2017年5月11日木曜日

「一帯一路」とAIIB(1):沿線国家への中国直接投資は今年は現時点で18%減

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● FNNニュース

 これもあれもと中国は忙しい。
 それに莫大なお金がかかる。
 歴史的にみれば「一帯一路」といった構想はいくつもあった。
 でも現実化されることは少ない。
 それは完成するのに期間がかかり、その間様々な地域で政治的社会的コンフリクトが発生するからだ。
 国内の問題すら解決できない烏合の衆があつまっても見通しはない。
 永遠の平和が確定しない限り、こういう構想は陽の目をみない。
 高揚感で踏み出すが、その後は鳴かず飛ばずになる。
 そのうち金がない、俺が先だ、技術的にむずかい、通過隣国どうしがいがみ合う、などなど。
 ラッパはででかいほうがいい。
 でもそのうち、音がしなくなる。


ロイター 5/11(木) 11:00配信
http://jp.reuters.com/article/china-bandr-conference-idJPKBN18706S

中国の「一帯一路」会議、28カ国参加へ 
野心的構想に懐疑的見方も

[北京 11日 ロイター] -
  中国が今月14─15日に北京で開催するシルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際会議には28カ国の首脳や政府高官が集う見通し。野心的なこの構想を同国が積極的に推進する中、参加国の間では懐疑的な見方も出ている。

 現代版シルクロード経済圏を構築する同構想は2013年に習近平国家主席が打ち出したもので、大規模なインフラ投資を柱にアジア、アフリカ、欧州に経済連携を広げることを狙いとしている。
 ただ、具体策に欠けるとの批判もある。

 欧州連合(EU)の上級外交官は
 「中国の構想については大いに懐疑的な見方がある。
 このようなインフラ計画は欧州の一部にとっては魅力的だが、中国が影響力拡大を狙っていることは周知の事実だ」
と語った。
 中国は同会議で共同声明を出す準備を進めており、この事情に詳しい外交筋は
 「会議はまさに習近平と一帯一路を称賛する狙いがある」
と述べた。

 中国政府当局者は、会議中には輸送やエネルギー、通信関連プロジェクトでの協力などについて、50以上の文書が署名される見通しだと明らかにしている。
 政府によると、中国企業は14─16年に「一帯一路」に基づき、海外諸国で3049億ドル相当のプロジェクトに署名している。
 中国は同構想を通じて影響力の拡大を狙っているとの見方を否定。
 新華社通信は英語版の解説記事で、
 「欧米の懐疑論者は、中国がゼロサム的な考え方を持たず、共に利益となる思考法を推進していることに気付いていない」
とした。

 一帯一路構想にはリスクも伴う。
 スリランカでは関連プロジェクトについて抗議が起きており、イスラム過激派の脅威に直面するパキスタン政府は一帯一路の主要部分である中パ経済回廊を守るため軍の特別部隊を設置した。
 同回廊はインドとパキスタンが領有権を争うカシミール地方も通過するため、インドは反発。
 ジャイトリー財務相は先週訪問先の日本で「主権問題があるため、大きな不安を抱いている」と語っている。
 一方、北朝鮮は同会議に代表団を派遣すると明らかにしており、シリアも閣僚級の代表が出席する。



ロイター 2017年 05月 11日 11:42 JST
http://jp.reuters.com/article/china-hunchun-one-belt-one-road-idJPKBN187088?sp=true

焦点:中国の国境都市が示す「一帯一路」構想の落とし穴

[琿春(中国) 10日 ロイター] -
 中国吉林省にある琿春(こんしゅん)市の政策当局者らは2014年8月、その前年に発表されたアジアと欧州を結ぶ新シルクロード経済圏構想「一帯一路」に同市が含まれるべきだと国営メディア上で主張した。

 国営新華社は2015年、琿春市が「一帯一路」構想をいかに加速させているかについて複数の記事を掲載。
 2016年初めに中国政府が発表した同構想に含まれる都市リストには琿春市も入っていた。
 同リストの発表が遅かったこと、そしてリストに含まれるよう一部の都市がロビー活動の必要性を感じたという事実は、習近平国家主席の一大プロジェクトである同構想が野心的というだけでなく、計画が曖昧だという点も浮き彫りにしている。

