2017年4月24日月曜日

朝鮮半島有事へ動く(19):米国が「こわい警官」、中国が「優しい警官」を演じる北朝鮮劇

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ニュースソクラ 4/24(月) 18:00配信 田岡 俊次(軍事評論家、元朝日新聞編集委員)
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170424-00010002-socra-int

トランプの威嚇戦略は逃げ道がない

■米軍人が大統領を”忖度”すれば、日本にも大惨禍

 前回のコラムでは、米軍の北朝鮮に対する先制攻撃は、移動式弾道ミサイルの位置は偵察衛星でもつかめないため困難であり、1953年の朝鮮戦争停戦協定以来休戦状態になっているこの戦争の再燃となり、韓国等への損害は甚大となる公算が大であることを説明した。
 だが、その後、情勢は一層緊迫化した。米空母「カール・ヴィンソン」(9万3千トン、約60機搭載)は米韓合同演習に参加後、シンガポールに寄港、オーストラリア海軍とインド洋で共同演習をしたのち、同国を親善訪問する予定だったが、親善訪問はやめて朝鮮半島海域に向かった。

 これに対し、北朝鮮は16日、日本海岸の新浦から弾道ミサイル発射実験を行い、失敗したものの米国に対抗する構えを示し「チキンゲーム」の様相となった。
 訪韓したペンス米副大統領は4月17日「北朝鮮は大統領の決意や米軍の力を試すようなことはしない方がよい」と記者会見で語った。
 こうした威嚇に北朝鮮が屈し、核実験やミサイル発射をやめ、トランプ大統領が求めている核廃棄を呑めばよいが、その公算は高くはあるまい。

 米国と中国は役割分担をし、米国が「こわい警官」、中国が「優しい警官」を演じて北朝鮮を説得しようとする気配がある。

 だが、仮に米朝直接対話が実現し、米国が最大限の譲歩を示して「北朝鮮と国交を樹立し、存続を保障、経済援助を行うから核兵器を棄てろ」と説いても、北朝鮮が今や存続の唯一の支えとなった核の放棄に応じるとは考えにくい。
  せいぜいが「米国に届くICBMの開発や核実験は凍結する」と応じる程度だろう。
 「アメリカ・ファースト」の観点からすれば、ICBMさえ造らなければ一応よしとしても、中距離ミサイルの射程内にある日本や韓国では「我々の安全はどうしてくれる」と米国への不信感が高まる。
 米国内でも「無法者に褒美を出した」との非難が出て、強硬姿勢が売り物のトランプ氏は浅慮な大衆の支持を失うことになりかねない。

■威嚇を無視されて侵攻した中越戦争

 威嚇戦略は相手がそれを無視したり、一層反発を強めれば、振りあげた拳を引き込めて立ち去るわけにはいかず、戦争になる危険をはらんでいる。
 その一例は1979年2月の中越戦争だ。
 カンボジアのポル・ポト政権が知識人、都市住民を強制労働に駆り立てて、約170万人(人口の24%)が死亡した。
 犠牲者の多くはベトナム系住民だったから、ベトナムはカンボジアの反乱軍を支えて、同国に出兵した。
 中国と米国は当時ソ連に接近していたベトナムと対立、ポル・ポトを支持していた。
 中国はベトナムとの国境に20数個師団、40万人近い大軍を展開しベトナムを威嚇した。

 ベトナムが中国の侵攻に備えて、カンボジアから兵を引き、中国との国境付近に再展開することを狙った戦略だった。
 だが、戦争慣れしたベトナムは動じず、中国に対する防備は正規軍3個師団(約3万人)と地方軍(予備役民兵)約7万人にまかせ、カンボジア平定を進めた。
 威嚇を無視された中国は上げた拳を振り下さざるをえなくなり、米国と協議の後、国境全域でベトナムに侵攻した。
 当時のベトナムは米国との戦争終了の6年後で、9年間の激戦で勝った歴戦の兵士は退役して予備役の民兵になっていた。
 そのうえ、ベトナム戦争で使い残したり、南ベトナム軍から接収した武器、弾薬が余るほどあったから、ベトナム地方軍は史上最強の民兵集団だった。
 中国軍は人海戦術で約30キロベトナム領内に侵攻し、2週間後にランソンなどを占領してやっと面目を保ったのだが、ベトナム軍の巧みな戦術に引っかかって大損害を受けており、翌日に全面撤退を開始した。
 この苦い経験の結果中国軍は近代化に取り組むこととなった。

