが、急激に関与政策に舵を切った。
化学兵器を使用したシリアに懲罰としてミサイル攻撃を実施、その後、北朝鮮に対して空母機動部隊を仕向けて圧力をかけようとしている。
これは”棍棒(こんぼう)外交”である。
強大な軍事力を目鼻の先に突きつけ、時には行使する。
それにより北朝鮮に、核や弾道弾に関する政策の変更を迫るものだ。
だが、米国はその棍棒を用いて、北朝鮮の核を砕くことができるのだろうか?
軍事的には十分可能だ。
米国は通常戦力だけでも、北朝鮮の核開発、弾道弾整備を不可能とし、金正恩体制の打倒もできる。
■核開発が地下要塞でも妨害できる
米国の軍事力は北朝鮮をどのようにも処理できる。
無制限の攻撃を受ければ、北朝鮮には抵抗の手段はない。
核開発妨害は容易である。
仮に施設が地下要塞化しており、場所がわからなくとも構わない。
関連する電力網や物流網、交通網、従業員の生活関連施設をわかるかぎり破壊すれば、開発継続はできなくなる。
具体的な攻撃目標は次のとおり。
★.電力網なら、地域の発電所や変電設備、高圧電線、施設側の受電設備も破壊する。
★.さらに石油タンクや野積みの石炭といった、エネルギーストックを焼き払う。
★.物流・交通網なら、鉄道橋や操車場、機関車本体を攻撃する。
★.生活関連施設ならば、水道や都市交通の中核設備である。
これらをマヒさせれば、核開発は頓挫しよう。
電力・原料不足では操業できず、従業員の出勤率も大幅に低下するからだ。
同様に弾道弾も無効化できる。
「移動式発射機の破壊は難しい」といわれるが、
その運用基盤や生産・整備工場、燃料生産・輸送・補給施設を破壊すればよい。
時間はかかるものの、整備不良・燃料不足によって、発射可能なミサイルは徐々に減っていく。
さらには体制打倒も可能だろう。
飢餓状態を引き起こせばよい。
餓死者が大量発生する可能性に追い込めば、いずれそれに我慢できなくなる。
これには食料の生産・供給を崩壊させるだけで済む。
肥料工場や用水施設、ほかの農業施設、食料倉庫や食品工場を使用不能にすること。
前述したとおり、食料や肥料を運ぶ国内外の物流網を麻痺させ、その復旧を許さなければ、大飢饉となる。
これらの攻撃は、米軍事力にとって決して難しいものではない。
通常攻撃だけ、さらに空爆限定かつミサイル・無人機主体の攻撃でも、実現できる。
★.初手で北朝鮮防空網を崩壊させれば、あとはどうとでもなるのだ。
防空網への攻撃自体も困難ではない。
シリアでも使用した米軍の巡航ミサイル「トマホーク」300発程度で、レーダーサイトや通信施設を攻撃すれば終わる。
戦闘機やミサイルが残っても効果的な迎撃はできなくなる。
■トマホークをレーダー探知できない
ちなみにトマホーク300発の数字は、同じく米軍が持つ
「オハイオ」級の原子力潜水艦2隻分
にすぎない。
18隻中4隻が核ミサイルを下ろし、その代わりにトマホーク154発を搭載している。
イージスシステムを搭載したイージス艦とは異なり、その居場所はわからず、北朝鮮からすれば、突然発射されることとなる。
完全な奇襲攻撃だ。
このトマホークの攻撃を北朝鮮は防げない。
超低空飛行を常用しており、その最低高度は30メートル以下。
早期警戒機を持たない北朝鮮はレーダー探知をできまい。
肉眼で発見しても、視野から1~2秒で去るため、対処できない。
電線や材木切り出しのケーブルに、引っ掛かりでもしないかぎり、撃墜はないのである。
仮にGPS(全地球測位システム)への妨害ができたとしても、現用型のトマホークには通用しない。
昔からある地形高度判定誘導に加え、ミサイル搭載のカメラによる風景誘導も取り入れているためだ。
それだけでピンポイント攻撃はできる。
この防空網攻撃時に、電子戦(今は「情報戦」とも呼ぶ)を行えば、有人機攻撃も容易となる。
そうすれば攻撃規模は大きくなって、北朝鮮の戦闘機や対空ミサイルも地上撃破できる。
