『
ニューズウイーク 2017年4月11日(火)16時00分 遠藤誉(東京福祉大学国際交流センター長)
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/post-7375.php
習近平は笑っているべきではなかった
――米国務長官、シリア攻撃は北への警告
ティラーソン米国務長官は9日、シリアへの攻撃には北朝鮮への警告があったと強調した。
晩餐会でシリア攻撃を知らされた習主席は咄嗟の反応ができず肯定。
隣には彼のブレイン王滬寧がいなかった。
失点の影響は大きい。
■ティラーソン国務長官の発言
アメリカのティラーソン国務長官は、4月10日からイタリアで開かれるG7(先進7カ国)外相会談のためであろうが、習近平国家主席が訪米を終え帰国したあとになって、米中首脳会談にも触れながら、複数の取材に対し、おおむね以下のように答えている。
●脅威のレベルが行動を取らざるを得ない状況にあることを、習近平国家主席も明確に理解したはずだ。
●(北朝鮮などが)シリア攻撃から受け取るべきメッセージは、(もし、その国の行為が)他国への脅威となるなら、アメリカは対抗措置を取る可能性があるということだ。
●いかなる国も、国際規範や国際合意に違反し、他国の脅威になれば、対抗措置を取る。
●われわれの目的は朝鮮半島の非核化だ。
つまり、こともあろうに米中首脳会談開催中にシリア攻撃を断行し、しかもそれをなぜ、こっそり(個人的に)晩餐会中にトランプ大統領は習近平国家主席の耳に入れたかというと、明らかに「北への威嚇」、「習近平への圧力」が目的だったということになる。
習近平は笑顔を保っている場合ではなかったはずだ。
米中首脳会談後、共同記者会見が行われなかったのは異常事態だが、それに代わってティラーソン国務長官が会談後の記者発表をした。
ティラーソンは、おおむね以下のように言った。
●トランプ大統領が習近平国家主席にシリアの詳細な情勢を説明し、習主席はシリア攻撃に理解を示した。
●習主席は子供たちが殺されたときには、こうした反撃の必要性があると理解を示した。
いうならば、まるで中国の「承諾を得ている」かのような内容だが、晩餐会における「耳打ちと咄嗟の反応」を公開したのも、外交儀礼に反するだろう。
では習近平は、なぜこのような迂闊なことを言ってしまったのか?
■隣には習近平のブレインがいなかった!
晩餐会の時に習近平の隣に座っていたのは彭麗媛夫人であって、習近平のブレインではなかった。
2016年4月25日日の本コラム
<習近平のブレーンは誰だ? ――7人の「影軍団」から読み解く>
にも書いたように、
習近平のブレインを一人だけ挙げよと言われたら、それは文句なしに王滬寧(おう・こねい)だ。
習近平政権において中共中央政治局委員、中共中央政策研究室主任という、一見、目立たない職位だが、
江沢民政権の「三つの代表」、
胡錦濤政権の「科学的発展観」の起草者でもあり、
三代にわたる中国の最高指導者の総設計師的役割を果たしてきた切れ者。
習近平外訪の時には、必ず「影のように」ぴったりと寄り添っている。
たとえば二日目のトランプ・習近平会談の右隣にピタッと寄り添っているのは王滬寧だ。
しかも「一歩引きさがって」座っている。
なぜ一歩引きさがっているかというと、いざという時に「目立たずに」習近平に「咄嗟のアドバイス」を耳打ちして、習近平の失言を防ぐためなのである。
二日目の会談のテーブルに座っている位置関係を新華網が転載した中央テレビ局CCTVでご覧いただきたい。
王滬寧が習近平の陰になっている。
その「頭脳」がいない状態で、しかも食事中に、咄嗟にシリア攻撃を告げられた。
賛同すれば「ロシアとの関係が悪くなる」あるいは「北朝鮮への武力攻撃を肯定することになる」。
こういう頭を巡らせる論理思考を、一瞬では対応できなかった習近平の限界を示した瞬間でもあった。
中文メディアでは、もっと詳細にその場面を報道したものもあり、トランプが
「アサドが化学兵器を使って女子供まで惨殺したからアメリカはシリアにミサイル攻撃をした」
ことを伝えると、習近平は「当然だ」と攻撃を肯定した上で
「攻撃した事実と理由を教えてくれてありがとう」
とトランプにお礼さえ言ったと、ティラーソンが発表したと書いている。
■韓国の次期大統領選にも影響
――アメリカの北攻撃の可能性を受け
これまで圧倒的な支持率を示していた韓国の次期大統領候補にも影響が出ている。
トランプ大統領の
★.「いざとなればアメリカ単独で北朝鮮を武力攻撃する」を示唆する発言、
★.シリアへのミサイル攻撃の断行、
★.そして寄港先のシンガポールから南下していたアメリカの原子力空母カール・ビンソンが向きを変えて朝鮮半島の近海に向かい始めた
など、数え上げればキリがないほどの逼迫感が韓国をも覆ったにちがいない。
それまで「親中、北朝鮮融和路線、反THAAD韓国配備、反日」と、中国にとってはすべての条件が揃っていた文在寅(ムン・ジェイン)氏(共に民主党)が圧倒的支持率を得ていたが、つい最近の調査では中道左派の安哲秀(アン・チョルス)氏(国民の党)」が支持率で文在寅氏を凌駕しているようだ。
安哲秀氏は、米韓同盟を強化して北朝鮮の挑発を終わらせてほしいと望んでいる。
もしアメリカの突然のシリア攻撃と北朝鮮への強硬戦略が、韓国における大統領選への影響までをも計算していたとすれば、このたびの米中首脳会談は習近平の惨敗だったと言えるかもしれない。
トランプ(あるいはそのブレイン)は、相当に「計算をしている」ということになろうか。
■習近平は笑っている場合ではなかった――習近平の惨敗?