 他方、威嚇が効果をあげたとされる例としては1962年の「キューバ・ミサイル危機」がある。
 キューバは1961年、米CIAの支援によりピッグス湾に上陸したキューバ人亡命者1700人の部隊を全滅させた。
 大恥をかいた米国は正規軍によるキューバ制圧を企図したため、カストロ大統領はソ連に救援を求めた。
 ソ連はそれに乗じてキューバに中距離核ミサイルSS4を配備し、米国東部を狙う核抑止力にしようとした。

 これに対し米国は軍艦183隻で10月23日からキューバを封鎖、世界各地(日本を含む)でソ連との核戦争に備え、最高レベルの待機態勢に入った。
 その一方、米ソは裏交渉を行った結果、24日ミサイルや機材を積んだ25隻のソ連貨物船団は封鎖線で反転、核戦争の危機は去った。
 フルシチョフ首相はすでにキューバに配備していたミサイルの撤去にも同意した。

 米国では「核戦争も辞さないケネディ大統領の決然たる姿勢にソ連が屈した」と称賛されるが、米国は1960年からトルコに配備していた中距離ミサイル「ジュピター」60基をわずか5年後の65年に撤去しており、「裏交渉ではそれが交換条件だった」とも言われる。
 ただし、当時米国では弾道ミサイル「ポラリス」搭載の原潜が就役しつつあり、「ジュピター」のトルコ配備はほぼ不要になっていた。
 この事件が落着したのは威嚇の成功というより、むしろ米ソ双方の巧みな駆け引きの結果だった。

■無理と知りつつ実行したイラン人質救出作戦

 今回の米国の威嚇戦略はケネディ対フルシチョフのような合理的な大物同士ではなく、トランプ氏対金正恩氏の対決だけに、柔軟、巧妙な妥協ができず「チキンレース」は正面衝突となりかねない。
 前回書いたように北朝鮮は1993年にNPT(核不拡散条約)脱退を宣言、のち留保したが査察に非協力的で、核兵器開発必至と見られた1994年、米国は寧辺(ヨンビョン)の原子炉などを航空攻撃しようとした。

 在韓米軍司令部は、航空攻撃を行えば、1953年から休戦となっていた朝鮮戦争の再開を招くと判断し、「最初の90日で米軍に5.2万人、韓国軍に49万人の死傷者が出て、民間人死者は100万人以上」との損害見積もりを提出、米国は攻撃を諦めた。
 もし今回、戦闘が始まれば、北朝鮮軍がソウル北方約40キロの停戦ライン付近の地下陣地から数百両のトラックに乗せた22連装の240ミリロケット砲(射程60キロ)などを発射、韓国の人口の3分の1が住むソウルを火の海にしうる状況は今日も同じだ。

 それを防ぐためにはまずその要塞地帯を制圧する必要があり、その間に米、韓国軍とソウル首都圏の住民に甚大な犠牲者が出る。
 最終的には滅亡必至の北朝鮮が自暴自棄となり、「死なばもろとも」と核ミサイルを在韓米軍、韓国軍の基地やソウルだけでなく、日本の米軍基地や東京などにも発射する可能性も十分ある。
 その場合日本でも数十万人の死者が出そうだから、米軍人は1994年の時と同様、北朝鮮攻撃には慎重だろう。

 だが、トランプ大統領にとっては、威嚇が無視されたり、仮に米朝直接会談を開いても相手が核廃棄に応じなければ、何もせずに引き下がるわけには行くまい。
 統合参謀本部議長ら軍のトップに「何か手はないのか」と詰め寄り、軍人は「あえて攻撃するならこうした策しかありません」と複数の作戦計画を提出し、大統領がそのひとつを選べば部隊はそれに従って行動する。

 1979年、イランでは米国大使館にデモ隊が乱入し、大使館員と家族ら53人が人質状態になった。
 その際、カーター大統領は救出作戦案を統合参謀本部に要求した。

 私は失敗に終わったこの作戦の計画決定の経緯を当事者から直接聞く機会を得たが、参謀将校らは当初からアラビア海の空母から1500キロも離れたテヘランはヘリコプターの行動半径のはるか外であり、救出作戦は無理と知りつつ、「やるかどうかは別として計画は考えてくれ」との上層部の指示に従い作戦計画を立案した。

