2017年5月31日水曜日

北朝鮮ミサイル 次から次へ(3):北朝鮮の核攻撃に備え始めた米ハワイ州

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ニューズウイーク 2017年5月30日(火)16時40分 ライアン・ボート

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/05/post-7703.php

北朝鮮の核攻撃に備え始めた米ハワイ州


●物騒な北朝鮮のミサイル発射実験(写真は中距離弾道ミサイル「北極星2号」 KCNA/REUTERS

<北朝鮮からの核攻撃の脅威を肌で感じ始めたハワイ州が、
 冷戦期以来の緊急時行動計画の見直しを始めた>

 アメリカのトランプ政権と一部の報道機関は、北朝鮮が今にも核攻撃を仕掛けてきそうな調子で騒いでいるが、
 アメリカ本土に危険が差し迫っているという証拠はほとんどない。
 だが、ハワイは別だ。
 北朝鮮との距離が近いため、既に弾道ミサイルの射程内に入ったとみられ、警戒を怠ってはいない。
 ハワイ州は、核攻撃に備えた緊急時対応計画を準備中だと、ニュースメディア「マザーボード」は伝える。
 もともとの計画は冷戦下の1985年に作成されたもので、見直しは今回が初めてだという。

 ハワイ州の国防当局は、核攻撃に備えたガイドラインを策定していない。
 しかし、マザーボードが情報公開法に基づいて情報開示請求を行ったところ、新たなミサイル防衛構想のための「行動計画とマイルストーン」が提示された。
 そこには、北朝鮮による核攻撃の脅威にハワイ州がどう対処しているかが示されている。

【参考記事】 >サードは無力? 北朝鮮の新型ミサイルは米韓の戦略を無効にする

行動計画では、同州が進めている取り組みの一部について概略が述べられている。
 例えば、
 「大勢の死傷者が出た場合の対応をめぐる既存手続きの見直し」
 「主要スタッフと指導部に対する武器教育の実施」 
 「州議会ならびに立法府指導部に対するブリーフィングの実施」
などだ。

■煽ったのはトランプ?

 ハワイ州はまた、緊急時にテレビやラジオ、サイレンだけに頼るのではなく、緊急警報システムに携帯電話を導入する方法を検討している。
 今回初めて見直し・改定が行われているのは、1985年の冷戦時にハワイ州が策定した核攻撃に対する防衛計画だ。
 策定当時はまだ、積極的に備えるには攻撃のリスクが低すぎると見なされていた。
 だが今回は、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)を危惧した議員から強い要請で見直しが決まった。
 ハワイと北朝鮮の距離はおよそ7400キロで、
 ICBMは発射から20分以内に到達すると同州は推測している。

 米朝間の緊張感が高まっているのは、北朝鮮が立て続けにミサイル発射実験を実施したため。
 5月29日に発射された弾道ミサイル1発は、450キロ飛行した後に日本の排他的経済水域(EEZ)内に落下した。
 その前は5月14日で、ミサイルは約700キロ飛んで日本海に落下している。
 それに先立つ4月29日の実験では、ミサイルは発射直後に爆発した。

【参考記事】 >ロシアが東欧の飛び地カリーニングラードに核ミサイル配備?

 ドナルド・トランプ大統領の発言が北朝鮮に対する先制攻撃になった可能性もある。
 4月18日にフォックス・ニュースのインタビューに応えたトランプは、北朝鮮への先制攻撃も選択肢の1つだと言った後、次のように言った。
 「自分が何をしているか、何を考えているかを事前に勘付れたくない」
 「どうなるかはそのうちわかる」

(翻訳:ガリレオ)



テレビ朝日系(ANN) 6/1(木) 5:55配信
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20170601-00000004-ann-int

ICBM“迎撃”映像公開 
米国防総省「実験は成功」

 アメリカの国防総省は、北朝鮮のICBM(大陸間弾道ミサイル)を想定して行った迎撃実験の映像を公開しました。

 実験は日本時間の先月31日未明に行われ、ICBMを想定した標的をカリフォルニア州の空軍基地から発射したミサイルで迎撃しました。
 アメリカの国防総省は「実験は成功した」と発表し、迎撃する瞬間の赤外線カメラの映像などを公開しました。
 実験は北朝鮮がアメリカ本土を射程に収めるICBMを完成させた場合に備えて行われ、国防総省は
 「少なくとも2020年までは北朝鮮のICBMの脅威に対抗できる」
と成果を強調しました。
 また、次の実験は迎撃ミサイルを2基に増やして、早ければ来年8月にも実施することを明らかにしました。


TBS系(JNN) 6/1(木) 5:38配信
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20170601-00000020-jnn-int

米国防総省「2020年段階の北ミサイル技術を想定」

 アメリカ国防総省の幹部はICBM=大陸間弾道ミサイルの初めての迎撃実験について、2020年の段階の北朝鮮のミサイル技術を想定したものであることを明らかにしたうえで「いかなる脅威であっても倒す能力があるという自信を深めた」と述べました。

 国防総省ミサイル防衛局長のシリング海軍中将は電話による記者会見で、30日に実施したICBMの迎撃実験について、
★.西太平洋のマーシャル諸島から打ち上げた模擬弾を「ハワイの北東の大気圏外で迎撃した」と述べました。
 また、実験は情報機関の予想に基づいた「2020年の段階の北朝鮮などのミサイル技術を想定したもの」としたうえで「いかなる脅威であっても倒す能力があるとより確信した」と語りました。

 さらに、シリング中将は来年の8月から9月の間に2回目となるICBMの迎撃実験を行う予定であることを明らかにしました。

2017年5月30日火曜日

悪化する中国の自然環境(2):北京市は「大気汚染改善に極めて強力に取り組む」

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Record china配信日時:2017年6月4日(日) 5時0分
http://www.recordchina.co.jp/b180070-s0-c30.html

2016年の北京PM2.5濃度、基準値の2倍以上―中国メディア



 2017年6月2日、中国新聞網によると、中国北京市環境保護局は同日発表した
★.2016年の同市環境公報で、大気汚染の原因となる同市のPM2.5(微小粒子状物質)の年間平均濃度は、1立方メートル当たり73マイクログラムで、国が定める基準値の2.09倍だったと発表した。
 重度汚染注意報が発令されたのはのべ36日間で、うち6日は最も深刻な「紅色警報」だった。

 大気汚染の程度を示す空気質指数は、重度汚染が計39日
 前年より7日減少した。
 大気中のPM2.5の濃度は、秋から冬に高く、夏場は低い。最も汚染がひどくなる
★.12月は、計4回11日間にわたって重度汚染が確認された。
 北京市の東北部、西北部で低く、南部や南西部で高い。

 北京市はのべ5億元(約81億円)を投じ、小型の石炭ボイラーの運転を中止。
 大型に集約する再編事業を進めている。
 さらに、環境破壊行為が確認された場合の罰金徴収を強化。
 16年の罰金額は環境関連の違法行為で1億5000万元(約24億円)に上った。



人民網日本語版配信日時:2017年5月30日(火) 5時40分
http://www.recordchina.co.jp/b179514-s10-c30.html

北京市「2017年は大気汚染改善に極めて強力に取り組む」―中国

 このほど開かれた「北京市の2016年環境状況と環境保護目標達成状況に関する報告」の北京市人民代表大会常務委員会による公聴と審議で、北京市は2017年、その大気汚染改善に極めて強力に取り組み、
★.微小粒子状物質PM2.5の年間平均値を1立方メートルあたり「約60マイクログラム」にするという目標達成を目指していること
を明らかにした。
 新華社が伝えた。

 北京市環境保護局の方力局長は、
 「2016年、北京市は汚染排出削減と環境の質改善の主要な目標の任務を比較的良いかたちで完成させた。
 しかし人口と環境資源との矛盾は依然として顕著だ」
とした。

 また方局長は、
 「PM2.5は依然として北京市の大気汚染にとって核心的な問題。
 2016年の年間平均値は1立方メートルあたり約73マイクログラムで同期比9.9%マイナスとなったが、それでも国家基準の2.1倍となっている。
 しかも大気汚染の影響は顕著で昨年12月以降、広範囲で長時間にわたる大気汚染が生じており、延べ4回、11日間の重度汚染が生じている。
 社会的な生産及び生活に対しても比較的大きな影響を与えている」
とした。

 その上で方局長は、
 「2017年はPM2.5の年間平均値を1立方メートルあたり約60マイクログラムにするという目標達成をめざし、エネルギー構造の全面的なクリーン化、乗用車の低排出化、都市管理の精密化を強力に推し進めていく」
とその考えを明らかにした。

 さらに、北京市は2017年に水汚染対策を統括して推し進め、次第に土壌汚染対策も展開していく計画だ。
 下水パイプラインと農村における下水処理施設の建設を着実に推し進め、汚染の排除と改善を強化していく。
 そして土壌環境モニタリングネットワークの構築を完全なものとし、汚染土壌のリスクスクリーニングと調査アセスメントメカニズムなどを構築していく。
 同時に環境保護の監督と査察を16区全域で実施し、環境を害する不法な犯罪行為に致命的な打撃を与える。

(提供/人民網日本語版・編集/TG)




● せまりくる地盤沈下





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2017年5月29日月曜日

北朝鮮ミサイル 次から次へ(2):アメリカに次の手はあるのか?

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JB Press 2017.5.29(月)  矢野 義昭
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50124

北朝鮮と戦争かICBM保有の黙認かを迫られた米国
この機会を逃せば北による半島統一に進む危険性も


●北朝鮮国営の朝鮮中央通信(KCNA)が配信した、弾道ミサイル「北極星2」発射実験の様子を写した写真(2017年5月22日公開)〔AFPBB News〕

 今年1月1日、北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験の準備が「最終段階にきている」と表明した。
 その後の度重なるミサイル発射試験は、いかに北朝鮮がミサイル開発に拍車をかけているかを示している。
 北朝鮮は、国際社会の制裁と米国の軍事的圧力が強まるなか、5月14日、5月21日と立て続けに弾道ミサイルの発射試験を行った。
 また、威力のより大きい核実験も命令があり次第可能であるとしている。

 北朝鮮の核・ミサイル能力は日増しに向上し、いかなる核大国にも「耐え難い損害」を与えられる水準の「最小限核抑止」水準に近づいている。
 他方、米国にとっては、今が、北朝鮮の米本土に到達するICBM保有を阻止する、最後の機会であろう。

米国はいま、北朝鮮との戦争を覚悟するか、
 ICBMの保有を黙認するかの瀬戸際に立たされている。
 米国が軍事的選択肢をとれば、日韓が大なり小なり戦場になることは避けられず、日韓両国も当事者として直接的な危機に直面していると言える。

■:1 「最小限核抑止」態勢に向け驀進する北朝鮮

 ある国が信頼のおける核抑止力を保有する段階には、いくつかの越えねばならないハードルがある。
 特に重大なハードルは、いずれの核大国に対しても「耐え難い損害」を与えられる「最小限抑止」段階の核戦力の水準を保有する直前の段階である。
 この段階は核拡散を阻止する側からみれば、核疑惑国の核保有を軍事的に阻止できる最後の機会である。
 逆に北朝鮮にとっては、米国など核大国による核施設への先制破壊の危機が最も高まる時期でもある。

米ロは相互確証破壊水準の核戦力を保有しており、中国もこれに近づいている
 その他の最小限抑止水準の核戦力を保有している国は、
 英、仏、イスラエル、パキスタン、インド
である。

 今の時点では北朝鮮はまだ最小限抑止の水準に達してはいない。
 軍事技術的には、以下の3つの点が挙げられる。

(1):数百キロトン以上の出力を持つ水爆の核実験に成功していない。
(2):大気圏内に再突入した後も衝撃や熱などに耐えて機能する再突入弾頭技術が実証されていない。
(3):核弾頭の搭載可能な十分な搭載量を持つ米本土に届く射程1万キロ以上の大陸間弾道ミサイルの発射試験にまだ成功していない。
 今後、これらの技術的課題を克服することができれば、後は量産し配備を進めることで、数年以内に最小限抑止に近い段階に到達することも不可能ではないであろう。

 地下化され分散された秘密の核、ミサイル関連生産工場や発射基地などを、先制空爆などにより一挙に破壊することは困難である。
 そのため、一度上記の技術的問題点を克服することができれば、北朝鮮の独裁体制が続く限り、最小限核抑止段階に達するのは時間の問題となる。
 その段階では、軍事力による核戦力の破壊は、確実な核報復を招くため、事実上不可能になる。

 北朝鮮指導部、特に金正恩委員長は、もし最小限抑止水準の核戦力の保有に成功すれば、米中露いずれの核大国の干渉も排除し、独立自尊の自立国家となれると確信しているのであろう。
 そうなれば、核恫喝を加えつつ北主導で平和裏に韓国を併合し、朝鮮半島を統一することも夢ではなくなる。

 その夢が実現する目前まで来ているこの段階で北朝鮮が、今さら自ら核・ミサイルの開発を放棄することは、ほぼあり得ないとみるべきであろう。
 金日成主席以来、何のために、数百万人の餓死者を出し、国際的な孤立、経済制裁と大国の干渉に苦しみながら、何度も瀬戸際政策の危機を乗り越えて、ここまで開発を進めてきたのか。
 それを考えれば3代目の金正恩委員長としては、核・ミサイル開発放棄はあり得ない決断であろう。

 むしろ、完成目前でいつ先制攻撃を受けて潰されるか分からない、これまででも最も危険な段階を、一刻も早く無事にやり過ごすことが、今や北朝鮮にとり至上命題になっている。
 そのために、休む間もなく核実験や各種のミサイルの発射試験を繰り返しているとみるべきであろう。
 もちろん、国内の記念日や国際的な外交交渉に合わせて試験を行い、その外交的効果を得ようとするかもしれないが、今ではそれらは副次的要因に過ぎない。
北朝鮮は今では、一刻も早いICBMの完成にすべてをかけていると言えよう。
 この段階までくれば、北朝鮮が経済制裁や外交交渉で核・ミサイルの開発放棄を強いられる可能性は、ほぼゼロに等しいと言わねばならない。

■:2 より高度なICBMを目指した可能性の高い「火星12」の打上げ

 5月15日の『朝鮮中央通信』は、前日14日に新型の地対地中長距離弾道ミサイル「火星12」の発射実験が実施され、高度2111.5キロまで上昇し、飛距離787キロを飛んで目標とする水域に着水し、「成功した」と報じている。
 さらに、「大型の重要な核弾頭の装着が可能」であり、実験によって「過酷な再突入環境でも核弾頭爆発システムの動作性を確認した」としている。
 この14日のミサイル発射はロフテッド軌道で行われた。
 この軌道では、真上に近く打ち上げて飛距離を出さず高度を上げて、大気圏再突入時の速度を加速させることができる。
 そのことから、北朝鮮が主張するように、大気圏再突入時に核弾頭が衝撃、熱などに耐えて機能を発揮するかテストしたとの見方もできる。
 また最大射程についても、4500キロ以上に達し、ムスダンでは十分には届かなかったとみられる北朝鮮の発射基地から約3500キロあるグアムも、確実に射程下に入るとみられている。

 このミサイルの細部の性能については、『38ノース』(1917年5月20日付)が弾道解析やコンピューターシミュレーションの結果に基づく分析結果を発表している。
 それによれば、弾頭の再突入時の信頼性については、高度2000キロ程度では再突入速度が弾頭の再突入時の信頼性をテストするには不十分であり、ロフトテッド軌道をとった主な目的は周辺国への影響を回避するためであろうとしている。
 火星12ミサイルの形状から、4月15日の「太陽節」の軍事パレードに初めて登場した「KN-17」とみられる。
 同ミサイルは、3段式ICBM「KN-08」を2段式にして小型化し、スカッドに由来する機動型再突入弾頭を搭載し、ムスダンに使われていた車両を使用した移動式ミサイルに最も類似している。
 ただし、長さは15メートル足らずで、本格的なICBMというには小型すぎる。

 また4月16日と同月29日に連続して発射試験に失敗しているが、ムスダンの移動用車両から発射されたためムスダンと誤認されたものであり、新型の火星12の発射試験であった可能性もある。
 それならば連続の失敗もあり得る。

 米メディアの一部には、空母を狙った対艦弾道ミサイルとの見方もあるが、再突入弾頭の信頼性も十分に実証できていない北朝鮮が、移動中の空母を攻撃できる弾道ミサイルを保有しているとは考えにくい。
 しかし、KN-17の弾頭部には4枚の誘導翼が装着されているといった兆候、核弾頭の威力半径を考慮すれば、将来、信頼できる誘導可能な核弾頭を搭載したKN-17改良型の地対艦弾道ミサイルが登場する可能性はある。