米中首脳会談の間、トランプ大統領と対等に渡り合っていたことを中国人民に示すために、習近平国家主席はつねに「笑顔」を保ち続けていた。
今年秋に行われる党大会のために「威信」を示さなければならなかったからだが、その「笑顔」に気を配るあまり、肝心の北朝鮮問題に対して頭が回らなかったのか。
ぎこちない「笑顔」より、北朝鮮問題の影響の方が決定的だ。
二日目のテーブルを挟んだ正式会談で、王滬寧氏が隣に座っていたときには、習近平国家主席は「言うべきこと」をきちんと言っていたし、トランプ大統領の「アメリカ単独で武力攻撃をする」という言葉に対してさえ、「米朝会談が優先される」と主張したほどだ。
中国はもともと、「トランプの口から何が飛び出してくるか分からないので、その時には笑顔で流してしまおう」という腹づもりではあった。
しかし、まさか突然のシリア攻撃が会談中に断行されるというのは、予想もしなかっただろう。
「トランプvs習近平」という世界二大大国の勝負において、第一戦は「習近平の負け」とみなすしかないだろう。
「新型大国関係」を「トランプ・習近平」で形成しようと思っていた「中国の夢」は、この時点で頓挫したとしか、言いようがない。
■危機は目前だが、抑止力も?
ただ、北朝鮮への武力攻撃は、シリア攻撃のように単純にはいかない。
中国やロシア、韓国が直接の影響を受ける。
果たして化学兵器を使用したのがアサド政権だったのか否かの検証も十分ではない。
そして何よりも北朝鮮は核を持っている。
北朝鮮の敵はアメリカ。
まず真っ先に在日米軍基地を狙うだろう。
一方、米中間の貿易高も尋常ではない。
3月11日の中国商務部の発表によれば、2016年の中米貿易高は5196億米ドルで1979年の国交正常化時の207倍に達するという。
両国の経済規模は世界の40%を占め相互投資額は世界の30%に及ぶとのこと。
トランプ政権の人事がまだ固まっておらず、アメリカ国民の意見もあるだろう。
抑止要素がまだまだあるものの、やはり危機は目前に迫っている。
拉致問題も抱えている日本にとって、いま何ができるのか、真剣勝負の時が来ている。
』
『
現代ビジネス 2017/04/14 長谷川 幸洋 東京新聞・中日新聞論説委員
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51474
北朝鮮問題を任せるには頼りなさすぎる習近平の「鈍い反射神経」
ボケた言葉で誤魔化している場合か
■米中会談、習主席の「失態」
朝鮮半島はどうなるのか。
いま苦しい立場にあるのは中国だ。
習近平国家主席は先の米中首脳会談でトランプ大統領から米国に協力するのか否か、二者択一を迫られた。
トランプ政権の「力による平和」路線が具体的な姿を現しつつある。
米中首脳会談は夕食会の最中にトランプ大統領がシリア空爆を習主席に告げる劇的な展開になった。
習主席はよほど当惑したに違いない。
「子どもたちが殺されている時にこうした対応は必要と理解する」
と語ってしまった。
これではロシアのプーチン大統領は面目丸つぶれである。
プーチン大統領はシリアのアサド大統領に肩入れする一方、中国とは盟友関係を築いてきたのに、よりによってトランプ大統領の面前で習主席からあからさまに批判された格好になってしまった。
それだけではない。
北朝鮮の金正恩・最高指導者にとっても「裏切り」同然の発言だった。
ティラーソン米国務長官が
「(シリア空爆は)いかなる国も国際規範や国際合意に反して他国の脅威になるなら対抗措置がとられるというメッセージ」
と語ったように、空爆は北朝鮮に対する威嚇でもあったからだ。
習主席はどうして、こんな発言をしたのか。
ロシアとの盟友関係や、いろいろ不満はあれ、中国こそが北朝鮮の後ろ盾になってきた関係を踏まえるなら、ここでロシアや北朝鮮を怒らせるような発言は控えなければならなかったはずだ。
たとえば、大統領に「一方的な措置は支持できない」くらいは言い返しても当然である。
ところが、まったく逆に「こうした対応は必要」で「理解する」とまで踏み込んでしまった。
この習発言を聞いて
「これじゃ習主席は北京に帰ったら王毅外相からとっちめられるだろうな」
と言った日本政府関係者もいるくらいである。
■露呈した「弱点」
習主席を叱ることができる人間がどれほど北京にいるかは知らないが(笑)、私はこの発言に習主席の未熟さ、政治センスのなさが如実に表れていると思う。
予想外の出来事が目の前で起きると、どう対応していいか分からず、思わず足を踏み外してしまう。
一言で言えば、反射神経が鈍い。
事前に決めた型通りの対応しかできない。
そんなタイプの人間なのだ。
これは中国に限らず、左翼に共通する特性でもある。
ひたすら共産主義イデオロギーと自分たちが丸暗記した教義を唱える訓練ばかりしているから、
現実が大きく動くと、まるで事態に対応できない。
今回の発言はそれがモロに出た。
これが1点。