 この計画は当時使用されていなかった砂漠地帯の飛行場に米陸軍特殊部隊を乗せた約60人乗りの大型ヘリRH53D8機を夜間着陸させ、そこに中型輸送機C130を降ろして給油し、ヘリはテヘラン郊外のサッカー場に着陸、特殊部隊は協力者が用意したトラックで大使館に突入、人質とともにヘリに戻って脱出、別の飛行場で輸送機に乗り替える、といういくつものリスクがある複雑な計画だった。

 起案した将校は「この計画は実行困難ですが、やるならこの方法しかありません」と説明して、統合幕僚会議議長に提出した。
 だが、政治家の機嫌取りに長じた統幕議長はそれをつかんで直ちにホワイトハウスに駆けつけ、カーター大統領は喜んで「よし、やってくれ」と言ったため、80年4月無謀な作戦が実施された。
 暗夜に無人の飛行場で給油しようとしたヘリと輸送機が衝突、火災が発生、8人が死亡して作戦は中止になった。
 第一段階で失敗したのはまだしもで、テヘランで失敗すればもっと酷い結果になるところだった。

■”平和ボケ”のタカ派は危険だ

 今日もし軍事的合理性よりもトランプ大統領の意向に沿うことを専らとする“忖度将軍”が要職に居れば、韓国、北朝鮮だけでなく、日本にも大惨禍を招く戦争になりかねない。
 仮に幸い日本が直接の攻撃を免れたとしても、韓国経済が崩壊し、放射性降下物が残留する韓国から大量の難民が日本に流入しかねない。
 風向きによっては日本にも降下物が達する。
 韓国への投資・融資が回収不能となるだけでなく、統一後の韓国の復興のために莫大な寄与を求められるだろう。
 難民が帰国できるようにするためには復興を支援するしかあるまい。

 だが、日本では「アメリカが北朝鮮に一発かまし、やっつけてくれる」と対岸の火事を期待する声も少なくない。
 70年余の平和に慣れた日本人は戦争を具体的、現実的に考える能力を失ったのか、と平和ボケのタカ派、すなわち「バカ派」の言説にあきれざるをえない。



ロイター 2017年 04月 25日 07:44 JST
http://jp.reuters.com/article/trump-north-korea-un-idJPKBN17Q2E1

トランプ氏「現状維持容認できず」、
北朝鮮への追加制裁求める

 [ワシントン/北京 24日 ロイター] - トランプ米大統領は24日、北朝鮮のミサイル・核開発プログラムをめぐる緊張が高まるなか、国連安保理は同国に対する新たな制裁を発動する用意を整える必要があるとの考えを示した。
 トランプ大統領は同日、中国、ロシアを含む国連安保理15カ国の大使とホワイトハウスで会談。
 「北朝鮮の現状維持は許されない」との立場を示し、
 「安保理は北朝鮮の核開発・弾道ミサイルプログラムに対し、より強力な追加制裁を発動する用意を整えておく必要がある」
と述べた。

 そのうえで、北朝鮮は世界に対する現実的な脅威であるとの認識を示し、
 「北朝鮮問題は何十年も放置されてきたが、解決しなければならない時期に来た」
と述べた。
 トランプ米大統領は週末の安倍晋三首相、習近平・中国国家主席に続き、この日はメルケル独首相と電話協議を行い、北朝鮮がもたらす「安全上の喫緊の課題」について話し合った。

 米国のヘイリー国連大使はNBCの番組で、
★.北朝鮮に対する先制空爆が検討されているかと問われ、
 「金正恩委員長がその理由を与えるまでは行わない」と答えた。
 その上で、
★.北朝鮮が軍拠点への攻撃や大陸間弾道ミサイル発射などを行えば、
 空爆に踏み切る可能性がある
との考えを示した。

 米国務省によると、ティラーソン国務長官は28日に安保理で北朝鮮問題を巡る外相級会合を主催し、既存の制裁の効果を最大限に高めるとともに、北朝鮮がさらなる挑発行動に出た場合には新たな措置で適切に対処するという決意を示す方法について討議する。
 また、米上院関係者によると、ティラーソン長官とマティス国防長官、コーツ国家情報長官、米軍のダンフォード統合参謀本部議長は26日にホワイトハウスで、全上院議員に対し北朝鮮について説明を行う予定という。

