2017年5月10日水曜日

悪化する中国の自然環境(1):中国「汚染との闘い」は掛け声倒れ

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8日、中国大陸の砂漠の砂が春先の偏西風に乗って飛来する黄砂が九州から北海道にかけて広い範囲で観測された。写真は4日、北京で観測された黄砂。


レコードチャイナ 内藤 康行配信日時:2017年5月9日(火) 16時0分
http://www.recordchina.co.jp/b177510-s130-c30.html

<コラム>深刻化する中国の砂漠化、黄砂や大気汚染にも影響

 年の暮が迫る12月29日、国家林業局局長の張建龍が声明を出した。
 その声明の要旨は、
 「我が国の土地荒漠化(荒漠化=小石、泥地、地面が露出した乾燥地域や塩が広く地表を覆っている地域)砂漠化が極めて深刻な状況にある。
 その保護と整備任務は困難を極める。
 荒漠化と砂漠化による土地面積は全国土面積の4分の1以上と6分の1以上になっており、我が国で最も深刻な生態問題となっている」
と言うものであった。

 国家林業局がまとめた「第五次全国荒漠化と砂漠化土地モニタリング状況」を見ると、全国土の荒漠化と砂漠化状況を把握するため、中国は5年毎に「荒漠化と砂漠化土地モニタリング活動」を実施している。
 第五次全国荒漠化と砂漠化モニタリング活動は2013年に開始され2015年に報告をまとめている。

 その「第五次モニタリング」結果によれば、
★.2014年時の全国土荒漠化土地面積は261.16万平方キロメートルで、全国土面積の27.20%を占め、
★.砂漠化土地面積は172.12万平方キロメートルで、全国土面積の17.93%を占める。
 一方砂漠化傾向にある土地面積は30.03万平方キロメートル、全国土面積の3.12%を占める。
★.有效整備可能な砂漠化土地面積は20.37万平方キロメートル、砂漠化土地面積の11.8%に当たる
としている。

 党中央、国務院が決定した「林業発展と生態建設戦略及び実施重大工程」により成果を挙げたとしているが、中国の荒漠化と砂漠化は依然として深刻な状況にあり、保護と整備任務は極大な困難に直面している。

1):防止整備任務の大きな困難。
 中国の荒漠化と砂漠化土地面積は国土面積比で4分の1以上と6分の1以上になっており、最も厳重な生態問題となっている。
 「十三五(2016〜2020)」期間の目標として、全国で10万平方キロメートルの砂漠化土地の整備を実施し、毎年2万平方キロメートルを整備するとしているが現実は厳しい。
 これまで多年にわたり整備をしてきたが、残った10万平方キロメートルの整備難度は巨大だ。

2):保護実施と任務遂行の重圧。
 砂漠区は自然条件が劣悪で、生態システムが脆弱(ぜいじゃく)、さらに容易に破壊され回復が困難という状況にある。
 砂漠化傾向にある30.03万平方キロメートルの土地の保護活動が進まないと、新たに土地は砂漠化となる。
 一方砂漠化回復整備以降の保護と回復維持活動も極めて重圧と言える。

3):無秩序で杜撰(ずさん)な開発建設。
 砂漠区の開墾(かいこん)、放牧、水資源等の過度な開発問題が吹き出している。
 5年間の砂漠区耕地と砂漠化耕地面積は共に3.60%と8.76%増加している。
 2014年の放牧区の平均畜産超過は20.6%に達している。
 内陸湖沼面積は萎縮し、河川の「断流」現象が発生し、地下水位は年々降下している。
 新疆タリム河農業用水は97%、
 内蒙古では幾つかの湖沼が近30年で30%
も減少している、
 科爾沁砂漠農区地下水は10年間で2.07メートルも下がっている。
 これらは全て砂漠区生態建設と植林保護の大きな脅威となっている。

 北京市は4日、内モンゴル自治区から飛来した黄砂に覆われた。
 中国メディアは2015年4月以降で最も深刻な砂ぼこりに見舞われたと報じている。
 黄砂は大気汚染を引き起こし、市内では「PM10」濃度が2000マイクログラム/立方メートルを超えた、これは世界保健機関(WHO)が定める環境基準値の100倍に当たるらしい。こうした現象も荒漠化や砂漠化の影響を受けている。

