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トランプは中国と北朝鮮にかかりっきりきりである。
そのとばっちりが東南アジアに出てきている。
トランプは東南アジアとどうかかわるのか、それがまるで見えてこない。
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Record china配信日時:2017年5月11日(木) 9時30分
http://www.recordchina.co.jp/b177634-s0-c10.html
東南アジアで米国の声望をへこませたトランプ氏、
中国の影響力最大に―香港紙
2017年5月9日、参考消息網によると、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストは8日、米国の新政権がアジアの同盟国と交流を欠いていることからワシントンの評判は打撃を受けており、北京が東南アジアで戦略的空白を埋める扉を開くとする新たな調査結果が発表されたと伝えている。
シンガポールの研究機関、ISEAS−Yusof Ishak Instituteが、東南アジアの318人を対象に行った調査で、半数以上がトランプ米大統領の就任以降、米国が戦略的地位を中国に奪われており、中国がこの地域で最も影響力のある国となっていると考えていることが分かった。
外交専門家は
「この調査結果は、中国の主張が強まる中で、米国の意図的で緩やかな撤退に対する東南アジア諸国の懸念の広がりを反映したものだ」
と指摘する。
この調査結果は、ティラーソン米国務長官が、ワシントンで東南アジア諸国連合(ASEAN)との外相会議を開き、ASEAN諸国に対する米国の安全保障面での約束をようやく更新した先週に公表されたものだ。
調査に協力したASEAN諸国10カ国の政府、学界、企業、メディア、市民などの回答者の70%以上が、
★.米国の評判はトランプ政権下で悪化したもしくは大幅に悪化したとの認識を示している。
米国の環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を含むトランプ氏のこの地域に対する無関心さを受け、54%を超える回答者が米国の信頼度は4カ月前よりも低くなっていると答えている。
この地域の多くの人々は、米国の関与が地域の安全保障に重要だと考えており、68%が主要な貿易ルートである南シナ海の紛争海域での「航行の自由作戦」を継続すべきだとしている。
一方で、米国が現在または10年後もこの地域で最大の影響力を持つ国だと考えている人は3%をわずかに上回る程度にとどまり、75%近い人が、中国がすでに東南アジアにおける支配的権力となっており、その影響力は今後10年間で拡大するとみている。
また65%近い人は、自由貿易や人権、国際法を守るために米国を信頼することはできないと答えている。
中国政府系のシンクタンク、中国社会科学院の東南アジア問題専門家、許利平(シュー・リーピン)氏は、調査結果について
「トランプ政権に軽視されているかもしれないという東南アジア諸国の不安の増大をリアルに表している」とし、
「周囲を強国に囲まれた東南アジア諸国はバランスゲームを慎重に行う必要がある。
中国の拡大しつつある影響力と米国の影響力の弱まりを目にし、こうした思いが混ざっているのだろう」と分析する。
その上で、
「中国は近年、東南アジアの近隣諸国との政治的・経済的関係の強化に努めているが、その影響力を過大評価してはならない。
東南アジア諸国は依然として、米国がこの地域の問題に関与し、中国をけん制することを望んでいる」
とも指摘している。
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ニューズウィーク日本版 5/12(金) 10:00配信
From Foreign Policy Magazine
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/05/post-7574.php
結局は中国を利するトランプの素人外交
<強気の発言はどこへやら、右往左往する素人集団のトランプ政権。
一貫性を欠く政策に同盟国の信頼は揺らぐ一方だ>
ドナルド・トランプ米大統領がフィリピンのロドリゴ・ドゥテルテ大統領をホワイトハウスに招待した。
ドゥテルテといえば、麻薬戦争で殺人も辞さず、「犯罪者」を自分の手で殺したと豪語するなど、人権侵害が問題視されている人物だ。
それでもアメリカの重要な同盟国の指導者には違いない。