 注目されるロケット・エンジンについては、『38ノース』(同年5月19日付)は、KN-08の1段目に使用されたツィンエンジンではなく、ノドンの原型となった、ソ連製潜水艦発射弾道ミサイル「R-27(NATOコードSS-N-6)」のエンジンを4本束ねたものの改良型の域を出ておらず、酸化剤や推進薬も変わっていないと分析している。
 ただし、この分析結果については、後述する5月24日付の分析では、エンジンも推進薬も改良された可能性があるとみている。

 いずれの分析結果でも明確に言えるのは、火星12のエンジンではICBMにするには出力が不足していると指摘している点である。
 5月19日の分析では、火星12は飛距離を出すため、ロケット本体の構造体については無理に軽量化を図っている。
 その結果、移動式にすると燃料満タン状態では強度不足で変形するため、車輌移動式には使用できないとみている。

 問題は、火星12が創られた目的である。
 単にムスダンの射程を延伸しグアムを確実に攻撃するための新型IRBM(中距離弾道ミサイル)なのか、KN-08を2段式にし、そのエンジンや部品の性能を確認するための試験なのかにより、意義は大きく異なる。
 もしもKN-08系列の新型ICBM開発のステップとしての試験なら、今回の成功によりICBM完成に必要な技術が蓄積されていることになる。
『38ノース』(5月20日付)は総合的には、技術的に見て今回の火星12の成功は、ICBMに近づいてはいるものの、重大な進展とは言えないと評価している。

 ICBMの完成時期については、
 「米国の都市が明日にも、あるいは今年中にも危機にさらされることはありそうにもない。
 なぜなら、(ICBMとして)フルスケールの実験を行わねばならないからだ。
 今回の縮小したシステムによる発射試験は、その出発点に過ぎない」
と結論づけている。

 他方、最新の『38ノース』(5月24日付)では、より詳細な分析結果が示されている。
 エンジンについては、4基のバーニア(姿勢制御用補助エンジン)付きの単一ノズルのメインエンジンからなるとみられる。
 しかし、ムスダン系列のソ連製「R-27」の発展型でも、KN-08系列のR-27のツィンエンジンでもなく、新型の可能性もあるとしている。
 今年3月燃焼試験を行った新型エンジンを使用したのかもしれない。
 また、推進薬についても、抑制赤煙硝酸を酸化剤とし非対称ジメチルヒドラジン(UDMH)を組み合わせている可能性が高いが、ムスダン系列は酸化剤として四酸化窒素(NTO)を使用している。

 今回は、エンジンの火焔が画像処理され変色しているため、これまでと異なるより効率的なUDMH/NTOの組み合わせによる推進薬を使用しているか否かは判別できない。
 火星12は一般に2段式とみられているが、外見上、分離機構が確認できず1段式かもしれない。
 しかし、新しい内蔵型の分離機構が使用されているかもしれず、入手できた画像からは判別できない。
 もしも1段式とすれば、射距離が4500キロに達したことは驚くべきことである。
 1段式でこの射距離を持ったミサイルはソ連のR-17(SS-5)しかなく、R-17は80トンもあったが、火星12は20トン程度に過ぎない。
 この重量でこれだけ飛ばすには、新型のエンジンと大幅な構造物の軽量化に成功していなければならない。

 しかし例えそうであったとしても、火星12が公表された2111キロの最高点に達するには、再突入弾頭もからのまま飛ばさねばならなかったであろう。
 したがって、西側のレーダ追尾により確認された加速性能からみて、重い弾頭を搭載した、新しい分離機構を持つ2段式ミサイルとみるのが妥当であろうとしている。
 またこれらの新しいエンジン、構造体、分離機構などが搭載されたミサイルをグアム攻撃のみのために開発したとは考えにくい。
 新しいICBM開発計画の途上にある試験とみるべきである。

 新型エンジンの開発に成功すれば、北朝鮮は、R-27のツィンエンジンに替わり、より効率的で信頼性のあるエンジンが得られ、限られたソ連からの余剰供与品に頼らずに自力生産できるようになる。
 分離機構が改善されるだけでなく、ミサイルの構造そのものが改良されていれば、不整地でもミサイルの運搬が容易になるであろう。

 これらの利点は、新型のより強力で能力の高いICBMの出現をもたらすであろう。
 しかし、逆に新型完成にはミサイル全体の再設計が必要なことも意味しており、火星12の試験が完了しなければ新型のICBMの最終的な設計は完成しないことになる。
 その意味では、新型ICBMが来年中にも実戦配備される可能性は低い。
 今回の火星12の成功により1年程度は早まったかもしれないが、それでも2020年よりも前に新型ICBMが作戦可能になることは、ありそうにもない。

 以上が5月24日付の分析の要旨である。
 北朝鮮の現段階でのICBM保有時期に関する妥当な見通しと言え、5月20日付の分析結果と一致している。

 以上の評価は、科学的かつ客観的なデータ分析に基づくものであり、信頼がおけるであろう。
 火星12の射程について、5月22日の『朝鮮中央通信』はハワイやアラスカも射程に収められると主張しているが、エンジン出力からみてもまだグアム程度までしか有効に攻撃できないレベルではないかとみられる。
 またその攻撃目的は、ムスダンの射程を延伸し確実にグアムを攻撃できるIRBMとすることなのか、3段式ICBMの一部をテストしたのかは、現段階では明確に判断できる直接的根拠はない。
 しかし、5月24日付の分析結果からみれば、後者の可能性が高いとみられる。

 いずれにしても北朝鮮は、今後もICBMの技術的な完成を目指し、各種のミサイル発射試験を繰り返すであろう。
 特に、新たな大型ロケット・エンジンが搭載されたミサイルの発射試験に成功した時がICBM完成の大きなステップとなるであろう。

■:3 即応性、残存性が向上し全土から攻撃可能になった「北極星2」

 『朝鮮中央通信』は5月22日、中距離弾道ミサイル「北極星2」の実戦配備に向けた最終発射実験に「成功」したと報じた。
 21日夕に内陸部の北倉(プクチャン)から発射されたミサイルは約500キロ飛行し、日本海に落下した。
 実験に立ち会った金正恩委員長は、北極星2の実戦配備を承認し、量産化を指示した。

 朝鮮中央通信によると、北極星2は、キャタピラー式の移動発射台から空中に射出後にエンジンに点火する「コールドローンチ」方式を採用。
 固体燃料エンジンなどの信頼性に加え、弾頭部に搭載したカメラの映像で姿勢制御の正確さも実証されたと強調した。
 金正恩委員長は、
 「命中精度は極めて正確で、完全に成功した戦略兵器だ。百点満点だ」
と北極星2を評価し、「核戦力の多様化と高度化をさらに進めるべきだ」と述べたという(『産経新聞』平成29年5月23日)。

 北極星2の発射成功については、『38ノース』(1917年4月25日付)も、朝鮮中央通信の報道内容を認め、
 以下のように高くその意義を評価している。
 北極星2はSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の北極星1の技術を地上発射型に使用したものであり、固体燃料を使用していることから、発射までの準備時間が短縮され、先制攻撃や発見のリスクが大幅に下がり、より安全なところで準備できるため、残存性と即応性が向上した。
 また固体燃料は、取り扱いと維持整備が容易で、構造も単純である。飛距離も伸ばすことができる。
 さらに戦車のシャーシを改造したキャタピラー式の移動車輌に搭載されているため、装輪車に比べて路外の各種地形を踏破して展開できるようになった。

 今回の北倉も湖に近い土質の悪い内陸地である。
 北朝鮮は、ほぼ全土に移動し、そこから迅速に北極星2を発射できる能力を持つようになった。
 運用がより柔軟にできるようになり、山岳地など広域に分散配置でき、発見、制圧がより困難になったと言える。

 コールドローンチ方式であるため、圧縮ガス以外の発射薬などの量が減り、発射用キャニスターは小型になり、より狭いところから発射できるようになった。
 また起立式発射台を噴煙で破損するおそれが少なく、迅速な再装填と連続発射ができる。空中で点火するためミサイルが爆発事故を起こしても被害は少ない。

 ミサイルの軌道はロフテッド軌道であった。
 意図的に弾頭重量を1.6~1.7トンに加重し、1000キロを超える高度まで打ち上げ、約550キロの近くに落下させている。
 弾頭重量がこれまでより増加したことは、搭載する核弾頭の出力が増大することを意味する。
 最大射程で発射すれば、射程は2300キロ~2500キロに達すると見積もられる。

 ロフテッド軌道の場合、再突入速度が速くなり、ミサイル防衛システムによる迎撃はより困難になる。
 再突入弾頭の試験とともに、ミサイル防衛システム突破能力の誇示という狙いもあるのかもしれない。

 火星12と北極星2の発射試験成功は、北朝鮮がこれまで主流だった液体燃料方式以外に、固体燃料方式の北極星系列の弾道ミサイルの開発も並行して行っていることを示している。
 金委員長の言う「核戦力の多様化と高度化」を目指していると言えよう。

 この一連の2回の発射試験の成功は、金正恩独裁下で北朝鮮が国力を挙げて、「最小限核抑止」態勢を目指してきた成果を誇示したものとして、極めて注目される。
 4月の軍事パレードでは、2種類の北極星3・ICBMが登場した。
 『38ノース』は、トラック搭載型は、直径が1.9メートルあり、KN-14の諸元から、最大射距離は、重さ550キロの弾頭で1万2200キロ、重さ750キロの弾頭で1万300キロに達し、いずれも米本土に到達可能と推定している。

 今後、北朝鮮は液体燃料式をすべて固体燃料式に替えるかもしれない。
 その場合、まずスカッドとノドンが固体燃料式になるであろう。
 現在はどちらも従来からの液体燃料を使用し、配備数は計800基以上とみられる。

 これらが固体燃料式になった場合
★.特にノドンと改良型スカッドは日本を標的
としており、即応性、残存性が向上し日本に対する脅威度はさらに増大する。
 なお、固体燃料式への換装は徐々に進むが、1対1方式ではないとみられている。

 さらに、ムスダンの固体燃料方式の北極星2への換装も進むかもしれない。
 ICBMについては、固体燃料式で発射試験に成功し、移動化され信頼性も確保できれば、将来固体燃料式になるかもしれない。

 北朝鮮は以上から、北極星系列の固体燃料方式を、液体燃料方式と併行してここ10年来開発しており、液体燃料方式にもスカッド、ノドン、テポドン系列と、ムスダン、KN-08/14ICBM系列の2系列がある。
 「多様化」は金正日時代から組織的計画的に進められてきたとみるべきであり、その成果がこの段階で集約的に現れ、加速していると言える。

 各技術局にそれぞれの成果を競わせ、開発進度を上げるとともに、多様化を進めリスク分散を図っているともいえる。
 膨大なコストを要するが、最短の時間でICBMを完成するためには、最善の開発方式かもしれない。

■:4 米国の核抑止態勢の綻びを突く北朝鮮のICBM開発

 北朝鮮が米本土に届くICBM開発を急ぐ理由は、米国にとり今が最後の北のICBM保有阻止の機会であるということにある。
 米国が2010年に公表した『ミサイル防衛システム態勢報告』では、米国のミサイル防衛システムは北朝鮮やイランなどの局地的な脅威に対処するためのものであり、
 100発以上のミサイルを発射できるロシアや中国のミサイルに対処するためのものではなく、戦略的安定性を損なうものではないと述べている。
 このように、100発前後の飽和攻撃には米国のミサイル防衛システムは対応できないことを、自ら明確にしている。

 また、現在のイージス艦のミサイル防衛システムのスタンダード・ミサイル「Block1」は直径が13インチしかなく、音速の約20倍で大気圏に再突入してくるICBM弾頭を迎撃することができない。
 ミサイルの出力不足で迎撃高度が低く、対処の時間を得られないためである。
 この欠点を克服するため日米共同で開発が進められているのが、直径21インチで出力が増大し、より高速で高い迎撃高度が得られる「Block2A」である。
 Block2Aの改良型の「Block2B」が配備されればICBMは撃墜できるとみられているが、配備予定の2021年頃までは、ICBMを米国と日韓などの同盟国が展開中のミサイル防衛システムでは撃墜できない。

 なおロシアも同様のミサイル防衛システムを開発配備しているが、最先端の「S-400シリーズ」でも最大音速の14~15倍の再突入弾頭までしかまだ迎撃できないとみられている。
 最新型のS-500はICBMの撃墜を目指しているとされるが、まだ開発途上とみられる。

 これまでのミサイルでミサイルを撃墜する防衛システムに替わる次世代のミサイル防衛システムとして期待されているのが、レールガン、マイクロウェーブ兵器、高出力レーザー兵器などの指向性エネルギー兵器である。

 ただし、ICBMを撃墜できるまでに達するには、レールガンで5年から10年、マイクロウェーブ兵器で5年はかかるとみられている。
 高出力レーザーは大気中で減衰するため、より低速の弾道ミサイル迎撃用などに限られICBM撃墜は今後も困難とみられている。
 このため、北朝鮮が米本土に届くICBMを2021年よりも前に開発配備すれば、Block2Bが配備されるまでの間は、北のICBM攻撃に対し米本土の対ミサイル防衛は困難になる。

 もちろん、北朝鮮が万一核兵器を使用すれば、7000発以上の核弾頭で1億人の損害を与えることのできる米国の核戦力により、
 そのうちの1000発でも使用して報復すれば、北朝鮮の国家体制を破壊することは可能である。

 しかし、その場合の中露の対応を考慮すれば、米大統領として簡単に核報復を決心できる状況ではない。
 戦略核兵器の米中露間のバランスについても、大きな問題がある。
 米国は1992年以降核実験を自粛しており、核関連インフラの劣化が進み深刻な問題になっている。
核弾頭は年々劣化が進み、20年程度で信頼性に問題が生じてくる。
 しかし米国の現用弾頭は既に29年を経過するなど、深刻な劣化が進行している。
 また、核兵器関連の生産・実験施設も老朽化し人材も枯渇している。

 この問題はジョージ・W・ブッシュ政権時代から深刻化していたが、抜本策はまだ出されていない。
 現用の核弾頭を代替でき信頼できる新型核弾頭はまだ確定していない。

 さらに、戦略核兵器の運搬システムについても、3本柱をなす「B-52H戦略爆撃機」、「ミニットマン3型ICBM」、「オハイオ級SSBN」とも、冷戦期のものが主であり老朽化が進んでいる。

 他方で、中露は精力的に戦略核兵器の更新近代化を進めており、米国との格差は縮まっている。
 ロシアは2000~5000発保有している戦術核弾頭の効率化、小型化を進め、「ボレイ級SSBN」に「スラバ級SLBM」を搭載配備し、「SS-29Mod2」という10~6発の150KTの核弾頭を搭載できる移動式固体燃料ICBMを開発している。
 その射程は1万8000キロに達しロシア全域から米本土を攻撃できる。

 中国も、移動式重IBMの開発、複数弾頭個別誘導式核弾頭を搭載した新型ICBMの配備、核・非核両用の中距離弾道ミサイルの開発配備、ロシアからのS-400の導入などを進めている。

 米国のドナルド・トランプ政権は、核戦力劣化の危機を克服するため、核兵器関連予算を増額し、戦略核弾頭と運搬システムの改良に取り組むことを核政策の方針としている。
 しかし、新型の戦略核戦力システムが実戦配備されるのは2020年代の後半になると予想されている。
 それまでの間は、中露の追い上げが強まり、米国の戦略核抑止態勢は現在よりもより信頼性が低下するであろう。

 このような全般状況下で、北朝鮮のICBMの配備が迫っている。
 北朝鮮は、少なくとも2020年代前半までは続く、米本土の核抑止力と同盟国に対する米国の拡大核抑止力低下のすきをついて、対米最小限核抑止態勢の確立を急いでいるとみられる。

 最終的には、ICBMの完成、対米最小限核抑止態勢確立を背景に、北朝鮮に融和的な文在寅(ムンジェイン)政権の間に、韓国に核恫喝をかけ、在韓米軍の撤退と平和裏の韓国併合をのませることを目論んでいるのではなかろうか。

 北朝鮮のICBM保有は、単に米国本土にとり直接的脅威となるだけではなく、米国の北東アジアにおける覇権の喪失、世界的な威信と拡大抑止に対する信頼性の低下にもつながりかねない。

 バラク・オバマ大統領からトランプ大統領への申し送り事項の中で、当面の最大の脅威が北朝鮮であることが伝えられたと報じられている。
 「戦略的忍耐」を対北朝鮮政策の基本方針としていたオバマ政権も、その末期には北朝鮮を最大の脅威とみていた。
 5月13日に、コーツ米国家情報長官は、北朝鮮は「非常に重大な脅威で、潜在的に米国の存続を脅かしている」と指摘し、
 北朝鮮の公的見解からみて、「今年中に初のICBMの発射実験を実施する態勢ができている」との分析を明らかにしている。

 目下のところ、空母カールビンソンに加え空母ドナルドレーガンも加わり、北朝鮮に対する米国の軍事的圧力は強まっている。
 さらなる経済制裁強化、外交的対策をとる余地はまだ残されているが、中露両国の確実な協力が得らない限り実効性に乏しいであろう。