■筆者プロフィール:内藤康行
1950年生まれ。横浜在住。中学生時代、図書館で「西遊記」を読後、中国に興味を持ち、台湾で中国語を学ぶ。以来40年近く中国との関わりを持ち現在に至る。中国の環境全般とそれに関わるビジネスを専門とするコンサルタント、中国環境事情リサーチャーとして情報を発信している。



ナショナル ジオグラフィック日本版 5/10(水) 7:32配信
https://headlines.yahoo.co.jp/article?a=20170510-00010001-nknatiogeo-cn

「青空は1年に数回」 中国・
大気汚染と闘う街

■重工業の都市、唐山で国の取り組みと人々の思いを取材した

 1976年、北京から160キロほど東に位置する河北省唐山市は、地震によって壊滅的な打撃を受け、市の人口の4分の1にあたる24万人の死者を出した。

 その後、町は再建され、現代中国を形づくるパワーの源となってきた。
 現在の唐山は、重工業と石炭使用が非常に盛んな町だ。
 ここではセメントや化学薬品の他、世界の鉄鋼の5%以上が生産されている。
 1976年の地震で瓦礫と化した町には、工場労働者のための高層団地群がいくつも建てられ、立ち並ぶ巨大な煙突はもくもくと煙を吐き出し続けている。
 分厚い灰色のスモッグが、それらすべてを覆うように垂れ込める。

 中国では毎年、推定110万人が大気汚染によって亡くなっている。
 唐山は国内で6番目に大気汚染が深刻な町であり、上位5位までの町もすべて河北省にある。
 一帯の工場や発電所から排出される石炭の煙は北京の方角へ流れていき、悪名高い大気汚染の一因となっている。

 3年前、年に1度の全国人民代表大会において、李克強首相は大気汚染との闘いを宣言した。
 2017年3月の全人代でも、李首相は「青い空を取り戻す」との誓いを新たにした。
 李首相が主な戦略として掲げるのは、鉄鋼の生産量および石炭火力発電所の削減だ。
 石炭に代わる燃料を確保するために、中国は風力・太陽光発電に世界最大規模の投資を行っている。
 もしこの作戦が成功すれば、唐山のみならず、世界中の人々がその恩恵を受けることになるだろう。
 中国は世界最大の温室効果ガス排出国だからだ。

 しかし唐山の市民にとって、大気汚染との闘いには犠牲が伴う。
 製鉄所の門前にある小さなコンビニエンスストアの店内で、作業員のワン・ジン・ボー氏がプラスチックの椅子に腰かけていた。
 店を切り盛りするのは彼の妻だ。
 ワン氏は工場で溶鋼を精製する仕事をしているが、これは危険な作業で、工場内の温度は50℃を超えることもある。
 それでも賃金はよく、きちんとボーナスも出る。

 ここ数年間、唐山では工場の閉鎖や移転が相次いでいる。
 生産規模の縮小や高価な空気洗浄設備の設置が義務付けられるなか、ワン氏は同僚たちが解雇されるのを目の当たりにしてきた。
 それでもワン氏は、自分が働く工場は生産量の削減を乗り切れると考えている。
 工場で生産される鋼鉄は今後、「量が増えるというよりも、強さを増していくでしょう」と自信ありげに彼は言う。

■改革の時

 中国は今、過去数十年間の急激な工業化によって損なわれた環境と健康を回復しようという大規模な取り組みを行っている。
 大気汚染との闘いはその一環だ。
 経済成長は、何百万人もの国民を貧困から救い、唐山を震災後の廃墟から立ち直らせた。
 しかしその一方で、多くの人々が水質汚染、食料汚染、大気汚染に苦しめられることになった。

 政府に対して大気汚染に関するアドバイスを行っている中国清潔空気連盟の事務局長トニー・シェ氏によると、中国当局は現在、大気の質の改善に「極めて真剣に」取り組んでいる。
 政府による取り組みは多岐にわたる。
 中国の各都市は、市民に自宅での石炭ストーブやかまどの使用をやめるよう指導している。
 役所の指示により、車に使われるガソリンやディーゼル油の質の向上も進められている。
 2020年に発効される車の排出基準は、欧米のそれと同等のものとなるだろう。

 しかし、取り組みの焦点となっているのは重工業だ。
 今年3月、政府は103カ所の石炭火力発電所の閉鎖および計画中止を発表した。
 鉄鋼の生産能力も、さらに5000万トン分削減するという。

