2017年5月19日金曜日

北朝鮮に追い詰められる中国(4):新型ミサイルはレッドラインを越えたか?

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朝日新聞デジタル 5/22(月) 3:01配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170522-00000005-asahi-int

北朝鮮対応「100日猶予を」 
中国・習主席、米に要求

 北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐり、中国の習近平(シーチンピン)国家主席が4月初旬のトランプ米大統領との会談で、米国が北朝鮮に対して具体的な行動をとるまでの猶予期間として「100日間」を求めていたことがわかった。
 この会談で合意した両国の貿易不均衡是正についての100日計画と並行し、安全保障分野でも同じ期限を設定した格好。
 ただ北朝鮮は21日も弾道ミサイル発射を強行しており、どこまで効果が出ているか不透明だ。

 米国や日本の複数の関係筋が明らかにした。
 会談でトランプ氏は、北朝鮮の対外貿易の約9割を占める中国に経済制裁を強めるよう求めた。
 その上で、中国が協力しない場合、北朝鮮と取引がある大手金融機関を含む複数の中国企業を制裁対象に加える米政府独自の新たな制裁を検討していると説明したという。

 中国企業が制裁対象になれば米国の金融機関や企業との取引ができなくなるため、習氏から猶予期間を提案。
 経済分野と同期間の100日間で、中国側が北朝鮮に強く働きかける考えを示したという。
 中国は秋に指導部が入れ替わる共産党大会が控えており、米中関係がギクシャクしたまま重要な政治日程を迎えたくないという事情もあったようだ。

 関係筋によると、会談で両首脳は、北朝鮮による新たな核実験や大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射を阻止することで一致。
 北朝鮮による「重大な挑発」があった場合、米中がそれぞれ独自の制裁を北朝鮮に科すことでも合意した。
 習氏は、中国国内の企業からの北朝鮮への送金規制や北朝鮮向けの石油の輸出規制などの独自制裁を検討していることも示唆したという。



文春オンライン 5/20(土) 7:00配信 「週刊文春」編集部
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170520-00002551-bunshun-int

「今までとは意味が違う」北朝鮮の“新型ミサイル” 脅威の理由

 「新型の弾道ミサイルの可能性がある」
 14日未明、北朝鮮が日本海に向けて発射したミサイルについて、稲田朋美防衛相は、そう語った。
 北朝鮮による弾道ミサイル発射は、今年7回目となるが、政府関係者は「今回は、今までとは意味が全く異なる」と語る。

 「第一にタイミングです。
 発射当日は、中国の習近平国家主席が音頭をとった経済圏構想『一帯一路』に関する初の国際会議の開幕日。
 習主席のメンツを完全に潰した。
 国際社会では長らく“中国は裏で北朝鮮と握っているのでは”と囁かれていましたが、これで完全に決裂した」(同前)

 さらに韓国では、10日に対北対話路線をとる文在寅大統領が就任したばかりだった。
 「文大統領は、発射を受けても『対話の可能性は開いてはいる』と語りましたが、いきなり出鼻を挫かれた格好です」(全国紙ソウル特派員)

 だが前出の政府関係者が注目するのは、ミサイルそのものの性能だという。
 今回のミサイルはロフテッド軌道という通常より高高度に打ち上げられ、高度2000キロに達し、約30分間飛行した。
 「ロフテッド軌道だと落下速度が速く、迎撃が難しくなります。
 日米韓の情報筋の分析によると、射程距離は約4000から5000キロでグアムが射程に入る。
 だが、それより重大なのは固体燃料が使われた可能性がある点です」(前出・政府関係者)

 どういうことか。
 「固体燃料は液体燃料に比べて、輸送が容易で、かつ注入に時間がかからないメリットがある一方で、爆発力は劣ると見られていた。
 もし固体燃料で、あそこまで飛ばす技術があるとすると、事態は深刻で、アメリカの政府関係者も衝撃をもって受け止めています」(同前)

 固体燃料を積んだミサイルを偽装コンテナ船で、ワシントンを射程に捉える場所まで運べば、新たな脅威となる。
 アメリカはどう出るのか。

 「北朝鮮はミサイル発射で何とかアメリカを交渉の場に引っ張り出したいのでしょうが、
 トランプ政権は北朝鮮が越えてはいけない
 “レッドライン”を、米国本土への攻撃が可能な武力の保持
と定めている。
 今回の一件はこれを越えた可能性がある(同前)

 米朝対立は最終局面に入りつつある。



読売新聞 5/20(土) 1:30配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170520-00050005-yom-int

北ミサイル、米「弾頭の大気圏への再突入成功」

 【ワシントン=大木聖馬】米NBCテレビは19日、複数の米政府当局者の話として、北朝鮮が14日に発射した新型の中長距離弾道ミサイル「火星12」で、弾頭の大気圏への再突入を成功させたと伝えた。

 北朝鮮が米本土への攻撃のために完成を目指している大陸間弾道ミサイル(ICBM)は、大気圏再突入の技術が欠かせず、同当局者らは「重要な技術的進展」と見て、警戒を強めている。