 政権関係者が議会に足を運び議員に演説を行うことはしばしばあるが、100人の上院議員全員が今回のような目的でホワイトハウスを訪れ、しかも前述の高官4人が関与するというのは異例だ。

*内容を追加しました。



中央日報日本語版 4/25(火) 8:20配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170425-00000006-cnippou-kr

北朝鮮、挑発するな
…トランプ大統領の最後の警告

 北朝鮮人民軍創建85周年記念日(25日)を翌日に控えた24日、日米、米中の首脳が電話会談をし、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)労働党委員長に強力な警告のメッセージを送った。
 3カ国の首脳が同じ日に電話で対話し、しかも米中首脳はわずか11日ぶりに電話会談をしながら同時に圧力を加えたのは異例だ。
 北朝鮮が6回目の核実験というマジノ線を越えないようにするというトランプ米大統領と習近平国家主席の確実な連携意志の表現だ。

 米ホワイトハウスは24日(現地時間)の声明で、
 「トランプ大統領が習主席との会談で、北朝鮮の持続的な好戦性(continued belligerence)を非難し、その行動が韓半島(朝鮮半島)を不安定にしていると力説した」
と明らかにした。
 また、両首脳が北朝鮮の核・ミサイルプログラム脅威の緊急性に同意し、韓半島非核化のための連携を約束したと伝えた。
 中国CCTVは
 「両首脳が韓半島状況について緊密に疎通することにした」とし
 「習主席が、中国は国連安全保障理事会決議を違反する行為(北朝鮮の核実験および弾道ミサイル発射)に断固反対するというメッセージを出した」
と伝えた。

 安倍首相はトランプ大統領との電話の後、
 「両国が北朝鮮に核・ミサイル挑発の自制を強く要求することで合意した」
と伝えた。
 CNNは「米日中首脳の電話会談は金正恩委員長に送る最後の警告」と分析
した。

 「カール・ビンソン」(CVN-70)が韓半島周辺海域に進入する中、25日に米海軍第7艦隊所属の原子力潜水艦「ミシガン」(SSGN-727)も釜山(プサン)に入港すると、軍の関係者が明らかにした。
★.射程距離1500キロ以上のトマホーク巡航ミサイル154発を搭載する「ミシガン」は水深243メートルで最長3カ月間も浮上せず作戦を展開できる。
 軍の関係者は「北全域を精密打撃できる米国戦略資産の一つ」と述べた。
 トランプ大統領は12日、
 「金正恩委員長は大きなミスをしている。
 我々は無敵艦隊(「カール・ビンソン」)を(韓半島海域に)送り、より強力な潜水艦を保有している」
と明らかにした。
 「ミシガン」の韓半島配備を示唆したのだ。

 米日中首脳の相次ぐ電話会談で、国際社会は全面的な対北朝鮮圧力に入る。
 25日に東京で韓日米6カ国協議首席代表が協議するのに続き、26日にはトランプ政権が上院に新しい対北朝鮮政策をブリーフィングする。
 28日に開かれる国連安保理閣僚級北核特別会議では、北朝鮮が核実験を実施する場合の対北朝鮮懲罰的措置はもちろん、核を放棄するまでの圧力について議論する。

 中国南京大国際関係研究院の朱鋒院長は
 「米中の同時圧力状況で北朝鮮が核実験をするかは懐疑的だが、それでも挑発すれば中国は安保理追加制裁はもちろん単独制裁もする可能性がある」
と述べた。
 李熙玉(イ・ヒオク)成均中国研究所長も
 「この場合、中国は朝中関係の枠を全面的に見直すことも考えられる」
と話した。

 一方、日米中首脳の相次ぐ電話会談に関連し、韓国が韓半島問題の議論の場から排除されているのではという懸念も出ている。
 匿名を求めた政府当局者は
 「(大統領選挙という)韓国内の事情を考慮しても主要当事国である韓国に事前通報もなく、大統領権限代行との電話もなしに韓半島問題を議論したのは『コリアパッシング』の側面で心配だ」
と語った。



Yahooニュース 4/25(火) 8:34 児玉克哉  | 一般社団法人社会貢献推進国際機構・理事長
https://news.yahoo.co.jp/byline/kodamakatsuya/20170425-00070265/