 政府を動かす力となったのは、大気汚染に対する国民の怒りだ。
 最初の削減策の効果が現れはじめた2014年と2015年には、北京周辺の微粒子汚染のレベルは25%低下した。
 しかし2016年末から2017年初頭にかけて、数値は再び急上昇に転じた。
 これについては、グリーンピースが以下のように分析している。
 生産能力の削減を行ったにも関わらず、2016年の鉄鋼の生産量は増加しており、その原因は中央政府が需要を刺激し、地方の役人が地元の工場を保護したことであった。

 環境汚染に対する国民の抗議の声は、中央政府が大なたを振るう上で都合の良い口実となっている。
 そもそも鉄鋼やセメント、ガラス、発電といった部門における過剰な生産能力は、経済を揺るがしかねない時限爆弾だ。
 政府もいずれこれに対処しなければならないことはよくわかっている。

 しかし重工業は雇用を提供し、有力な国有企業に独占されていることから、「手をつけるのが非常に難しい部門」だと、ロンドンを拠点に環境問題を扱うウェブサイト『チャイナダイアログ(Chinadialogue)』の北京編集主幹、マ・ティアンジー氏は言う。
 「大気の質に関して、都市部の中産階級から抗議の声が上がることで、政府はかねてより実施の機会を狙っていた困難な改革を推し進めるための、正当な理由を得ることができたのです」

■驚くべき情報の透明性

 中国の環境汚染との闘いにおいて特に注目すべき点は、政府がいつもの警戒的な態度を捨て、かつてないほどの透明性を見せていることだろう。
 政府は驚異的なスピードで、PM2.5のレベルを観測するモニターの全国的なネットワークを構築した。
 さらに驚くべきことに、モニターの観測データは一般に公開されている。
 中国でスマートフォンを持っている人なら誰でも、地元の大気の質をリアルタイムでチェックしたり、特定の施設が排出制限に違反しているかどうかを確認したり、ソーシャルメディアを通じて地元の執行機関に違反行為を報告したりできる。
 情報公開のレベルは、米国のそれと比べても遜色がない。

 こうした流れは、中国の国民と政府の関係性に真の変化をもたらすと語るのは、政府のデータを利用するアプリを作成した環境NGO「公衆環境研究センター」のリーダー、マー・ジュン氏だ。
 「ここには、従来とは違ったやり方を試すチャンスがあります。
 いわば従来とは違う統治のしかたが試されているわけです。
 これはとても貴重な機会です」

 当然ながら、中国は今も一党独裁統治の国だ。
 北京にいる指導者たちが、地方の業績を判断する。
 しかし判断基準が改められたことによって、人々の姿勢も変わってきているとシェ氏は言う。
 旧制度においては、地方の役人はほぼ経済的な繁栄だけを基準に評価を受けてきたが、現在では大気の質を中心とした環境問題に重点が置かれるようになっている。

 上からの評価が政治キャリアに影響するトップダウンの支配体制の中で働く官僚たちも、この変化に注目している。
 大気の質を改善できなかった市長は、環境保護部に呼び出され、さらなる努力をせよと警告を受けることもある。
 一方で、まともな対策を取らず、表面を取り繕ってすまそうとするケースもある。
 たとえば、国際会議などの注目度の高いイベントの前にだけ、一時的に工場を閉鎖するよう命じるわけだ。
 11月と12月の数週間だけ工場を閉めて、市が年間の排出基準を超過しないようにすることもある。

■自然を夢見る唐山

 1976年の地震から40年の節目を迎えた昨年、唐山市では世界園芸博覧会が開かれた。
 この大規模イベントの会場として使用されたのは、かつての炭鉱だ。
 街の中心部付近で、おしゃれなメガネをかけ、ツンツンと尖った髪型をした製鉄所の工員に話を聞いた。
 雇用主の怒りを買いたくないので匿名にしてほしいという彼は、5年間で賃金が20%下がったと嘆く。
 彼によると、その原因は減少する鉄鋼需要と、環境規制による影響の両方だ。
 それでも、唐山は住むのには悪くない場所だと彼は言う。
 楽園とまではいかなくとも、生活のペースは穏やかで、海も近い。
 「ただし環境汚染だけは勘弁してほしいですね。
 ここでは青い空は年にほんの数回しか見られません」。
 園芸博の期間中、市内の製鉄所は排気を減らすために生産量を控えていた。

