2017年5月10日水曜日

朝鮮半島の行方(9):韓国親北政権の誕生の波乱

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 フィリッピンに続き韓国でも左派的な政権が誕生した。
 アジアは徐々にアメリカ離れを起こしているようである。


時事ドットコムニュース 2017/05/10-07:46
http://www.jiji.com/jc/article?k=2017051000191&g=int

文氏、韓国大統領就任へ
=指導者不在解消、革新時代に

 【ソウル時事】韓国の革新系「共に民主党」の文在寅氏(64)が10日午前、第19代大統領に就任する。
 任期は5年。
 過去2代続いた保守政権から交代し、9年ぶりとなる革新系政権が誕生。
 朴槿恵前大統領(65)の罷免に伴う指導者不在状態は解消され、文氏の下で韓国は新時代を迎える。

 中央選挙管理委員会は開票作業を終え、文氏は1342万3784票(得票率41.08%)を得て当選した。
 保守系「自由韓国党」の洪準杓氏(62)は785万2846票(同24.03%)、
 中道系「国民の党」の安哲秀氏(55)は699万8335票(同21.41%)
 だった。
 大統領罷免に伴う選挙だったことから、通常は2カ月近い政権移行期間がなく、大統領任期は中央選管が当選を確定した時点で開始。
 選管は10日朝にも全体会議を開き、文氏の当選を宣言する見通し。
 韓国メディアによると、文氏は10日正午ごろ、国会本会議場前のホールで略式の就任式を開き、就任宣誓を行うことを検討している。



現代ビジネス 5/10(水) 0:01配信 崔 碩栄
http://gendai.ismedia.jp/articles/-/51678

韓国新大統領・文在寅の「金正恩に対するスタンス」に国民動揺 
ダブルスコアで勝利も就任後に波乱の予感

 新しい韓国大統領が誕生した。
 盧武鉉政権の中心人物であり、2012年には保守与党の朴槿恵に僅か3.6%差で惜敗した文在寅が大統領選挙に再び挑戦、韓国第19代大統領に当選した。

 出口調査によると得票率41%で、2位に18%以上の差をつけての余裕の勝利だ。
 勝因は何よりも20代から40代からの高い支持を得たこと、そして同じ左派系の安哲秀候補が優勢と言われていた全羅道地域でも安候補を上回る支持を得たことを挙げられる。

 彼の当選に驚く人はいないだろう。
 1年前から数百回に渡って実施されてきた世論調査において、ただの1度も1位の座を譲らず、独走し続けてきたのだ。
 「大統領にならないのも難しい」という声が聞かれるほどで、2位の候補にダブルスコアの差でリードしてきた文氏の執権を疑う勢力は皆無に近かったのではないだろうか。

■対日スタンスはこれまでと変わらず

 韓国に新大統領、新政権が誕生すると、当然のことではあるが、日本社会はその人物の対日政策や日本に対するスタンスに注目する。

 しかし、今回の選挙戦においては文氏のみならず、他の候補者たちもまた「慰安婦合意」以外に日本に対する政策や基本スタンスについては言及していない。
 主要候補者5名は皆、慰安婦合意については再協議、あるいは破棄すべきとしており、多少の温度差はあったものの朴槿恵政権が交わした合意を遵守する意志はないという点で一致していた。

 このため、日本に対する具体的な政策(公約)などから日韓関係の今後を予測することは難しい。
 ただ、彼のこれまでの言動から感じられるのは、歴代政権がそうであったように基本的には協力、友好関係を維持しつつ韓国国民が敏感に反応する問題、即ち、独島(日本名:竹島)、慰安婦、歴史問題についてはある程度強気の姿勢を国民の前では示すだろうということだ。

 そして、日本が今注目すべきことは、日本について具体的にどのような発言をしてきたかという点ではなく、彼の対米、対北関係についてだ。
 日本とも密接に関わる問題であると同時に、同じ問題に対峙するとき日本政府が新政権とどの程度価値観を共有することができるのかを把握する事のできるポイントとなるからだ。