 トランプ政権は軍事的選択肢も含めあらゆる手段を動員し、北朝鮮がICBMを完成させる前に、核・ミサイル開発を阻止しなければならない瀬戸際に立たされている。
 ジェームズ・マティス米国防長官は、5月19日の記者会見で北朝鮮の核・ミサイル開発問題の軍事的な解決は「信じられないほど大規模な惨劇をもたらす」とし、外交的な解決を目指すべきだとしている。

 しかし、トランプ政権が最終的には、巨大なリスクを取ってでも、何らかの軍事的選択肢を実行せざるをえない方向に、全般情勢は向かっている。

■:5 米国以上に深刻な脅威に直面している日本

 ICBMは米大陸の直接的脅威になるが、北極星1・2は日本にとりさらに重大な脅威となる。
 その射程は日本全土をカバーしている。
 核・化学・生物兵器や分離子弾を充填した通常弾頭など、破壊力のある弾頭を装備するであろう。

 問題は今後の配備の時期と速度である。
 北極星系列のミサイルは、ロシアから密かに供与された可能性が高い。
 ロシアは近年、北朝鮮に対する軍事支援を積極的に展開
しており、その兆候がいくつかある。

(1):GPSの使用はミサイルの精度を高めるため死活的に重要だが、ロシアのGPSグロノスを北朝鮮が使用しているとみられる。

(2):SLBM北極星1の発射試験で使用したバージ(平底船)は、2014年に新浦南造船所で初めて確認され、その後4回~6回、北極星1の発射試験に使用された。
 このバージの大きさと外見はロシアのPSK-4・SLBM発射試験用標準型バージと同一である。
 また、このバージは、北朝鮮で建設されていた証拠はなく、突然出現しており、ロシアから輸入した可能性が高い(『38ノース』2017年5月1日)。

(3):北極星2の戦車から転用したキャタピラー付垂直起立式の移動発射台のシャーシは、北朝鮮により設計、製造されたものとみられるが、その原型はソ連製のSS-14システムと類似している(同上)。

 以上の兆候は、ロシアが、ウクライナで反政府暴動が激化し親露派のビクトル・ヤヌコービッチ大統領が国外に逃亡するという騒乱が起こった2014年頃から、北朝鮮に対し本格的な軍事援助に乗り出した可能性を示唆している。

 現在の対北制裁についても、ロシアは国連での北朝鮮に対する経済制裁強化の決議にもかかわらず、5月17日には万景峰号のウラジオストクとの定期航路を開き、ロシア人旅行者の北朝鮮旅行を認め、羅先地区と極東ロシアの間で経済共同開発を進めるなど、北朝鮮を意図的に支援する政策をとっている。
 また世界で約30万件の被害を出した大規模サイバー攻撃について、米ソフトウェア会社のシマンテックは、5月22日、北朝鮮が関与している可能性が高いとする報告書を発表している。
 ロシアも米国やフランスの大統領選挙にサイバー攻撃をかけたとの疑いがもたれているが、サイバー攻撃についても、確証はないが、朝露両国が何らかの連携をしている可能性は否定できない。

 このようにロシアが北朝鮮を支援する理由として、ウクライナ情勢で高まった米軍の軍事的圧力を、北朝鮮をたきつけることで北東アジアに拘束しようとする意図があるとみられる。
 また北の核ミサイルは欧州ロシアにとり脅威にはならず、経済制裁に苦しむロシアにとり、北朝鮮の資源と労働力を極東開発に活用できるメリットの方が大きいであろう。

 対北貿易の9割を独占している中国にとっても、北朝鮮の核化阻止よりも米韓に対する緩衝国として北朝鮮を維持する戦略的利益が大きく、北の体制崩壊を招くような全面制裁は行わないとみられる。
 今後とも、中露の対北支援は続くとみるべきであろう。

 北極星1・2のミサイルだけではなく、製造プラント1式もともにロシアから供与されていれば、金正恩委員長が指示した量産化が予想よりも早く進むかもしれない。
 もし量産体制に入り、配備が進めば、日本に対する北朝鮮の核脅威は中露並みの水準になるおそれがある。
ノドン、スカッド改良型に加え北極星1・2が大量に配備され、
 同時100発以上のミサイルで集中・連続攻撃できるようになれば、
 日米のミサイル防衛システムの対処能力を超えるおそれがある。

 SLBMの北極星1は、海中からいつでもどこからでも発射できる。
 そのため、日米のミサイル防衛システムの迎撃可能な範囲外から奇襲的に発射できるため、発射後のミサイル撃墜は困難であろう。
 対潜作戦がますます重要になるが、黄海側や北朝鮮の領海付近から撃たれた場合、発射前の発見、制圧は困難ではないかとみられる。

 北極星2も北朝鮮全土から迅速に射撃可能で、事前の発見、制圧は容易ではない。
 大気圏再突入速度もノドンよりも早く、それだけミサイル防衛システムによる迎撃確率は低下する。
 飽和攻撃があれば撃ち漏らしが出る可能性は高い。

1発でも都市部に着弾すれば、
 核なら数十万人~数百万人、
 化学生物兵器でも数万人規模の被害
が出るとみられる。
 核爆発時の電磁パルスにより電子部品は機能麻痺し、
 各種のインフラが破壊されるであろう。
 サイバー攻撃や特殊部隊の攻撃も同時並行的に行われるとみられる。

 このような事態は早ければ数年以内に来るかもしれない。
 この時期には、米国の拡大核抑止力も低下している。
 中露が北朝鮮の後ろ盾になる可能性は高い。
 日本は北朝鮮の弾道ミサイルの飽和攻撃などに自ら対処しなければならなくなるであろう。

 日米韓の連携は引き続き重要である。
 しかし、他国依存ではすまされない危機に日本は直面している。

 日本は、独自の核抑止力を保有するとともに、新型ミサイル防衛システム、特にBlock2Bと指向性エネルギー兵器の開発配備を急がねばならない。
 また国民自らが自らを守るための民間防衛の態勢を、対核・化学・生物兵器用シェルターを含め、早急に整備しなければならない。



日本テレビ系(NNN) 5/30(火) 2:05配信
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20170530-00000006-nnn-int

トランプ氏「中国に対して無礼」北ミサイル



 北朝鮮が29日に発射した弾道ミサイルについて、アメリカのトランプ大統領がツイッター上に、「中国に対して非常に無礼だ」などと記した。

 トランプ大統領は日本時間29日午後9時過ぎにツイッターを更新し、29日の北朝鮮による弾道ミサイル発射について、初めてコメントした
 その中で、
 「北朝鮮はまたも弾道ミサイルを発射して、隣国である中国に対し、非常に無礼なことをしている。
 それでも中国はがんばっている!」
と記した。
 中国を称賛する形で、北朝鮮への圧力強化に改めて期待を示したもの。

 一方、その中国外務省は29日、NNNの取材に答え、弾道ミサイルの発射を非難した。
 また、「各国が冷静さを保ち、対話の道を歩むよう望む」として、圧力を強めるアメリカなどをけん制した。



日本テレビ系(NNN) 5/29(月) 17:35配信
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20170529-00000076-nnn-int

中国“対話を重視”北に不満も慎重に対応か

 29日朝、北朝鮮が弾道ミサイルを発射したことを中国はどうとらえているのか。

 政府の公式反応はないが中国としては、度重なるミサイル発射について苦々しい思いがありつつも過敏に反応はしないとみられる。
 というのも、中国は、今の朝鮮半島情勢について緊張状態が続く一方で、米朝の非公式協議が行われ対話ムードが生まれる可能性もある流動的な局面だととらえている。

 そのなかで中国は、アメリカのティラーソン国務長官による「北朝鮮が非核化に踏み出せば体制変更などは求めない」などとする対話の条件を重視している。

 26日のロシアの外相との会談でも王毅外相が「アメリカがこれを具体化するよう望む」と述べるなど、中国は今、対話ムードを作るべく各方面への働きかけを強めている。

 一部の中国共産党系メディアでも、米中がレッドラインとする核実験と長距離弾道ミサイルの発射を北朝鮮が控えていることをポジティブな兆候ととらえる論説をのせるなど、緊張緩和への期待感を示している。

 こうしたことから中国は、今回のような短距離弾道ミサイルとみられる挑発には過剰に反応せず、29日に日本を訪れた外交トップの楊潔チ国務委員も各方面に自制を求める対話重視の立場を改めて日本側に伝えるとみられる。

 ★楊潔チ氏の「チ」は、竹かんむりの下にがんだれと「虎」

北朝鮮ミサイル 次から次へ(1):改憲に手を貸す金正恩

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 日本は北朝鮮のミサイルの傘の下にあることが明白になりつつある。
 まさに「いま、そこにある危機」の様相を呈している。
 「暴力はいけません、軍隊はいけません、会話が第一です」
なんてエセ平和主義的な悠長なことは言っていられなくなっている状況にあると国民のほぼ全員が理解していることであろう。
 自分のことは自分で守る
という自然法則に則って行動するしかないということなのだろう。 


●ANNニュース


ブルームバーグ 2017年5月29日 07:37 JST
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-05-28/OQOPAA6S972801

北朝鮮が弾道ミサイル発射、
日本のEEZに落下のもよう-菅官房長官

 菅義偉官房長官は29日、北朝鮮が午前5時40分ごろ東岸から弾道ミサイルを発射して日本海の排他的経済水域(EEZ)内に落下したとみられる、と緊急記者会見で明らかにした。
 政府は北朝鮮に最も強い表現で非難した。
 
 現時点では航空機や船舶などへの被害の情報は確認されていないが、政府は官邸危機管理センターの官邸対策室で情報収集、さらに緊急参集チーム招集して対応について協議している。
 安倍晋三首相に報告、情報収集・分析と国民への情報提供、航空機や船舶の安全確認、不測の事態に備え万全の体制を取るようにとの指示を受けたと菅官房長官は述べた。
  その上で菅官房長官は、北朝鮮の弾道ミサイル発射について
 「航空機・船舶への安全確保の観点から極めて問題のある行為で安保理決議への明白な違反。わが国としては北朝鮮の度重なる挑発行為を断じて許すことができない」
として
 「厳重に抗議を行い、最も強い表現で非難した」
とも語った。



ロイター  2017年 05月 29日 08:01 JST
http://jp.reuters.com/article/northkorea-suga-idJPKBN18O0RK

北朝鮮が弾道ミサイル、450キロ飛び日本のEEZに落下

[東京/ソウル 29日 ロイター] -
 日韓両政府は29日朝、北朝鮮が弾道ミサイル1発を同国東岸から発射したと発表した。
 ミサイルは約450キロ飛び、日本の排他的経済水域(EEZ)内の日本海に落下したとみられる。
 北朝鮮問題を議論した先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が終了したばかりのタイミングだった。

 弾道ミサイルは午前5時40分ごろ、北朝鮮東岸の元山付近から発射された。
 韓国軍は短距離の「スカッド」の可能性があると推定している。
 米軍によると、ミサイルは約6分飛行。
 日本政府は、自国のEEZ内に落下したとみている。

 安倍晋三首相は官邸で記者団に対し、
 「国際社会の度重なる警告を無視して挑発を続けていることは断じて許すことはできない。先のG7で合意した通り、北朝鮮の問題は国際社会の最優先事項」
と発言。
 その上で、
 「北朝鮮を抑止するため、米国とともに具体的な行動を取って行く」
と語った。
 日本政府は北朝鮮に厳重に抗議した。

 ここ最近の北朝鮮は、1週間に1度のペースで弾道ミサイルを発射。
 14日の中距離弾は初めて高度2000キロ超に到達、21日には固体燃料を使った別の中距離弾を移動式発射台から発射した。



東京新聞 2017年5月29日 朝刊
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/list/201705/CK2017052902000106.html

自民の改憲論ブレーキ役 
「宏池会」創設60年  ハト派正念場

 自民党派閥「宏池会」(岸田派)が二十八日、創設六十年記念式典を広島市で開いた。
 軽武装・経済重視の吉田茂元首相の系譜を受け継ぎ、党内の改憲論を抑えてきたが、党総裁の安倍晋三首相が九条への自衛隊明記などの改憲案を主張。
 二〇二〇年施行に向けた党内論議も始まり、ハト派の名門派閥は正念場を迎えている。

 式典は、広島市中央公園に立つ宏池会創立者、池田勇人元首相の銅像前で開催。所属議員を前に、会長の岸田文雄外相は「先輩方の業績の基礎に立って、未来に向け何をすべきか。役割を果たすために思いを一つにしたい」と語った。
 岸田氏は式典後、記者団に、改憲について「(衆参両院の)憲法審査会で各党が議論を深めていくのが議論の進め方だ」と、国会での各党派による議論を重視する考えを強調した。
 宏池会は一九五七(昭和三十二)年に創設。
 日米関係を経済面から強め、アジア諸国との関係を重視した。
 六〇年に首相に就任した池田氏は、所得倍増計画を掲げ、改憲より経済成長を優先した。
 前政権の岸信介首相時代に発足した内閣憲法調査会も同年の最終報告書で改憲は打ち出さなかった。
 こうした歴史を踏まえ、岸田氏は安全保障関連法成立後の二〇一五年十月に
 「宏池会の憲法に対する愛着、思いは独特なものがある。
 当面、九条改正は考えない」
と発言。
 今年の憲法記念日に安倍首相が九条改憲に触れた後も「考え方は変わっていない」と話した。
 ただ、党憲法改正推進本部が二十四日から党改憲案作成に向けた議論を始め、首相は年内にその案を示す方針。
 宏池会が今後も改憲のブレーキ役を果たせるかは見通せない。
 宏池会から
 「自衛隊を書き込む方向に見直すことも考えられる。
 宏池会は憲法で勝負するより社会保障や人づくりが特色だ」
との声も出ている。 




●NNNニュース



毎日新聞 5/29(月) 8:53配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170529-00000012-mai-int

菅長官「隠岐諸島から約300キロに落下」

 北朝鮮のミサイル発射を受け、菅義偉官房長官は29日午前8時半すぎから同日2度目の会見を行い、
 「(ミサイルは)約400キロ飛行し、
 新潟県佐渡島から約500キロ、
 島根県隠岐諸島から約300キロの日本海上に落下した」
との分析を明らかにした。

 また安倍晋三首相が言及した今後、米国と行う具体的行動について
 「対話のための対話でなく圧力をかけることが必要だ。
 中国の役割も重要になる」
と述べた。



中日新聞 2017年(平成29年)5月30日(火)
http://www.chunichi.co.jp/article/front/list/CK2017053002000068.html

北朝鮮、ミサイル3週連続発射 日本の経済水域に




 【ソウル=上野実輝彦】韓国軍合同参謀本部は二十九日、北朝鮮が同日午前五時四十分ごろ、東部沿岸の元山(ウォンサン)付近から東に向け、短距離弾道ミサイル「スカッド」系列とみられるミサイル一発を発射したと発表した。
 米本土に達する大陸間弾道ミサイル(ICBM)につながる技術試験との見方もあり、合同参謀本部は分析を進め、警戒を強めている。
 弾道ミサイル発射は三週連続、今年九回目。

 合同参謀本部はミサイルが高度百二十キロ、飛距離は約四百五十キロに達し、新潟県・佐渡島から約五百キロ、島根県・隠岐諸島から約三百キロ離れた日本の排他的経済水域(EEZ)に落下したと公表した。
 韓国政府内では射程五百キロの「スカッドC」級との分析が出ている。

 北朝鮮は三月、「スカッドER」(射程千キロ)を四発同時に発射し、うち三発を日本のEEZ内に落下させた。
 北朝鮮のスカッドミサイル技術はほぼ確立されているとの見方が強い。
 にもかかわらず、再び同系統のミサイル発射実験を実施したのは「ICBMの一段目のエンジンの安定性確保が目的だった」(金東葉(キムドンヨプ)・慶南(キョンナム)大極東問題研究所教授)との可能性が指摘されている。
 北朝鮮のICBMである「KN08」の開発初期段階では、スカッドの複数のエンジンをまとめて利用したとされていた。

 北朝鮮には、文在寅(ムンジェイン)大統領就任後に対話と圧力で揺れる韓国世論にくさびを打ち込む狙いがある。
 先進七カ国首脳会議で採択された首脳宣言に「最も強い言葉で非難」などの文言が盛りこまれたことへの抗議の意味合いもある。

 韓国外務省は二十九日、「国際社会の平和と安定に対する深刻な脅威だ」との声明を発表し、北朝鮮を批判。半面、統一省報道官は二十九日の記者会見で「国際社会の制裁の枠組みを逸脱しない範囲で(南北の)民間交流を進める」と述べた。

中国富裕層「投資移民」10万人:大半が英語圏へ

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Record china配信日時:2017年5月28日(日) 20時40分
http://www.recordchina.co.jp/b179520-s0-c30.html