 「一帯一路」が正確に何を意味するかについて定義することの難しさは、今月14─15日に北京で開催される同プロジェクトの国際首脳会議で表面化するだろう。
 「率直に言って、一帯一路が何なのか私には全く分からない。
 中国政府も分かっていないからだと思う」
と語るのは、同構想について近著のあるガベカル・ドラゴノミクスのトム・ミラー氏。

 企業や都市、国にとって、理論的には同構想に関わる動機は強い。
 スリランカからアフリカのジブチに至るまで、道路、鉄道、パイプライン、港、工業地帯の建設に巨額の投資が見込まれるからだ。
 しかし琿春市の例が示すように、「一帯一路」構想の実情は複雑な可能性もあり、他国からの支援も必要とする。
 琿春市がロシアと北朝鮮に接していることは、幸運でもあり災いでもある。
 ロシアが貿易に一段と門戸を開く一方、北朝鮮とは停滞している。

 海に近くても、1860年の北京条約によるロシアの併合後は港を持たず、琿春市の企業は、中国や日本や韓国などの国々に向けた輸出拠点となっている北朝鮮の羅先(ラソン)特別市の港経由でもっと輸送したいと考えている。
 そうなれば中国南部への航路が開かれることになるが、北朝鮮に対する制裁が実施され、同国の武器開発を巡り国際的緊張が高まり、羅先の開発も遅れるなか、その進展への期待は低い。

 「中国南部へは現在、鉄道で輸送している。
 羅先の港から出荷したいが、今のところ実現していない」
と、中国人とロシア人従業員12人を抱える琿春市の貿易会社でゼネラルマネジャーを務めるWang Hai氏は話す。
 「琿春市は北東アジアの中心拠点だ。
 本来なら『一帯一路』で大きな役割を担うべきだが、まだその準備が間に合っていない」

■<ロシアが有望か>

 北朝鮮が世界的に孤立するなか、主な経済的・外交的支援国である中国は、同国に対する国連の制裁強化に署名した。
 だが中国は9日、「一帯一路」の国際首脳会議に北朝鮮が代表団を派遣すると明らかにした。

 ロシアのプーチン大統領も同会議に出席するが、このことは中国の「一帯一路」戦略におけるロシアの重要性を物語っている。
 一方、琿春市の一部企業は、すでに対ロシア貿易の恩恵を享受している。
 例えば、同市のXingyang Seafoodはロシアから9割、北朝鮮から1割を輸入していると同社の責任者Zhao Yang氏は述べた。
 「琿春市にいることの主な利点はロシアに近いことだ」
と同氏はロイターに語った。
 同社の本社は北部山東省だが、琿春市がロシアに近いことから2015年に同市に支店を開いた。
 琿春市の広報担当者は、「現在の政治状況」を理由に北朝鮮と同市の関係についてコメントするのを差し控えた。
 また、同市で働く北朝鮮人の数についても明らかにしなかった。
 その一方で、「汚染対策や成功を収めている植樹事業など、市のロシアとの貿易については話すことができる」とした。

 プーチン大統領は、中国に石油やガスを輸出する機会に加え、交通網強化のため道路や橋の建設についても言及している。
 とはいえロシアは、中国北東部と国境を接する過疎地への誘致に苦労している。
 もし多くの土地を中国人に貸した場合、植民地化が始まるのではないかという懸念をロシア人は抱いているという。
 「彼ら(中国人)が居住するようになれば、そのうち親戚も来る。
 ここにルーツを持つようになるだろう。
 ロシアの女性も妻にする」
と、ロシアの国家主義政治家ウラジーミル・ジリノフスキー氏は2015年、中国人農家にロシアの土地を貸与する提案が出されたとき、このように発言した。
 「問題しか起きない。利益などない」
と同氏は述べた。

 琿春市にとって、「一帯一路」構想は、同市のある吉林省と中国北東部の活性化を目指した一連の開発計画において最も新しいプロジェクトである。
 1990年代、国連開発計画(UNDP)は図們江地域開発計画を支援。
 これは、中国、モンゴル、韓国、ロシアが加盟する広域図們江開発計画(GTI)に発展した。

 大規模な国家投資プロジェクトに関与する恩恵は明白だ。
 経済成長に関する吉林省内の都市ランキングで、かつて25位だった琿春市は現在3位に浮上。
 同市の統計によると、2011年以降、対外貿易は倍増している。