加えて、習主席にとって首脳会談の目標はひたすら「米中関係の安定維持」にあった点を見逃せない。
なにしろ、トランプ大統領はつい最近まで「『1つの中国』原則に縛られない」と公言していたのだ。
これは後で軌道修正したが、いつまた大統領が中国に厳しく出てくるか分からない。
とりわけ最近は北朝鮮と通商問題をめぐって緊張が高まっていた。
秋に中国共産党大会を控えたタイミングを考えれば「自分こそが米国を上手に扱える」と国内に見せつける必要もあった。
だから大統領と激しく口論したり、批判されたりするのは避けたかった。
それが頭にあるから、まったく予想外のシリア空爆を通告されて動揺してしまった。
それで、つい「お追従」のような言葉まで発してしまった。
私はそう見る。
それが証拠に、習主席は4月12日になって突然、トランプ大統領に電話し
「北朝鮮情勢は平和的な解決を望む」
「シリア問題は国連安全保障理事会の結束維持が重要」
と訴えた。
その問題はつい5日前の首脳会談で話題になったばかりというのに、である。
「平和的解決」とか「安保理の結束維持」程度のことを言いたいなら、会談で直接、言えばよかったのに言いそびれてしまったから、後から電話で取り繕った格好だ。
みっともないと知ってはいるが、きっと王毅外相に言われて付け足さざるを得なくなったのだろう(笑)。
付け足して修正したのはいいが、それでも原則的な型通りの建前しか言えなかった。
■ボケた台詞を言っている場合ではない
いずれにせよ、この一件でトランプ大統領は習主席を見切ったはずだ。
「こいつは、まるで反射神経がない男だな」
と思ったに違いない。
そう思えば、習主席がほとんど笑顔を見せず、いつも表情を失った仏頂面をしている理由も理解できる。
丸暗記した教義と原則だけを唱え、かつ政敵に足を引っ張られないように自分の思惑を外に見せずに出世街道を歩いてきた男だから、相手に当意即妙で対応するなどありえないし、絶対に許されない振る舞いなのだ。
だから笑顔がない。
そう言えば、日本の左翼にも笑顔はない。
左翼ジャーナリストや識者と呼ばれる人たちを思い出してもらいたい。
いつも、しかめっ面で「もっともらしい」ことを言っているではないか。
左翼の世界でしかめっ面は古今東西、万国共通なのだ。これは新発見だ!(笑)。
また脱線した。
習主席が事態に臨機応変に対応する反射神経がないとすれば、今後の朝鮮半島情勢にも微妙な影響が出てくる可能性がある。
つまり、重大局面で中国が対応しない、いや対応できないかもしれないのだ。
少なくとも反応が12日の電話会談のようにワンテンポ、遅れる可能性がある。
たとえば、トランプ政権の軍事攻撃が選択肢の1つなのは周知の事実だから、事前にシミュレーションして「こうなればこうする」くらいは決めておけるだろう。
だが、たとえば北朝鮮の金正恩・最高指導者が暴発して、先に攻撃を仕掛けた場合はどうか。
それでトランプ政権が直ちに反撃したら、どうなのか。
そこから先は無数のシナリオがある。
そんな激動シナリオに対して、仏頂面の習主席が機敏に反応して事態の主導権を握れるだろうか。
私には想像できない。
主導権を握るのはトランプ大統領だろう。
今回の決断を見る限り、トランプ政権の「やるときはやる」という姿勢がはっきりした。
加えて、逆に習主席が「決断できない男」であるなら、なおさら大統領は決断しやすいはずだ。
大統領は「米国第一主義」を唱え、米国しか頭にないかのような印象が強かった。
だが、シリア空爆は国際規範を乱す国に政権が軍事力を行使した実例になった。
米国は世界から撤退するわけではない。
それは先の国務長官発言からもうかがえる。
政権の軌道修正は人事にも表れている。
大統領最側近と言われたバノン首席戦略官兼上級顧問が国家安全保障会議(NSC)の常任メンバーから外れ、統合参謀本部議長と国家情報長官が常任メンバー入りした。
この人事は、政権の安全保障政策が伝統的な共和党スタイルに戻る可能性を示している。
トランプ大統領は首脳会談で習主席に対して中国の北朝鮮向け原油禁輸措置を要求し、応じない場合は北朝鮮と取引のある中国系企業や金融機関に対する制裁(セカンダリー・サンクション=2次的制裁)の発動を検討している。
中国はいつまでも回答を引き延ばせない。
空母カールビンソンは朝鮮半島周辺に向かい、ロナルド・レーガンと合わせ、米国は異例の空母2隻体制で事態に備えている。
電話会談で中国が「平和的解決が必要」などとボケた台詞を言っている段階はとっくに過ぎているのだ。
おそらく来週にも、事態はまた動く。
』
ニューズウイーク 2017年4月13日(木)18時06分 ライアン・ボート
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/post-7402.php
トランプは習近平とチョコレートケーキを食べながらシリアを攻撃した
<アメリカによるシリア攻撃を晩餐会の席でトランプから知らされるという不意打ちを喰らった習近平。