■「当選したらアメリカより先に北朝鮮に行く」

 まず、対米関係について見ていく。
 彼は2016年12月「当選したらアメリカよりもまず北朝鮮に行く」と宣言し周囲を驚かせた。
 彼にとって最も重要な外交優先順位が血盟であるアメリカではなく、北朝鮮であるとも取れる発言であったからだ。
 但し、この発言を巡って論争が起きると、彼は誤解だといって発言を修正、以後、外交政策のブレインである金基正をアメリカのジョンズ・ホプキンズ大学国際大学院で開かれた討論会に送り、自身の対米観、トランプ政権との協力を強調し、融和的な側面をアピールしている。

 だが、選挙戦の政策論争の焦点となっていたTHAAD問題については「再検討」を強調、事実上THAADミサイル「撤回」を目指す姿勢だ。
 THAAD配置が北朝鮮との緊張を高め、対話を行っていくうえで障害となりかねないというのが彼の主張だ。
 しかし、北朝鮮が米国に対しても核ミサイルを盾に威嚇するような現在の情勢を考えると、それでもTHAAD配置撤回を推し進めようとする文大統領が米国の信頼を勝ち取ることができるのか、疑問である。

 そして文大統領の対米観については、彼の自伝を見れば何よりも明確に理解することができる。
 彼は青年時代を回顧し「米国と南ベトナムの敗北を予言した本を読んで、後にそれが本当に実現した時(南ベトナムの敗亡と米軍の撤収)、私は『喜悦』を感じた」と語っている。

 アメリカはベトナムで5万8千人の戦死者を出し、韓国もまた5千人以上の戦死者を出した。
 そして、その時一緒に血を流したという認識は、韓米軍事同盟において重要な要素の一つとして認識されている。
 それが、そのような犠牲を前に「喜悦」を感じたというくだりを、果たして米国はどう評価するのだろうか? 

■「盧武鉉の夢を叶える」と公言

 文大統領が選挙戦において最も攻撃を受けたのが「北朝鮮に対する立場」である。
 彼が親北と目される理由は簡単だ。
 以前の保守政権下において中断された開城工業団地、金剛山観光に代表されるような対北経済協力の再開を目指すなど、北朝鮮に対し「優しい」政策を主張してきたからだ。

 仮に、文政権が過去の金大中、盧武鉉政権のように北朝鮮に対し莫大な経済支援を行えば、経済制裁で圧迫する米、日の試みは失敗に終わることになる。
 北朝鮮の核開発とミサイル実験を受け、北朝鮮に対する経済制裁を強化しようとする米国、日本からは許容し難い行為と受け取られても仕方がないだろう。

 彼の対北観を心配しているのは米国や日本だけではない。
 TV討論において「北朝鮮は『主敵』か? 
に対する彼の沈黙、答えを避ける様子は国民を動揺させた。
 また、韓国内の既得権勢力、親日勢力は「清算」をしなければならないと言いながらも、金正恩については「対話が必要である」とする姿は彼の安保観を疑われるきっかけとなった。

 彼は、韓国の保守勢力、つまり、国内における彼の敵対勢力を「燃やしてしまわなければならない」と発言したこともあるのだが、そんな過激な発言をする彼が、北朝鮮の独裁者については「対話をしなければならない」という。
 果たして、「友好国」日本を彼はどちらに分類するのか。

 基本的に文在寅政権のスタンスは盧武鉉政権のスタンスに近いものになるだろう。
 「盧武鉉の夢を叶える」と公言してきた文氏だ。
 外交、政治、労働、経済、安保についての考え方も大きくは異ならないだろう。
 まだ初めの一歩も踏み出していない文在寅政権ではあるが、韓国新政権との未来をシュミレーションする際には、盧武鉉政権のことを思い出してみるといいかもしれない。



産経新聞 5/9(火) 23:36配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170509-00000573-san-kr

韓国大統領選 韓国新大統領 親北・反日…日本の反応は

 韓国大統領選は9日、投開票が行われた。
 当選が確実となった文(ムン)在(ジェ)寅(イン)氏は北朝鮮との対話再開を目指す一方、「親日や独裁を受け継ぐ偽保守」を激しく批判するなど「親北」「反日」の姿勢を示している。
 日韓関係が抱える課題への取り組みで日本は難しい対応を迫られることになりそうだ。