 北朝鮮はこれまで、技術的に非常に難しいとされる弾頭の再突入技術獲得のため、実験を重ねており、2016年3月にも大気圏再突入模擬実験に成功したと発表している。
 朝鮮中央通信は今回の発射について「過酷な(大気圏)再突入環境の中で、弾頭部の誘導特性と、核弾頭爆発システムの動作の正確性を実証した」と主張していた。
 米政府当局者の見方は、北朝鮮の主張を追認した形だ。



dot. 5/23(火) 7:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170522-00000081-sasahi-kr

北朝鮮のミサイル 事実上の大陸間弾道弾

 北朝鮮が今年7回目の弾道ミサイル発射1段式の小型ミサイルが大陸間弾道ミサイル(ICBM)並みに30分も飛び、日米韓を驚かせた。
 北朝鮮が5月14日発射した弾道ミサイルは、朝鮮中央通信によれば、「火星12型」で高度2111キロまで上昇、787キロ飛行した。
 落下地点はナホトカ東南の日本海だが、飛翔時間が約30分というのは驚きだ。

 冷戦時代、米国、ソ連のICBM(大陸間弾道ミサイル)は30分ないし40分余りで1万キロ以上離れた目標に到達しえた。
 今回の実験ではわざと射程を短くするため、異様に高い軌道を選んでいる。
 通常、長距離弾道ミサイルは最大高度1千ないし1500キロの放物線を描いて飛ぶ。
 今回のミサイルを通常の軌道で30分も飛ばせばICBM(戦略兵器制限交渉の定義では射程5500キロ以上)に近い射程が出ると思われる。

●今年のパレードに登場

 北朝鮮はICBM「火星13型」を2012年4月のパレードに登場させており、米国DIA(国防情報庁)の資料に基づき英国で発行されている「ミリタリー・バランス」の今年版では6基が配備されている、としている。
 これは16輪の自走発射機に載せた移動式で、射程は6千ないし9千キロと推定されている。
 北朝鮮はこれを発展させた「KN14」(米国の仮称)を15年10月のパレードに出し、今回発射した「火星12型」も今年4月のパレードに登場した。

 これらの弾道ミサイルについては「虚勢を張るため原寸大模型を出したのでは」とも言われ、発射実験を行っていないため、開発途中との評価が一般的だった。
 だが今回「火星13型」(全長約20メートル)より小型で1段式の「火星12型」(同15メートル以下)が30分飛翔したことは、北朝鮮がすでにICBMを造ったか、近く造りうる能力を示すと考えられる。
 ただ、北朝鮮から米国東岸へは1万1千キロ、ハワイでも7千キロの距離だ。
 射程5500キロのICBMではアラスカに届くだけだから、当面は米本土の脅威ではない。

●米朝交渉のカード誇示

 米国トランプ政権は、北朝鮮を攻撃すれば1953年以来休戦中の朝鮮戦争は再開となり、在韓米軍にも韓国、日本にも多大の損害を与える危険が大きいから戦争は避けたい。
 軍事力を誇示しつつ、中国に協力を求め、北朝鮮との交渉で核・ミサイル開発に歯止めをかけようとし、トランプ氏は金正恩(キムジョンウン)氏と「会談できれば光栄」とまで言っている。
 北朝鮮外務省の崔善姫(チェソンヒ)アメリカ局長は今月8、9日、ノルウェーのオスロで米国のトーマス・ピカリング元国連大使と会談、米朝交渉開始に向けての瀬踏みをしたと見られる。

 北朝鮮にとっては、「米本土に届くミサイルを造れる」能力を示し、それを凍結する代わりに米国との国交樹立、経済制裁の緩和、援助を求める方策もあり得よう。
 崔局長が11日に帰国して報告後まもなく、偵察衛星で撮影しやすい亀城(クソン)の飛行場に「火星12型」を引き出して準備を始め、これ見よがしの発射を行ったのは交渉のカードの価値を高める狙いとも考えられる。

 一方、オスロでの会談で双方の隔たりがあまりに大きく、米国が軍事的手段を取りかねない気配を感じたため、反撃能力を誇示して攻撃を免れようとした可能性もある。

 日本はすでに約1兆8千億円をミサイル防衛に投じたが、2千キロもの高高度に打ち上げられて落下してくる「ロフテッド軌道」のミサイルは迎撃を極めて困難にする。

 イージス艦が現在積む「SM3ブロックIA」迎撃ミサイル(1発16億円)は中距離弾道ミサイルが放物線の頂点、高度500キロ付近に達し速度が落ちたところを狙う。
 2千キロの高さから高速で落下されれば役に立たない。

 日米共同開発の新型「SM3ブロックIIA」の価格は現有タイプの2倍にはなりそうだが、これでも迎撃高度は約1千キロだから、「火星12型」に対処できるか否か怪しげだ。
(軍事評論家・田岡俊次)






NHKスペシャル 緊迫 北朝鮮 危機の深層 5月20日
2017/05/20 に公開