2超大国の首脳を衝突から救ったのはチョコレートケーキだった>
ドナルド・トランプ米大統領はラグジュアリーな生活を好む。
シリアへ59発の巡航ミサイル「トマホーク」を発射するという職務があったとしても、それを中断させることはない。
フォックス・ビジネス・ ニュースとの最新のインタビューでトランプは、シリアへの攻撃を命令したときはフロリダ州パームビーチの「マール・ア・ラーゴ」で中国・習近平国家主席とデザートの最中だったと語った。
「私たちはテーブルに着き、晩餐後のデザートを食べるところだった。
これまで食べた中で最高に美味しいチョコレートケーキだった。
習も堪能していた」。
その間に習に「イラクに59発のミサイルを発射した」と伝えたという(イラクというのはシリアの言い間違いだ)。
【参考記事】米中首脳会談の結果を、中国はどう受け止めたか?
【参考記事】トランプはロシア疑惑をもみ消すためにシリアを攻撃した?
■フリーズした習近平
シリア攻撃を習に知らせるタイミングについてトランプは、「パームビーチでの会談後すぐに帰国を控えていたため、食事の間に伝える必要があった」と言った。
中国に到着してから習近平の耳に入るのは避けたかったという言い分は理解できる。
「彼は10秒ほど答えなかった」
とトランプは、その瞬間を説明した。
「それから習は再度通訳するよう求めたが、それは良いサインではないと思った。
しかし習は私に向かって『幼い子供や赤ん坊に対して化学兵器を使ったやつなら仕方がない』と言った。
彼はOKと言ったのだ」
チョコレートケーキは、2つの超大国の指導者が緊張高まる北朝鮮問題について話し合った米中首脳会談の終わりも飾った。
「中国との関係は非常に進展した」とトランプは言い、
「習との関係が発展したのは素晴らしいと思う。
今後とも面会を重ねることを楽しみにしている」
と語った。
美味なるチョコレートケーキの外交力を侮ってはいけない。
【参考記事】習近平は笑っているべきではなかった――米国務長官、シリア攻撃は北への警告
【参考記事】米中会談、アメリカの目的は中国の北朝鮮「裏の支援」断ち切り
』
ニューズウイーク 2017年4月13日(木)18時59分
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/04/post-7404.php
トランプ外交が急転換
中国・習近平と蜜月、
対ロ関係は悪化
米国のトランプ大統領が就任から3カ月足らずで、対外政策を急転換している。
トランプ氏は、就任前から繰り返し中国を批判、同国を為替操作の「グランドチャンピオン」などとこき下ろしていた。
北大西洋条約機構(NATO)についても「時代遅れ」と述べ、ロシアとの関係改善を目指していた。
ところが12日の一連の会見やインタビューでは、対ロ関係の悪化と対中関係の改善に言及。
NATOについても、世界の脅威の変化にうまく対応していると持ち上げるなど、態度を一変させた。
ストルテンベルグNATO事務総長との共同会見に臨んだトランプ氏は
「私はNATOは時代遅れだと語った。もはや時代遅れではない」
と発言。
米ロの接近に神経を尖らせていた欧州諸国の懸念が後退する可能性がある。
対中関係については、習近平・中国国家主席との「絆」に言及。
中国の台頭を警戒するアジア諸国の間に困惑が広がるとの見方も出ている。
政権内部では、黒幕と呼ばれたバノン首席戦略官が、大統領の娘婿クシュナー上級顧問と対立。
バノン氏の影響力低下が指摘されている。
■<「史上最悪の冷え込み」>
トランプ氏は、選挙戦の最中の昨年9月、「(ロシアのプーチン大統領が)私を称えれば、私も(プーチン氏を)称える」と発言。プーチン氏との関係強化に意欲を示していた。
ところが、この日は、シリアのアサド大統領を支持するプーチン氏に懸念を表明。
「ロシアとの関係は、もしかしたら史上最悪に冷え込んでいるかもしれない」
と述べた。
一方、フロリダの別荘で会談した中国の習主席については、「絆」で結ばれていると発言。
会談前は「厳しい」通商交渉を予想していた。
また、ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)紙とのインタビューでは、中国を為替操作国には認定しない意向も表明。
選挙期間中は、就任初日に同国を為替操作国に認定すると主張しており、見解を180度転換した格好だ。
オバマ前政権で国防次官を務めたクリスティーン・ワーマス氏は、トランプ氏について、就任直後は
「(外交政策の)習得に困難を来たしていた」が、その後
「多くの問題について、以前よりも繊細な、深い理解を示し始めている」
と分析している。
この日の一連の発言は、選挙期間中の側近の影響力が低下し、
マティス国防長官、ティラーソン国務長官、マクマスター大統領補佐官(国家安全保障担当)の影響力が増していることを浮き彫りにしたといえそうだ。
3氏はいずれも、ロシアを強く警戒している。