北朝鮮は電子攻撃には耐えられない。
「レーダーやミサイルを無効化する技術」と考えられがちだが、それ以前にまず、無線通信網がダウンさせられ、戦闘の指揮や報告が混乱する。
技術格差からすれば、レーダー画像のすり替えもありうる。
イスラエルが2007年にシリア核施設への攻撃で行ったものだ。
さらには有人機すら、危険な北朝鮮の上空に入らないで攻撃できる。
米軍が「JSOW」「SDB」と呼ばれる滑空式誘導爆弾を用いた場合、100キロメートル以上先まで攻撃できる。
これらはエンジンがない分、巡航ミサイルよりも安価で、軽いために同時多数の攻撃が実現可能なのだ。
低速の無人機も自由に行動できるようになり、施設などの不動目標の捜索が進むだろう。
発見後は、搭載した小型ミサイルやSDB、あるいは後方から発射される、巡航ミサイルや誘導爆弾による攻撃が行われる。
特に米軍の空母機動部隊はその威力を発揮しよう。
ほぼ制空権を確保した状態となり、「F-18」「F-35B」といった艦載機のほとんどを、対地攻撃に使えるからだ。
北朝鮮の至近距離に接近すれば、攻撃回数を大幅に増加させられる。
戦闘機の往復時間は短くなるため回転率も上がる。
同時に搭載燃料も少なくなるので、その分、爆弾を搭載できるというわけだ。
ただし、有人機を北朝鮮上空に送り込むのは、なるべく避けると思われる。
パイロットの救難が困難だからである。
これは米空軍の戦闘機や爆撃機も同じ。
撃墜だけではなく、故障などでの墜落・脱出はありうるものの、北朝鮮にパラシュート降下すると、回収は難しい。
空母機動部隊が警戒すべきは、北朝鮮の潜水艦だが、さほどの脅威ではない。
潜航時には低速しか出せず、米空母の攻撃位置にたどり着けないからだ。
北朝鮮の潜水艦が時速8キロメートル程度、
一方、米軍の空母が時速45キロメートルで行動した場合、そのくらいの差となる。
もともと、空母の正面から25度以内の範囲にいた潜水艦以外には、接敵できない。
範囲は米国の対潜ヘリが警戒線を引いており、偶然、その場所に潜水艦が展開できても、やはり接敵できないのである。
■米軍圧倒的優位だが、小規模攻撃限定か
以上が、米国の軍事力が持つ、圧倒的な優位だ。
通常戦力でも攻撃に制約がなければ、北朝鮮の体制崩壊も実現できる。
だが、現実的にはそのような攻撃はできない。
韓国と中国が反対するからだ。
韓国は大規模攻撃を許容しない。
戦時体制シフトによる負担や経済的不利益だけではない。
北朝鮮に住んでいるのも同じ民族であり、いわば親類縁者だからだ。
民間被害を伴う大規模攻撃も認めまい。
金正恩体制を倒すための飢餓作戦となれば、韓国軍を差し向けてでも妨害し、空爆の危険を冒してでも食料を運ぶと思われる。
中国も反対する。
北朝鮮の金正恩体制には冷ややかであっても、自国の影響圏であり、現体制が倒れることには耐えがたい。
米国の大規模攻撃による民間被害には許せない旨を伝え、さらには義勇軍を送り、大規模援助によってその存続を支えることも示唆するだろう。
結果として米国は反対を押し切ってまでも攻撃はできない。
北朝鮮だけはなく、中国と韓国も敵にしてしまうからだ。
現実にできるのは小規模な攻撃だけ。
大義名分が立ち、かつ、中韓が肯定できなくとも看過できる範囲の攻撃である。
具体的には核・弾道弾の生産施設、あるいは軍用航空機と軍艦といった、純粋な軍事目標に限定した攻撃になる。
そして米国国民の溜飲は下がり、トランプ大統領の支持率が上がるかもしれない。
それでも北朝鮮情勢は改善しまい。
逆に悪影響を生む。
なぜなら北朝鮮の指導部に、「侵略を撃退した」など自国民向けの成果を与え、同時に「米国は北朝鮮を全面攻撃できない」確信を与えてしまうからだ。
北朝鮮の従来路線は見直されるどころか強化される。核兵器や弾道弾の優先順位は上がり、それらの整備はむしろ加速されるに違いない。
』