アメリカの北朝鮮への武力行使のXデーはまだ後だ
~アメリカ軍の態勢が整っていない

  今日、4月25日に北朝鮮は朝鮮人民軍が創設されてから85年を迎える。
 北朝鮮はこうした記念日に合わせて、核実験やミサイル発射などを行ってきた。
 現在、アメリカとの対決姿勢を強める北朝鮮は、核実験などを強行する可能性がある。
 トランプ政権は北朝鮮が核実験をしたら、武力行使もありえると警告しており、緊張が高まっている。

 ひょっとすると今日が朝鮮半島有事のXデーになるのではないかという不安の声があがっている。
 もちろん、北朝鮮が核実験をするかどうかは注目される。
 ただ仮に核実験をしてもこの段階ではアメリカは行動はせず、厳しく糾弾するだけだろう。
 まだ態勢が整っていない。
 空母ロナルド・レーガンは整備中でもう少しで実戦配備になる。
 ロナウド・レーガンは整備に入って約5ヶ月だ。
 これまでの空母の整備期間からすればもう最終段階に入っていると思われる。
 急がせればもう2週間というところか。
 ちょうど、韓国大統領選の前後になる。
 少なくとも空母ロナルド・レーガンが動ける状態にならなければアメリカが北朝鮮に武力行使をすることはないだろう。
 さすがに空母カール・ビンソンだけでは準備不足だ。
 中東方面にむかっているといわれる空母ニミッツも朝鮮半島に舵を切ると本格的な臨戦態勢となる。
 今から朝鮮半島に向かえば韓国大統領選挙前後には間に合うことになる。

 在韓米国人の脱出の時間も必要だ。
 今はまだ韓国内の陸路は問題なく使える。
 有事になれば、パニック状態に陥り、陸路はほとんど機能しなくなるし、空路も実際に機能するかどうか疑わしい。
 仮に機能しても空路は急に便数を増やすこともできないので、とにかく脱出したい韓国人で席は埋まる可能性が高い。
 アメリカは在韓米国人の救出に最大の努力をするだろう。
 日本も在韓日本人の帰国に努力することになる
 在韓日本人の数は約6万人。
 かなりの数で、帰国には時間がかかる。
 在韓米国人の数はさらに多く約13万人だ。
 さすがに全く脱韓のプロセスをしないで、有事になったらトランプ政権も矢面にたたされる。

 在韓中国人は約10万人とさらに多い。
 中国も有事の前に手を打ちたいところだ。
 こうした状況を考えると、おそらくもしあるとしてもXデーは韓国大統領選前後になるだろう。
 今日、北朝鮮の核実験が行われたら、米軍は本格的な準備にとりかかる。
 中国に圧力を加えつつ、Xデーに備えることになるだろう。
 在韓アメリカ人の脱韓が始まったら要注意だ。
 その場合には在韓邦人も帰国すべきだろう。
 有事にならないかもしれないが、有事になる可能性もある。
 有事なってからの帰国は非常に難しいだろう。
 自衛隊も救出の艦船を送るだろうが、邦人が港までたどり着けるかどうか。
 韓国人の家族などをどうするかなどで混乱も予想される。
 想定してはならない事態だけに、実際に起こると大変なことになる。
 北朝鮮が核実験を実行したら、金正恩亡命や金正恩暗殺、中国の武力行使によるクーデターなどのオプションも含めての対応になるだろう。
 まずは最小限の混乱で事態を収拾することが大切だ。
 トランプ大統領と金正恩最高指導者の組み合わせは最悪だ。
 想定外の想定を考えなくてはならない。
 北朝鮮から米国人が避難し始めたら要注意だ。



プレジデント 4/25(火) 15:15配信 竹中明洋ジャーナリスト 在ウズベキスタン日本大使館専門調査員、NHK記者
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170425-00021937-president-pol

 トランプ「怒らすと、何しでかすかわからないぞ 戦略」

 ホワイトハウスの大統領執務室には、ニクソン元大統領の手紙が額中に飾られている。
 トランプ大統領が30年前にもらったもので、尊敬する政治家がニクソンなのだという。
 北朝鮮への圧力を強めるトランプ氏の動きは、そのニクソンに倣ったものではないかと元共同通信ワシントン支局長で国際ジャーナリストの春名幹男氏は指摘する。