 一方、長期的に「一帯一路」構想が付加価値をもたらすかどうかは不明だと、豪シンクタンク、ローウィ研究所へのリポートでピーター・カイ氏は記している。
 「中国政府が国内プロジェクトと海外的要素をうまく結びつけることに失敗するなら、
 『一帯一路』は他の国内インフラ計画とほとんど変わらず、同構想の経済的・戦略的価値は大いに損なわれるだろう」

(Sue-Lin Wong記者 翻訳:伊藤典子 編集:下郡美紀)



NEWS ポストセブン 5/11(木) 11:00配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170511-00000011-pseven-cn

中国主導のアジアインフラ投信銀行は早くも苦境

 鳴り物入りでスタートした中国主導のAIIB(アジアインフラ投資銀行)が早くもコケ、ADB(アジア開発銀行)の存在感が増している。
 産経新聞特別記者の田村秀男氏がレポートする。

 * * *
 中国主導の国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)は2016年1月の開業後、休眠状態が続いている。
 加盟国数こそ日米中心のアジア開発銀行(ADB)を上回ったものの、
■実際に払い込まれた出資金は定款上の資本金の「7%」にも満たない。
 単独融資はほとんどなく、多くはADB融資に相乗りしただけだ。

 AIIBと同様、米国中心の国際金融体制の一角を切り崩すはずの人民元の国際化も看板倒れだ。
 元は2016年10月に国際通貨基金(IMF)・特別引き出し権(SDR)構成通貨入りしたものの、国際金融市場での決済シェアは円に逆転され、世界の中央銀行の準備通貨シェアは2016年末で円の4分の1に過ぎない。

 だが、油断はならない。
 日米両国とも、習近平政権に懐柔されかねない有力高官が多数存在するからだ。
 特に、日本側は親中派の多い財務官僚が北京になびきやすいから、始末が悪い。
 中国側関係筋によると、4月6、7日の米中首脳会談では習近平国家主席がトランプ大統領に対し、AIIB出資や5月に北京で開催予定の「一帯一路サミット」への米政府高官参加を求めたという。

 「一帯一路」は2013年に習近平氏が打ち出した、中華経済圏構想である。
 ユーラシア大陸の内陸部と周辺海域のインフラを整備し、すべてのルートを北京につなげる。
 必要資金を調達、投融資するための役割をもつのがAIIBであり、ほかにも「シルクロード基金」「BRICS銀行」が中国主導で創設済みだが、いずれもAIIB同様、プロジェクトは欲しいがカネは出したくない参加国だらけだ。

 AIIBはADBや世界銀行など既存の国際金融機関と同様、ドル建て融資が主流の国際金融市場が相手だが、資金調達できない。
★.AIIBには基軸通貨ドルの米国と世界最大の金融債権国日本が不参加のために、米欧の格付け機関がAIIB債の格付けを拒否しているからだ。

 ならば、中国は自らの外貨準備(外準)を充当するしかないが、昨年、中国からの資金流出は年間で7000億ドルを超え、外準は3兆ドルまで減った。
★.外準は4.6兆ドルもの外国企業や金融機関の対中債権(中国にとっては対外負債)の大半が含まれるので、ないのも同然だ。

 ならば人民元を刷って融資できればよいが、ローカル通貨のままだと国際市場では見向きもされない。
 そこで習政権が執念を燃やしたのが、各国通貨当局の間でドルと交換が保証されるSDR構成通貨入りだ。

 親中派のラガルドIMF専務理事は、円を押しのけて人民元をドル、ユーロに次ぐ第3の国際通貨として認めた。
 ところが、人民元は資金流出に伴う元売り圧力にさらされ、元の信用は国際金融市場で失われてしまった。
 AIIBが元建て債を発行しても、計算高い中国人投資家が購入するはずはない。

【PROFILE】たむら・ひでお/1946年高知県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。日経新聞を経て、産経新聞記者となる。現在、編集委員と論説委員を兼務。『人民元の正体 中国主導「アジアインフラ投資銀行」の行末』(マガジンランド)、『人民元・ドル・円』(岩波新書)、『財務省「オオカミ少年」論』(産経新聞出版)ほか著書多数。

※SAPIO2017年6月号



Bloomberg 5/12(金) 13:45配信
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170512-64316272-bloom_st-bus_all

