2017年5月28日日曜日

中国の権力闘争(1):習近平氏の腹心、異例スピード昇進、蔡氏が北京トップに昇格へ

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● フジテレビ系(FNN) 5/28(日) 19:08配信


Wedge 2017年5月26日 山口亮子 (ジャーナリスト)
http://wedge.ismedia.jp/articles/-/9722

過熱する中国の権力闘争、
海外メディアを巻き込んだ情報戦へ
政商・郭文貴がVOAで暴露

 一大政治イベント十九大(次期最高指導部の決まる共産党大会)を半年後に控え、権力闘争が過熱する中国。
 その過熱ぶりは海外メディアを巻き込んでの情報戦に発展している。台風の目になっているのは、汚職の嫌疑をかけられ米国に亡命中の実業家・郭文貴氏だ。

■政商の「核爆弾級」暴露

 郭氏は米政府系放送局ボイス・オブ・アメリカ(VOA)に4月19日に出演(https://www.voachinese.com/a/issues-and-opinions-20170419/3816655.html)。
 「核爆弾級の暴露」として、習近平国家主席と同じ「太子党」で党内の実質ナンバー2ともされる王岐山(党中央規律検査委員会書記)の親族の腐敗ぶりについて証言した。
 加えて、公安省の現役次官から指示されて海外の王氏の親族の資産について調査したと証言。
 その調査に習氏の意向が働いている可能性にも言及した。

 反腐敗運動を取り仕切る王氏に関する汚職疑惑、しかも盟友のはずの習氏との間の対立まで暗示する内容とあって大騒ぎになっている。
 68歳の王氏は慣例からすると引退のはずだが、太子党の勢力維持のために党大会では慣例を破って要職に就くのではという予測もある。
 ただ、郭氏による暴露はそれをひっくり返しかねない内容だ。

 しかも、3時間のはずの番組が1時間ほどで理由を明かさないまま急きょ打ち切り。
 前日の18日には中国の要請を受けた国際刑事警察機構(ICPO)が郭氏を指名手配していることも考え合わせると、中国政府が郭氏に対してかなり本気の対応をしていると見受けられることから、証言の信ぴょう性が高いのではと見る向きもある。

 郭氏は北京オリンピック開催前の開発事業を手掛け、大富豪になった。
 政商として暗躍するも、関係の深かった国家安全副部長の馬建(2015年に失脚)に対する贈賄が罪に問われるとみて14年に国外逃亡している。
 疑惑にまみれた人物による暴露の意味はいったい何なのか。
 憶測が憶測を呼ぶ状況下でのメディアの報道ぶりを紹介したい。

 中国大陸のメディアでは、当然ながらVOAのインタビューの内容は報じられていない。
 ただ、4月18日を境に郭氏に関する報道は激増。
 ネガティブキャンペーン一色になっている。

■大陸メディアは郭氏の人格否定

 まずはCCTV、人民日報などが中国外交部の報道官が記者会見で話した内容に基づき、ICPOが郭氏を国際指名手配したと報道。
 その後は、郭氏の部下に対する強姦疑惑、周永康の腹心で河北省の政法委員会書記の張越氏(2016年に失脚)に女性をあてがった話、河北の「法政王」とも呼ばれた張越氏にいかに高圧的な態度をとっていたかなどが報じられている。
 いずれも郭氏の非道ぶりを伝え、人格を否定する内容だ。
 ところで、郭氏はこのタイミングでなぜ王氏に関わる暴露話を、VOAでの生放送という非常に目を引く形でしたのか。
 さすがに大陸のメディアではこの辺の解説はしてくれないため、華字メディアの報道ぶりを紹介したい。

 香港の東方報業集団(オリエンタル・プレス・グループ)のニュースサイト「東網」は4月30日、
 「習、王、孟は郭文貴の国内の後ろ盾を厳しく処罰するとの共通認識に達した」
と報道した。

 「郭文貴の中国共産党の十九大の前に『生きながらえ、財産を保ち、報復する』ための暴露行動には複雑な政治背景があり、画策している主要人物は郭文貴の国内の後ろ盾であり、目的は十九大の権力闘争だけでなく、さらに反腐敗運動の攻撃から逃れるためだと北京の上層部は確認した。
 習近平と王岐山、孟建柱(党中央政法委員会書記。郭氏は、王氏と共に孟氏の腐敗ぶりについても調査するよう命じられたとしている)はこの計画を完全に掌握し、決して妥協せず、郭文貴の国内の後ろ盾を厳しく懲罰することで一致した」
としている。