トランプは(歴代の米大統領と同様)倫理的な懸念よりも戦略的インセンティブを優先し、アジア・太平洋という極めて重要な地域で現実的な政策を推進しているにすぎない――。
そうした見方もあるかもしれない。
なるほど、表面的には現実政治の典型に見えなくもない。
しかしそうした見方は現実とは懸け離れている。
リアリスト(現実主義者)にとって、アメリカの安全保障のカギは、南北アメリカ大陸で地政学的優位を堅持し、競合国がヨーロッパやアジアの要所を支配したり、ペルシャ湾周辺の主要なエネルギー資源を牛耳ったりしないようにすることだ。
アメリカを除けば、世界で現在「地域覇権国」となる可能性がある国はただ1つ――中国だ。
従って、リアリストにとってアジアにおける最優先課題は、中国がアジアでの優位を強化し、最終的には周辺国にアメリカとの安保協力を破棄させるのを阻止することだろう。
協力を破棄されたら、アメリカは西太平洋や東南アジアで大規模な軍事プレゼンスを維持できず、中国が事実上の地域覇権国になるはずだ。
中国はやがて今のアメリカのように他の地域でも意のままに力を誇示するようになり、南北アメリカでも安保協力を確立しようとさえするかもしれない。
当然、アジアにおける現実主義的アプローチは、アメリカが中国の動向に目を光らせ、時にはアジアの協力国と微妙な均衡の上に巧みに連携していくことを必要とする。
これは難題で、一貫性と慎重な判断と賢明な外交、それに信頼できる軍事力が必要だ。
トランプ政権になっても軍事力はまだ十分残っているが、それ以外の資質は十分とはいえない。
■不信感を募らせる同盟国
【参考記事】文在寅とトランプは北朝鮮核で協力できるのか
トランプのこれまでの言動を振り返ってみよう。
まず就任前、祝意を伝える台湾の蔡英文(ツァイ・インウェン)総統からの電話を受けて、台湾を中国の一部と見なす「一つの中国」政策の見直しを示唆したが、その後に撤回。
就任4日目にはTPP(環太平洋経済連携協定)離脱を指示する大統領令に署名し、アジアの多くの国々との関係強化につながる重要な協定を台無しに。
合意に尽力した各国指導者たちの国内での支持や影響力に打撃を与えた。
オーストラリアのマルコム・ターンブル首相との電話会談では、難民受け入れをめぐり激怒し、一方的に電話を切ったと報じられた。
これを受けて、アメリカとの長年の絆はオーストラリアにとってメリットがあるのか、との疑念に拍車が掛かった。
朝鮮半島でもトランプは重要な同盟国との関係を危うくしている。
現在配備中のTHAAD(高高度防衛ミサイル)の費用を韓国が負担すべきと主張し、米韓の自由貿易協定(FTA)の再交渉もしくは停止を示唆したのだ。
米国防総省が慌ててTHAADの費用は合意どおりアメリカが負担すると訂正したものの、これではワシントンの一貫性や判断に対する同盟国の信頼が強化できるはずがない。
トランプは北朝鮮との戦争の可能性も高めている(戦争になれば韓国への影響は破滅的だ)が、強硬姿勢を見せたと思いきやなぜか実現すれば「光栄だ」と金正恩と会談する意向を示唆。
自国の空母の所在を間違えた後だけに、アメリカの指導力に韓国側が懐疑的になるのも無理はないだろう。
問題はそれだけにとどまらない。
トランプは中国をライバル、その台頭を抑止すべき相手と考えるどころか、中国にこびている。
対北朝鮮政策などで支援を取り付けるのが目当てだ。
(トランプのビジネス上の利益ではなく)アメリカの国益が中国と一致するなら中国と協力して一向に構わないが、そうしたアプローチが中国の周辺国の疑念を呼ぶのは必至だ。
中国がアジアのリーダーだという認識を強める結果にもなる。
実際にそうなったら、アジアのどの国がアメリカとの密な関係を維持したがるというのか。
ドゥテルテに衝動的に接近したこともトランプ政権の素人ぶりを露呈している。
重要な同盟国との関係改善を試みたと言えなくもないが、問題はトランプが誰にも相談せず、ドゥテルテ本人の意向も確認しないまま、招待を公表した点だ。
政治のプロなら承知しているとおり、ホワイトハウスに招待するというのは一大事。
入念な下調べをし、当事者双方が合意した上で公表するのが鉄則だ。
あいにくドゥテルテは忙し過ぎて招待を受けられないかもしれないと発言、トランプの面目は丸つぶれになった。
【参考記事】トランプはドゥテルテをホワイトハウスに招いてはいけない
■まるでドタバタ喜劇のよう
言うまでもなく、こうした手法はおよそ外交政策の現実主義とは対極にある。
現実主義者にとって国際政治は極めて重要な問題であり、カギを握る地域と未来のライバルが絡んでいる場合はなおさらだ。
現実主義は好ましいパワーバランスを保ち、不可欠な同盟を巧みに管理し、何より、敵も味方もアメリカの行動に見合った行動が取れるようにすることに重点を置く。