中国国家主席、「一帯一路」構想で5000億ドルの小切手切る可能性も

 中国は現在、使える資金を持つ数少ない国の1つであり、習近平国家主席には小切手を切る用意がある。

 習主席は14日に北京で世界約30カ国の首脳を迎え、シルクロード経済圏構想「一帯一路」について討議する初のフォーラムを主催し、インフラ投資を背景にソフトパワーを発揮していく土台とする構えだ。
 同構想には5大陸の100カ国余りが支持を表明しており、米欧で台頭する保護主義をよそに国際経済協力へのニーズが浮き彫りになっている。

 「米国第一」主義を掲げるトランプ米大統領が海外資金を圧縮する中、習主席は一帯一路構想を通じ、グローバル化を提唱する世界的リーダーの1人としてイメージを固めたい考えだ。
 同主席はサミットで、中国の台頭を巡る懸念を和らげるだけでなく、1997年に死去した鄧小平氏以来最強の指導者となった国内での地位強化も目指す。

 投資調査会社TSロンバードの中国調査責任者、トレイ・マカーバー氏は、一帯一路構想が
 「習主席にとって最も長く語り継がれるレガシーになる公算が大きい」と述べ、
 「アジアを中心に世界の貿易・経済パターンを刷新する可能性がある」
と指摘した。

 国営新華社通信によれば、
 中国は2013年以降、一帯一路の関係国に500億ドル(約5兆6800億円)以上を投じた。
 クレディ・スイス・グループは今月、中国が向こう5年で62カ国に5000億ドル強を投資する可能性があるとの予想を示した。

原題:Xi’s $500 Billion Push to Reshape the World in China’s Image (1)(抜粋)

Ting Shi, Miao Han



(2017年5月12日付 英フィナンシャル・タイムズ紙
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM12H3W_S7A510C1000000/

中国の「一帯一路」構想、投資の流れにブレーキ

 中国の習近平国家主席が掲げる広域経済圏構想「一帯一路」に対する投資は昨年、複数の指標からみて減少した。
 経済利益の追求と地政学上の戦略という意味を併せ持つ「新シルクロード」に営利企業が肩入れしようとしているのか、疑問を投げかけるデータだ。
 今週末、28カ国の首脳が北京に集い、習氏が2013年に打ち出した「シルクロード経済圏」と「21世紀海上シルクロード」構想の「定義と始動」について協議する。

 構想の中心は、道路、鉄道、港湾、発電所、石油・ガスパイプラインで中国と東南・中央アジア、中東、アフリカ、欧州を結ぶネットワークの構築だ。
 この構想は中国の経済外交の中核となり、時に異様なまでの積極的なプロパガンダ(宣伝活動)が繰り広げられている。
 だが、それが実体以上の誇大な宣伝であることを示唆するデータが出てきている。

■沿線国家への直接投資、大幅な減少

 中国商務省のデータによると、一帯一路の沿線国家に対する中国からの直接投資は昨年、前年比で2%減少し、今年は現時点で18%減となっている。
 沿線53カ国に対する昨年の金融を除く直接投資は総額145億ドルで、対外投資全体のわずか9%だった。
 しかもこの投資の減少は、中国の対外直接投資が前年と比べて40%も増え、過去最高を更新する状況の中で起きた。
 中国当局が資本流出を止めるために対外取引の制限に動いたほどだ。

 投資先の国別内訳は、投資のどれだけがインフラに流れ込んだのかという疑問を抱かせる。
 昨年、一帯一路の沿線諸国のなかで最大の投資を受けたのは、すでに高水準のインフラを持つ高所得国のシンガポールだ。

 「大きな投資、特に外国への大きな投資は、毎年数字が増えるとは限らないことを意味する」と、国有企業の国外での活動を監督する国務院国有資産監督管理委員会の肖亜慶主任は言う。
 「毎年の増え方ではなく、投資と事業そのものの進展を見てほしい。
 長期的には、一帯一路の沿線諸国への投資は増えると信じている」
 肖氏は、47社の中央政府直轄企業が一帯一路の沿線諸国で合計1676件の事業に関与しているという数字を示した。

■国有企業幹部の一部に不満くすぶる

 一部の銀行幹部や国有企業は、一帯一路の構想で政府から不採算事業を引き受けるよう迫られていることに不満をくすぶらせている。
 「多くの国有企業が『やりたくないが国にやらされている』という考え方に凝り固まっている」
と、最近退任した大手国有企業の元幹部は言う。
 「だが、国有企業のままでいたいのではないのか。
 国有企業であるがゆえの恩恵を数え上げてみたことがあるのか」