 報道によると、政府中央は郭氏の後ろ盾のリストと、郭氏が彼らに利益を供与した状況を完全に掌握しているという。
 「王岐山は最近の内部の会議上で、中央は郭文貴の問題で、郭文貴から利益を得た『虎(大物)とハエ(小物)』を法により厳しく処罰するということで一致したと明らかにしている」
という。

 また、北京の政治ウォッチャーの話として、「中央はもはや郭の海外での暴露を心配してはおらず、重点を国内の後ろ盾の調査に置いている」と紹介。
 「これは中国共産党が次の策として強硬戦術をとり、郭文貴に対する全面的な反撃を強化し、郭の行為を阻む様々な措置を取るということを意味している」
と記事を結んでいる。

■曽慶紅と王岐山の代理戦争か

 郭の後ろ盾は誰なのか。
 米国に本部を置く法輪功系のメディア「大紀元」は5月20日、
 「北京は郭文貴の『老指導者』に十九大前後に手を付けると決めた」
という記事で、曽慶紅だと指摘した。

 曽氏は江沢民系の上海閥を代表する人物で、太子党の有力者でもある。
 強い権力を持つ曽氏の排除に習氏が乗り出すと、大紀元は前々から報じており、3月にはついに曽氏の追い落としに着手したと報道していた。
 20日の記事では、中国通の学者の発言を引用する形で、
 「郭の背後にいる老指導者は曽慶紅で、十九大前後に大『虎』が失脚するとすれば、曽慶紅が最初だ」
としている。

 ところで大陸のメディアで、郭氏の腐敗ぶりを最も激しく追及しているのが財新だ。
 「郭文貴はいかに民族証券を買ったのか 
 馬建と張越との結託の内幕を暴露」(4月20日)、
「郭文貴アメリカで提訴される 9年前の負債、元利はすでに8800万ドル」(4月25日)、
「郭文貴の海外資金はどこから来たのか ブレア元英首相がかかわっていた」(5月25日)
といった報道を続けている。

 財新を率いる女性編集長の胡舒立氏について、郭氏は過去に汚職で有罪判決を受けた北京大学方正集団の李友CEOの愛人だと発言。
 ケンカを売られていただけに反撃に出ているという面もあるが、そもそも財新の胡氏の背後には王岐山氏がいる。
 郭氏のバックが曽氏で、胡氏のバックが王氏だとすれば、メディアを使った郭・胡両氏の戦いは、曽・王両氏の代理戦争といえるだろう。



英エコノミスト誌 2017年5月20日号 2017.5.26(金)  The Economist
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/50107

中国共産党大会への布石
:一帯一路にご満悦の習主席

 中国国内の権力基盤強化にはほとんど貢献しない。

 5月半ばの週末に、壮麗な飾り付け、国力、そして施しをする情け深さという3点を誇示するために設計されたように思える北京の街に、30カ国近い国の首脳とさらに80カ国あまりの使節が習近平国家主席を畏れ敬いつつ集まった。

 派手に宣伝された国際会議「一帯一路フォーラム」で、習氏は新しい世界経済秩序のように見えることを狙った計画を説明した。
 中国の南側、西側(旧シルクロード沿い)、さらには遠くアフリカに位置する60あまりの国々を大きく変える鉄道、道路、橋梁、港湾その他のインフラに中国主導で投資を行うという内容だ。
 「平和共存の大家族」なるものを作るために、中国がプロジェクトを指導し、1000億ドルを超える資金も拠出すると約束する習氏は、無遠慮と言えるほど強気だった。

中国の指導者は力強さ、冷静さ、調和といった美徳を示すことを非常に重んじる。
 もし習氏が鳥だったら、その種類はさしずめ白鳥だろう。
 しかし、習氏が泳いでいる中国政界という川は、水面こそ穏やかに見えるものの、実際は澱んでいるうえに水かさも増して荒れている。

■白鳥は水の中で何をしているのか

 水面下で猛烈に足を動かしている気配が伝わってくることが時々ある。
 一帯一路構想はその好例だ。習氏がまとめたこの計画は、インフラ関連をはじめとする国有企業が中国国内に抱える膨大な余剰生産能力を解消しようという必死の試みでもあった。

<以下、有料会員のみ>



読売新聞 5/28(日) 11:56配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170528-00050059-yom-int