トランプ政権では今年2月、大統領補佐官に起用されたマイケル・フリン氏が、政権発足前にロシア大使と会談していたことが発覚し、辞任を余儀なくされた。
バノン首席戦略官も、クシュナー上級顧問と対立しており、トランプ氏が事態の打開を目指す中での、一連の発言となった。
トランプ氏は11日付のニューヨーク・ポストとのインタビューで「スティーブ(・バノン氏)は好きだが、彼が私の陣営に参加したのは(選挙戦の)最終盤だ」と発言。
バノン氏を強く支持する発言を避けている。
』
『
Wedge 4/14(金) 11:31配信 小谷哲男 (日本国際問題研究所 主任研究員)
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170414-00010003-wedge-kr
北朝鮮問題が最大の焦点、
米中首脳会談では何が起きていたのか
4月6日から7日にかけて、フロリダ州のパームビーチにあるリゾート地「マール・ア・ラゴ」で、ドナルド・トランプ大統領と習近平国家主席による初の米中首脳会談が行われた。
会談では、幅広い分野を扱う「米中包括対話」の設置や、米国の対中貿易赤字削減に向けた「100日計画」の策定、トランプ大統領の年内の訪中などで合意がなされたが、最大の焦点は会談直前にも弾道ミサイル実験を強行した北朝鮮への対応だった。
トランプ政権は発足後に北朝鮮政策の見直しに着手し、オバマ政権の「戦略的忍耐」は失敗したと結論づけた。
そして、軍事的手段を含む「すべての選択肢」が検討されていることを繰り返し表明する一方、中国に北朝鮮に対する影響力を行使するよう求めてきた。
米中会談の直前には、トランプ大統領が、中国が北朝鮮の核ミサイル開発を中止させるために協力しなければ、米国が単独で行動すると述べ、それが軍事攻撃を意味するのかどうかに注目が集まっていた。
■共同声明も共同記者会見もなし、 米中双方の発表内容にズレも
初日の夕食会で、トランプ大統領は笑顔で習主席と握手を交わし、偉大な関係を築こうと呼びかけた。
しかし、実際には夕食会の直前に米軍によるシリア空爆が決定されており、夕食会の終わりにトランプ大統領から攻撃の事実が習主席に伝えられるという波乱含みの幕開けとなった。
シリアへの空爆は、数日前のアサド政権による化学兵器の使用への対抗策として行われたが、トランプ政権は空爆を夕食会の最中に行うことで、中国、そして北朝鮮にも軍事的手段を使うべきときは使うというシグナルを送ろうとしたのだ。
今回の会談では共同声明も共同記者会見もなく、米中双方がそれぞれ会談の内容を発表するという異例の形が取られた。
実際の会談では相当激しいやり取りもあったためだ。
北朝鮮問題について、ティラソン国務長官の発表では 両首脳が北朝鮮の核・ミサイル問題について「深刻な段階」に達しているとの認識で一致し、国連制裁の完全履行も確認したとなっている。
他方、王外相の発表では、米中両国が朝鮮半島の非核化と国連制裁の完全履行を確認したことに加え、中国側が対話と協議による問題の解決と、韓国へのTHAADミサイル防衛システムの導入反対を主張したとなっており、米中双方の発表内容にズレがある。
会談では、米側が北朝鮮と取引がある中国企業を制裁対象にする意向を伝達したとみられ、実際トランプ政権は制裁対象に中国4大商業銀行の1つである中国銀行を含めて検討している。
他方、中国は米韓による軍事演習の停止を要求し、米朝の直接対話も提起したようだ。
北朝鮮問題に関する双方の立場に相当の開きがあることはあきらかで、
米側はこの会談で中国側の譲歩を勝ち取ることは考えておらず、
米側の本気度を中国側にわからせることを目的としていた。
■「習主席が夕食会の場でシリア空爆に理解を示した」のか
そもそも、この米中会談は中国側の要請によって実現したが、
中国側にとって最大の懸念は台湾問題だった。
トランプ大統領は就任前に「1つの中国政策」の見直しを示唆し、中国にとってもっとも敏感な問題で中国側を揺さぶった。
2月初めの米中電話首脳会談で、トランプ大統領は「1つの中国政策」を尊重すると述べたが、秋に共産党の最高機関である党大会を控えた習主席は、何としても直接の首脳会談でその言質を取る必要があった。
他方、トランプ政権側は、北朝鮮問題で中国に圧力をかけるためにこの会談を受け入れた。
中国側が2月の日米首脳会談並みの扱いを求めたため、トランプ大統領は安倍総理を招待した「マール・ア・ラゴ」に習主席を迎えることにした。
しかし、トランプ大統領は夕食会のデザートを食べている間にシリア空爆を知らせるという屈辱的な形で習主席の面子を潰し、中国側が期待した1つの中国政策に言及することもなかった。
特に、米側の発表では、習主席が夕食会の場でシリア空爆に理解を示したとされているが、
伝統的に対外介入に反対することを原則とする中国政府が空爆に理解を示すとは考えにくい。
仮に習主席が米軍の空爆に理解を示したとすれば、失脚につながりかねない失言である。