 直接投資に加え、銀行による対外融資も重要な一部分だ。
 だが、開発融資を手がける中国の3つの国有銀行のなかで最も大きい中国国家開発銀行のウェブサイトによると、同行の貸出残高は15年末の1110億ドルから16年末の1100億ドルへと減少している。
 中国国家開発銀行の対外融資に占める一帯一路の沿線諸国の割合は、14年末の41%をピークに16年末時点で33%まで下がっている。
 同行は取材の質問に返答しなかった。

 だが、北京の中国人民大学重陽金融研究院の賈晋京・首席研究員は、中国の対外直接投資の多くは第三国を経由しており、単純な統計は一帯一路の投資の指標として信頼できないと話す。
 「一帯一路を評価するには、その合意覚書に署名した国の数や、このたびの会議に参加する各国首脳や要人の数、代表団の規模を見なければならない。
 これが最も重要なことだ」
と、賈氏は語った。

By Gabriel Wildau & Ma Nan



日本経済新聞 2017/5/15 20:26 (2017/5/15 23:11更新)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASGM15H76_V10C17A5EA1000/

中国「一帯一路」会議が閉幕 
リスク高で投資は低調 



 【北京=原田逸策】
 中国の「一帯一路(海と陸の現代版シルクロード)」構想の初めての国際会議が15日、2日間の日程を終えて閉幕した。
 習近平国家主席は閉幕後の記者発表で、次回の会議を2019年に開くと表明した。

 15日採択した共同声明は「世界の貿易と投資の伸びは依然として低迷している」と指摘。
 米国を念頭に「自由な貿易を確保し、あらゆる形態の保護主義に反対する」と表明した。
 そのうえで「一帯一路の提唱は各国に協力を深める重要な機会を提供し、積極的な成果をもたらした」とした。

 中国は会議に間に合わせる形で滞っていた大型案件を動かした。
 インドネシアの高速鉄道は14日に融資契約を結び、アルゼンチンの原発建設も着工へ前進した。
 習氏は一帯一路に投資するシルクロード基金の増額や政策金融機関による融資など計7800億元(約12兆8千億円)の追加の資金拠出も表明した。

 一帯一路はインフラ建設と引き換えに親中国の勢力圏を広げる試み。
 沿線にはアジア、アフリカ、欧州の64カ国があり、政治体制や経済の発展段階もばらばら。
 多様な国を実利で緩やかに束ねる仕組みだ。
 中国は経済を武器に自らの勢力圏を築く狙いだが、
 一帯一路の投資は盛り上がらない。

 収益率が低いわりにリスクは高く、民間企業は二の足を踏む。
 大半が国有企業による投資とみられる。中国経済の構造矛盾も深まっており、先行きが不安視される。
 開発金融機関の幹部は
 「途上国のインフラ投資で融資対象になりうる案件は非常に少ない」
と話した。

 菅義偉官房長官は15日の記者会見で、一帯一路について
 「地域の持続的な発展に資するものに具体化されていくか、政府として注視していきたい」
と語った。
 安倍政権は自民党の二階俊博幹事長や首相の政務秘書官を務める今井尚哉氏らを一帯一路会議に派遣した。



読売新聞 2017年05月16日 06時00分
http://www.yomiuri.co.jp/editorial/20170515-OYT1T50108.html

「一帯一路」会議 中国主導で国際秩序築けるか

 中国主導の国際秩序構築に向けて布石を打っても、独善的な振る舞いを改めない限り、日米などの不信感は拭えない。
 習近平政権が北京で、巨大経済圏構想「一帯一路」をテーマにした国際協力会議を初めて開いた。
 この構想は、2013年秋に習国家主席が提唱した。かつての陸と海のシルクロードを軸にアジアと欧州を結び、沿線国のインフラ整備や貿易の活性化を目指す。

 会議には、130か国以上から計1500人が参加した。
 ロシアやイタリア、フィリピンなど29か国は、首脳が出席した。
 今秋、習氏は5年に1度の共産党大会を開く。
 最大の外交イベントと位置づける「一帯一路」会議を成功させることで、自らの威信強化につなげる思惑があろう。