■日米韓協力 綻び懸念

 北朝鮮による拉致被害者の救出に取り組む関係者からは、韓国が北朝鮮に対し圧力から対話へ軸足を移すことで、拉致問題解決に悪影響が生じることを懸念する声が上がった。

 「救う会」の西岡力会長は「北朝鮮に融和的な政権になれば日米韓の協力関係にひびが入る」と指摘。
 「北朝鮮への支援を復活させれば国際制裁に穴があく。
 米韓関係が緊張し、米国が韓国に二次制裁をかけることもあり得る。
 韓国内も政治的に不安定な状況が続くだろう」
と分析する。

 特定失踪者問題調査会の荒木和博代表は、
 「外交面で慰安婦問題などをさらに強調して仕掛けてくるかもしれない。
 拉致問題をはじめ、安全保障についても日韓の情勢が良くなることは考えにくい」
と述べた。

 拉致被害者家族会の代表で田口八重子さん(61)=拉致当時(22)=の兄、飯塚繁雄さん(78)は
「韓国も多くの拉致被害者を抱えているがこれまでも目立った取り組みはなかった。
 韓国政情が拉致問題に影響を及ぼすことはない」とした上で、
 「一番大事なのは、国内外の情勢に左右されず、日本自身が被害者救出に取り組む姿勢だ」と強調した。

■「誰がなっても同じ」

 韓国が不法占拠を続ける竹島(島根県隠岐の島町)をめぐる問題も解決の兆しが見えない。

 「李承晩ライン」を越えたとして昭和29年11月、乗っていた漁船が韓国に拿捕(だほ)され、約8カ月間の抑留生活を経験した元漁船乗組員の小川岩夫さん(78)=松江市=は
 「反日感情の厳しさは、抑留当時も今も変わらない。誰が大統領になっても同じ」
という。

 「竹島の日」条例を平成17年に制定した島根県議会の成相(なりあい)安信議員(65)は
 「文在寅氏は、昨年7月に竹島へ上陸した人物。
 単なるポーズというより、確固とした歴史観の持ち主という印象だ。
 韓国と島根県との間の取っ掛かりがさらに遠のくという危機感を覚える」
と話した。

■「ルールに従い検定」

 慰安婦問題などの歴史認識をめぐり、日本の教科書の内容に対する抗議を繰り返し、圧力をかけてきた韓国。
 日韓合意後の平成28年度の高校教科書検定(30年度から使用)でも、竹島を日本の「固有の領土」と記述した教科書が合格したことに「歪(わい)曲(きょく)された歴史認識を盛り込んだ高校教科書を再び検定通過させた」と強く反発してきた。

 「大統領が決まれば、さらに日本の教科書への介入が強まるだろう」
と指摘するのは麗澤大の八木秀次教授。
 一方で、
 「文部科学省が毅(き)然(ぜん)として粛々とルールに従って検定を行っていくだけだ」
と強調し、教育評論家の石井昌浩氏も
 「韓国と日本にはそれぞれ歴史的な事情がある。日本は日本の立場で対処すればいい」
と話した。



ダイヤモンドオンライン 2017.5.16 真壁昭夫:法政大学大学院教授
http://diamond.jp/articles/-/128056

文政権の政策で韓国に
経済混乱・国際的孤立・半島不安定化の懸念

 韓国の大統領選挙で「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)氏が当選した。
 これは、韓国で9年続いた保守系の政権から革新系の政権へと、政治の流れが変わったことを意味する。
 新大統領の基本政策は、
 北朝鮮との融和・対話の重視、
 日米との距離を保つ外交政策、
 財閥解体
 大規模な雇用創出
と見られ、これまでの保守系政権とは異なる。

 何よりも、北朝鮮の脅威に対して、国際的に連携し同国に圧力と制裁をかけ、核開発の放棄を迫ってきた行動とは全く違ったアプローチがとられようとしている。
 文政権下の韓国は国際社会から孤立してしまう恐れがあり、朝鮮半島情勢が一段と混迷する懸念はむしろ高まっていると言える。