実際のところ、習主席は、化学兵器の使用には反対するが、軍事力による介入も支持しないという原則論を述べたようだが、
米側によって空爆に理解を示したと発表されたこと
は習主席にとって後を引く問題となるかもしれない。
■会談後も続く両国の駆け引き
トランプ政権は、北朝鮮問題解決への決意を示すため、米中会談後も様々な動きを見せている。
核兵器を在韓米軍に再配備することを検討していることが報道されただけでなく、3月に米韓演習に参加したばかりのカール・ヴィンソン空母打撃群を再び朝鮮半島近海に呼び戻した。
トランプ政権は、東南アジア各国に北朝鮮労働者の追放を要請することも検討している。
4月12日にはトランプ大統領が再び習主席に電話をかけ、北朝鮮への圧力を迫った。
これに対し、習主席は「平和的な方法」での解決を主張し、北朝鮮への軍事的圧力を強化するトランプ政権も牽制した。
他方で、北朝鮮が6度目の核実験を強行した場合は、中国政府が北朝鮮への重油の提供の中断や、国内の北朝鮮労働者の追放、北朝鮮観光の制限などを検討していることが漏れ伝わるようになっており、トランプ政権の意向にある程度応えることも検討していることがうかがえる。
それでも、中国がトランプ政権の圧力に屈するとは考えにくい。
制裁で北朝鮮が崩壊することは中国の国益にはならないため、金正恩体制を生かさず殺さずの状態にしておきたいのが中国の本音だろう。
シリア空爆をめぐって米ロ関係が悪化する中、中国はロシアとの連携によって、米国からの圧力をかわすことができる。
米国が国連安保理でさらに厳しい制裁を提案しても、ロシアが反対するので、中国はロシアの陰に隠れていればいい。
また、シリア空爆をきっかけに中東情勢がさらに悪化する可能性が高く、今の米国に中東とアジアでの二正面作戦を行う余裕があるかどうか、中国は見極めようとするだろう。
会談の成果に関して、米中双方は表向き友好関係を強調したが、実際には北朝鮮をめぐる両国の立場の違いが一層浮き彫りになった。
トランプ政権は引き続き中国への圧力をかける一方、おそらくは為替操作国指定を見送ることで、中国に妥協の姿勢も示すようだ。
他方、秋に党大会を控えた中国は米中関係の強化と朝鮮半島の安定の両方を重視し、結果としてトランプ政権が納得する行動は取れないだろう。
このため、事態の打開を求めてトランプ政権が軍事的手段に出る可能性を排除することは危険である。
数年後に振り返れば、この米中首脳会談が、朝鮮半島そして地域の安全保障環境を劇的に変化させるきっかけになったと評価されるかもしれない。
日本としても、米国と緊密に連携してあらゆる事態に対処する準備を進めつつ、金正恩後の朝鮮半島にどう関与していくかを真剣に考える必要がある。
』
『
ニュースソクラ 4/14(金) 14:00配信 五味洋治 ジャーナリスト
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170414-00010000-socra-int
中国は半島危機を回避させられるか
■特使派遣も断られたとの見方も
北朝鮮をめぐり、トランプ米大統領が、中国への圧力を高めている。
北朝鮮への影響力を発揮させ、核やミサイル開発に歯止めを掛けさせるのが狙いだ。
いま中国ができることを3つに整理した。
北朝鮮の問題が国際社会の焦点になると、中国は常に「あいまい戦略」を取ってきた。
中国が持っている影響力はそうない、われわれも困っていると公では話しながら、その裏で北朝鮮に関する制裁を強めたり、弱めたりして平壌の中枢に警告や和解のメッセージを送ることだ。
これは、中国の国益にもかなう方法といえる。
北朝鮮は近年、友好国中国に対しても、露骨に敵意をむき出しにする。
今年2月18日、中国は突然、北朝鮮からの石炭輸入を年内いっぱい停止すると発表した。
中国商務省は、5度目の核実験を受けた昨年11月の国連安全保障理事会の制裁決議で定められた上限(年間750万トンか年間約4億ドル)に近づいたためと説明した。
これに対して北朝鮮の朝鮮中央通信は、
「『親善的な隣国』だと言っている周辺国」が、
「対外貿易も完全に遮断するという非人道的な措置もためらいなく講じている」(23日)
と反発する論評を出した。
1300キロの国境を接している中国は、北朝鮮の混乱をなんとか避けたい。
難民や兵士が中国側に逃げ込めば、中国・東北地方も混乱に巻き込まれる。
中国は今年秋に党大会を控えており、静かな環境を維持したいのが本音だ。
しかし、トランプ大統領は、そんな中国の事情はお構いなしで、連日中国に北朝鮮に対応するよう求めている。
11日には自分のツイッターで
「北朝鮮は自ら問題を起こそうとしている。
中国が(米国に)協力すると決断することが望ましいが、協力しないなら中国抜きで問題を解決する」
と軍事行動を匂わせた。
外交問題に関して、あまり動かない習近平国家主席が12日、トランプ米大統領と電話会談を行ったのは、習主席も事態の深刻さを感じている証拠だ。