中国の金持ち、過去10年で10万人が海外へ移民
=利益を得ている5カ国は…―仏メディア

 2017年5月27日、ラジオ・フランス・アンテルナショナル(RFI)によると、海外に移民する中国の富裕層が近年増加している。

 AP通信が過去10年間における中国人の海外投資に関する調査を行ったところ、10万人が海外に投資移民しており、最も多い移民先は米国だということがわかった。
 フランスは投資移民に必要な額やハードルが一番高いという。

 中国メディアはAP通信のニュースを引用し、豊かになった中国人にとって、
 「投資移民」という言葉は身近なものになりつつあるとし、
 子どもの教育や、国内の環境問題、生活の質などへの懸念から、
 欧米先進国の永住ビザの需要は高い水準が続いている
と伝えた。

 しかし、世界的に移民政策は引き締めに向かっている
 技術移民などは難しくなり、投資移民はお金がある人にとっては手早く永住ビザを取得できる手段になっている。

 10年間で中国人が永住ビザを取得するのに支払った額は少なくとも240億ドル(約2兆7000億円)にのぼり、
 米国をはじめ、豪州やカナダ、英国、ニュージーランドの5カ国
は多額の利益を得ていると、記事は伝えている。

2017年5月28日日曜日

中国の権力闘争(1):習近平氏の腹心、異例スピード昇進、蔡氏が北京トップに昇格へ

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● フジテレビ系(FNN) 5/28(日) 19:08配信


Wedge 2017年5月26日 山口亮子 (ジャーナリスト)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9722

過熱する中国の権力闘争、
海外メディアを巻き込んだ情報戦へ
政商・郭文貴がVOAで暴露

 一大政治イベント十九大(次期最高指導部の決まる共産党大会)を半年後に控え、権力闘争が過熱する中国。
 その過熱ぶりは海外メディアを巻き込んでの情報戦に発展している。台風の目になっているのは、汚職の嫌疑をかけられ米国に亡命中の実業家・郭文貴氏だ。

■政商の「核爆弾級」暴露

 郭氏は米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に4月19日に出演(https://www.voachinese.com/a/issues-and-opinions-20170419/3816655.html)。
 「核爆弾級の暴露」として、習近平国家主席と同じ「太子党」で党内の実質ナンバー2ともされる王岐山(党中央規律検査委員会書記)の親族の腐敗ぶりについて証言した。
 加えて、公安省の現役次官から指示されて海外の王氏の親族の資産について調査したと証言。
 その調査に習氏の意向が働いている可能性にも言及した。

 反腐敗運動を取り仕切る王氏に関する汚職疑惑、しかも盟友のはずの習氏との間の対立まで暗示する内容とあって大騒ぎになっている。
 68歳の王氏は慣例からすると引退のはずだが、太子党の勢力維持のために党大会では慣例を破って要職に就くのではという予測もある。
 ただ、郭氏による暴露はそれをひっくり返しかねない内容だ。

 しかも、3時間のはずの番組が1時間ほどで理由を明かさないまま急きょ打ち切り。
 前日の18日には中国の要請を受けた国際刑事警察機構(ICPO)が郭氏を指名手配していることも考え合わせると、中国政府が郭氏に対してかなり本気の対応をしていると見受けられることから、証言の信ぴょう性が高いのではと見る向きもある。

 郭氏は北京オリンピック開催前の開発事業を手掛け、大富豪になった。
 政商として暗躍するも、関係の深かった国家安全副部長の馬建(2015年に失脚)に対する贈賄が罪に問われるとみて14年に国外逃亡している。
 疑惑にまみれた人物による暴露の意味はいったい何なのか。
 憶測が憶測を呼ぶ状況下でのメディアの報道ぶりを紹介したい。

 中国大陸のメディアでは、当然ながらVOAのインタビューの内容は報じられていない。
 ただ、4月18日を境に郭氏に関する報道は激増。
 ネガティブキャンペーン一色になっている。

■大陸メディアは郭氏の人格否定

 まずはCCTV、人民日報などが中国外交部の報道官が記者会見で話した内容に基づき、ICPOが郭氏を国際指名手配したと報道。
 その後は、郭氏の部下に対する強姦疑惑、周永康の腹心で河北省の政法委員会書記の張越氏(2016年に失脚)に女性をあてがった話、河北の「法政王」とも呼ばれた張越氏にいかに高圧的な態度をとっていたかなどが報じられている。
 いずれも郭氏の非道ぶりを伝え、人格を否定する内容だ。
 ところで、郭氏はこのタイミングでなぜ王氏に関わる暴露話を、VOAでの生放送という非常に目を引く形でしたのか。
 さすがに大陸のメディアではこの辺の解説はしてくれないため、華字メディアの報道ぶりを紹介したい。

 香港の東方報業集団(オリエンタル・プレス・グループ)のニュースサイト「東網」は4月30日、
 「習、王、孟は郭文貴の国内の後ろ盾を厳しく処罰するとの共通認識に達した」
と報道した。

 「郭文貴の中国共産党の十九大の前に『生きながらえ、財産を保ち、報復する』ための暴露行動には複雑な政治背景があり、画策している主要人物は郭文貴の国内の後ろ盾であり、目的は十九大の権力闘争だけでなく、さらに反腐敗運動の攻撃から逃れるためだと北京の上層部は確認した。
 習近平と王岐山、孟建柱(党中央政法委員会書記。郭氏は、王氏と共に孟氏の腐敗ぶりについても調査するよう命じられたとしている)はこの計画を完全に掌握し、決して妥協せず、郭文貴の国内の後ろ盾を厳しく懲罰することで一致した」
としている。

 報道によると、政府中央は郭氏の後ろ盾のリストと、郭氏が彼らに利益を供与した状況を完全に掌握しているという。
 「王岐山は最近の内部の会議上で、中央は郭文貴の問題で、郭文貴から利益を得た『虎(大物)とハエ(小物)』を法により厳しく処罰するということで一致したと明らかにしている」
という。

 また、北京の政治ウォッチャーの話として、「中央はもはや郭の海外での暴露を心配してはおらず、重点を国内の後ろ盾の調査に置いている」と紹介。
 「これは中国共産党が次の策として強硬戦術をとり、郭文貴に対する全面的な反撃を強化し、郭の行為を阻む様々な措置を取るということを意味している」
と記事を結んでいる。

■曽慶紅と王岐山の代理戦争か

 郭の後ろ盾は誰なのか。
 米国に本部を置く法輪功系のメディア「大紀元」は5月20日、
 「北京は郭文貴の『老指導者』に十九大前後に手を付けると決めた」
という記事で、曽慶紅だと指摘した。

 曽氏は江沢民系の上海閥を代表する人物で、太子党の有力者でもある。
 強い権力を持つ曽氏の排除に習氏が乗り出すと、大紀元は前々から報じており、3月にはついに曽氏の追い落としに着手したと報道していた。
 20日の記事では、中国通の学者の発言を引用する形で、
 「郭の背後にいる老指導者は曽慶紅で、十九大前後に大『虎』が失脚するとすれば、曽慶紅が最初だ」
としている。

 ところで大陸のメディアで、郭氏の腐敗ぶりを最も激しく追及しているのが財新だ。
 「郭文貴はいかに民族証券を買ったのか 
 馬建と張越との結託の内幕を暴露」(4月20日)、
「郭文貴アメリカで提訴される 9年前の負債、元利はすでに8800万ドル」(4月25日)、
「郭文貴の海外資金はどこから来たのか ブレア元英首相がかかわっていた」(5月25日)
といった報道を続けている。

 財新を率いる女性編集長の胡舒立氏について、郭氏は過去に汚職で有罪判決を受けた北京大学方正集団の李友CEOの愛人だと発言。
 ケンカを売られていただけに反撃に出ているという面もあるが、そもそも財新の胡氏の背後には王岐山氏がいる。
 郭氏のバックが曽氏で、胡氏のバックが王氏だとすれば、メディアを使った郭・胡両氏の戦いは、曽・王両氏の代理戦争といえるだろう。



英エコノミスト誌 2017年5月20日号 2017.5.26(金)  The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50107

中国共産党大会への布石
:一帯一路にご満悦の習主席

 中国国内の権力基盤強化にはほとんど貢献しない。

 5月半ばの週末に、壮麗な飾り付け、国力、そして施しをする情け深さという3点を誇示するために設計されたように思える北京の街に、30カ国近い国の首脳とさらに80カ国あまりの使節が習近平国家主席を畏れ敬いつつ集まった。

 派手に宣伝された国際会議「一帯一路フォーラム」で、習氏は新しい世界経済秩序のように見えることを狙った計画を説明した。
 中国の南側、西側(旧シルクロード沿い)、さらには遠くアフリカに位置する60あまりの国々を大きく変える鉄道、道路、橋梁、港湾その他のインフラに中国主導で投資を行うという内容だ。
 「平和共存の大家族」なるものを作るために、中国がプロジェクトを指導し、1000億ドルを超える資金も拠出すると約束する習氏は、無遠慮と言えるほど強気だった。

中国の指導者は力強さ、冷静さ、調和といった美徳を示すことを非常に重んじる。
 もし習氏が鳥だったら、その種類はさしずめ白鳥だろう。
 しかし、習氏が泳いでいる中国政界という川は、水面こそ穏やかに見えるものの、実際は澱んでいるうえに水かさも増して荒れている。

■白鳥は水の中で何をしているのか

 水面下で猛烈に足を動かしている気配が伝わってくることが時々ある。
 一帯一路構想はその好例だ。習氏がまとめたこの計画は、インフラ関連をはじめとする国有企業が中国国内に抱える膨大な余剰生産能力を解消しようという必死の試みでもあった。

<以下、有料会員のみ>



読売新聞 5/28(日) 11:56配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170528-00050059-yom-int

習近平氏の腹心、蔡氏が北京トップに昇格へ

 【北京=竹内誠一郎】中国国営新華社通信は27日、中国共産党が、蔡奇(ツァイチー)・北京市長(61)を同市トップの党委員会書記に昇格させる人事を決めたと伝えた。

 蔡氏は習近平(シージンピン)党総書記(国家主席)の腹心として知られる。

 蔡氏は福建、浙江省で約20年にわたり地方勤務時代の習氏に仕えた。
 2014年3月、浙江省副省長から習氏が新設した中央国家安全委員会弁公室(事務局)副主任へと転じた。
 昨年10月に北京市代理市長、今年1月に市長に就任。
 異例のペースで北京市トップまで昇進したことで、蔡氏は今年後半の第19回党大会での政権指導部・党政治局入りがほぼ確定した。

 現在の習政権のメンバーは、習氏のトップ就任の後ろ盾となった江沢民(ジアンズォーミン)元党総書記らの影響力を強く受けている。
 昨年10月、党内で別格であることを示す「核心」に位置づけられた習氏は、2期目政権でこうした影響力を払拭(ふっしょく)するため、今後も「最も信頼を置いている」(党関係者)という福建省時代の部下を中心に抜てきを進める見通しだ。



フジテレビ系(FNN) 5/28(日) 19:08配信
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20170528-00000556-fnn-int

「習主席の腹心」、異例スピード昇進

 習近平国家主席の腹心が、異例の速さで昇進。
 中国国営の新華社によると、北京市のトップにあたる共産党委員会書記に、北京市長の蔡奇氏が任命された。
 蔡氏は、習主席が福建省と浙江省で勤務していた時の部下で、「習主席の腹心」と言われている。
 蔡氏は、2016年10月に北京市の代理市長、2017年1月に北京市長に就任したばかりで、その後わずか4カ月で、市長より格上の書記に昇格した。
 異例のスピード昇進により、蔡氏は、秋に行われる共産党大会で、最高指導部に次ぐ「党政治局」入りするのが、ほぼ確定した。
 5年に1度の党大会を前に、習主席は、自らに近い人物を登用することで、権力基盤固めを進めているものとみられる。



毎日新聞  6/1(木) 20:36配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170601-00000084-mai-cn

<中国>上海も「三段跳び」か 北京トップに続き習氏側近

 【上海・林哲平、北京・浦松丈二】
  秋の中国共産党大会の前後に、上海市トップの市党委員会書記に習近平国家主席の側近で市ナンバー2の応勇市長(59)が昇格するとの観測が高まっている。
 実現すれば、北京市トップへの習氏側近の蔡奇氏(61)大抜てきに続く「三段跳び」の昇格。
 江沢民元国家主席の「上海閥」の本拠地で、習氏の権力固めを象徴する人事になりそうだ。

 習氏側近の重用が続く中、非習系とされる広東省トップの胡春華・党委書記(54)と重慶市トップの孫政才・党委書記(53)=いずれも政治局員=の最高指導部入りは困難になったとの見方が広がっている。

 上海市の党関係者によると、5年前の前回党大会後に上海市トップになった韓正・市党委書記(63)が秋の党大会で中央に転じ、後任に応氏が昇格することが既定路線になった。
 すでに韓氏と応氏の間で業務の引き継ぎを意識させる動きがあるという。

 上海市トップは党中央の政治局員ポスト。
 応氏は政治局員の下の中央委員でも、その下の中央候補委員でもない。
 地方トップの経験もない。
 上海のトップになるには、秋の党大会で一気に政治局員に選出されなければならないため、一時は昇格を疑問視する声もあったという。

 しかし、5月27日に同じ政治局員ポストの北京市トップの党委書記に、地方トップの経験がなく、党中央では三段跳びとなる蔡氏の就任が決まったと公表されると、上海でも習氏側近の応氏の抜てきが広く予想されるようになった。

 応氏は浙江省出身で派出所勤務から省高級人民法院(高裁)院長に上り詰めたたたき上げ。
 習主席が浙江省トップ時代に信頼を得たといわれており、2007年に習氏が上海市トップになったのと同時期に上海高級人民法院幹部として上海入りした「習氏の懐刀」だ。

 5月に改選された上海市党幹部人事では、韓氏を除く他の幹部が応氏ら習氏側近でほぼ埋められた。
 15年に非習系の艾(がい)宝俊元副市長が収賄の疑いで失脚するなど反腐敗運動で幹部が次々と更迭された結果だ。

 昨年秋に党中央の「核心」になった習氏にとって、北京に続き上海のトップも自らの側近で固めることができれば、「習1強」体制を内外に強く印象づけられる。
 危機感を募らせた上海閥からの巻き返しも予想され、党大会に向けた波乱要因になっている。






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2017年5月26日金曜日

中国国債格付けを引き下げに:その意味は?