 「1973年に米国はベトナム戦争の当事者をパリに集め和平協定の調印に漕ぎ着けますが、出席を渋る北ベトナムの指導者のホー・チ・ミンを引っ張り出すために、ニクソンは核攻撃をちらつかせたのです。
 『怒らせたら何をしでかすかわからない』と思わせて交渉をまとめる。
 これがマッドマン・セオリー(狂人の理論)と呼ぶ戦略です」

 「戦略的忍耐」を採ってきたオバマ政権と違い、マクマスター国家安全保障担当補佐官やマティス国防長官など軍人出身のスタッフに支えられるトランプ氏は、
 金庫に鍵をかけて軍事力をしまっておくようなことはしない。
 軍事攻撃をちらつかせ、ニクソンばりに北朝鮮に圧力をかける。
 外交を担うはずの国務省は脇役に追いやられた形だ。

 すでに空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃群は日本海に接近している。
 それだけではない。
 防衛省関係者は、巡航ミサイルのトマホークを30発搭載する駆逐艦や150発以上搭載する攻撃型原潜も朝鮮半島近海に展開していると見る。
 シリアに巡航ミサイル59発を撃ち込んだことも、米国の圧力に迫真性をもたせる。
 にわかに緊迫が高まってきた。

■「核開発をやめないといつでも撃ち込む」

 そもそも、こうも米国が神経を尖らせる理由は何か。
 海上自衛隊ナンバー2にあたる自衛艦隊司令官を務めた香田洋二氏は、昨年9月に北朝鮮が行った新型ロケットエンジンの燃焼実験がきっかけだったとする。

 「米国の専門家の分析で、新型ロケットの射程が1万キロを超え、大陸間弾道ミサイル(ICBM)にあたるとされたのです。
 そうなれば、米本土が直接北朝鮮の核の脅威にさらされるということ。
 これまでのように日韓が射程に入るだけならまだしも、米国の安全保障にとって根本的な脅威となる。
 米軍は実験の翌月にはネバダ州で核を搭載可能な地中貫通型爆弾B61の投下実験を行ってわざわざ写真を公表し、さらにトマホークを搭載した原子力潜水艦のグアム寄港も公表しました。
 いずれも北朝鮮へのシグナルと見るべきです。
 『核やICBMの開発をやめないと撃ち込むぞ』ということです」

 だが、金正恩・朝鮮労働党委員長は、国民向け新年の挨拶で、「ICBMの開発は最終段階に達した」と誇示して開発を継続する意志を示し、さらに今年3月には在日米軍への攻撃を担当する火星砲兵部隊による4発の弾道ミサイルの発射訓練を実施してみせた。
 朝鮮中央テレビの映像には、これ見よがしに司令室の地図に米軍の三沢基地や岩国基地の位置が掲げられていた。

 米国の圧力を無視するかのような北朝鮮にどうやって核やミサイルの開発を断念させるか。
 大統領向けに毎日行われるPDBと呼ばれるインテリジェンス・ブリーフィングでは、トランプ氏は活字資料を詳しく読もうともせず、米メディアの取材には、「俺は直感の男」「俺のカンはよく当たる」と言って憚らない。
 「まるでビジネスをやっているような感覚で国際情勢に対処する」(春名氏)
というトランプ氏が、北朝鮮を説得する役目を押しつけたのは、中国だ。
 4月の米中首脳会談で為替操作国への認定を見送ることと引き換えに習近平国家主席に強く迫った。

 「オバマ政権の8年間で中国は米国をなめていたふしがあり、半ば公然と北朝鮮と貿易や金融取引することで、経済制裁の抜け穴となっていた。
 ところが、米中首脳会談の5日後に習近平がトランプに電話したり、ロシアにも北朝鮮の説得に協力するよう求めたりする様子を見ると、中国がトランプ政権の本気度に気づいて慌てている様子がよくわかる」(外務省関係者)

 朝鮮半島問題特別代表の武大偉氏を平壌に派遣しようとして断られるや中国国際航空の北京―平壌路線を閉鎖するなど、中国も必死で北朝鮮に圧力をかけるが、これに応じる様子はない。

