2017年3月4日土曜日

中国(23):中国国防費予算、16兆円

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朝日デジタル 2017年3月4日23時31分
http://www.asahi.com/articles/ASK344K87K34UHBI014.html

中国の国防費増、
背景に米への対抗意識 さらなる増加も



 2017年の中国の国防予算案の伸び率が前年比7%前後となる見通しとなった。
 史上初めて1兆元(約16兆5千億円)を超えることは確実で、主要国の中でも高い伸び率を維持した。
 背景には、南シナ海などで米軍に対抗できる海空軍力の拡充を急ぐ中国の戦略がある。

 「12%以上の伸び率が必要だと思う。
 しかし、経済成長が鈍くなっている中で、国防費の伸びが下がるのは理解できる」
 3日、国政への助言機関である全国政治協商会議(政協)に出席した王洪光・元南京軍区副司令官(中将)は記者団に話した。

 国防費の伸び率が1桁にとどまった背景には、経済成長の減速のほか、習近平(シーチンピン)国家主席が15年、約230万人の兵力を30万人減らす方針を示すなど一連の軍改革の削減効果が反映しているとの見方もある。
 それでも国防費の伸び率が依然高いのは、米軍の圧力に対する中国の強い警戒感があるからだ。

 米軍は15年以降、南シナ海で「航行の自由作戦」を展開し、人工島に近い空域を米軍機がたびたび飛行。
 2月には米原子力空母カール・ビンソンが南シナ海に入った。
 トランプ大統領は国防費を約1割増やす方針を示すなど軍備を増強する構えを鮮明にしている。
 北京の軍事筋は「トランプ政権の軍事動向に対応するため、中国が国防費をさらに増やしていく可能性は十分ある」と指摘する。



毎日新聞2017年3月5日 東京朝刊
http://mainichi.jp/articles/20170305/ddm/002/030/132000c

中国国防費7%増 
大国の軍拡競争再び 
米国、南シナ海強化へ


●米国と中国の軍事力の比較

 2017年の中国国防費予算案の伸び率が、前年実績比「7%前後」になると4日発表され、初めて1兆元(約16兆5000億円)の大台に乗ることが確実になった。米国の国防費もトランプ政権下で大幅にアップされる見通しだ。両大国の軍事バランスは日本の安全保障にも関わる。中国と米国の国防費の伸びは、冷戦期のような軍備拡張の競争を引き起こすのか。
 2017年の中国国防費予算案の伸び率が、前年実績比「7%前後」になると4日発表され、初めて1兆元(約16兆5000億円)の大台に乗ることが確実になった。米国の国防費もトランプ政権下で大幅にアップされる見通しだ。両大国の軍事バランスは日本の安全保障にも関わる。中国と米国の国防費の伸びは、冷戦期のような軍備拡張の競争を引き起こすのか。

初の1兆元台
 今年の国防費をめぐって中国では、米国が軍拡に転じたことに対抗して2桁増を復活させるよう求める意見が軍OBから出ていた。ただ、1桁とはいえ1兆元の大台を確保し、過去最大の国防費支出が確実になっている。中国軍事科学院の陳舟・研究員は「国防費の増加は強軍の目標に資する」と評価し、「特に海からの挑戦が突出している」と指摘した。南シナ海、東シナ海などを念頭に、陸軍中心から海軍・空軍の近代化につながるとの期待感を示した発言だ。

海軍重視が鮮明
 中国は建国以来最大の軍事改革を進めている。軍の編成を七つの「軍区」から五つの「戦区」に再編。中国海軍の司令官に南シナ海を担当する沈金竜・南海艦隊司令官を抜てき。南シナ海をカバーする「南部戦区」の司令官に海軍の袁誉柏・中将を登用した。陸海空の統合運用を目指す戦区のトップに海軍出身者が就任するのは初めてで、海軍重視を鮮明にした。

 海軍では、初の国産空母が今年中に進水する見込みで、建国100年の2049年には原子力空母を含む10隻の空母保有を目指しているとの見方もある。戦闘機や艦船の製造も急ピッチで進められており、北京の外交関係者は「潤沢な国防費が量も質も向上させることを可能にしている」と警戒する。

 これらを南シナ海に大量に投入すれば、シーレーンを中国が握る「内海化」が現実味を帯びる。米国は「国際法に基づく航行の自由」を中国に求めているが、全国人民代表大会(全人代)の傅瑩・報道官は4日、英金融街・シティーの情報では船舶保険料は高騰していないとして、「南シナ海の航行の安全を心配するのは、米国が中国の(軍事)能力が追いつくか、追い越される事態を恐れているからだろう」と皮肉った。

