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ダイヤモンドオンライン 2017.3.16 莫 邦富:作家・ジャーナリスト
http://diamond.jp/articles/-/121430
中国のアフリカ鉄道敷設事業に新展開、
課題は投資資金回収
2017年1月10日、中国企業2社が施工・運営するエチオピア・ジブチ鉄道のジブチ区間が正式に開通した。
これは内陸国エチオピアの首都アディスアベバと紅海(Red Sea)に面した隣国ジブチの首都ジブチ市を結ぶアフリカ初の電気鉄道である。
総延長750キロの鉄道は、総工費34億ドル(約3500億円)の7割が中国輸出入銀行の出資による。
鉄道運営の経験がないエチオピアで人材が育つまで、5年間の契約で、運転士や駅長、技師など運行に関わる全てを中国人が担う。
これまで2都市間の物流は9割をトラックなどの道路輸送に頼っていたが、渋滞や道路整備の遅れから片道だけで数日かかっていた。
「この鉄道は形勢を一変させるものだ」、
「エチオピア、ジブチ両国の経済にとって大きな起爆剤となる」
などとフランスのAFP通信が評価する。
中国のメディアの報道によれば、この鉄道によって、ふたつの国の首都を移動するのにかかる時間はこれまでの3日から7~12時間にまで短縮される、という。
アディスアベバ~ジブチ間には1910年にフランスの企業が鉄道を敷設していたが、老朽化によりすでに運行できなくなっていた。
エチオピアがスイスやオーストラリアなどの鉄道建設会社に調査を依頼したこともあったが、インフラが立ち後れた国で電気鉄道を建設するのはあまりにも難しいので、結局、工事施行までたどり着けなかった。
最終的に中国がその近代的な鉄道の建設を引き受けたそうだ。
■中国が敷設した
「新時代のタンザン鉄道」
このエチオピア・ジブチ鉄道は、アフリカ鉄道事業が一夜にして現代社会の仲間入りを果たした象徴として、中国が敷設した「新時代のタンザン鉄道」と称されている。
タンザン鉄道というのは、タンザニアのダルエスサラームとザンビアのカピリムポシを結ぶ鉄道「TAZARA」のことを言う。
1960年代中頃、国際政治の事情により、ザンビアは在来の銅鉱石の輸出ルートを使えなくなり経済的に苦境に陥った。
このためタンザニアのダルエスサラームから輸出することを目的とした鉄道建設が目指された。
タンザニアとザンビア両政府首脳の要請を受けて、1970年から1976年までの6年間、中国は無利子で計4億320万ドルの借款を与え、数万人にも及ぶ労働力を投入して、タンザン鉄道を完成させた。
全長は約1860キロのタンザン鉄道によって、タンザニア、ザンビア両政府はアンゴラ内戦などによって破壊されたベンゲラ鉄道などを経由しない銅輸出ルートを確保できた。
この新時代のタンザン鉄道と呼ぶべきエチオピア・ジブチ鉄道ができたことで、東アフリカの海抜2400メートルの高原から海抜0メートルのジブチまで、途中、大地溝帯や火山地形、断層帯を通りながら疾走する中国製の列車は、アフリカの日常光景と変わっていく。
エチオピアとジブチの国民は大喜びで我も我もと競うように列車に乗り、近代的な鉄道のスピードと快適さを体感している。
一連の報道記事を読む私の目はどうしても微笑ましいところに行く。
美人ぞろいの列車の乗務員たちだ。
全国から選び抜かれた彼女たちは写真を撮っては自らのSNSに載せ、人気を集めている。
中国で見慣れた制服に黒人の美女。その構図の意外さと珍しさに時代の変化を感じ、思わず微笑むのである。
アディスアベバ郊外に新設された駅で開かれた開通式典では、
「この鉄道の完成は我々の夢をひとつかなえてくれた」(エチオピアのハイレマリアム・デザレン[Hailemariam Desalegn]首相)、
「この鉄道は我々の未来に成長のチャンスをもたらした」(ジブチのイスマイル・オマル・ゲレ[Ismael Omar Guelleh]大統領)
などの評価も、この鉄道の重要性を裏付けている。
エチオピアには海に出る港がなく、輸出はこれまではクルマなどでジブチ市に輸送して船積みしていた。
鉄道が開通したことで、エチオピアは工業主導の経済発展戦略の実施を打ち出し、鉄道沿線の開発を進め、国全体の工業化を後押ししたいと考えている。
一方、ジブチは今後20年以内に鉄道と港によってジブチ市を「東アフリカのドバイ」のような海上輸送の港かつビジネスの中心地にし、国を中レベルの収入の国家に押し上げたいと自信満々である。
■中国は投資資金をアフリカ諸国から回収できるか
鉄道が開通して約1ヵ月後の2月7日、ニューヨークタイムズ紙が中国のアフリカ投資についての記事を掲載し、この新鉄道を取り上げた。
記事ではジブチとエチオピア、最終的にはアフリカ全体をも変えるだろうと評価しているが、アフリカの国はあまりに貧しいため、中国から借り入れた資金を必ずしも返せるとは限らない、とも指摘している。
中国側はこの指摘をアメリカのやっかみと受け止めているが、私はむしろ重要な指摘だと思う。
貧困のアフリカでインフラ事業を展開するには、この投資資金の回収の困難さという問題を避けて通れない。
政治戦略からの考慮とビジネス的計算の両立を考えなければならない。
実際、中国は鉄道だけではなく、道路やダムをはじめ、エチオピアのインフラ開発に大規模な投資を行っている。
アディスアベバでは昨年、やはり中国の出資で建設された路面電車(トラム)も開業している。
これはサハラ以南アフリカでは初の近代的な路面電車だと言われている。
国内経済が踊り場に来ている中国は近年、海外へのインフラ建設に積極的に参加している。
もちろん、政治戦略的思考からの行動だと思うが、国内経済の困難な局面打開に対する期待を海外へのインフラ建設に託すという一面もあるだろう。
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【2017年 大きな予感:世界はどう変わるか】
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