 習氏は開幕式で、「協力と共存共栄を中核とした新たな国際関係を築く」と演説し、米国中心の既存秩序を牽制けんせいした。
 インフラ投資などの資金を賄う「シルクロード基金」に、約1兆6400億円を追加拠出する方針を表明した。
 そのうえで、「多国間貿易体制を守り、自由貿易圏の建設を推進する必要がある」とも語った。

 トランプ米政権が環太平洋経済連携協定(TPP)を離脱したことを念頭に、「世界経済の牽引役」を自称したいのだろうか。
 国内で外国企業の活動を制限する。
 過剰生産した安い鉄鋼製品を大量に輸出する。
 そんな中国が米国に代わって自由貿易を先導するとの主張は説得力を欠く。
 インフラ案件では、共存共栄を唱えながら、強引な手法や見通しの甘さから事業が停滞するケースも目立つ。
 インドネシアの高速鉄道計画は、その象徴と言える。

 問題なのは、海のシルクロード構想が港湾整備を通じた海軍の拠点確保と表裏一体である点だ。
 インド洋周辺にあるパキスタンやスリランカの港などでは、大規模な投資が進む。
 中国は経済的な恩恵を強調するが、米国排除を狙った覇権主義的な海洋進出を支える港湾整備なのは間違いない。
 アフリカ北東部のジブチでは、海軍補給基地の建設が進行中だ。
 軍事拠点化が完成しつつある南シナ海の人工島とともに、インドなど周辺国の懸念を招こう。
 習政権が力の支配を続けるなら、「一帯一路」の成功も覚束おぼつかない。

 日本は、自民党の二階幹事長らを会議に派遣した。
 日中関係はもとより、アジア地域の安定と発展に寄与するかどうかを慎重に見極めることが重要である。



毎日新聞2017年5月16日 東京朝刊
https://mainichi.jp/articles/20170516/ddm/003/030/038000c

「一帯一路」会議閉幕 
中国頼み、抜け出せず 伸び悩む経済圏



 北京で15日に閉幕した現代版シルクロード経済圏構想「一帯一路」の国際首脳会議では、構想を提唱した中国の習近平国家主席の存在感を沿線国に印象づけた。
 だが、経済圏構想としての方向性はまだ抽象的で、明確に示されたとは言い難い。
 霧の中を進む大型バスに乗るべきか。
 それとも見送るべきなのか。
 日本や米国は複雑な思いで各国の首脳たちを見守った。

 澄み渡った青空の下、習主席の2日間にわたる晴れ舞台が幕を閉じた。
 締めくくりの習氏による記者会見では質問は許されず、事実上の演説だった。
 閉幕直後の15日午後7時の国営中央テレビのニュースは通常の30分から50分間に枠を拡大し、2日間の習氏を中心に会議の成功を伝えた。
 29カ国から出席した首脳級らを習氏が赤じゅうたんの上で一人一人出迎える場面が延々と流れた。

 習氏がこの構想を提唱したのは2013年秋。
 高度成長期が終わり、過剰な生産設備が経済・社会の不安定要因となりつつあった。
 日米が中心の環太平洋パートナーシップ協定(TPP)が実現に向け動き出した時期とも重なる。

 国内で余った鉄鋼などの新たな「販売先」を国外に求め、TPPに対抗して「西」への伸長を目指す--。
 それから4年経過した今、経済圏としては伸び悩みが目立つ。

 中国政府は沿線国をアジア、欧州諸国を中心に60カ国以上としている。
 その総人口は世界の6割超だが、経済規模では3割程度。
 大半が経済力の弱い新興国が占め、ビジネスチャンスは多くない。

 実際、中国と沿線国の貿易総額はここ数年、目立った増加を示しておらず、
 一帯一路は中国による新興国支援が中心だ。
 それでも巨額のチャイナマネーを背景にしたこの構想が、インフラ整備を求める新興国や中国の巨大市場参入を狙う先進国を引きつける。

 「この構想によって未来に大きな期待が持てる」(ロシアのプーチン大統領)。
 2日間にわたる賛辞の大合唱に、習主席はインフラ投資基金への増資など総額約7800億元(約12兆8000億円)規模の大盤振る舞いで応えた。
 かつての中国皇帝に対する「朝貢」を想起させた。
 今後、中国が欧州の先進国も巻き込んで設立したアジアインフラ投資銀行(AIIB)も活用し、新興国支援を加速する構えだ。