 傅氏はまた「我々は外部の力が(領土)紛争問題に介入することを防がねばならない」と強調。「米国の挑戦を受けるようであれば、落ち着いて対応する。今後、米国が南シナ海でどうふるまうかが、(事態の)風向きを知る指標となるだろう」とけん制した。【北京・石原聖】

政権内主導権争い
 「歴史的増額だ」。トランプ米大統領は2月27日に州知事らとの会合で国防費を540億ドル(約6兆円)増額すると表明した。トランプ氏は増額した予算の振り向け先を具体的に示していないが、対中国と受け取れる指示も出ている。

 一つは「主要な国際水路での(米軍の)存在強化」だ。国際物流の要である南シナ海などでの哨戒活動を強化し、中国をけん制する狙いがあるとみられている。

 トランプ政権の対中政策では、右翼メディア「ブライトバート」の会長を務めたスティーブン・バノン首席戦略官が強硬派の筆頭格だ。一方、穏健派はトランプ氏の長女のイバンカさん夫妻や、今月半ばの訪中に向けて準備を進めるティラーソン国務長官だ。

 ティラーソン氏らは地球温暖化防止の新しい枠組みである「パリ協定」をテコに、米中関係を維持する外交路線の踏襲を訴える。バノン氏は「パリ協定」離脱を主張しており、対中政策を巡る政権内の主導権争いは当面続きそうだ。【ワシントン会川晴之】



ロイター  2017年 03月 3日 20:04 JST
http://jp.reuters.com/article/column-china-us-south-china-sea-idJPKBN16A08T?sp=true

コラム:中国軍は南シナ海で米軍を出し抜けるか


● 3月1日、アジアにおける米国のアプローチが常に、中国の裏庭で空母を航行させることに重点を置いている一方、中国は仮想敵国に対して戦略的バランスを崩すためにできることを何でもやっている。写真手前は中国初の空母「遼寧」。南シナ海で昨年12月撮影。提供写真(2017年 ロイター/China Stringer Network)

[1日 ロイター] -
 米空母カール・ビンソンは、先週ほぼずっと南シナ海で監視活動を行っていた。
 これはまさに、米国の影響力と、米海軍の優れた世界的到達能力を示すエピソードにほかならない。
 その狙いは、同盟国を安心させるだけではなく、今回の場合は、仮想敵国にメッセージを送ることにある。

 しかし米国がそのような活動を、抵抗を受けずにいつまで続けられるかは、ますます疑わしくなっている。
 10年余りで、中国海軍が米国よりも多くの艦船を保有する可能性を一部の専門家は予想している。
 中国の軍備増強は、南シナ海の領有権問題で優位に立ち、米国に対抗する戦略の一環である。
 米国が世界で軍事的優位を保持することは、国防費を約9%、540億ドル(約6兆1700億円)増やすというトランプ大統領の計画の中核だ。
 しかし、米国がアジア地域で軍事的優位を持続させるには、それだけでは十分ではないだろう。

 中国の国防費の伸びは昨年やや減速したものの、過去20年にわたり、ほぼ毎年のように2ケタ増を繰り返してきた。
 さらに重要なのは、米国が効果的な対応が全くできないようなさまざまな戦術を導入していることだ。

 アジアにおける米国のアプローチが常に、中国の裏庭で空母を航行させることに重点を置いている一方、中国は仮想敵国に対して戦略的バランスを崩すためにできることを何でもやっている。
 新たな兵器システムや海軍における相当な規模の従来型の戦力拡大といったことだけでなく、海軍基地や水上発電所、人工島の建設を含む多くの戦術から成る戦略だ。

★.アジアで衝突が起きるのは仮定の話ではなく時間の問題だと、一部の現旧米軍当局者は考えている。
 同様にあり得る話と思えるのは、
★.実際に戦争の引き金となる何かが起きる一歩手前の状態で、概して血は流れないだろうが、
 数十年に及ぶ対立状態に陥る可能性だ。
 それこそ中国の計画なのだろう。

 それは中国が自国の一部とみなす台湾の海域周辺でミサイル発射試験や軍事演習を実施した1995年以降、ますます熱心に同国が取り組むゲームである。
 当時のクリントン大統領は、台湾海峡を監視するため空母2隻を派遣した。
 それは、中国が負け戦だと分っている戦争を始めることなしには阻止できない動きだった。