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ロイター 5/24(水) 14:43配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170524-00000058-reut-bus_all

ムーディーズ格下げは問題を誇張、
改革取り組みは過小評価=中国

[北京 24日 ロイター] -
  中国財政省は24日、ムーディーズ・インベスターズ・サービスが同国の格付けを引き下げたことについて、不適切な手法に基づいており、中国経済の問題を誇張する一方、改革の取り組みを過小評価しているとの見方を示した。

 ムーディーズはこの日、中国の格付けを1段階引き下げた。
 成長が鈍化し、債務の拡大が続くに伴い、向こう数年で財政面の健全性が低下するとの見通しを示した。

 財政省は、中国の政府債務は適正なペースで拡大する見込みで、地方政府の投資会社や国有企業の債務水準の高まりが政府債務を押し上げることはないと指摘した。



Record china配信日時:2017年5月25日(木) 18時30分
http://www.recordchina.co.jp/b179273-s0-c20.html

ムーディーズによる格下げに中国当局は反発
=「先生が不合格と言っているのに、学生はテストの方法が悪いと批判しているようなもの」―中国ネット

 2017年5月25日、中国メディアの財経網は米国の債券格付大手ムーディーズ・インベスターズ・サービスが中国の国債を格下げしたことについて、中国当局が反発したと伝えた。

 ムーディーズは24日、中国国債の格付けを「Aa3」から「A1」に1段階引き下げたと発表した。
 これに対して中国財政部は、順調な時期に基づいて格付けした不適切な手法だと反論した。

 財政部は、ムーディーズが中国の債務規模が急増していることや、関係する改革の効果が見えてこないこと、政府による景気刺激策で無理やり経済成長を維持していると指摘しているが、これは中国経済の危機を誇張したもので、中国政府による構造改革の取り組みを見くびっていると主張した。

 これに対し、中国のネットユーザーから
 「共産党最大の欠点が、批判には耳を傾けず、称賛ばかり求めることだな」
 「つまり格上げして然るべきだということか」
とのコメントが寄せられ、財政部の反応には中国ネットユーザーもあきれ気味のようだ。
 また、
 「先生が不合格と言っているのに、学生はテストの方法が悪いと批判しているようなもの」との指摘や、
 「私は前回ロッテを破壊した愛国者なのですが、今回はどうやってボイコットしたらいいですか?
 直接ののしればいいですか?
 横断幕でも用意しますか?」
と、何かにつけてボイコットする愛国者の行動をやゆしたコメントもあった。



ロイター  2017年 05月 25日 16:12 JST  Lisa Jucca
http://jp.reuters.com/article/column-china-downgrade-idJPKBN18L07Z?sp=true

コラム:中国が国債格下げを軽視できない理由

[香港 24日 ロイター BREAKINGVIEWS] -
 中国は国債の格下げで気を引き締めざるをえなくなる。
 ムーディーズが24日、1989年以降で初めて格付けを引き下げことで、
★.中国の格付けは台湾より低くなった。
★.中国国債の外国人保有比率は極めて低く、
 国内企業の格付けも個別の論理に基づいて設定されるため、
 今回の格下げは多分に象徴的な意味しか持たない
 しかし中国が海外資金を取り込もうとする試みは、出鼻をくじかれるのではないだろうか。

 ムーディーズは中国の格付けを1段階下げて「A1」とした。
 これで先行して格下げしていたフィッチ・レーティングスとは同じ水準となり、スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)も今後追随するかもしれない。
 ムーディーズは格下げの根拠として、中国の財政健全性が次第に低下していくとみられることを挙げた。
 それはつまり、昨年末で国内総生産(GDP)の「277%」にまで膨らんだ非金融部門の債務(訂正)を政府が抑え込めないという事実の端的な表現だ。

 ただ中国では、格下げが投資行動に幅広く影響を及ぼすという世界各地で見られる事態は決して起きない。
 一番の理由は、
★.主要新興国では20─30%が一般的な国債の外国人保有比率が、
 中国の場合は3%未満であることだ
 国内投資家の大半は、新発債を買ったら満期まで持ち続け、国際的な信用力の評価に一喜一憂しない。

 ムーディーズの試算では、中国の国債利払い費用の歳入に対する割合は約6%と、より財政が不安定な諸国でこの割合が20%に上っているのと比べればずっと低い。
 だから債務返済能力もかなりしっかりしている。

 それでも将来的に痛みをもたらす恐れがある要素が1つある。
 中国政府は、本土と香港の債券市場接続計画などを通じて海外の資金を取り込もうとしている。
 年内に同計画が始動するのを前に、格下げは投資家心理を冷やすだろう。
 中国が資本勘定の対外開放を続けていく中で、外国格付け会社からの政策批判を無視できる時間は残り少なくなっているように見える。

*277%に膨らんだのは企業借り入れのみでなく非金融部門の債務であることを明確にしました(2段落目)。

●背景となるニュース

*ムーディーズは24日、中国の格付けを1989年以降で初めて引き下げた。長期の自国通貨建てと外貨建て債務の格付けは「Aa3」から「A1」に1段階下がり、格付け見通しは安定的になった。これはS&Pやフィッチでは「ダブルAマイナス」から「シングルAプラス」への低下に相当する。

*フィッチは既に中国の格付けを「シングルAプラス」としている。S&Pは「ダブルAマイナス」だが、格付け見通しは「ネガティブ」。

*ムーディーズは声明で、中国の財政健全性が今後数年にわたって低下していくと予想した。

*筆者は「Reuters Breakingviews」のコラムニストです。本コラムは筆者の個人的見解に基づいて書かれています。



人民網日本語版配信日時:2017年5月26日(金) 18時30分
http://www.recordchina.co.jp/b179408-s10-c20.html

ムーディーズの中国国債格付け、
引き下げに3つの誤解―中国専門家

  世界的な格付け会社の米ムーディーズが24日、
★.中国の国債格付けを「Aa3」から「A1」に引き下げると同時に、
★.見通しを「ネガティブ」から「安定的」
に変更したことが、瞬く間に議論を引き起こした。
 みたところ、ムーディーズの中国国債格付け引き下げには「3つの誤解」があり、
 今回の動きから中国が受ける実質的な打撃は、対外債務による資金調達への依存度が高い新興市場ほど大きくはないとみられる。
(文:梅新育・商務部国際貿易経済協力研究院研究員。人民日報海外版コラム「望海楼」掲載)

▽:ムーディーズの1つ目の誤解:
 中国経済の安定回復の経済活性化政策への依存度を高く見積もりすぎ、その一方で中国の構造調整の取り組みと決意を過小評価していること。
 ムーディーズはプレスリリースの中で、
 「…中国政府は引き続き政策による(経済の)活性化を進め、これによって経済の力強い成長という目標を維持しようと考えている。
 こうした活性化は経済システム全体の債務を増大させる。
 経済の力強い成長は政策による活性化への依存度が高いため、債務の増加が中国の信用指標をむしばんでいく」
と断言した。
 だが客観的な見方をするウォッチャーによれば、ここ数年の中国における中央政府から地方政府まで各クラス政府が構造調整と革新をめぐって重ねてきた努力をみれば、中国で新興産業がわき起こり成長する様子をみれば、今年1〜4月の市場の一般的な予測を大幅に上回る経済の「通知票」をみれば、ムーディーズのこのような断言のロジックが客観的事実に反したものであることはすぐにわかる。

▽:ムーディーズの2つ目の誤解:
 中国政府の債務水準を高く見積もりすぎ、これに基づいて中国の債務の安定性について実際とかけ離れた誤った判断を下していること。
 ムーディーズは地方政府の資金調達プラットフォーム企業、その他の国有企業といった機関の未償還債務をすべて政府の間接債務や偶発債務に計上し、これに基づいて中国政府の債務規模や見通しについて悲観的な評価を下している。
 しかし「中華人民共和国担保法」や「中華人民共和国予算法」といった関連の法律法規を読めば、ムーディーズのこうした分析のロジックそのものが中国の法律法規と食い違っていることがすぐにわかる。
 規定によれば、中央政府直属の国有企業でも、地方政府に属する国有企業(資金調達プラットフォーム企業を含む)でも、各企業が借り入れた債務はいずれも政府債務には入らず、政府が引き受ける義務は出資額の範囲を超えない。

 すでに1990年代末に、中国政府は広東国際信託投資公司が借り入れた対外債務は国の債務ではなく、中国政府はこの対外債務について償還義務を負わないと宣言している。
 中国政府が手を出さず、同公司が破産した時には、130人を超える海外の債権者と国際金融市場全体が、中国の法律では国有企業の債務は中国政府の債務に属さないことが規定されており、中国政府は原則通りにこの法律の規定を実施するという道理をはっきりと理解した。
 それから20年近くが経ち、ムーディーズは当時130人を超える海外の債権者が「身を切るようにして」国際金融市場全体に知らしめたこの道理をまだ理解していないだろうか。

▽:ムーディーズの3つ目の誤解:
 中国に対する姿勢といわゆる「高格付けの国」(米国や欧州などの西側諸国)に対する姿勢が実際の状況に合わないダブルスタンダードであること。

 ムーディーズが上記の過大評価の方法を採ったとしても、中国の債務水準はいわゆる「高格付けの国・地域」でもみられる程度の水準だ。
 だがムーディーズは、一連の「高格付けの国・地域」は一人あたり平均所得の水準、金融市場の成熟度、体制のもつ実力がどれも中国より高く、こうした特徴により債務償還能力が高くなり、マイナス事態が発生しても蔓延のリスクは低いと論じたてる。
 こうした見方には道理があるようにみえるが、国際金融市場全体を転覆させかねなかったサブプライム問題や米欧の債務危機は一体、何年前のことだろうか。
 危機はどこで起こったというのか。
 中国だろうか、ムーディーズが「金融市場の成熟度や体制のもつ実力がいずれも中国より高」いとみる一連の「高格付けの国・地域」だろうか。

 実際、過去のデータに頼り過ぎて相対的に見通しが不十分になったり、主観的な「体制要因」を重視しすぎたりして、ムーディーズをはじめとする国際的格付け機関が誤った格付けをしたことは一度や二度ではない。
 市場参加者はムーディーズがこのたび打ち出した格付けに過剰に反応する必要はない。
 まして中国の債務は95%が対内債務であり、中国国民の貯蓄率は引き続き30%前後を保っており、中国には3兆ドル(約335兆2200億円)規模の外貨準備残高と政府が保有するその他の流動性の高い巨額の資産があり、中国の債務がシステムを脅かす債務危機に発展することはないと保証できる。
 ムーディーズの格付けの変更から中国が受ける影響は、対外債務への依存度が高い新興市場エコノミーが受ける影響に遠く及ばない。

このようなわけで、市場は無定見に風向きを気にする必要はないといえる。

(提供/人民網日本語版・編集KS)


サーチナニュース 2017-05-27 11:12
http://news.searchina.net/id/1636581?page=1

日本企業の大規模撤退は起きないが、
投資を呼び込む努力をすべき=中国報道

 日本経済界の訪中団が2016年9月、中国側に対して中国から撤退する際の手続きを簡素化するよう求めた。
  中国国内ではこの要請が「日本企業が中国から相次いで撤退する前触れではないか」と一時懸念が高まったが、こうした懸念は
★.潜在的に中国が日本企業を含めた外資撤退を恐れていることの表れだ
と言えるだろう。

 中国メディアの財界網は26日、
 「日本企業の中国からの大規模撤退はあり得るのか」
と疑問を投げかける一方、
★.中国は日本との協業が必要であり、投資環境を整備し、各種手続きの簡素化を通じて
 「日本からの投資を呼び込む必要がある」
と論じる記事を掲載した。

 記事は、中国では日本企業が撤退を発表するたびに大きな社会的注目を集めてきたと伝えつつ、中国経済が緩やかながらも安定した経済成長を目指す「新常態」の時代を迎え、歴史問題や領土をめぐる対立が顕在化すると同時に日本企業の対中投資は減少傾向にあると指摘した。

 また、中国から撤退する日本企業の数が増加傾向にあるのも事実だとしながらも、中国から撤退している日本企業は主に「労働集約型」の製造業であると指摘。
 こうした撤退の背後には中国における人件費の上昇や円安の進行といった要因があるとし、
 「一部で日本企業の撤退があるのは事実だが、
 これが大規模な撤退に発展する可能性は極めて低い」
と指摘した。

 なぜなら、一部の日本企業が撤退すると同時に、別の新しい日本企業が中国に進出しているためであり、資本集約型の製造業や第3次産業の日本企業の撤退はあまり見られないためだと主張。
 中国で事業を展開する日本企業の経営の現代化に伴い、利益を伸ばす企業も増えていると伝えた。

 また記事は、「全体的に見れば、日本企業の大規模な徹底は起き得ない」としつつ、中国経済にとって日本企業は必要不可欠であり、中国はむしろ投資環境を改善し、日本企業の投資をさらに呼び込むための努力をすべきであると伝えている。


投信1 5/31(水) 21:30配信 投信1編集部
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170531-00003366-toushin-bus_all

中国の格下げ、
懸念される経済の「3つの減速」とは?

 米格付け会社ムーディーズは5月24日、中国の格付けを“Aa3”から“A1”へ1段階引き下げました。
 ただ、当初は下落した株式市場もすぐに持ち直し、人民元もほぼ横ばいを維持するなど、マーケットの反応はいたって冷静でした。
 格下げに動じなかったことが好意的に受け止められた一方で、警鐘として受け止めるべきとの声もあり、見方は分かれています。

 そこで今回は、格下げにまつわる中国経済の現況を整理し、中長期的な視点から今後を展望したいと思います。

■中国の債務比率、日本のバブル期超えに警戒感

 格下げの主な理由は成長率の低下と債務比率の上昇です。
 ただ、成長鈍化と過剰債務問題は広く認識されており、ムーディーズが中国の格付け見通しを“ネガティブ”としたのは1年以上前の昨年3月のことです。
 したがって、材料としての新鮮味がなかったことも冷静な対応につながったと言えるでしょう。

 中国の成長鈍化を数字で確認すると、
★.GDP成長率は2010年の10.6%から単調な低下が続いており、
 国際通貨基金(IMF)は2017年を6.6%、2018年を6.2%、
 そして2022年には5.7%へ低下すると予想
しています。

 一方、ムーディーズは中国の潜在成長率は今後5年で5%程度まで低下すると見ていますが、中国政府による景気対策により、実際の成長率の鈍化はより緩やかになるとしています。

 また、中国は2015年までに人口ボーナス期から人口オーナス期に転換しており、成長の鈍化は人口動態の変化が影響しています。
 総人口に占める生産年齢人口(15-64歳)比率の上昇局面は人口ボーナス期、低下局面は人口オーナス期と呼ばれ、ボーナス期は人口要因が成長を加速、オーナス期は抑制するとされています。

★.国際決済銀行(BIS)によると、2016年6月末時点での中国の民間債務の対GDP比率は209.4%、うち企業部門が167.6%、家計部門は41.8%となっています。
★.日本の民間債務の対GDP比率のピークは1989年の208%ですので、
 中国の債務比率は既に日本のバブル期を越えており、債務の拡大も限界に近づいているようです。

★.日本では1990年前半に人口動態がボーナス期からオーナス期へと転換しており、
 この時期とバブル崩壊が一致していることも中国の過剰債務に対する警戒感を強めている模様です。

■.3つの減速を懸念

 1-3月期の中国GDP成長率は前年同期比+6.9%と好調ですが、成長鈍化の兆しが伺えることから、成長鈍化は避けられない見通しです。
 特に警戒が必要と思われるのが、自動車販売、住宅価格、インフラ投資の行方です。

❖1. 自動車販売が減税終了で急減速

 中国の4月の自動車販売台数は前年同月比-2.2%と、1年8カ月ぶりに前年水準を下回りました(ただし、旧正月の影響で振れの激しい1月と2月を除く)。
 1-4月期の累計も前年同期比+4.6%と、2016年の+19.6%から急ブレーキがかかっています。

 販売支援のための減税が終了し、今年1月からは小型車の購入税がそれまでの5%から7.5%に引き上げられました。
 来年は通常の10%に戻る予定で、予定通りなら年末にかけては駆け込み需要が期待できますが、通年では小幅な伸びにとどまる見通しです。
 さらに、2018年の年初には反動減が予想されます。

❖2. 住宅価格は早ければ年内に前年割れも

 4月の中国住宅価格は前年同月比+9.9%と高い伸びを維持していますが、昨年12月以降は緩やかに伸び率が低下しています。
 また、1-4月の住宅販売金額は前年同期比+16.1%と昨年同期の+36.2%から伸び率が大きく鈍化しています。

 中国政府は住宅価格高騰による国民の不満に応え、住宅価格の抑制に取り組んでいます。
 秋の党大会を見据えて、住宅価格の伸びは趨勢的な鈍化が続き、年末には前年割れとなる可能性もありそうです。

❖3. インフラ投資も鈍化へ、影の銀行への規制も影響か

 中国の成長を支えているのはインフラ投資で、1-4月期は前年同期比で18.2%増加していますが、インフラ投資の高い伸びの背景には地方政府の資金繰り改善があります。

 中国では従来、地方政府による地方債の発行は原則禁止でした。
 ただ、高い成長を維持したい地方政府がシャドーバンキング(影の銀行、投資ファンド)を利用して資金調達を拡大し、非効率な投資の温床として問題視されたことから、2015年以降、地方債の発行が認められています。

 シャドーバンキングは短期で高金利でしたので、長期で低金利の地方債へと借り換えることで地方政府の資金繰りが改善し、インフラ投資の拡大に寄与してきました。
 しかし、地方債への借り換えが年内で一巡することから、来年以降のインフラ投資の拡大に歯止めがかかるのではないかと懸念されています。

 また、シャドーバンキングへの規制が強化されていることもネガティブな影響として警戒されています。

■試練が訪れるのは来年?