 ただ、中国にスポットが集まるほど、別のジレンマも浮かび上がる。
 習氏は「各国が共同で作ったグローバル公共財だ」と言葉を尽くして中国のワンマン色を薄めようとも腐心した。
 中国の突出した存在感は日米にとどまらず、インドのような周辺国にも懸念を広げているからだ。

 国際会議を開き、共同コミュニケをまとめた狙いも、一帯一路を国際的枠組みに脱皮させる絵図があればこそだ。
 だが、良くも悪くも習氏の存在感が目につき、2年後の第2回会議も中国での開催が決まった。
 中国の国力頼みという殻を打ち破るまでには至らなかった。

■日本、期待と警戒

 日本政府の「一帯一路」構想に対する受け止めは複雑だ。中国が安全保障も絡めながら影響力の拡大を目指したものとの警戒感がある一方、インフラ整備などでは日本企業のビジネスチャンスにつながるとの指摘もあり、構想の行方を注視する考えだ。

 菅義偉官房長官は15日の記者会見で一帯一路について「地域の持続的発展に資するかどうかを含めて、どのような形で具体化されるか注視していきたい」と述べるにとどめ、評価を避けた。

 日本政府内には、中国が一帯一路を使って支援国への政治的影響力を強めるのではないかとの懸念がある。中でも海上のシルクロード構想として、スリランカやパキスタンなどの海の要衝で建設を進めている港湾施設を中国海軍が利用することを懸念。安全保障上の脅威となりかねないと分析している。

 外務省幹部は「米国と豪州、インドの各国とは一帯一路とどう向き合うか相談してきた」と明かす。中国は秋の共産党大会までは各国との緊張を極力避けていると日本政府はみているが、政府高官は「習近平国家主席が党大会で権力基盤を確立した後、ひょう変する可能性もある。中国が何を考えているのか読めない」と率直に語る。

 一方で、日本企業にメリットが見込める協力分野があることも事実だ。一帯一路の国際首脳会議には、招待を受けていた世耕弘成経済産業相の派遣は見送ったが、松村祥史副経産相、自民党の二階俊博幹事長を出席させ、中国側に配慮した。二階氏は15日、北京市内で記者団に「今回の会議に出席しなければ、日本は置いてけぼりになった」と述べ、会議出席の意義を強調した。

 アジア太平洋地域のインフラ需要は2016~30年で計26兆ドル(約2900兆円)との試算もある。日本側には「一帯一路とともにインフラ整備にかかわれば、日本企業にもビジネスチャンスが生まれるかもしれない」(政府関係者)との期待感がある。ただ、構想の具体的な計画には不透明な部分が多く、日本が掲げる技術や環境対策に優れた「質の高いインフラ投資」と競合する可能性も指摘されている。経産省幹部は「一帯一路には投資面など不透明な所もある。上手に関わりつつ、監視していくことが必要なのではないか」と指摘した。



Record china配信日時:2017年5月16日(火) 11時50分
http://www.recordchina.co.jp/b178185-s0-c10.html

習主席提唱の「一帯一路」、
北京市民に温度差―米メディア

 2017年5月15日、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席が提唱するシルクロード経済圏構想「一帯一路」をテーマとした初の国際会議が閉幕した。
 この中国の今年最大の外交イベントを国営メディアが大々的に報道する一方で、中国主導の海外投資イニシアチブに対する北京市民の反応には温度差が見られるという。
 米ボイス・オブ・アメリカの中国語ニュースサイトが伝えた。

 記事によると、習主席が14日の開幕式で、「一帯一路」国際開発プロジェクトの支援に数千億元を投資すると発表したことに、北京市民からは「
 中国の国力と国際的な影響力の増加を示すものだ」と歓迎する声が出ている。
 また「新たなビジネスや雇用が創出される」との期待感も多い。

 一方で記事は、この大規模な海外投資プロジェクトに関心を示さず、中には不満を口にする市民も少なくないと伝えている。
 中国国内では官僚の汚職や環境汚染、貧困、年金など解決すべき課題が山積している。
 市民からは
 「外国を支援する以前に、国民の生活・生計の改善に優先的に取り組むべきだ」
 「北朝鮮を支援した結果が、核による脅威となって返ってきた」
 「国内の多くの問題が解決を待たれる中で、先に外国で大量の資金をばらまくのか」
などの声が聞かれているという。




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