■保守政権とは違うアプローチ
「財閥解体」で逆に民間活力を削ぐ恐れ

 政治的な潮流の変化や政策転換の影響は、様々な論点、見解があるが、財閥の改革を抜きにして文新大統領の改革を論じることはできないだろう。
 李明博(イ・ミョンバク)、朴槿恵(パク・クネ)と続いた保守系政権の下で財閥企業を優遇する政策が進められた。
 この結果、経済格差が拡大した。
 特に、朴前政権下での財閥系大手企業と政治家や大統領側近の癒着が発覚して以降、保守政治への反感は高まってきた。
 有権者の不満をうまく取り込むことで、文氏は大統領の座を射止めた。

 戦後、韓国では経済発展のために政府が主要財閥を支援、財閥企業はその庇護の下で輸出を中心に、収益を獲得するビジネスモデルが追求されてきた。
 国内の消費市場が小さい中で、輸出主導の経済は、海外情勢に揺さぶられることも多く、アジア通貨危機の際には、国際通貨基金の管理のもとで、財閥の解体などが進められたこともあった。
 だが根本的な問題は是正されず、むしろ、李政権以降は、政府主導で業種ごとに財閥企業を核にして海外市場を狙う積極的なグローバル戦略が展開されてきた。

 こうした過程で、経済活動で生み出された富の多くが財閥企業関係者や有力政治家の間で分配されるシステムはむしろ強固になり、財閥や有力政治家と「縁故」を持たない一般の人々に成長の果実を公平に分配するシステムができていなかった。

 韓国は経済の民主化を進めて、民間企業の活力を高めなければならない。
 財閥改革を進めることは、韓国経済の民主化を進めることに他ならず、理論的にこの発想は正しい。
 だが韓国経済に深く根を下ろす「疑似資本主義」体制を変えることは容易ではない。

 サムスンや現代などの財閥系の企業を解体すれば、さらに雇用が悪化、賃金も伸び悩むなど、経済には当面、マイナスの影響のほうが強く出るだろう。
 財閥グループ以外の企業の競争力に不安がある中、財閥解体は逆に民間部門の活力を削ぐことになりかねないのである。

■プロの経営者の登用を
成果あがらないと国内不安定に

 現時点で、現実的だと思われる財閥の改革は、一族経営ではなくプロの経営者を登用することだ。
 選挙公約では、大財閥から順次、労働者の経営参画に道筋をつけることも掲げられているが、韓国企業に必要なのは、経営者一族の富よりも、公正かつ効率的に付加価値を生み出す仕組みを整備することだ。
 プロの経営者が経営を担うことで、非効率な企業経営の部分が明らかになり、業界再編が進む展開も考えられる。
 また、従業員や下請け企業との間で合理的な富の分配を可能にするだろう。

 文政権は雇用の創出にも取り組むとみられる。
 財閥企業に優先的に事業の許認可を出してきたが、今後は規制を緩和しつつ、中小企業の育成を重視した政策に切り替えることで、産業の基盤を強化することはできるだろう。

 選挙公約では「公共部門で80万人、民間で50万人の雇用創出」を掲げ、政府の財政支出を計画の2倍のペース、前年比7%増にする積極拡大策をするとしている。
 だが財源などは明示されておらず、どこまで実行されるかは不透明だ。
 財政をばらまき当面の不満を抑えることに行き着くのではないか。

 財閥改革は重要だが、現実の韓国経済は財閥なくして成り立たずといっても過言ではない。
 それ以外の企業の競争力に不安がある中で、「改革」を徹底しようとするほど、国内経済の混乱は大きいものにならざるを得ない。
 政策転換の成果が上がらない中で、変化を求め、新しい取り組みに期待した有権者の失望感はかなりのものになり、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時のように、大統領支持率が低迷し、政治・経済がふらつく展開に陥る恐れもある。

 世界経済を俯瞰すると、主要国の政治は米トランプ政権に象徴されるように、「内向き志向」を強め、自国への製造業回帰などによる雇用創出を重視している。
 そういう状況で韓国が、国内の痛みを、輸出で補おうとしても限界がある。
 文政権が日米から距離をとろうとしていることもマイナス要因だ。
 韓国が孤立への道を選択しつつあるように見える中で韓国ウォンが下落し、企業の資金繰りが行き詰まる展開も排除はできないだろう。
 韓国が自力で改革の痛みを吸収できるかは不透明だ。