朝鮮半島の危機を回避するため中国ができることは3つ。
★.1つ目は北朝鮮に対して、特使を派遣し、行動を控えるよう求める。
★.2つめは、北朝鮮の行動に強い警告を発して、場合よっては経済制裁すると伝える。
★.最後は米朝の代表による話し合いの場をセットする
―だ。
中国の特使としては、武大偉・中国外交部朝鮮半島事務特別代表が考えられる。
北朝鮮の核問題をめぐる6カ国協議の中国側首席代表だ。
11日には、韓国側の首席代表の金ホン均・外務省朝鮮半島平和交渉本部長と意見交換しており、韓国や米国の雰囲気を伝えられるだろう。
ただ、韓国からの報道によれば、武氏はすでに北朝鮮に訪問を打診したが、返事を得られなかったという。
事態がもう少し緊迫していると判断すれば、中国政府の指導者の誰かが、北朝鮮に警告を発する可能性もある。
経済制裁としては北朝鮮向けの食料の輸出削減と石油の輸出停止だろう。
石油は火力発電所のほか、軍事用にも使われているとされ、北朝鮮には大きな痛手となる。
中国官営のタブロイド新聞・環球時報は12日、
「北朝鮮が核実験や長距離ミサイル発射をすれば、トランプ政権のほおを叩き、中国にも戦略的威嚇を加える。
中国も静観できない」
として原油輸出の中断などが行われると警告している。
案外、ここらへんが中国政府の本音かもしれない。
ただ、北朝鮮からの反発も、相当大きくなりそうだ。
最後の「対話仲介」が、最も可能性が高いだろう。
北朝鮮は11日に開いた最高人民会議で19年ぶりに外交委員会を復活させ、対外関係の改善に力を入れる姿勢を示した。
前外相の李洙ヨン党副委員長を「外交委員会」の委員長に選出したほか、この委員会には対米・核外交の主役だった金桂冠第1外務次官も含まれた。
中国が、米朝の外交担当者を北京に招き、会談させる。
そして当面の危機的状況を緩和させることができれば望ましい。
米国側は、北朝鮮との対話は、北朝鮮を核保有国として認めることになるため、今のところ否定的だ。
しかし、日本や韓国では、米国による武力行使への懸念が広がっていることもあり、非公式な会談という形なら、応じるだろう。
4月15日は金日成主席の生誕105周年で、大々的な祝賀行事が行われる。
中国の動きは、この後に見えてくるだろう。
■五味洋治 ジャーナリスト
1958年7月26日生まれ。長野県茅野市出身。実家は、標高700メートルの場所にある。現在は埼玉県さいたま市在住。早大卒業後、新聞社から韓国と中国に派遣され、万年情報不足の北朝鮮情勢の取材にのめりこんだ。2012年には、北朝鮮の故金正日総書記の長男正男氏とのインタビューやメールをまとめて本にした。最近は、中国、台湾、香港と関心を広げ、現地にたびたび足を運んでいる。
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ハンギョレ新聞 4/14(金) 13:59配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170414-00027062-hankyoreh-kr
ボール渡され頭を抱える中国
■「中国役割論」には距離置きながらも 制裁履行などで“圧力”に対応
北朝鮮の核・ミサイル実験への懸念が高まり、中国に対北朝鮮制裁強化などを要求するドナルド・トランプ政権の圧迫が激しさを増している中、中国の対応に注目が集まっている。
中国の習近平国家主席はトランプ大統領との首脳会談および電話会談を通じ、「北朝鮮核問題の平和的解決」を相次いで強調している。
これは朝鮮半島に「戦争も混乱も起きてはならない」という中国の公式立場と、米国が武力を使用して朝鮮半島情勢が不安定になる可能性を懸念する中国の雰囲気を反映している。
公式的に中国当局と官営メディアは「双中断」(北朝鮮の核・ミサイル実験の中断、韓米の大規模な軍事演習の中断)と「双軌並行」(非核化と平和体制への転換)など、対話・交渉を通じた解決という従来の立場を繰り返している。
しかし、北朝鮮や米国をはじめ誰も積極的に応じておらず、悩みが深まっているようだ。
13日、中国外交部の定例記者会見で「関連国が回答したか」という問いに、陸慷報道官は
「すべての関係国が中国の立場を明確に知っている。密接な疎通を維持している」
とだけ答えた。
さらに、中国社会世論は北朝鮮問題に複雑な反応を示している。
★.例えば、「環球時報」社説を見てみると、
10日には「朝鮮(北朝鮮)は形勢を誤解するな」と警告し、12日には「石油輸出の中止」まで取り上げて“ムチ”をとったが、13日付の社説では態度を変えて「核を放棄し、開放するなら、中国が政権安定を手助けする」として、“アメ”を与えた。
★.一部外交・安保専門家らは、
北朝鮮が核開発のため、米国の軍事攻撃を受けたとしても、中国が軍事支援を提供する必要はないと主張していると、香港の「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」が13日付で報じた。