このことを指導者が承知している国であれば、人員不足の国務省や適任でない娘のイバンカやその夫のジャレッド・クシュナーを当てにしたり、重要な外交関係を検閲なしのツイート任せにしたりはしないはずだ。
トランプ流の外交政策は連続コメディーや喜劇オペラのネタとしては最高だろうが、アメリカにとっては破滅的であると同時に屈辱的だ。
アメリカは最悪の道を進んでいるようだ。
トランプは次第に外交政策のエスタブリッシュメントに捕まり、吸収され、封じ込められて、選挙運動中に公約した過激な改革は、マイケル・フリンやセバスチャン・ゴーカといった無能な大統領補佐官らともども徐々にお払い箱にされている。
その結果どうなるか。
アメリカは過去四半世紀の大半と同じように、野心的過ぎる外交政策を推進し、引き続き世界の出来事のほとんどを管理しようとするだろう。
ただし舵取り役はプロではなく、経験不足で衝動的で適性に欠ける人物だ。
この不幸な状況は筆者のような職業の人間には題材の宝庫だが、アメリカにとってはプラスにならず、現実主義には程遠い。
そしてアメリカの不幸を願う連中にとっては思う壺だろう。
From Foreign Policy Magazine
[2017年5月16日号掲載]
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東洋経済オンライン 5/20(土) 10:00配信 湯浅 卓 :米国弁護士
http://toyokeizai.net/articles/-/172552
トランプ大統領「一発逆転戦略」のスゴイ中身
ドナルド・トランプ米大統領は、目下、ロシアに関係した2つの疑惑について、野党民主党や米メディアに激しく追及されている。
★.1つは、昨年の米大統領選に絡んだトランプ陣営とロシア政府との癒着疑惑と、それを追及している連邦捜査局(FBI)に対する捜査妨害疑惑、
★.もう1つは、トランプ大統領によるロシア外相への機密情報漏洩疑惑だ。
この2つの疑惑追及でトランプ大統領は、以前にも増して窮地に立たされている。
とはいっても、どんな逆境にも強靭でしたたかなトランプ氏のことだ。
そんな窮地にもひるむことなく、退勢挽回のチャンスを虎視眈々と狙っている。
■ミュラー特別検察官は弾劾追及まで行くか
5月17日、そのロシア絡みの第1の疑惑を捜査するFBIを監督する特別検察官に、ロバート・ミュラー氏が任命された、と米司法省が発表した。
ミュラー氏は元FBI長官であり、つい最近、解任されたジェームズ・コミー氏の前任者である。
ブッシュ・ジュニア元大統領、バラク・オバマ前大統領時代にFBI長官として実績を積んだ。
コミー氏はミュラー氏の部下だった。
ミュラー特別検察官の任命について、米議会では、共和党、民主党とも、もろ手を挙げて賛成している。
FBI長官としての実績があり、公正な判断をする法律家としての評価が定まっているからだ。
■「第2のウォーターゲート」となるのか?
トランプ政権に批判的な米メディアや民主党議員の間では、大統領を罷免する弾劾論も出始めている。
ミュラー特別検察官の追及がどこまで行くか。
「第2のウォーターゲート」「ロシアゲート」という大統領弾劾追及まで行くのか。
現段階では、捜査対象はロシア政府とトランプ陣営のスタッフがどう関与したか、ということであり、トランプ氏は捜査対象にはなっていない。
その点では、弾劾が確実だったので、自ら辞任を選んだリチャード・ニクソン元大統領や、首の皮一枚でしのいだビル・クリントン元大統領のときの、過去の弾劾事案とは違う。
トランプ大統領の関与は間接的であり、ダメージは軽いといえる。
ただ、トランプ大統領にとって、政治的プレッシャーが大きいことは間違いない。
■議会の追及からは逃れられる可能性
もう1つ、ロシア絡みの第2の疑惑について、議会が調査、追及を始めようとしていたのは、トランプ大統領がロシアのセルゲイ・ラブロフ外相との会談で、イスラム過激派組織「イスラム国」(ISIS)について、機密情報を同盟国の許可を得ずに漏洩したという疑惑だ。
ニューヨークタイムズ紙によると、その機密情報はイスラエルが米国に提供したものだという。
イスラエル情報当局は米メディアに対して、情報提供国と調整せずに情報共有することは、極めて不適切として、トランプ氏の行動に激しい怒りを表しているというのだ。
米議会は、このトランプ氏の漏洩疑惑の調査に乗り出そうとしていた。
トランプ政権はその疑惑を全面的に否定し、その証拠もないと主張している。
ただ、メディアがいろいろ報じている疑惑問題を議会としても放置できない。