 韓国は例えば、対外債務などの支払いが厳しくなった時に手持ちの通貨を融通し合う日本との通貨スワップ協定の協議を再開するなど、日米との経済的な関係をより緊密化する道を選ぶべきなのだ。

■日米と距離置く安保外交政策
南北ともに孤立深め、不安定に

 足許、核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮問題と米韓が軍事衝突する懸念はやや後退しているが、 韓国は、北朝鮮という脅威にも晒されている。 
 政策転換を掲げる韓国の革新系新政権の誕生で、複雑な朝鮮半島情勢の不透明感は一段と高まったと見るべきだ。
 さきの米中の首脳会談や、その後、中国による北朝鮮への制裁が強化されたことを見るると、トランプ大統領と習近平主席との間で、北朝鮮問題に関する認識が共有されたと見る専門家は多い。
 朝鮮半島で有事が勃発すれば、米国との直接対峙を避ける「緩衝国」の役割を担ってきた北朝鮮を失うことを恐れて中国が北朝鮮の暴走を抑えるだろうという米国の目論見は、いまのところ、当たった形だ。

 今後も中国は北朝鮮に対する圧力を強め、ミサイル・核開発の放棄を求めるだろう。
 トランプ米大統領はロシアのプーチン大統領とも電話会談を行い、朝鮮半島情勢に関する一定の認識を共有したと見られる。

 ただ、北朝鮮が核開発を止めるとも考えづらく、14日も弾道ミサイルを発射して、韓国新政権を「威嚇」するような行動をとった。

 米中露が一定の見解を共有したとの見方が正しければ、北朝鮮の孤立は深まるだろう。
 だがそれに加えて、韓国の新政権が日米との距離をとり始めると、韓国までもが「北朝鮮包囲網」から遠ざかることにつながる。

 韓国と日米の距離感が、想定以上に広がってしまう恐れもあり、また経済改革がうまく進まない中で、韓国社会の混乱や不安定が強まれば、北朝鮮に自制を求めることも難しくなるだろう。

 今後、38度線を挟んで米中の緩衝国となってきた北朝鮮と韓国が、強力な後ろ盾から後ずさりし、距離を置く状況が鮮明になるシナリオは排除すべきではない。
 いわば、米中など大国が朝鮮半島に作った安定の“枠組み”が弱まって、力の「真空状態」が生まれることになる。
 それがきっかけになって南北の対話が進むのか、あるいは朝鮮半島情勢が一段と不安定になるのか。
 「吉」出るか「凶」となるかは、今後の展開次第だが、不透明感は一層、強くなったといえる。

■慰安婦問題で反日姿勢強まる
必要なのは冷静さと大人の対応

 日本は新政権とどう向き合えばいいのか。
 朝鮮半島情勢の混迷がひどくなることは、日本にとっても好ましいことではない。
 安全保障上の問題に加えて、地政学リスクが高まると、経済・金融市場にはマイナスの影響が波及しやすい。
 それは4月上旬から半ばに北朝鮮問題への懸念から株価が下落し、円高が進んだことからも推察される。

 問題は、朝鮮半島問題に関して、日本が単独で、直接できることには限りがあることだ。
 安全保障面では米国との関係を重視してうまく協調することが求められる。
 それに加えて、中国、ロシアとの関係を着実に詰めておくことも欠かせない。

 それを進めながら、韓国新政権の政策運営を冷静に分析し、出方を見極めることが現実的な対応だ。
 文政権はこれまで以上の反日姿勢を示し、慰安婦問題の再交渉などを求めるだろう。
 ただそうした韓国を感情的に批判するだけでは何も生まれない。
 慰安婦問題では、2015年12月の「最終的かつ不可逆的な」政府間の合意の遵守だけを冷静に求めればよい。
 何を言われても、この姿勢を重視すべきだ。
 同時に「韓国の孤立化」を防ぐために、協力すべき問題では「大人の対応」をすることだ。