 企業が抱える過剰債務は金融機関の過剰融資の裏返しです。
 中国政府は短期金利を引き上げて過熱を冷ます構えを見せていますので、ブレーキが効き過ぎて成長が鈍化する可能性もありそうです。

 こうした中で、減税の終了、住宅価格の抑制、規制の強化により自動車販売、住宅投資、インフラ投資が来年を目途にそろって失速する恐れがあり
 中国経済は2018年に試練を迎えることになるのかもしれません。


台湾はいま:未来のために耐える時

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 台湾はいま未来に耐えている。
 中国共産党は近い未来に崩壊するであろう、と予測し、その時は独立を選挙によって達成するというシナリオを持つ。
 その時まで耐えるというのが台湾の本心であろう。
 その時が何時なのかは見えてこない。
 ただ数十年も先の話ではないことだけは確かである。
 歴史はドラマを持つ。
 共産党が崩壊するのも歴史の流れである。
 そのとき、チベットやウイグル、モンゴルはドラマを作るだろう。
 ソビエトが崩壊したとき、ベルラーシがウクライナが、そして様々な小国が独立し、ソビエトはロシアになった。
 それと同じことが起こる可能性は大きいだろう。
 それを見据えて今、台湾は耐えていくことになろう。


テレビ朝日系(ANN) 5/25(木) 23:36配信
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/ann?a=20170525-00000054-ann-int

台湾で軍事演習 蔡総統が視察 
中国の侵攻を想定 



 台湾で中国の侵攻を想定した軍事演習が行われ、蔡英文総統が視察しました。

 台湾では毎年、中国軍の侵攻を想定した陸海空軍合同の大規模な軍事演習を実施しています。
 今年の演習には約3900人が参加し、台湾の離島への上陸を阻止する訓練が行われました。
 台湾は中国に対抗して、潜水艦などの自主開発を進めています。
 演習を視察した蔡総統は「軍の装備を充実させ、防衛能力を高めていく」と話しましたが、中国については言及しませんでした。



日本テレビ系(NNN) 5/25(木) 21:55配信
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20170525-00000085-nnn-int

中国の空母攻撃想定 台湾で大規模軍事演習



 台湾で、中国の空母からの攻撃を想定した大規模な軍事演習が行われている。

 台湾は毎年、大規模な軍事演習をしていて、今年は今月22日から中国軍の上陸を防ぐという想定で戦闘ヘリや戦車など、主力兵器を投入して行っている。
 中国は今年4月、初めての国産空母を進水させるなど海軍力の増強を進めていて、台湾国防部によると、演習では初めて空母からの攻撃を想定したシミュレーションを行ったという。
 視察した台湾の蔡英文総統は、「台湾の発展のために戦おう」と軍に呼びかけた。

 これに対し、中国側は
 「台湾の未来は、中台関係の平和的な発展によって決まる。
 武力で統一を拒むやり方に出口はない」
と批判し、台湾に「一つの中国」を認めるよう、改めて求めた。






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2017年5月25日木曜日

100日たったトランプ(3):南シナ海での航行の自由作戦実施

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● google画像から


ロイター 5/25(木) 14:14配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170525-00000059-reut-cn

南シナ海の中国人工島12カイリ内で航行の自由作戦=米当局者

[ワシントン 24日 ロイター] -
 米当局者は、米海軍の駆逐艦「デューイ」が、南シナ海で中国が造成した人工島から12カイリ(約22キロ)内で「航行の自由」作戦を展開したと明らかにした。
 トランプ政権下で初めてとなる。

 当局者は匿名を条件に、デューイが南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島のミスチーフ環礁付近を航行していると述べた。



日本テレビ系(NNN) 5/25(木) 13:17配信
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/nnn?a=20170525-00000031-nnn-int

トランプ政権初 南シナ海で航行の自由作戦



 アメリカ海軍は24日、南シナ海で中国が領有を主張する人工島の12カイリ内に艦船を派遣する、いわゆる「航行の自由」作戦を行った。
 トランプ政権になってからは初めて。

 ロイター通信などによると、海軍の駆逐艦は24日、南沙諸島のミスチーフ礁で、中国が埋め立てて造った人工島の12カイリ内を航行した。
 中国はこの島の領有を主張しているが、フィリピンが中国を提訴した仲裁裁判の判決では、領有権が存在しないとの判断が下されている。

 中国は島の軍事化を着々と進めているが、トランプ大統領は北朝鮮問題をめぐり中国の協力を重視していて、南シナ海の問題が軽視されるのではないかとの懸念の声が高まっていた。




毎日新聞2017年5月25日 11時03分(最終更新 5月25日 12時51分)
https://mainichi.jp/articles/20170525/k00/00e/030/272000c?inb=ys

米海軍:南シナ海で「航行の自由」作戦 トランプ政権で初

■南沙諸島ミスチーフ礁12カイリ内を駆逐艦「デューイ」航行

 【ワシントン会川晴之】ロイター通信など米欧の主要メディアによると、米海軍が南シナ海の南沙(英語名・スプラトリー)諸島で24日、「航行の自由」作戦を実施した。
 米当局者の話として伝えた。
 中国が実効支配するミスチーフ礁(中国名・美済礁)の12カイリ(約22キロ)内をミサイル駆逐艦「デューイ」が航行した。
 南シナ海での実施は昨年10月以来5度目だが、トランプ政権発足後では初めて。
 中国の反発は必至だ。

 トランプ政権は、中国がミスチーフ礁など南シナ海の岩礁を埋め立てて人工島を作り、軍事要塞を整備していることに強い懸念を示している。
 人工島を民間衛星写真で分析している米シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)は今年2月、中国がミスチーフ礁に地対空ミサイルを格納すると見られる施設を建設中と発表していた。

 ミスチーフ礁は、昨年7月の仲裁裁判所(オランダ・ハーグ)の判決で、低潮時には水面上にあるが、高潮時には水没する「低潮高地」と認定された。
 国際法上は、領海も排他的経済水域(EEZ)も設定できない。
 中国が領海を主張しにくいため、ミスチーフ礁を対象に選んだ可能性がある。この岩礁は、米国が2015年10月に実施した1回目の航行の自由作戦でも対象になった。

 トランプ政権は、核・弾道ミサイルの開発を加速する北朝鮮の国際的包囲網を築くため、北朝鮮の最大の貿易相手国である中国に協力を求めている。
 その一方で「国際法の下、すべての国の(航行の)自由と権利を守るため、今後も定期的に『航行の自由』作戦を続ける」(国防総省)方針も示している。

 米軍は16会計年度(15年10月~16年9月)中に22カ国・地域が領有を主張する海域や空域を対象に航行(飛行)の自由作戦を実施した。
 中国やインド、ベトナムなど13カ国に対しては複数回、日本に対しても1回行っている。

■「航行の自由」作戦
 他国・地域が領有を主張する海域や空域を対象に、「国際法で認められた航行や飛行の自由を守る」という名目で軍事艦艇や航空機を派遣して行う。
 米軍は世界的に行っているが、中国が実効支配を強める南シナ海での実施は5度目。



TBS系(JNN) 5/26(金) 1:45配信
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/jnn?a=20170526-00000003-jnn-int

中国「強烈な不満」
 米軍が「航行の自由作戦」実施

 アメリカ軍のミサイル駆逐艦が中国が実効支配する南シナ海の島の沖合を航行したことについて、中国政府は「強烈な不満」を表明しました。

 「中国海軍は法にのっとってアメリカ軍艦を確認し、警告・駆逐した」(中国外務省 陸慷報道官)

 中国外務省の陸慷報道官は、アメリカ軍のミサイル駆逐艦が24日に中国が実行支配している南沙諸島ミスチーフ礁の12海里内を航行したことについて、中国の主権を侵害するとして「強烈な不満と断固たる反対」を表明しました。

 アメリカ軍が南シナ海の軍事拠点化を進める中国をけん制する目的で艦船を航行させる「航行の自由作戦」を実施するのはトランプ政権になってから初めてのことですが、陸慷報道官は「中国とアメリカの協力関係に影響をもたらすことを避けるよう強く促す」と述べ、作戦の中止を求めました。



毎日新聞 5/26(金) 1:15配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170526-00000002-mai-int

<米国>対中関係悪化は回避
 南沙諸島で「航行の自由」作戦

 【ワシントン会川晴之、北京・河津啓介】
 ロイター通信などによると、米海軍が南シナ海の南沙(英語名・スプラトリー)諸島で24日、「航行の自由」作戦を実施した。
 米当局者の話として伝えた。
 南シナ海での実施は昨年10月以来5度目だが、トランプ政権発足後は初めて。

 ただ、国防総省は作戦を公式に発表していない。
 トランプ政権は、中国による軍事拠点化を認めない姿勢を改めて示す一方、北朝鮮への圧力強化を求めている中国との関係悪化を避ける狙いがあるとみられる。

 中国外務省の陸慷報道局長は25日の定例記者会見で、「中国の主権と安全保障上の利益を損ない、強烈な不満と断固とした反対を表明する」と批判。
 国防省の任国強・報道官も同日の会見で米側に厳正な申し入れをしたことを明かした。
 ただ、任氏が「健全で安定した中米関係は双方の共同利益に符合する」と述べるなど、中国側も米国との関係悪化を望まない姿勢もにじませた。

 習近平指導部は今秋、5年に1度の重要な中国共産党大会を控えており、米中関係の不安定化を望んでいない。
 中国の国際情報紙「環球時報」は25日に発表した社説(電子版)で、「現在の中米関係の焦点は南シナ海ではない」と指摘。
 同紙は今回の作戦がホワイトハウスではなく米海軍が主導したとの見方を示すことで、トランプ大統領への批判を避けた。

 今回の作戦では、中国が実効支配するミスチーフ礁(中国名・美済礁)の12カイリ(約22キロ)内をミサイル駆逐艦「デューイ」が航行した。
 トランプ政権は中国が南シナ海の岩礁を埋め立てて人工島を造り、軍事要塞(ようさい)を整備していることに強い懸念を示している。
 一方で、核・弾道ミサイルの開発を加速する北朝鮮の国際的包囲網を築くため、北朝鮮の最大の貿易相手国である中国に協力を求めている。

 米メディアによると、トランプ政権発足後、米軍は航行の自由作戦の実施を3回申請したが、却下されていたという。

北朝鮮に追い詰められる中国(6):北京は北朝鮮ミサイルの標的

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 アメリカも中国もなにもできない
というのが北朝鮮問題である。
 解決されないまま「いま、そこにある危機」がある。
 日本と外国に頼ることなく動かねばならない。
 まず、できるかどうかはわからないが、
 迎撃ミサイル体制を構築すること
である。
 外国に頼ることなく防衛体制を固めることに全力を傾けること、
これしかできることはない。
 少なくとも5年以内には北朝鮮は核の小型化に成功し、弾道ミサイルのいセットできる技術を取得するだろう。
 残されたこの期間にどれだけ日本はこの弾道ミサイルを撃ち落とせる技術に邁進できるかで決まってくる。
 北朝鮮のミサイルは間違いなく、東京と北京を狙っている。
 
 カリアゲ君にとって、東京という標的は垢さびたものだ。
 日本は過去に原爆の被害を受けた国であり、チェルノブイリとスリーマイルに続いて福島で原発事故を起こしている。
 そんなところへ核を撃ち込んでも英雄にはなれない。
 朝鮮民族にとって日本は見下す相手である。
 それを敵にしても意識のなかでは弱いものイジメという感情しかわかない。
 見下す国家をいたぶって快感を覚えるタイプには見えない。
 アメリカに敵対することによって高揚感を楽しむタイプである。
 とすればカリアゲ君にとってピカピカの標的はなんといっても中国だろう。
 北京に共産党要人が集まる時を狙って一気にこれを葬り去って、中国を混乱の渦に巻き込む、
というストーリーは「歴史にカリアゲ君の名を残すことになるはずだ」と思い込み、高まる誘惑に晒されるものであろう。
 朝貢国が宗主国に刃を向け、これを崩壊させる、というのは麻薬のような快感をカリアゲ君にもたらすのではないだろうか。
 ちなみに、核弾頭が複数あれば、東京と北京に向かうだろう。


CNN.co.jp 5/25(木) 13:56配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170525-35101734-cnn-int

北の核開発、放置なら米本土攻撃も可能に 
米高官が警告

(CNN) 米国防情報局(DIA)のスチュワート長官は25日までに、北朝鮮の核開発について、何らかの手を打たなければ米本土を核兵器によって攻撃できる能力を保有することになると警鐘を鳴らした。

 23日に開かれた上院軍事委員会の公聴会に出席した同長官は
 「今のまま放置すれば、(北朝鮮の)政権は最終的に米本土を脅かす能力のある核ミサイルの保有をなしとげるだろう。
 実戦配備がいつになるか予言することはほぼ不可能だが、北朝鮮政府は力を注いでおり、このまま行けばこうした能力(の獲得)は避けられない」
と強調した。

★.実戦配備までに残された唯一のハードルは、
 弾道ミサイルが大気圏に再突入する方法を見つけることだ
とスチュワート長官は述べた。
 また長官は、再突入の技術の完成は「きちんと機能するように十分な試行錯誤をすればいいだけの問題」だとも述べた。

 今月に入り北朝鮮は2度にわたって弾道ミサイル実験を行った。
 専門家らはこの2度目の実験について、これまで実施した中で最も成功したと指摘する。

 米情報機関の初期の分析では、大気圏の再突入に成功したことを示す結果も出たという。
 米当局者2人がCNNに明らかにした。

 公聴会ではコーツ国家情報長官も出席。北朝鮮は米国の同盟国である日本や韓国に対して核兵器を使う能力を持っているのかという問いには、コーツ長官もスチュワート長官も回答を拒んだ。



朝鮮日報日本語版 5/24(水) 23:09配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170524-00003502-chosun-kr

(朝鮮日報日本語版) 北朝鮮の幹部、講演で中国への核攻撃に言及か

 北朝鮮のある中央幹部が、地方の幹部らに対し、中国全域が既に北朝鮮の核の射程圏内に入っていると話したとの報道が飛び出した。

 これは米政府系放送局「自由アジア放送(RFA)」が北朝鮮の消息筋の話として伝えたもの。
 この発言が講演で飛び出したものなのか、個人の考えを語ったものなのかは明確でないという。

 北朝鮮両江道の複数の消息筋によると、今月20日に両江道の朝鮮労働党委員会会議室で地方幹部らを対象に行われた講演会の司会者が
 「最近、開発に成功した新型ミサイル『火星12号』は、
 中国全域を確実に打撃できる核運搬手段」
と発言したという。
 RFAが伝えた。

 報道によると、この日午後2時から行われた最近の情勢に関する講演は、中央党の宣伝扇動部の指導員が自ら司会役を務めた。
 講演は四半期に1度ずつ地方の幹部を集めて開かれ、北朝鮮の周辺国の動向について中央の幹部が解説するものだ。

 朝鮮労働党中央委員会宣伝扇動部の指導員だとされるこの講演者は、地方幹部に対し
 「火星12号の成功で、中国はわれわれ(北朝鮮)のミサイル網の中に完全に入ってしまった」として
 中国による北朝鮮制裁など全く恐れることはない」と話した。

 消息筋は
 「中国がわれわれの核の脅威にさらされていることは、各幹部がプライベートの場で頻繁に言及してきた。
 ただ、この日の講演で中国への核攻撃もあり得ることをほのめかしたのは、講演者のミスなのか予定された内容なのか不明だ」
と話した。

 また、別の消息筋は
 「労働新聞のようなメディアでも公に中国を非難しているのだから、非公開の場では何だって言えるだろう。
 『われわれの打撃圏には制限がなく、われわれの打撃から逃れられるものはこの世にはいない』という言葉は露骨に中国を脅かす表現だ。
 中国もこのような荒々しい表現が自分たちに向けられたものだということをよく分かっているはずだ」
と指摘した。



Record china配信日時:2017年5月26日(金) 5時40分
http://www.recordchina.co.jp/b179242-s0-c10.html

「第2次朝鮮戦争」のシナリオを米軍事紙が提示、死者10万人にも?
=「戦争で得するのは日本。忘れるな」「ここは人が住めなくなる」―韓国ネット


●24日、韓国・ニューシスによると、ミサイル発射実験など北朝鮮による挑発が続く中、米国の軍事専門メディアが「第2次朝鮮戦争」のシナリオを示し注目を集めている。写真は北緯38度線の標示。

 2017年5月24日、韓国・ニューシスによると、ミサイル発射実験など北朝鮮による挑発が続く中、米国の軍事専門メディアが「第2次朝鮮戦争」のシナリオを示し注目を集めている。 

 米軍事メディア「ミリタリー・タイムズ」は22日、北朝鮮関連の情報や専門家の見解を総合して
 「米国は、中国の支援を受けて北朝鮮の核による挑発を止める試みを続けているが、このような外交的努力が失敗した場合、朝鮮半島に戦争が勃発することになる」とし、
★.「この場合、米韓両軍の兵力が大規模に動員され、戦争が数カ月またはそれ以上長期間続くことになる」との見通しを伝えた。 
 またミリタリー・タイムズは、戦争の状況と作戦を示した仮想図を公開、
★.北朝鮮が先制攻撃を行うと想定し、侵攻初日に米空軍基地を攻撃する可能性が高い
と分析した。
 さらに米軍の戦闘機投入を防ぐため、北朝鮮軍が化学兵器を使用する可能性もあると専門家らは主張している。
 紛争予防などを目的に設立された国際的非政府組織「国際危機グループ」によると、
★.北朝鮮は人類が作った化学物質の中で最も毒性の強い物質といわれるVXガスを含め2500〜5000トンの化学兵器を保有
しているものと推定される。 

 マーク・ハートリング米陸軍退役大将はインタビューで
 「戦時状況が30日で終わるとみている一部の人々の考えは間違っている」とし、
 「(戦時状況の)持続期間はそれよりも長く、戦争で数千、数万、さらには10万以上の死者が発生する」と述べている。 

 この報道を受け、韓国のネットユーザーからは
 「戦争に勝者も敗者もない。政治家の言葉にだまされてはならない」
 「戦争に参加した者すべてが敗者だ」
 「第2次朝鮮戦争とは、米国の安全を守るために韓国人に弾よけになれということ」
 「戦争の終わりとともに朝鮮半島も終わりを告げる。
 核兵器による放射能汚染で人が住めなくなる」
などの意見が寄せられている。 