「唇亡歯寒」、つまり、北朝鮮の地政学的価値を中国と欧米勢力の間の緩衝地帯とみなす伝統的な視点とは異なるものだ。
このような状況は、今秋第19回党大会で指導部の大規模な交代が予告された中、国内外の安定が共に重要な中国にとって、大きな課題になっている。
朝鮮半島問題と関連し、国外では周辺国との協議などで状況を管理し、国内では対北朝鮮政策の正当性を認めてもらわなければならないからだ。
米国が中国に追加制裁を求める中、13日、中国海関総署(税関)は今年第1四半期の北朝鮮産石炭の輸入が前年同期より51.6%減ったと発表した。
2月中旬、国連安保理の決議による北朝鮮産石炭の輸入中止措置による結果で、中国は、国際社会が合意した安保理決議は厳格に履行すると重ねて強調してきた。
今回の米中首脳会談後、中国の国内法の適用の強化などで実質的に制裁強化効果が現れるとの見通しもある。
しかし、中国は北朝鮮核問題の解決に向けた「中国役割論」に、依然として懐疑的だ。
中国国際問題研究院の阮宗澤副院長は12日、中国記者協会招待行事で
「(中国の)影響力はむしろ減少した」とし、
「核実験とTHAAD(高高度防衛ミサイル)でも分かるように、南北ともに中国の言うことを聞かない」
と話した。
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Record china配信日時:2017年4月14日(金) 15時40分
http://www.recordchina.co.jp/b175149-s0-c10.html
米中首脳会談、臆測呼ぶ習主席のシリア攻撃「理解」、
核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮への「警告」
米中首脳会談で中国の習近平国家主席が米国のシリア攻撃に「理解」を示したことが臆測を呼んでいる。
中国首脳が他国への軍事力行使を容認する発言をしたのは極めて異例。
その上、シリア攻撃には核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮への「警告」のメッセージが含まれているからだ
習主席の「理解」は首脳会談後の7日、ティラーソン米国務長官が記者会見で明らかにした。
欧米メディアなどによると、米国のトランプ大統領は6日夜に行われた夕食会の終盤で習氏に対し、シリアへの攻撃を実施したことを伝達。
アサド政権が化学兵器で女性や子どもを殺害したことへの対抗措置であるとの理由を説明し、発射した巡航ミサイルの数も伝えた。
ティラーソン長官は習主席の対応について、情報提供に謝意を表明したと言明。
「中国の公式見解ではない」と断った上で、習氏が「子どもたちが殺された時には、こうした反撃の必要性があると理解を示した」と紹介した。
ティラーソン長官の発言について、中国側が異議を唱えた形跡はない。
首脳会談が行われる場合は、事前に当事国同士で議題などを調整する。
シリア攻撃は議題として予定されていたはずもない。
しかも習主席が伝えられたのは夕食会の席上。
トランプ大統領の“奇襲” だった。
中国専門家は全く想定外の事態に習主席がとっさに反応できなかたのではないか、ともみている。
攻撃を受けて開催された国連安全保障理事会の緊急会合で、シリアの後ろ盾のロシアは「シリアが化学兵器を使用した証拠がないまま行った主権国家への侵略行為。
シリアで遂行するテロとの戦いを困難にするものだ」と米国を非難。
これに対し、中国の国連大使は「シリア問題には政治的な解決以外に道はない。軍事的手段は内戦に苦しむシリアの人々の状況をさらに悪化させるだけだ」と述べ、安保理が中心となり、政治的な解決を目指すよう各国に求めただけ。
ミサイル攻撃は「超法規的措置」にもかかわらず、米国批判を避けた。中国外交部の報道官も「事態のさらなる悪化を防ぎ、得難い政治解決のプロセスを守っていくことが急務だ」と述べるにとどまった。
米英仏は安保理にシリアの化学兵器使用を非難し、同国政府に調査への協力を求める決議案を提出。
12日に採決が行われたが、ロシアが拒否権を行使して廃案となった。
シリア問題でロシアが拒否権を行使したのは11年以降8回目。
中国はロシアに同調して拒否権を6回行使していたが、今回は棄権に回った。
米中首脳会談でも大きな焦点になった北朝鮮問題について、トランプ大統領は11日、ツイッターに「中国が助けてくれれば素晴らしいが、そうでなければ我々が解決する」と書き込み、改めて中国に圧力を掛けた。
遠い中東のシリアと国境を接する北朝鮮では中国の利害が全く異なるが、朝鮮半島周辺に軍事力を集結させている米国が北朝鮮に対し先制攻撃に踏み切った場合でも、習主席は「理解」を示すのだろうか。
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