議会には調査権限がある。
ところが、今回、ミュラー特別検察官が任命されたことによって事情が変わった。
ロシア政府との癒着疑惑やロシア外相への機密漏洩疑惑について、政治的には、独立機関である特別検察官のミュラー氏の肩越しに調査がしにくくなりだした。
つまり、ミュラー氏が直接相手にするのは「トランプ陣営のスタッフたち」であり、ミュラー氏が特別検察官に選ばれる前に比べると、皮肉なことに、ISIS絡みの機密漏洩疑惑で「トランプ氏自身」を狙っていた議会の調査、追及は弱くなる可能性が出てきた。
トランプ大統領にとっては、ひと安心といったところだ。
■北朝鮮カードで大逆転のチャンス
とはいえ、トランプ大統領がかなり深刻な窮地に追い込まれていることは間違いない。
その窮地を脱するために、トランプ大統領の脳裏をかすめているに違いない鮮烈な記憶は、ほかでもない、4月6~7日の米中首脳会談最中に決断したシリアへの攻撃だ。
それは中国の習近平国家主席への強烈なメッセージとなった。
すなわち、北朝鮮の核放棄への圧力に狙いを定めた、シリア空軍基地へのミサイル攻撃という軍事力行使は、アメリカ国内でも評価され、トランプ政権への支持率は高まった。
同時に、北朝鮮の暴発によって引き起こされるかもしれない、米軍の先制攻撃の可能性も高まった。
この北朝鮮カードは、トランプ大統領にとって、ピンチを脱する大逆転のチャンスになる可能性がある。
場合によっては2020年の再選を目指すこともできるかもしれない。
これまで北朝鮮問題は中国の習主席を仲介として取り組んできた。
ところが、ロシア絡みの問題が出てきて、このまま中国に肩入れしたままではらちが明かない。
中国だけでなく、ロシアとの協力で北朝鮮に立ち向かう。
トランプ大統領自身が直面している窮地を脱し、しかも、米議会を黙らせ、押さえ付けることができるような離れ業とはいったい何か。
おそらく、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領を仲介として、北朝鮮の金正恩労働党委員長とトップ会談を実現させることではないか。
■トランプ大統領の「ウルトラC」戦略
トランプ大統領は昨年の選挙戦中から、金正恩委員長との直談判したいようなことを何度も言っていた。
「ハンバーガーを食べながらおしゃべりしてもいい」とか、
「金委員長がアメリカに来るなら受け入れる」とか。
大統領に就任してからも、最近では4月30日の米CBSテレビの番組で、金委員長のことを「なかなかの切れ者」と持ち上げてみたり、5月1日には、「適切な状況下で会えれば、光栄だ」と語った、とBBCが伝えている。
その適切な状況下とは、どういう状況か。
ベストな状況とは、北朝鮮が中国ないしロシアの仲介によって、核・ミサイル開発を凍結するなど、大きな譲歩を決断するような状況だろう。
その意向を金委員長がトランプ大統領とのトップ会談で示せることができれば、それこそトランプ氏にとってベストシナリオだ。
■もし米朝首脳会談が実現すると?
もしロシアのプーチン大統領の仲介で米朝首脳会談が実現すれば、いまトランプ大統領を窮地に追い込んでいる、ロシア絡みの2つの疑惑など吹っ飛んでしまう。
米議会ももはや文句をつけられない。
「手がクリーンでなければ、相手に文句はつけられない」という言葉が、アメリカ法にはある。
北朝鮮問題を放置して、何もしなかった歴代の大統領はもちろん米議会も、手はクリーンではない。
そんな議会に、トランプ氏を責める権利はない。
■米議会はトランプ氏に何の文句もつけられない
アメリカ法は、コモン法(慣習法)と衡平法の2つで成り立っている。
前述の言葉は、後者の衡平法の概念からきている。
その考え方は、バランスがよく取れた裁定である。
いわば「大岡裁き」のような、情理を尽くした名判決といえるだろう。
アメリカ国内では、衡平法は裁判官の法ともいわれる。
トランプ大統領が敬愛する姉のマリアン・トランプ連邦控訴(高等裁判所)裁判官は、もちろんそのことを熟知しており、常日頃、弟のトランプ氏にアドバイスしているに違いない。
その成果が実っているともいえよう。
そんなバランスの取れた名裁きの条件が整えられれば、米議会はトランプ氏に何の文句もつけられない。
トランプ氏が、ロシアの仲介で、最も厄介な北朝鮮の核開発停止に一定のメドをつけることに成功すれば、その可能性は十分ある。
それどころか、トランプ氏は議会を黙らせることもできるようになる。
さらに2020年の再選の可能性も出てくる。
それはまさにトランプ大統領の「ウルトラC」戦略だ。
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