習近平氏の腹心、蔡氏が北京トップに昇格へ

 【北京=竹内誠一郎】中国国営新華社通信は27日、中国共産党が、蔡奇(ツァイチー)・北京市長(61)を同市トップの党委員会書記に昇格させる人事を決めたと伝えた。

 蔡氏は習近平(シージンピン)党総書記(国家主席)の腹心として知られる。

 蔡氏は福建、浙江省で約20年にわたり地方勤務時代の習氏に仕えた。
 2014年3月、浙江省副省長から習氏が新設した中央国家安全委員会弁公室(事務局)副主任へと転じた。
 昨年10月に北京市代理市長、今年1月に市長に就任。
 異例のペースで北京市トップまで昇進したことで、蔡氏は今年後半の第19回党大会での政権指導部・党政治局入りがほぼ確定した。

 現在の習政権のメンバーは、習氏のトップ就任の後ろ盾となった江沢民(ジアンズォーミン)元党総書記らの影響力を強く受けている。
 昨年10月、党内で別格であることを示す「核心」に位置づけられた習氏は、2期目政権でこうした影響力を払拭(ふっしょく)するため、今後も「最も信頼を置いている」(党関係者)という福建省時代の部下を中心に抜てきを進める見通しだ。



フジテレビ系(FNN) 5/28(日) 19:08配信
https://headlines.yahoo.co.jp/videonews/fnn?a=20170528-00000556-fnn-int

「習主席の腹心」、異例スピード昇進

 習近平国家主席の腹心が、異例の速さで昇進。
 中国国営の新華社によると、北京市のトップにあたる共産党委員会書記に、北京市長の蔡奇氏が任命された。
 蔡氏は、習主席が福建省と浙江省で勤務していた時の部下で、「習主席の腹心」と言われている。
 蔡氏は、2016年10月に北京市の代理市長、2017年1月に北京市長に就任したばかりで、その後わずか4カ月で、市長より格上の書記に昇格した。
 異例のスピード昇進により、蔡氏は、秋に行われる共産党大会で、最高指導部に次ぐ「党政治局」入りするのが、ほぼ確定した。
 5年に1度の党大会を前に、習主席は、自らに近い人物を登用することで、権力基盤固めを進めているものとみられる。



毎日新聞  6/1(木) 20:36配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170601-00000084-mai-cn

<中国>上海も「三段跳び」か 北京トップに続き習氏側近

 【上海・林哲平、北京・浦松丈二】
  秋の中国共産党大会の前後に、上海市トップの市党委員会書記に習近平国家主席の側近で市ナンバー2の応勇市長(59)が昇格するとの観測が高まっている。
 実現すれば、北京市トップへの習氏側近の蔡奇氏(61)大抜てきに続く「三段跳び」の昇格。
 江沢民元国家主席の「上海閥」の本拠地で、習氏の権力固めを象徴する人事になりそうだ。

 習氏側近の重用が続く中、非習系とされる広東省トップの胡春華・党委書記(54)と重慶市トップの孫政才・党委書記(53)=いずれも政治局員=の最高指導部入りは困難になったとの見方が広がっている。

 上海市の党関係者によると、5年前の前回党大会後に上海市トップになった韓正・市党委書記(63)が秋の党大会で中央に転じ、後任に応氏が昇格することが既定路線になった。
 すでに韓氏と応氏の間で業務の引き継ぎを意識させる動きがあるという。

 上海市トップは党中央の政治局員ポスト。
 応氏は政治局員の下の中央委員でも、その下の中央候補委員でもない。
 地方トップの経験もない。
 上海のトップになるには、秋の党大会で一気に政治局員に選出されなければならないため、一時は昇格を疑問視する声もあったという。

 しかし、5月27日に同じ政治局員ポストの北京市トップの党委書記に、地方トップの経験がなく、党中央では三段跳びとなる蔡氏の就任が決まったと公表されると、上海でも習氏側近の応氏の抜てきが広く予想されるようになった。

 応氏は浙江省出身で派出所勤務から省高級人民法院(高裁)院長に上り詰めたたたき上げ。
 習主席が浙江省トップ時代に信頼を得たといわれており、2007年に習氏が上海市トップになったのと同時期に上海高級人民法院幹部として上海入りした「習氏の懐刀」だ。

 5月に改選された上海市党幹部人事では、韓氏を除く他の幹部が応氏ら習氏側近でほぼ埋められた。
 15年に非習系の艾(がい)宝俊元副市長が収賄の疑いで失脚するなど反腐敗運動で幹部が次々と更迭された結果だ。

 昨年秋に党中央の「核心」になった習氏にとって、北京に続き上海のトップも自らの側近で固めることができれば、「習1強」体制を内外に強く印象づけられる。
 危機感を募らせた上海閥からの巻き返しも予想され、党大会に向けた波乱要因になっている。






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