 ワン・ジン・ボー氏の妻が経営する店の中、石炭ストーブから上がる煙が部屋を満たしていく。
 ワン氏はこれから、息子の学校で開かれる会合に出かけるところだ。
 煤まみれのトラックが1日中、轟音を立てて走り回り、すぐそばには製鉄所があり、通りの先には石炭が山と積まれているが、唐山で育ったワン氏の妻は、環境汚染はほとんど気にならないと語る。

 それでも彼女は、自分の息子には今とは違う生活を送らせたいと夢見ている。
 父親のような重労働ではなく、もっと楽な事務仕事をさせてやりたい。
 ただし悩みは、息子の成績が芳しくないことだ。
 南部に行くのもいいかもしれないと、彼女は言う。
 あっちなら冬は暖かいし、「木々や花も多くて、丘や、川もありますから」

文=Beth Gardiner/訳=北村京子



Record china配信日時:2017年5月13日(土) 7時20分
http://www.recordchina.co.jp/b177962-s0-c30.html

中国の汚染された土地、
全部整備するのにかかる費用はどのくらい?―米メディア

 2017年5月12日、参考消息網は「中国の土壌汚染問題には巨額の費用が必要」と指摘する米メディアの記事を掲載した。
 汚染された土地全てを整備するのに「約1兆ドル(約114兆円)」必要との研究データもあるという。

 記事はまず、中国が先月発表した新特区「雄安新区」(河北省)建設を取り上げ、この都市が「生態優先、クリーン発展」を原則に掲げていることを説明する。
 さらに「新特区は都市拡張の新たな手本となる」とした上で、その後報じられた周辺地域の環境汚染に言及。
 記事に具体的な説明はないが、新特区から数十キロ離れた場所で見つかった「巨大ため池」を指していると思われる。

 この「ため池」は工業廃水によってできたもので、見つかった3カ所のうち最も広いものは17万平方メートルに及ぶ。
 記事は報道を「全く意外ではない」とし、中国の急速な経済発展がもたらした環境への「巨大な代価」を指摘。
 大気汚染と同様に深刻な状況となっている農村の水や土壌の問題に触れ、「都市部住民は発電所、工場、廃棄物処理場など深刻な汚染を引き起こす施設を自分たちの目に触れることのない農村地帯へと押しやった。
 都市の拡張が進むにつれ、これまで隠れていた数多くの問題が暴かれることになった」とする。

 ただ、これと同時に「評価に値するのは政府がこれらの問題を認識していることだ」とも指摘。
 中国政府の「2020年までに汚染された工業区、農地の9割を修復する」との計画を
 「意欲的だが、この計画は短期間のうちに完了させる世界最大規模の土壌整備プロジェクト」
と説明し、ある研究で中国の全ての汚染された土壌を整備するために約1兆ドルかかるとの見方が示されたことを取り上げた。



ロイター 2017年 06月 3日 08:52 JST  Natalie Thomas and David Stanway
http://jp.reuters.com/article/china-pollution-idJPKBN18T33P?sp=true

焦点:中国「汚染との闘い」は掛け声倒れ、
失望する住民たち

[邯鄲(中国) 29日 ロイター] -
 中国で最も汚染された都市が集まる河北省は、汚染源となっている企業を閉鎖すると約束してきた。
 だが、館陶化学工業団地の近隣で暮らし、何年にもわたり抗議行動を続けてきた住民たちは依然、半信半疑だ。
 「美しい村」建設と、汚染の激しい同省重工業の「刷新」をうたう横断幕が掲げられてはいるが、南寺頭と東路荘の村々に影を落とす多数の化学プラント群は、環境保護当局からの規制に縛られることなく操業していることが多い、と住民は語る。

 地元当局は空気、水、土壌を汚染する工場に目をつぶっている、と住民は指摘。
 特に彼らが憤慨するのは、各プラントで最もひどい汚染が発生する作業の多くが夜間に実施されており、その時間帯に検査官が訪れることはめったにない、という点だ。
 「検査官は全然来てはくれない」とZhangと名乗る住民が語った。
 Zhangさんの家の近くには、焼け焦げた雑草に覆われた一角がある。
 これは今年初め、危険な化学物質を運ぶ車両が炎上した跡で、この事故によって、刺激性の煙が街路に広がったという。
 「環境保護当局に電話したが、誰も来なかった」とZhangさんは言う。
 「耐え難い臭いで、あっというまに、あたり一面に煙が広がった」
 省や県の環境保護当局にコメントを求めたところ、回答は得られなかった。
 館陶化学工業団地のモニタリングを担当するLiuと名乗る検査官は、ロイターの電話取材に対し「施設は24時間体制で監視されている」と話した。