サーチナニュース 2017-05-17 10:42 水野隆張
http://news.searchina.net/id/1635838?page=1

【コラム】北朝鮮への最終段階における米中の対応

■韓国新大統領に対する日米中の祝意表明の仕方の違い

 北朝鮮と融和政策を打ち出している民主党の文在寅新大統領が若者の圧倒的支持を集めて当選した。
 これに対して日米中の祝意を表明する方法は異なっていた。
 中国の習近平国家主席は直ちに祝電を打ったが、
 米ホワイトハウスは短い声明を発表するも、トランプ大統領はコメントはせず、
 安倍晋三首相は声明を発表したものの、日米とも祝電は打たなかった。

 文在寅新大統領は就任後初めて習近平国家主席と電話会談を行った。
 中国は米新型ミサイルTHAAD(サード)韓国配備に強く反発しており、韓国新政府は中国の懸念を重視し、両国関係の安定した発展を促進していくことを望んでいると中国に伝えたと言われている。

 中国国防部は韓国大統領選の当日、渤海海域で新型弾道ミサイル実験を実施したといわれており、これは、韓国大統領への警告が含まれているとみられている。

■文在寅新大統領が最初にやらなければならないこと

 文在寅新大統領がまず最初にやらなければならないことは停滞する韓国経済の立て直しであろう。
 韓国マスコミも
 「大統領就任後に経済の苦境を脱するプランが打ち出せなければ、国民の不満はより鬱積することになる」と指摘している。
 日韓関係については「慰安婦問題の見直し」を掲げているが日本政府は断固として拒否する構えであり、経済の立て直しには日韓経済協力は避けられないところから新大統領の手腕が問われるところである。

 また、最大の貿易パートナーである米国が保護主義に走っている厳しい状況の中で、トランプ大統領はTHAAD配備の費用負担を求め、自由貿易の破棄を示唆するなど同大統領の言動には憂慮の声が出ているが、韓国は経済面でも安全保障面でも米国に依存せざるをえず、トランプ大統領とうまくつきあっていくことも重要課題の一つといわれている。

■米中にとって“緩衝地帯”としての北朝鮮は価値がある

 中国は6カ国協議の復活を提唱しているが北朝鮮は各国から”袋叩き”にされることを恐れ、飽くまでも米国との2国間直接対話に大いに意欲を持っているということである。
 超大国、米国が相手の2国間対話なら大歓迎というのである。
 米中両国にとっても北朝鮮が滅びて、韓国に吸収されると困るということである。

 中国にとっては、“緩衝地帯”としての北朝鮮は価値があるのであって、中国にとっては隣の国は小さいほうがいいのである。

 米国にとっても同様に、北朝鮮の脅威が、在韓米軍、在日米軍の存在価値を高めているのである。
 そこで米国も「金暗殺」などの体制崩壊は目指さず、「非核化」実現を最優先する方針を示している。 
 米中連携による「瀬戸際圧力」に対して、北朝鮮も外交委員会を19年ぶりに復活させるなど対話に向けた方策を模索し始めている。

 一方、トランプ政権も、経済制裁の強化や外交攻勢で北朝鮮への圧力を強め、核ミサイル開発放棄に向けて「対話の道に連れ戻す」との基本方針を議会に説明している。
 現状では両国とも、硬軟両様で相手を探りながら妥協へ向けて駆け引きを行っており、願わくば多くの犠牲を伴わない形での妥結が望まれるところである。

(執筆者:日本経営管理教育協会・水野隆張氏)
(写真は、38度線にあった北朝鮮との国境模型図。日本経営管理教育協会が提供) 



AFP=時事 5/17(水) 19:43配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170517-00000034-jij_afp-int

韓国大統領、北朝鮮との軍事衝突について「可能性高い」と警鐘

【AFP=時事】韓国の文在寅(Moon Jae-In)大統領は17日、核開発や弾道ミサイル発射により緊張が高まっている北朝鮮について、両国が国境沿いで軍事衝突に陥る可能性が高まっていると警鐘を鳴らした。

 先週就任したばかりの文大統領は国防省を訪れ、北朝鮮の核およびミサイル開発が「急速に進歩」していると指摘するとともに、
 「私は北の挑発や核の脅しを許容しない」
とし、軍部に「水も漏らさぬ防衛体制」を取るよう求めた。
 また、係争海域である両国西岸沖や厳重な防御体制が敷かれた国境線において、
 「われわれは(北朝鮮との)軍事衝突が起きる可能性が高いという現実の中で生きている」
と語った。