 また、
 「朝鮮半島が起こって得をするのは日本。忘れるな」
 「戦争になれば日中は大もうけ、南北朝鮮は一文なしに」
と日本に言及するものや、
 「トランプ大統領は追い込まれるほど大きな賭けをするタイプだと思う。
 弾劾の危機に追い込まれている今、自分以外に関心を向けさせるために北朝鮮を攻撃することも十分考えられる」
と、戦争勃発の危険性を心配する声もあった。







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2017年5月24日水曜日

「一帯一路」とAIIB(4):日本の脅威か?成功の鍵は貨物量

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ロイター 5/25(木) 10:28配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170525-00000029-reut-bus_all

ロイター企業調査:
中国「一帯一路」構想、95%が参加希望せず

[東京 25日 ロイター] -
  5月ロイター企業調査によると、最も商機が拡大する貿易協定は
 日米自由貿易協定(FTA)との回答が32%を占め、
 米国抜き環太平洋連携協定(TPP)の25%を上回った。

 ロシアとの経済協力のメリットに期待する日本企業は14%だった。
 中国インフラ投資計画への期待は6%にとどまった。
 習近平国家主席が主導する
 「一帯一路プロジェクト」には「参加を希望しない」企業が95%と大勢を占めた。

 この調査は資本金10億円以上の中堅・大企業400社を対象に5月9日─19日に実施。
 回答社数は220社程度。

 調査によると、日米FTAについては、自動車関連の事業に期待が高い。
 「米国における自動車部品への輸入関税引き下げ」(輸送用機器)や
 「自動車部品の輸出増」(化学)、
 「自動車関連物流が増加すること」(運輸)
などが期待されている。

 11か国TPPでは新興国の経済活性化への期待が高い。
 「ベトナム・マレーシア向けの建設鋼材輸出や随伴取引拡大を期待」(卸売)、
 「直接的影響はないが、経済発展があれば影響する」(建設)
などの声がある。

 またロシアとの経済協力では「資源開発」(非鉄金属)や「北方領土でのインフラ整備」(建設)、「北極ロシアでの港湾整備事業の受注」(機械)のほか、「植物工場」(鉄鋼)といった新たな商機が期待されている。

 これに対し、中国主導のインフラ整備に参加を希望する企業は5%にすぎず、
 「希望しない」が95%を占めた。
 現状で中国主導の「一帯一路プロジェクト」に参加しているとの回答はゼロだった。
 参加のメリットについて「ビジネスチャンスの拡大」(電機)とみている企業もわずかにあるものの、ほとんどの企業は商機の拡大につながらないと感じていることがうかがえる。

 商機が拡大する貿易協定について「その他」との回答も21%を占めた。
 貿易協定を結んでも「ほとんど影響は感じられない」(複数企業)との声もあった。



東洋経済オンライン 2017年05月18日 さかい もとみ :フリージャーナリスト
http://toyokeizai.net/articles/-/171848

日本の脅威か?
「中国-欧州」貨物鉄道の実力
「一帯一路」構想の先鋒、
成功の鍵は貨物量

 古くから中国と地中海諸国を結ぶ交易路として栄えてきたシルクロードが、装いを新たして復活した。
 「一帯一路」構想。
 中国が陸路と海路でアジア、中東、欧州とを結ぶ巨大な経済圏を作ろうという構想だ。
 5月14~15日には一帯一路に関する国際会議が北京で開催され、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領ら世界各国の首脳が参加した。

 鉄道を使った“シルクロード”はすでに動き出している。
 4月29日、ロンドンから初の直行貨物列車が19日間をかけ、浙江省義烏市に無事到着した。
 中国と欧州を結ぶ貨物列車が走り出してから6年余り。
 中国から見て、英国は欧州行き貨物列車行き先の国として11番目の国だという。

■100円ショップの集散地に到着

 義烏という街は、雑貨を扱う人々の間で「“100円ショップ”向け商品のふるさと」として広く知られる。
 日本向け雑貨の出荷はかつてより落ち込んだといわれるが、依然として「中国最大の小商品(食品や雑貨等の小物)集散地」の地位にあることに変わりはない。
 日々さまざまな物資が出入りしている。

 今回、義烏に着いたロンドン発の貨物列車は、今年1月1日に義烏からロンドンに向けて走った中国発往路便の折り返し便となる。
 中国発の往路は義烏から18日目にロンドンに到着。
 34個のコンテナは衣料品で満載だったという。

 中国行きは4月10日、ロンドン東郊外のDPワールド(DPはドバイポートの略)が運営する貨物ターミナル・ロンドンゲートウェーを出発。
 英国からの主な積み荷は、ベビー用品をはじめ、清涼飲料やビタミン剤で、往路の2倍以上となる88個のコンテナが運ばれた。

 ドーバー海峡をくぐるユーロトンネルを通り、フランス、ベルギー、ドイツ、ポーランド、ベラルーシ、ロシア、カザフスタンの7カ国を経由し、新疆ウイグル自治区の阿拉山口ボーダーから中国に入った。
 全走行距離は1万2451キロメートル。旧ソ連各国では軌間(ゲージ)が異なるため2度の積み替えを行う必要があったという。

 ロンドンからの出発に際し、居合わせた記者らは往路便が到着してから復路便が出発するまでに3カ月以上もかかった理由について関係者に問い質したところ、義烏側のカーゴフォワーダー会社の幹部は、
 「ロンドン便貨物列車は始まったばかり。
 貨物輸送が定期運行化され、中国と欧州を結ぶ重要な輸送インフラとなれば、沿線の人々が徐々にそのすばらしさを理解することだろう」
と余裕の構えを見せた。

 多くの国々をまたいで走る国際貨物列車は各国に入る際に通関が必要となるが、英国で貿易商を営む中国籍の女性は
 「通過各国が中国の『一帯一路』政策に理解を示し、通関手続きを簡素化すると聞いている。
 船便と比べ半分の日数で中国に商品を届けられるうえ、航空便を使うより圧倒的に安いのが魅力」
と手放しで歓迎している。

 一方、英国のメディアは、欧州連合(EU)からの脱退を控えた英国がアジアの大国・中国を貨物列車で結ぶ意義について、
 「EU以外の国々との貿易の枠組みを強化するための一環では」
との見方を示している。

■51ものルートがある中国―欧州間の貨物列車

「中欧班列(チャイナ・レールウェー・エクスプレス)」と呼ばれる中国と欧州を結ぶ貨物列車をあらためて紹介してみよう。



中国から欧州行きの貨物列車は2011年3月、内陸部の重慶からドイツ北西部のデュースブルクに向けて走ったのが最初だ。
 それ以来、今年4月までの累計運行数は3600本を超えた。
 始終点は中国側が27都市、欧州側が11カ国28都市で、それらを相互に結ぶ列車は、重慶―デュースブルク間、成都―ポーランド・ウッジ間、鄭州―独ハンブルク間など、全部で51ものルートに達している。

 前述のように、旧ソ連領の各国を走る際には軌間の違いからコンテナを積み替えねばならないが、関係者によると「600トン分のコンテナを40分で積み替えた記録もある」という。
 ちなみに、前述の義烏からはロンドン行きのほか、スペインのマドリード行きもあるが、この場合は標準軌のフランスから広軌のスペインに入る際に、さらにもう一度積み替えることになるという。

 では、これらの列車はどんな経路を走っているのだろうか。
 鉄道で欧州方面に接続できる経路は、全部で3つある。

・「西ルート」
 ――中国の内陸部から甘粛省、新疆ウイグル自治区を経由し、阿拉山口からカザフスタンへ接続。カザフスタン、ロシアを経由し、欧州へ向かう。

・「東ルート」
 ――中国の沿岸部から東北各省を経て、内モンゴル自治区の満州里からロシアへ接続。シベリア鉄道経由で欧州へ向かう。

・「中央ルート」
 ――華南や華中各地から内モンゴル自治区に向かい、エレンホト(二連浩特)でモンゴルへ。
 その後、シベリア鉄道を経由し欧州に向かう。

 ちなみに、北京とモスクワを結ぶ旅客列車は、前述の「東ルート」「中央ルート」をそれぞれ通っている。
 一方「西ルート」を走る旅客列車は新疆ウイグル自治区の中心都市・ウルムチとカザフスタンのアルマトイを結ぶにとどまる。

■欧州発の荷物をどう増やすか

 現在、中国から欧州に向けて運ばれている主な貨物は、衣料品のほか、ノートブックパソコンをはじめとする電子製品やその部品、ディスプレーモニター、自動車などだという。
 最近では、中国で栽培された花きや鉢植えの草花が輸出された実績もある。

 一方、欧州発のコンテナには、ドイツ製自動車、肉製品、家具、フランス産のワインなどが積まれているという。
 特に中国で人気が高いドイツ製自動車について、重慶の輸入車ディーラーは「港のある天津や上海に着くのではなく、内陸部にある重慶の貨物ターミナルで通関のうえ、商品である車が受け取れるのはとても便利」と中欧班列を使った輸入のメリットを強調する。

 中国政府は2020年までに、中欧班列の運行本数を従来実績の2倍以上となる年間5000本まで引き上げるとの目標を掲げる。
 中国側の発表によると、中欧班列は今年1〜3月に欧州行き往路593本を運行しているが、復路便はその3分の1程度の198本にすぎない。
 中国からの輸出が極端に多い状況は当分続きそうだ。

 「今年になって、中国と欧州を往復する貨物列車のルートが増えている」と、強気のコメントを述べる関係者もいるが、51あるルートの中には義烏―ロンドン間のように「中欧班列が走った実績がある」程度のところも数に含まれているのが現状だ。
 つまり多くのルートは、「貨物が集まったら走らせる」という現状を、「週に何便、と決まった頻度で走らせる」レベルまで高めることが目下の目標といえる。
 もっとも、新しい物流の動きも見え始めている。
 4月には世界に2つしかない「二重内陸国」のひとつであるウズベキスタンで組み立てられた自動車を載せた貨物列車が江蘇省連雲港に到着。
 積み荷は船に載せ替えられ、第三国に輸出されたという。

 中国政府は中欧班列の整備にあたり、関連する鉄道網や貨物ターミナルなどの整備にはアジアインフラ投資銀行(AIIB)の資金を活用する方針も示している。
 日本企業の中には、AIIBの発足の経緯などから中国を利する国際輸送インフラを積極的に利用するのを躊躇するところもあるかもしれない。
 しかし、中央アジア各国への製品売り込みを図るのなら、中国経由のルートも検討せざるをえなくなる。

■中国で欧州企業と新たな競争も

 中国の経済と社会の政策の研究、経済のマクロ調整などを行う、いわば国のシンクタンク的な役割を担う国家発展改革委員会は昨年秋、中欧班列の発展計画を示す文書の中で、
「中欧班列は習近平政権が唱える『一帯一路』実現のための重要な担い手」
としたうえで、ルートの東側に成長が著しい東アジア経済圏、西側に先進国が集まる欧州経済圏をそれぞれ抱え、中間にある中央アジアは経済発展に向けた潜在力が大きい地域であることから、これらが相互に結ばれることにより今後の成長の余地は非常に大きいとの見方を示している。

 さらに、中欧班列が走る沿線7カ国は4月20日、国際貨物列車運行の際に必要な通関手順の簡素化、列車運行状況のトラッキングシステムの統一化、サービスの平準化などを目標とした協議書に署名した。
 中国側の関係者は
 「この署名により、中国―欧州間貨物輸送のうち鉄道によるシェアを拡大するだけでなく、中欧班列が沿線各国の経済発展や貿易の活発化に寄与し、国際的な物流ブランドとして認知されることを目指す」
と期待感をにじませている。

 欧州各国のさまざまな製品が貨物列車によって大量に運ばれることにより、日本企業にとっては欧州企業が中国市場における新たな競争相手になることも予想される。
 「一帯一路」政策により、従来は貿易の枠から外れていた中国内陸部の国際物流が変化しつつあることは明らかだ。
 西側から中国にアプローチしようとする欧州各国の動きがあることを頭に入れておくべきではないだろうか。



新潮社フォーサイト2017年05月31日12:26 田中直毅
http://blogos.com/article/226153/

北京の「大開幕式」でわかった「一帯一路」「AIIB」の五里霧中 - 

 5月14日の日曜日に、北京のオリンピック会場に設置された国際会議所で、一帯一路の国際会議の開幕式が行われた。
 当日の招待者としては各国首脳をはじめとした国家の代表団に加えて、内外のシンクタンクからも数十名が名を連ねた。
 私もその一員として3時間を超える開幕式を観察する機会があった。
 率直な感想を2つ述べる。

■「皇帝モデル」
★.第1は習近平国家主席が臨席する会議は全てそうであろうが、完全な「皇帝モデル」をとっていることだ。

  開幕式のスタートは9時が想定されていたようだが、会場に向かうホテルからのバスの最終出発時間は6時30分と申し渡されていた。
 私に割り当てられたホテルから会場までは30分程度とされていたが、当日は北京の中心部への車の乗り入れはすでに厳しく制限されていたので、予定より早く会場に到着した。
 会場の前列は各国首脳に、その後ろは60カ国以上の政府関係者が国ごとに区分けされたテーブル付の席に陣取ることになっていた。
 シンクタンクなどの非政府部門の人々は、その後ろの、テーブルのない席に勝手に着くという方式であった。
 会場で分かったことだが、この最後方の席から埋まっていったので、集合時間も政府部門と非政府部門で仕分けられていたのであろう。

 2時間以上も待つことを実質上承諾しなければ、会場に入れないのが非政府関係者である。
 中国ではこんな状況に苦情をいっても始まらない。
 2時間以上の待機組の中に、米国人ソーントンを見かけた。
 ゴールドマンサックスの経営責任者を終えた後、清華大学に多額の寄付を行い、かつ米国のブルッキングス研究所にも中国研究のための寄付金を提供している彼も、非政府の一般席に私よりも早くから着席していた。
 そしてその後のシンクタンク会合で、中国の新シルク・ロード・プロジェクトに好意的な挨拶を行った彼でさえ、「皇帝モデル」を受け入れていたのだ。

■「雄安新区」開発は成功するか

 当初、時間の無駄を強いられると受け止めた私だったが、旧知の中国人研究者を見つけて、彼の隣の席に着くことができたのは幸運だった。
 習近平体制の今後を占う上で極めて有力な材料を入手することができたからだ。

 彼はすぐに河北省の「雄安新区」という新都市開発の成功の可能性について私の見解を求めた。
 その6週間ほど前に発表された新都市開発構想とは、「核心」と位置付けられるに至った習近平総書記が唱えるもので、鄧小平の「深圳」、江沢民の「上海浦東」に相当するものとの触れ込みだ。

 彼との意見交換においては遠慮は無用だ。
 すぐ核心に入ればよい。
 私は新都市開発の成功条件を「雄安新区」は満たしていないと述べた。
 理由は2つ。

★.1つは
 北京から100キロメートルという近接性にもかかわらず、河北省という土地柄が21世紀の新都市開発に不向きだ、という点である。

 深圳は香港に隣接し、広東省という中国のなかで歴史的に最も資本主義型の企業群が生まれた場所にあった。
 また上海浦東は揚子江沿いの都市連携のなかで、海外企業の新規の受け入れ拠点となりうる可能性があった。
 しかし河北省は中国の歴史的発展のなかでは民間活力に乏しく、解放前の中国における軍閥領袖の跳梁跋扈の地であった。
 自律的都市形成の基盤が乏しすぎる。

■習近平時代はあと15年続く?