 約40年に及ぶ野放図な成長が環境に与えた影響に対処するため、
 開始から4年目を迎えた中国当局の「汚染との闘い」では、
 規制を破る常習犯やそれをかばう地方政府に必要な措置を取ると約束している。

 河北省は北京に近接しており、事実上、首都を囲んでいる。
 北京を頻繁に「窒息」させている粒子状物質の約3分の1は河北省由来であるため、対策の槍玉に挙がっている。
 上述した村々は、今年1─4月の公式統計で大気汚染が最も激しいとされた、鉄鋼生産の中心都市・邯鄲(かんたん)の郊外に位置している。

 過去9年間で河北省政府に提出された1万1000件近い苦情のアーカイブはオンラインで公開されているが(www.hbepb.gov.cn)、そのうち省全域にわたる約700件の苦情が、夜間操業による汚染に関するものであり、その多くが、地元の環境保護当局にはこのような問題への対応能力がないと指摘している。
 邯鄲市の党書記であるGao Hongzhi氏は、3月に全国人民代表大会(全人代、国会に相当)が開催された際に、夜間の汚染は引き続き問題であり、当局者がその是正に取り組んでいるとロイターに語った。
 「規制を気にせず、夜の闇にまぎれて汚染物質を排出するような企業も一部にある」
と同氏は語り、市当局は夜間の電力消費を監視して、こうした行為に及んだ企業を突き止めようとしていると語った。
 「2014年には100社以上の企業に、この種の問題があったことが判明した。
 だが昨年はその数が約40社にまで減少した。
 この問題は非常に重要であり、注意を払っている」

 住民によれば、特に過去4年間で付近の村落におけるガンの発症が急増したという。
  ただし、データの裏付けは提供されなかった。
 河北省、邯鄲市、そして地元の郡政府の部局や疾病管理センター、病院に対して、地元のガン発生率や死亡原因についての数値を提供するよう要請したが、回答は得られなかった。

■<封鎖された幹線道路>

 2008年以来、館陶化学工業団地は付近の農地を少しずつ買収し、現在では農薬やベンゼンなどの有毒物質を製造するプラントを10施設以上含むようになった。
 一部の住民は、汚染のために育たなくなった綿花やサツマイモの栽培を諦めて、別のもっと丈夫な作物に切り替えたと話している。

 ロイターの取材陣が夜明け近くにこの地域を訪ねたところ、館陶化学工業団地のプラントは、日中に訪れたときよりも活発に操業しているように見えた。
 以前は操業していなかった施設から煙がもくもくと立ち上り、化学物質の刺激臭が大気中に漂っていた。
 2014年4月には既に、化学工業団地による汚染に対する正式な抗議が省政府に提出されている。
 「これが何か役に立つのかどうかは分からないが、一般の人々を代表して抗議を試みる必要がある」
と匿名の抗議者は書いていた。
 河北省環境保護局は館陶化学工業団地に対する監視を強化すると約束したものの、地元住民によれば違反は続いているという。

 たとえば、ロイターが閲覧した住民提供の文書によれば、昨年3月、Hebei Rongte Chemical Corpは、ベンゼン加熱用ガスケットの破断により有毒物質を含む蒸気が大気中に漏出したことについて、地元住民に対し「内部管理」の強化を約束した。
 ベンゼンには発ガン性物質として知られている。
 ロイターがこの事故について問い合わせたところ、同社職員は電話を切ってしまった。

 他のプラント操業について直接知る関係者によれば、未処理の排水が直接土壌に捨てられることは日常茶飯事だったという。
 「汚染水があまりにも多いので処理しきれなかった」。
 この関係者は、なぜ施設内の処理設備を使わなかったのかと問われてそう答えた。
 化学工業団地の責任者とは連絡が取れなかった。

 2014年後半には、いら立った村民たちが化学工業団地と地元の幹線道路を封鎖する事態に至っている。
 封鎖を解除するため、化学プラント側が1日3元(約50円)の金銭補償を提示したが、実際の支払いはなかったとの主張があり、ロイターはこれを確認しようとしたが、関係者に連絡は取れなかった。
 「補償金が得られるかどうかは重要ではない。プラントを閉鎖させることが肝心だ」
と南寺頭の住民であるDingさん(46)は語った。

(翻訳:エァクレーレン)