■地上部隊による斬首作戦は決行されるか

 北朝鮮が圧力に屈せず、トランプ氏が軍事作戦に踏み切ることがあるとすれば、どのような作戦を展開するのだろうか。前出の香田氏はこのように予測する。

 「シリアで米軍が撃ち込んだミサイルの数倍は撃ち込むでしょう。
 まず、駆逐艦や攻撃型原潜による海上からの巡航ミサイル攻撃、さらにはグアムや米本土からの爆撃機による爆撃などで、北朝鮮の核関連やミサイル関連の施設を破壊するとともに、
 南北の軍事境界線に沿ってあるDMZ(非武装地帯)に展開する北朝鮮の長距離砲部隊を叩くでしょう。
 長距離砲はソウルに狙いを定めて展開していますから、漏らすことなく攻撃しなければならない。
 さらに、カール・ビンソンの艦載機に在韓米軍と三沢基地の攻撃機、合計200機で残ったポイントを叩き反撃を封じ込めてしまうのです」

★.これらの作戦に要する時間は、長くとも数日。
★.ただし、地上部隊は投入しない。
 一部に勇ましく報道されているような、
★.金正恩氏をターゲットとした斬首作戦はもってのほか
だ。

 「そんなことをすれば、中国の介入を招いてしまいます。
 あくまでも北朝鮮の核攻撃能力や同盟国である韓国への反撃能力を叩くことに絞り込んだ、徹底的かつ大規模ではあるものの限定的な攻撃となるはずで、
★.北朝鮮の体制そのものを覆すような作戦を米軍は決して採らないでしょう」(香田氏)

 だが、この予想される米軍による軍事攻撃のシナリオには、いくつもの懸念材料がある。
 ひとつは、海上からの巡航ミサイルで北朝鮮を攻撃するためには、日本海と黄海の双方から挟み撃ちにすることが効果的だが、黄海に米海軍の艦隊が入ることを中国が許すのか。
 2010年に韓国の哨戒艦が北朝鮮の魚雷によって沈没した事件直後に米韓が演習を行った際には、中国の猛反対で米海軍は黄海への展開を断念した経緯がある。
 事前にどこまで中国と話がつけられるかということだ。

 防衛省関係者はこんな懸念もする。

 「北朝鮮の軍事施設は地下要塞化したものが多く、海上や空からの攻撃だけでDMZ沿いの長距離砲を破壊しきれるのか。
 生き残った部隊がソウルを攻撃して、それこそ『火の海』になる可能性も考えられる。
 中距離ミサイルのスカッドERやノドンはTELと呼ばれる車両型の発射台に載せて移動が可能で、空爆ですべて破壊するのは難しい。
 そうなれば反撃としてミサイルをどこに向けて飛ばすかわからない」

 さらに有事ともなれば、長期滞在者だけで4万人近くに上る在韓邦人をどうやって避難させるのか。
 防衛省には「NEOオペレーション」と呼ばれる邦人の救出作戦計画があるが、実施には自衛隊の空港や港湾の使用に韓国側から了解を得なくてはならない。
 はたして有事といえども、自衛隊アレルギーが強い韓国が了解するのか。
 そもそも、南北の軍事境界線からわずか40キロほどしか離れていないソウル周辺の仁川や金浦などの空港で、離着陸が可能なだけの安全が確保されているかは情勢次第。
 釜山から輸送艦で避難というケースも想定しているほどだ。

 軍事作戦に踏み切るには、あまりに懸念材料が多すぎる。
 ただ、中東とアフリカ諸国出身者の入国制限やメキシコとの国境の壁建設など、公約の多くが暗礁に乗り上げて支持率が低迷していることや、大統領選挙中に選挙チームがロシア大使館と接触を繰り返していた問題でFBIなどによる捜査が進んでいることを考えれば、トランプ氏が戦時大統領となって求心力を高める手に出ることも考えられる。

 Xデーが来るとすれば、はたしていつか。

 「これだけの圧力にもかかわらず北朝鮮が核実験に踏み切れば、攻撃の可能性は十分あります。
 米国が求めるのは、核やミサイル開発の中断ではなくリセット。
 中断では、やめると言いながら、秘密裏に開発を再開し米本土を核攻撃する一歩手前まできたこの20年間の繰り返しとなりかねない。
 ただ、北朝鮮にすれば、リセットはやすやすと呑めるものではない。
 今回の事態がなんらかの妥協で一時的に沈静化しても、中期的には米国の軍事攻撃の可能性は今後も続くでしょう」(香田氏)

 日本にとっても決して対岸の火事ではない。