★.もう1つの理由は
 今後の中国経済の発展に求められるのは都市基盤の不足ではなく、経済活動の新結合を含む内部的な革新機運であり、鉄骨やコンクリートの塊ではないという点である。

 すでに中国全域において鬼城(ゴーストタウン)が山をなすほど広がっているのに、この上さらに物理的な都市設備を増大させる内部的誘因が乏しすぎる。
 「皇帝」の気紛れに付き合うことなど御免だというのが経済人の本音のはず、と述べた私に対して、意外にも、彼の答えは次のようなものだった。

 「私も雄安新区の成功確率は限りなく小さいと最初は思った。
 しかし、1カ月ほどの間に仲間(注・いずれも共産党員である知識人)の意見を聞いて回ると、秋の党大会で次の5年が保証されるだけでなく、その後さらに10年は習近平時代が続くだろうとの意見が圧倒的だった。
 計算高い中国人であるがゆえに、あと15年続く体制との間の折り合いのつけかたを半端にするわけにはいかない、との結論にならざるをえない。
 諸大学に対する共産党教育部からの介入が強まっていることを考えれば、たとえば清華大学の主要部分が雄安新区に移転することだってありうる、との見解さえある」

 習近平時代はさらに15年続くと中国人は覚悟し始めているというのだ。
 彼は習近平時代の長期的持続を前提に、一帯一路プロジェクトも考えざるをえないとの見解を示してくれた。
 今日という時点においては中国の知識人との率直な対話の機会は著しく困難になっている。
 ところが「皇帝モデル」のおかげで偶然にも旧知の知識人から習近平体制の今日と明日についての手掛かりが得られた。
 こうした出合い頭での私的会話に依存せねばならない意見交流の現実は、彼らにとっても、またわれわれ日本人にとっても幸福な状況とはいえない。

■プロジェクトの詰めはこれから

「皇帝モデル」の開幕式典と並んでもう
★.1つの感想は
 一帯一路のプロジェクトの詰めは依然として残ったままだ、という点だ。

 2013年秋の提唱から3年半以上を経過しているが、はっきりしているのは
 「新シルクロード」という考え方は上からの構図づくりであり、下からの対応とかみ合っていないということである。
 鉄鋼やアルミニウム、セメントなどの基礎資材の過剰供給能力に悩む商務部など現場の役所部門は、製品のさばき先づくりを急ごうとする。
 そこで様々なプロジェクトは浮上するのだが、誰もが納得できるプロジェクト間の関連付けがないのである。
 薄皮饅頭に肝腎な真ん中のあんこの部分が欠けたままなのだ。
 中間においてあるべきプロジェクトの相互関連性を欠いたまま、上側と下側だけを突出させて、とにもかくにもここまで走ってきた、というのが現状なのだ。

 内外のシンクタンクへの呼びかけは、単なる教宣活動の片棒担ぎ要請というよりは、中間における関連づけや意味づけへの貢献期待にあるといわねばならない。
 おそらくシンクタンク会合は一帯一路プロジェクトにとって欠かすことのできないものとの位置づけがあるといえよう。

 開幕式冒頭の約50分の習近平演説にも、いまだ中身のところでの模索が続いていることを示す材料があった。
 それは一帯一路プロジェクトのもつリスク評価に関わるものである。
 PPP(パブリック・プライベート・パートナーシップ)についての言及は、プロジェクトへの投資や融資に関連してなされた。
 先行きのリスクへの対応を巡って、他の国際金融機関との協調や民間からの関与歓迎という意味合いを含めて、PPPという概念が多分初めて提示されたのである。
 もちろんシルクロードファンドへの中国の増額にも触れたが、この金額は国際的なM&A事例でいえば、わずか1件に相当する程度の金額(1千億元、日本円で約1兆6千億円)に過ぎなかった。
 中国の内部においても投融資の基本は依然として煮詰まってはいないといわねばならない。

■AIIB本格稼働も相当先

  AIIB(アジアインフラ投資銀行)は融資を増やそうにも国際的な社債発行に踏み切れないでいる。
 それは債券発行時に求められる格付けの取得ができないからだ。

 AIIBにおけるガバナンス(統治)は、依然として投資家や格付け機関に発表できるほどのものになっていない。
 また融資の実施にあたって、当該プロジェクトの遂行時の基本、たとえば
 公開入札があるのかどうか、
 関連分野における需給状況はどのように反映されるのか、そして
 収益環境はどうか、また
 融資にかかわって、その利払いや返済に問題が生じたとき、AIIBはどのようにして貸金の保全を図るのか
などの基本のところで、依然として投資家の納得がえられるようなものは提示されていない。
 ということはAIIBが貸出しを大幅に増大させることができる時期は相当に先のことと考えるべきであろう。

 結局のところ秋の党大会の人事を前に、北京に相当数の各国首脳を集めること自体が目的化した催事だったのでは、という総括が今年の暮れの時点でなされる可能性が高いのだ。
 そして構想の中身の充実に中国のシンクタンクは今後懸命にならざるをえないだろう。



ロイター 2017年 06月 6日 08:29 JST
http://jp.reuters.com/article/china-silk-road-idJPKBN18W0JX?sp=true

焦点:貿易ハブか租税回避地か、
中国「一帯一路」の現実

[ホルゴス(中国・カザフスタン) 5日 ロイター] -
 中国・カザフスタン国境に位置するホルゴスの国際自由貿易区は、習近平・中国国家主席が進める「一帯一路」構想のお手本と位置付けられ、中国国営メディアがその成功ぶりを伝えている。
 今年中国で最大の外交イベントである先月の一帯一路国際首脳会議では、ホルゴス経済の盛り上がりを伝えるプロモーションビデオが繰り返し流された。

 しかし、中国ーカザフスタン国際国境協力センター(ICBC)を最近訪れた企業経営者や投資家予備軍は、誇大宣伝と現実のギャップに失望させられたという。
 ホルゴスは中国政府が思い描く21世紀の輝かしい貿易拠点というよりも、むしろ中国の租税回避地としての評判が高まりつつある。

 新疆ウイグル自治区の区都ウルムチから来たビジネスマンは
 「3時間見て回ったが、感銘を受けなかった。
 8時間かけて車でウルムチに戻った」
と語った。
 微妙な話題だけに、彼は姓を「マ」とだけ名乗った。

 このビジネスマンは高級クラブハウスの建設可能性を調査しに来た。
 企業経営者らは貧弱な計画や訪問者の少なさに不満漏らしているという。
 「安い中国製Tシャツでいっぱいのビニール袋を下げたカザフの農民を見かける」
とも付け加えた。

 中国側では、安価な消費者向け製品を扱う5つのショッピングモールがあるが、十分な客がいないと業者は不満気だ。
 モールの衣料品販売店の店員(56)は
 「丸一日座っていても、1枚も売れない日がある。
 金持ちのカザフ人もいるが、大多数は貧しい。
 彼らはここで20元(2.93ドル)のTシャツをしつこく値切る」
と語った。

 5.3平方キロの貿易区が開設されてから5年以上経つが、カザフ側は空き地が目立つ。
 カザフ側のICBC広報担当者によれば、63件のプロジェクトのうち投資家がついたのは25件にとどまる。
 1日当たり3000ないし4000人がカザフ側から入り、中国側からは1万人程度だという。

 新疆とホルゴスの当局は、取材に対しコメントを避けている。
 ホルゴスを訪問したばかりの新疆ウイグル自治区政府幹部の黄三平氏は、北京での記者会見でロイターに対し「ホルゴスは運営が非常にうまくいっており、活気に満ちている」と話した。

■<中国の租税回避地>

 中央政府は、新疆の戦略的な国境都市であるホルゴスの活性化のために税制面で数々の優遇措置を打ち出した。
 ホルゴスは中国と中央アジアを結ぶ重要な結節点に位置している。
 ホルゴスの税務当局によると、昨年2411社が現地で法人登記した。
 5年間は法人税が免除され、その後の5年間も法人税負担が半額になる税制上の優遇措置を利用するのが狙いだ。
 北京の投資銀行関係者は「ホルゴスでの法人登記は半数が税目的だ」とみている。
 最近現地にオフィスを開設した税務サービス会社、神州順利弁の関係者によると、中国では製造業企業がホルゴスで登記を行っており、金融サービスやIT企業の登記が増えている。

 しかし専門家によると、今の制度ではホルゴスや新疆での営業が義務付けられていないため、経済を潤す雇用や資金をもたらしそうもないという。
 ある関係者は
 「理論上は地元経済活性化のためにとても良い政策だ。だが、中央政府は、多くの企業が中国経済の中心からあまりにも遠く離れたホルゴスで営業したがらないという事実を考えていなかった」
と話した。
 さらに貿易関係者は「自由貿易区」で中国、カザフ両国からの規制にも直面している。
 カザフが加盟するロシア主導のユーラシア経済連合(EEU)は、カザフ側のあらゆる物品について、無税での輸入を月間50キログラムまでに制限している。
 一方で中国は、需要が最も強い食品の多くでカザフからの輸入を禁じている。

 中国の公務員から転身したあるビジネスマンは
 「EEUは大きな障害だ。
 ロシアやカザフ、他の中央アジア諸国は自国産業を育成したいと考えており、安い中国製品に日常的に依存したくないのだ」
と指摘する。

 清水河畔で牧畜業を営む男性(44)は、羊毛や漢方薬に使う薬草をカザフから中国に輸入したいという。
 彼は「政策転換がないか注視している。現在は羊肉や魚、薬草は輸入できない」と話した。

■<物流は活発に>

 一方、カザフ側では貿易量が急増し、並行特別経済区の計画が持ち上がっている。
 線路のゲージが違うため、中国の貨物列車からカザフ側の列車に貨物の積み替えが必要で、ホルゴスはその拠点となっている。
 カザフ側の商業部門担当者は「われわれの計画では、今年中に積み替える貨物の量を5倍に引き上げる予定だ」と話す。
 米HPや富士康科技集団(フォックスコン)はホルゴスの積み替え拠点を経由して製品を出荷する。
 船便よりも速く、航空便よりも安いためだ。
★.コンテナ1つを欧州に送る輸送費は、船は鉄道の3分の1で、空輸は5-10倍という。

 先月、中国遠洋(COSCO)と連雲港は、カザフ側運営会社の株式の49%を取得した。
 先のカザフスタン側の責任者はこれについて、より多くの中国企業が引き寄せられるチャンスになると期待している。

(Sue-Lin Wong記者、Mariya Gordeyeva記者)



ロイター 2017年 06月 16日 08:23 JST
http://jp.reuters.com/article/china-silkroad-pakistan-idJPKBN196321?sp=true

焦点:中国一帯一路、パキスタン契約獲得で見せた「力技」

[イスラマバード 14日 ロイター] -
 パキスタン政府は昨年、同国初の高圧送電線の建設に向けて、米複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)(GE.N)、独複合企業シーメンス(SIEGn.DE)、スイスの重電大手ABBと非公式な協議を行った。

 だが中国の配電大手「国家電網」が欧米ライバル勢の半分の工期で実現させると請け合い、総額17億ドル(1869億円)のプロジェクト契約をもぎ取った。
 パキスタンや他の多くの国で、これは「よくある話」だ。

 中国政府が、アジアからアフリカ、欧州までを陸路や海路で結び、一大経済圏を築くシルクロード「一帯一路」構想を今後10年の国家プロジェクトと位置付けるなかで、中国企業は、一帯のインフラ整備計画の「甘い汁」を独占しようとしている。
 中国国営メディアによると、昨年だけで中国企業は一帯一路の周辺国で1260億ドル(約13兆8600億円)ものプロジェクト契約を締結した。

 地理的にも中国政府の「シルクロード」計画の中央に位置するパキスタンでは、昨年だけで280億ドル以上の契約が、現地企業と合弁を組んだ中国企業との間で結ばれた。
 パキスタンのアッサン・イクバル計画改革相は、今後数年で200億ドル以上の新規投資が見込まれている、とロイターの取材に対し今週明らかにした。

 パキスタン政府は先月、中国との合同プロジェクトで初となる、出力1300メガワットの石炭火力発電所の完成を記念し、現地紙に全面広告を出した。
 こうした施設としては記録的早さの22カ月で完成したという。
 発電所は、中国国有の山東華能と山東如意化技集団(山東省)が所有する。

 「中国株式会社」の最大の強みは、政府の後押しを受けた中国の銀行が、シルクロード関連のプロジェクト融資を最優先で実行することにあると、両国政府の関係者は見ている。
 そしてこのことは、1億9000万の国民が毎日数時間も停電に見舞われているパキスタンで、停電をなくすために送電線網を整備する今回の様なプロジェクトでは、重大な意味を持つ。
 「(中国企業は)中国政府の支援を受けているため、その点で有利だ」
と、今年初めまでパキスタンの水利電力省幹部だったモハマド・ユナス・ダーガ氏は指摘する。
 ダーガ氏は商務省に異動する前、ロイターに対し、中国政府が融資審査を前倒ししており、銀行や保険会社にデュー・ディリジェンスの手続きを急がせていると述べた。

 中国政府の官僚は、個別の融資審査についてコメントに応じなかった。

■<優先融資>

 しかし、中国の政策銀行である国家開発銀行(CDB)と中国輸出入銀行(EXIM)の行員2人は、ロイターに対し、シルクロードプロジェクトのための中国企業向け融資を優先するよう政府から指示を受けたことを明らかにした。
 両行とも、地域一帯でのインフラ整備に参加する企業が、原材料や機材を中国から購入することを好むという。

 パキスタン国内には、中国企業と契約を結ぶことについて、プロジェクトの早期完成が見込める一方で、パキスタン政府のコスト負担がより重くなっているとの批判も出ている。
 パキスタン政府高官と電力関係者2人によると、例えば、高圧送電線プロジェクトにおいて、GEは送電線網の重要パーツである変電所について、国家電網の請求額より約25%安い金額で建設できるとの見積もりを出した。
 国家電網と契約したことで、パキスタン政府は高い価格を払うことになったという。
 パキスタンの電力規制庁高官は、国家電網は、他の投資家には提示されていない税制優遇を受けていると指摘する。
 パキスタン政府は、契約にからむ税制の問題についてコメントしなかった。
 国家電網の子会社で、送電線の建設を担う中国電力技術装備は、請求金額は適正だと主張する。
 「とても無理のないコストだ」と、パキスタンの国営送電公社(NTDC)のFiaz Ahmad Chaudhry氏は国家電網との契約全般について語った。
 中国外務省の華春瑩報道官は、パキスタンにおける一帯一路計画のプロセスは、「オープンで透明」であり、両国間の関係と地域の繁栄を強化するものだと述べた。

 パキスタンでの中国企業優位は、当面続きそうだ。
 シルクロード計画で、中国とパキスタンは、発電所や港湾施設、鉄道網や道路網など総額570億ドル規模のインフラ整備を計画している。
 中国の習近平国家主席は先月北京で行われた会議で、こうした計画は加速されると話した。

■<送電線>

 送電線の整備プロジェクトは政府間の契約で、沿岸部のマティアリ近郊に建設される複数の発電所と、東部ラホール周辺の産業地域の間の878キロを結ぶ計画だ。
 パキスタン政府高官によると、この計画は昨年12月に中国側の受注が決まったが、公式な競争入札は行われなかった。
 だが、2016年半ばに国家電網との協議が難航した際に、GE,シーメンスとABBへの接触が試みられたという。

 ダーガ氏は、昨年8月にパリで行われた電力会議の折りに、3社の代表と短時間面会し、送電線契約について非公式に協議したとロイターに明らかにした。
 パキスタン電力規制庁の資料と、GEの見積もりに詳しい人物によると、GEの変電所建設の見積もりが8億ドルだったのに対し、国家電網の初期段階の提案は12.6億ドルだった。
 これによりコストは抑えられるものの、シャリフ政権が問題にしたのは工期だった。
 シャリフ首相は、2018年8月に行われる総選挙の前に停電を解消させることを公約していた。
 そのため、ダーガ氏は西側企業に対し、国家電網と同様に、工期を27カ月に短縮するよう求めたという。

 「冗談でしょう、不可能だ、というのが彼らの返事だった」
と、ダーガ氏は振り返る。
 工期は最低48カ月必要というのが、西側企業の見立てだった。
 「彼らは、提案を用意し、銀行から融資を取り付けるだけで、最速でも8─9カ月かかると言った」
 ある西側のエネルギー企業幹部は、こうした面会があったことを認めた。
 この件に詳しい別の欧州企業幹部は、
 「国際企業は、このプロジェクトに入札する機会を得られなかった」
と述べた。
 GEとシーメンス、ABBは、取材に応じなかった。

■<時間の問題>

 パキスタン国内には、このプロジェクトを急がせる圧力があったと、政府や規制関係の官僚は指摘する。
 プロジェクトを許可した電力規制庁の高官は、中国側が提案を取り下げて契約が不調になる恐れがあるとして、国家電網の提示価格を受け入れるよう政府が規制庁側に圧力をかけたと述べた。
 パキスタン政府は、規制庁に圧力をかけたとの疑惑について回答しなかったが、過去に政府高官は、規制庁がプロジェクトの進行を遅らせているとの不満を口にしたことがあった。
 この電力規制庁の高官は、パキスタン政府が国家電網に対し、同社が利用者から徴収する料金にかかる7.5%の源泉徴収税を25年間免除する優遇策を提供したと述べた。
 他の企業には提示されていない優遇策だという。
 政府や国営送電公社は、税制優遇についての問い合わせに応じなかった。

 国家電網は、昨年12月に契約を締結した。
 ロイターが閲覧した公式書類によると、同社は総額17億ドルを請求。
 うち、変電所の建設費用は、当初の12.6億ドルから10億ドルに減額された。
 エネルギー相のクワジャ・アシフ氏は、パキスタンが中国をひいきしたり、電力網整備費用を過剰に支払っているとの指摘について、「その結論は、見当違い、または誇張されている」と述べ、否定した。

 水利電力省の元幹部アシュファク・マフムード氏は、パキスタンにはインフラ改善を必要とする現実があり、巨大な隣人への一定程度の依存は不可避だと語る。
 「中国側は、その機会に乗じたものだ。責めることはできない」

(Drazen Jorgic記者、翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)





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