 以来、中国は周辺地域から米軍、とりわけ空母を遠ざけるための能力獲得に専念している。
 多くの専門家は、米国の戦略立案者が再び中国の沿岸地域に空母を接近させるリスクを負いたくないと考えるに十分な、潜水艦やミサイルや戦闘機といった兵器技術を中国が手にしているとみている。

 中国は、至近距離の艦船を破壊するための兵器のみならず、台湾に照準を定めた弾道ミサイル数千発を保有しているとみられる。
 一部の専門家は、中国が今後20年のうちに台湾を支配下に収めようとする可能性を指摘している。

 中国の次なる目的は、豊富なエネルギー資源が眠っているかもしれない、フィリピンやベトナムやマレーシアが領有権を主張する多くの環礁や島にまで自国の軍事力を拡大することかもしれない。

 南シナ海における中国の最も尊大な領有権主張は昨年、オランダ・ハーグの常設仲裁裁判所で却下された。
 だが中国は、特にフィリピンと領有権を争うスカボロー礁周辺での建設拡大を続行した。
 2012年に中国軍が足を踏み入れてからは、そこに軍事施設を築き上げている。

 このような基地を根拠に、中国軍は自国の領土だとして空域や海域を主張し、他国の航空機や船舶に登録を求めている。
 米国やオーストラリアなど他国の軍は、比較的罰せられず、国際的な正当性もほとんどないこうしたルールを無視している。

 しかし、中国を止める戦略を誰も持っていない。
 トランプ政権のティラーソン国務長官は指名承認公聴会で、米軍が中国に南シナ海にアクセスさせないようにする可能性を示唆して驚かせた。
 そうなれば戦争が始まることはほぼ間違いなく、これに関してはその後言及されてはいない。

 南シナ海で起きていることは、多くの点で、2014年のロシアによるクリミア併合でプーチン大統領が成し遂げたことと似ているが、より漸進的である。
 クリミア併合では、ウクライナや同盟国が対処する前に、軍人ではない武装した親ロシア派を使って現実を変えてしまった。
 ウクライナでは、今でもロシアは公式に認めないが、結局は公然と軍事力を使って東部のロシア語を話す地域を占拠する気のあったことが明らかとなった。

 問題は、南シナ海で中国も同じようなことを考えているかどうかだ。
 そして、もしそうなら何が起きるか、ということだ。

 中国は、かつて米国が自国に対して使用したハイレベルかつハイバリューの軍事資産を獲得することに一段と力を入れている。
 ソ連製の中国初の空母は、主に訓練での使用にとどまってはいるものの、かつてないほど活動している。
 昨年12月、同空母は中国の沿岸水域外で初の長距離パトロールを実施したとみられる。
 中国はまた、初となる国産空母を建造しており、報道によると、さらにもう1隻の建造も進めているという。
 これら空母は中国の国際的なイメージにとって重要である。
 ロシアが昨年後半にシリアで空爆を実施するために唯一の空母を派遣したことで集めた注目を目の当たりにしたからだ。
 中国は、ロシアのように、弾道ミサイル搭載の潜水艦の建造を増やしている。
 これは、中国のいかなる仮想敵国にとっても、全面戦争によって大激変をもたらすリスクに対する明らかな警鐘となっている。

 いくつかの予測データによると、向こう10年から15年で、中国は高性能のコルベット艦や巡視船、他の艦艇のみならず、最大4隻の空母や潜水艦100隻を含む、計500隻の艦隊を持つ可能性がある。
 一方、トランプ大統領は米海軍の艦船を350隻に増やし、より強力な艦船の割合を高め、全世界に展開させるという計画だ。

 米空母カール・ビンソンは、南シナ海の領有権が争われている海域を通過することで、米国の軍事力を改めて誇示した。
 しかし実際に戦争が起きた場合、そのように巨大な艦船が撃沈されるまでどれくらい生き残れるかは全く分からない。
 どちらにせよ、カール・ビンソンは来週、同地域を離れる。
 だが、米国の他の戦力は残されたままだ。
 そして中国も依然として軍備増強を進めるだろう。

*筆者はロイターのコラムニスト。元ロイターの防衛担当記者で、現在はシンクタンク「Project for Study of the 21st Century(PS21)」を立ち上げ、理事を務める。

*本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。





【2017年 大きな予感:世界はどう変わるか】

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